真野風火水土

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dangerousss

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真野風火水土(まの せかい)

設定

世界を旅してまわる学者。ただし、考古学ではなく反物質とか素粒子の研究で有名なひと。
路銀は現地でポーカーで稼ぐのが信条。
運動能力自体は十人並みで、ピンチはクールな機転で切り抜ける。
本人はファッションだと言い張るが、実は射撃の名手でもある。

「身体スキル」:【柔軟Lv.1】【長身Lv.1】
「知的スキル」:【観察力Lv.3】【閃きLv.4】
「固有スキル」:【イデアの金貨[魔]】【射撃Lv.4】
「オプション」:【拳銃Lv.4】【ナイフLv.2】

魔人能力『イデアの金貨』

切り札のコイントス。コインが地面に落ちたら合図だぜ。
純粋な早撃ちでもまず負けないが、コインが宙にある間に
一発逆転の妙案を思いつき、銃を撃たずに解決する。

プロローグ

映画「カム・ディス・ファー」の2作目「無色の森の騎士」入国審査のシーンより(森の従騎士に決闘で勝たなければ入国できない)

「ところで審判君、金貨一枚で私を勝たしてくれるつもりはないかな?」
「……」
「どうかな?この金でポーカーに勝てば酒にバウムクーヘンも食えるぞ?」
「見苦しいマネするな。我々の森に足を踏み入れてよいのは、森の従騎士に力を示したものだけだ」
「これも外の世界では立派な力なのだがね」
悪びれず審判に買収を持ちかける細身の男。丁寧に剃られた髭は冒険者としては似つかわしくないほど清潔で、
銀縁眼鏡の奥の瞳ははつらつと輝き、40近い年齢を10は若く見せていた。
テーブルを挟んで向かい合う長身の美丈夫とは、一見して戦う前から勝敗決しているようにすら見える。
「審判は公平をお望みのようだね。どうだろう、ここはひとつお互いに決闘のルールを一つずつ決めてみないかね?」
名もなき騎士は目の前の男の力量を推し量っていた。筋肉の質から力はそれほど強くはない。
だが、まるで血が通っていないかのようにわずかな震えも無い精細な指先の動き、何よりも騎士の殺気を軽くいなす
飄々とした物腰はその百戦錬磨が生み出す威風に他ならない。
「……よかろう」
体は騎士、心は五分、ならば技は?敵に優る自信はある。騎士はそれを見極めようとしていた。
「では、どちらが先にルールを決めるか……コインに任せよてみよう」
男の指に低くはじかれたコインは一度テーブルの上で弾んだ後、床の上で独楽のように回り、やがて天井に表を向けた。
「君からだ。どうぞ」
「降参した敵には攻撃しないこと。逃げる背は斬らん」
「ふむ、では私のルールだ」
細身の男―真野風火水土は懐から銃を抜きとり審判に手渡す。
「私の提案するルールは、対等に戦うこと。これは剣より強い武器だ。君が望むならナイフで戦おう」
真野の銃を扱う手つきを見て、騎士は興味を無くしたように背を向け、闘技場へと歩き出す。
「剣は銃に劣らん」
「では、審判にはナイフを預かって頂こうかな」

騎士は敵を侮り油断したわけではない。先に闘技場へと入ったのは、たとえ一秒でも自分を高める時間を取るためだ。
銃器相手の戦闘経験は少なくない騎士だが、その構造と技術にはそれほど詳しいわけではない。
しかし、ごく自然に銃口をどこにも向けず審判に手渡した動作。
それは武器の殺傷力と危険性を熟知しながらも恐れない達人の動きに他ならない。

ややあって騎士の前に真野が現れる。剣にも銃にも有利にならない、絶妙な距離だ。
コインを右手に持て余しながら、真野が酒に誘うような口調で話しかける。
「合図はコインでよろしいかな?」
沈黙を肯定と受けとり、コインが宙に放られる。
単なる偶然なのか、天性の勝運か、あるいは未知なる才能か。
どのような困難、絶望、不可能に対しも、宙に投げられたコインは真野に天啓を与える。
言い返せば真野は逃げ場なく追い込まれた状況下ではコインを投げるのだ。
コインは一瞬両者の視界を遮り、地面と音を立てた。
しかし、両者動かない。コインは床を転がり、騎士のつま先の前で動きを止めた。
仮に騎士が逸り柄に手をかければ、致命の隙が生まれたかもしれなかったが、真野の勝機の一つは消えた。
「私はコインが空中にある間に勝ちを読むぞ。剣を抜けば君は負ける」
薄く笑みを浮かべたその表情は変わらないまま、真野の瞳の色が変わっていく。枯れた木の様に色のない瞳だ。
「……そのコインを拾い、降参することを勧める」
その瞳と言葉にわずかでも怯めば、騎士の胸を打ち抜く隙が生まれただろう。
仮に怯まずとも、剣を抜く動作にわずかでも緊張から淀みが生じれば、真野にとって最後にして最大の好機となる。
敵を追い詰め敵に追い詰められながら、やはり真野は勝負師である。その右腕は力なく垂れ下がり緊張は一切ない。
だが、すでに騎士は真野の虚を見切っていた。
金の表面を伝う滴のように滑らかに剣を抜き構える。
それは真野の銃を扱う所作がぎこちなく思えるほどに洗練された動きだった。
瞬きほどの一瞬で騎士は心と技で真野を圧倒し、勝機は完封された。
「カードでなくて残念だったな。貴様に策はなく、千度戦えば千度俺が勝つ」
「たしかに、私にはもはや策も打つ手もなさそうだ」
真野の右手がゆっくりと額の高さまで掲げられる。騎士はその姿勢の意図に気づき構えを解く。

「スペードは剣―」
「私の好きなブルーズの歌詞だ。知っているとも、クラブは銃」
真野は左胸、銃がしまわれているであろう場所に手を置き、床のコインを見つめる。
「ダイヤは富だとも知っている。だが、私のハートは少し違う」
ゆっくりと懐を開きながら真野は続けた。
「そう、私に打つ手はない。なぜなら、銃を審判に預けている」
懐には空のホルスターが下げられていた。
「丸腰相手に剣を抜くのは対等な勝負とは言わないのではないかな?」

『どちらが先にルールを決めるか……コインに任せよう』
『わたしはコインが空中にある間に勝ちを読むぞ』

戦いの前、コインはすでに投げられていたのだ。
「それが貴様の戦いか」
「ロープは武器に含まれるかね?」
「ずいぶん黒いハートだな」
騎士はコインを拾いあげて、投げ返す。
「少し違うといっただろう?」
真野の瞳は再びはつらつと輝き、その笑顔は子供の様である。

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真野はコインを弄びながら、髪の薄い男とテーブルを挟み向かい合い、左手に持った5枚の札を見つめていた。
「二枚ドローだ。ところで、君の家に芝刈り機はあるかね?」
その口調は、賭博でゆさぶりをかけるというよりは論理の講義でもしているだ。
「Aのスリーカードだ。強いぞ」
真野がテーブルの上に広げた5枚の札にはスペード、ダイヤ、クラブのAがそろっていた。
続いて無言で広げられる髪の薄い男の札に、真野は思わず頭をかいて苦笑いした。
ハートの札が5枚ならんでいた。


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