前穂北尾根

前穂高のバリエーションルート北尾根 1992年9月25~28


夜行で朝、上高地着。先月の雪辱戦。

奥又白池

奥又白池に立ち寄り一服。56のコル直下で緊張したが、取り付いてみると大したことはなかった。それほど難しい登りではなかった。コルに到着して改めて前回撤退したのが残念に思えてくる。初めての感激のコルは、周囲がガスに包まれて展望はなかった。

涸沢のテンバ
涸沢に向けてガラ場をジグザグに降りてゆく。左手には残雪がまだ豊富である。晴れ晴れとゆったりした気分だったのに、突然目の焦点が合わなくなってしまい、がく然とする。遠くから近くに目を移しても自分が何を見ているのかわからない。水晶体がなんら収縮運動せず、そのため焦点を網膜上に移すことができないというような感じ。初めてのことなのでショックだった。緊張と疲労のためか?幸い岩の上に腰掛けて少し休むと元に戻った。


涸沢ヒュッテに泊まって翌早朝、56のコルに登り返し、さていよいよ本命の北尾根登攀が始まる。40歳前後の単独行氏、3人パーティー、ついで私という順序で進んでいく。といっても続いていくのではなく、殆ど後ろ姿を見ることはなかった。

5,6のコル目指して雪渓を登りかえす
5,6のコル

4峰の登りで、先行3人パーティーがルート選びに苦慮していた。私は彼らとは反対に岩稜を左に回り込んで攻めて行き、彼らより先に4峰頂上に立った。ガイドブックをよく読んでおいたのが役立った。34のコルで食事した後(緊張で喉の通りがよくなかった)、3人パーティーを先にやって慎重に3峰に取り付く。最初のフェースは登らずに、ガイドブックにあったように左に回り込んで急な斜面を豊富なホールドを利用して登り、フェースの上部に出ようと図ったが、簡単に左に廻ることができない。その間に、連中はフェースを突破して上部へと進んでいったようだった。そのフェースの左隣のテラスに立って、2メートルくらいの目の前の岩を乗り越せば上部に出られそうだが、乗り越してから進退極まったら不味いので決断できないでいた。なお左手に大きな岩が2枚合わさって斜めにクラック状になっているのがある。目で何回もルートを追ってからクラックに中腰で両手を入れる。少しずつ横ばいしてようやく急斜面の下に降りた。あとはホールドを頼りに急傾斜をクリアして、まず第一関門突破。ここまで来ると度胸も座ってくる。そう意識したのではなく、岩そのものに集中していたというべきか。

5,6のコルからの前穂北尾根

次の関門、10メートルの凹角が実はこの尾根の核心部である。しかし、目で追ってみると、大したことはない。実際に前のパーティーも楽に抜けて行った。私も少々腕力に頼ったが旨くクリアできた。その先はオーバーハングを攀じる部分でちょっと気を使った。あくまでも慎重に配慮。


3峰の頂上に立つと、あとは余裕である。2峰の下りに注意してとうとう前穂高の頂上に立った。数人が山頂の憩いを楽しんでいた。3峰か2峰の頂上でもっとゆっくり休んだらよかったと思い返しても、それは無理というもの。危ういところは早く通過して、気を抜ける頂上でゆっくりしたい、この先何があるか分からないという意識がどうしても働いてしまうものだ。中年の大パーティがロープに繋がれて登ってきた。明神からでも攀じ登ってきたのかしら?雲海を抜け出した明神岳を見ていて、今度はこれだと思い込んでしまう。

1992,9/26

長い吊尾根を我慢して奥穂高山頂に到着。鈴なりの人。風が冷たい。一息入れてジャンに向かう。今回は疲れていたので頂上はあきらめてトラバース道を進み、コブ尾根を降りて、天狗のコルから天狗沢のガレを下った。今日の宿は岳沢ヒュッテに取り、翌朝上高地に戻った

奥穂から前穂北尾根を望む
ジャンダルム

  • 写真がいいですね。絵の道具を担いで登るのは無理ですが、描いてみたい風景です。
    若ければロッククライミング無しに挑戦するでしょうけれど、老いには勝てません。 -- 岬石 (2017-02-11 09:14:57)
  • 私も今はもう夢かと思っています。 -- inada (2018-10-07 06:32:38)
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最終更新:2018年10月07日 06:32