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……だるい

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ssmrowa

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「……だる」
「……うん。もうな、ウチも何遍ツッコんだかわからへんしええ加減喉が疲れてきたんやけど、それでも言わせて貰うけどな――」
静寂の後、息を吸う音。
大きく肺が膨らむのを感じてから一気に開放する。
「――何で、何でこんな状況でアンタはゆっくりベッドに寝転んでられんねーーーーん!!!!」

 * * ○ × □ *
時は僅かに巻き戻り、数十分前。
野上葵が目を覚ましたのは小さなベッドの上だった。
ご丁寧に、毛布を掛けられた上に掛け布団まで乗せられている。
「はれ……? ココ、どこやっけ?」
とろん。
そう表現するのが適切な、睡魔と目覚めの狭間の絶妙に位置した声音。
寝起き特有の、ぼんやりとした重さを伴う痛みに頭を揺すって上半身を起こす。
訪れるのは唐突な違和感。
確かに、自分はいつものようにいつものベッドで眠りに落ちた筈。
胸の中の不安を示すかのようにぐるりと見回した周囲には全く以って見覚えがない。
見覚えのない装飾、見覚えのない家具、見覚えのない空間。
何気なく指先に触れている寝台の感触も、肌を包む毛布の匂いも。
自分の周りにある全て、何から何まで未知の空気を感じさせられる。
「なんや変な夢見とったしなー。はよ目ぇ覚まさんと、学校に遅れてまう……」
腕を持ち上げ、こしこしと服の裾で目蓋を擦る。
きっと自分は寝惚けているのだと、そう言い聞かせながらついでに深呼吸。
大きく息を吸って、吐いて、それからもう一度周囲を見渡すが視界に映る光景は全くの変化なし。 *

右、左、右。
一度、二度、三度。 *
横断歩道を渡る小学生の如き仕種を繰り返し、繰り返す。
それでも景色はいつまでたっても移り変わってはくれない。
せいぜいが、左右に視線を移したときの微かな変化くらいだ。
「え? あ? いや……嘘やん? 何で、え……?」
バクン、バクンと心臓が高鳴っているのが自分でもわかる。
呼吸の仕方がわからない、なんだかとっても息苦しい。
じわりと手汗が滲んで気持ち悪い、なんだか吐き気までしてきた。
さあ、と音を立てて血の気が引いていくのを感じる。
きっと今の自分はゾンビのように顔を青ざめていることだろう。
ああ。
こんな顔を紫穂辺りに見せてしまったら、怖がらせてしまうかもしれない。
それは駄目だ。
人の嫌がることをするのは良くないことだと。
人を思って行動しなければならないと。
いつも口を酸っぱくして言われているのだから。
「普通に……普通に……ちゃんと、せんと……」
ぶつぶつと思考を言葉に出して自分の心と身体に言い聞かせてみる。
決定的な何かを見つけてしまわぬように硬く強固に目蓋を閉ざして。
ソレに気付いてしまったらもう現実に戻れないことを本能が理解している。


今なら、今ならばまだ夢のままで終わらせられるから、だから。
お願いだから目を開けたなら、いつも通りの光景であって欲しいと、そう願う。
「後、五秒だけ。――――いーち…………にー……」
セルフカウントダウン。
僅かばかりの逃避と、自身を奮い立たせる制限を課してゆっくりと目蓋を開いていく。
渇ききった喉からは唾液も溢れずひりひりとした痛みだけが伝わってきた。
それでも必死に念じて、ゴクリと喉を鳴らして唾を飲み込んでみる。
ゆっくり、ゆっくり、五秒未満、永遠以上の時間の後に視界が開けたその先には――
「あ、は……やっぱり、夢やないんや」
――先ほどと変わらぬ光景が存在していた。

 * * ○ × △ * *

どれほど願おうとも、現実は現実であり、どこまでも現実だった。

 * * ○ × △ * *


現実を認識させられた葵だったが、さりとて取り乱すことはなかった。
まだ幼いとはいえ超能力者(エスパー)の一人であり、世界でも十指には入るであろう使い手。
荒事の経験も少なくはないし、この程度で諦めるような弱い心ではなかった。
無論、まったくの無傷とまではとても言い難いがそれでも上辺だけの平静を保てるほどには、彼女は強い。
「ウチがここにおるってことは、薫も紫穂も呼ばれてるんやろか」
目下最大の懸念事項は、一人か否か。
こんなわけのわからない状況に薫や紫穂が巻き込まれているだなんて考えたくない。
だがしかし。
こんなわけのわからない状況にひとりぼっちでいるだなんて、もっと考えたくない。
自分ひとりが犠牲になって良かっただなんて言えるほど、大人でも子供でもない。
故に葵は二人を探そうと、他のことはそれから考えればいいと判断する。
もしこの場に二人がいなかったら? なんて考える余裕があるはずもない。
「なんにしても、こっから出んと話にならへんよね……」
上半身を起こしているとはいえベッドの上にいたまま探し人をするなんて不可能である。
加えて、夢の方が現実なのであればなにか道具が渡されているはず。
なにが貰えるかはわからないが、なんにしたってないよりはマシなはず。
曖昧な希望に縋っている現状を理解しているのかしていないのか左手を突いて立ち上がろうとした瞬間。 *

ふにょん。 *

と、柔らかくそれでいて張りのある感触が掌に伝わってくる。 *

ふにょ、ふにょ、ふにょん。 *

確かめるように、何度か掌で揉んでみる。
「んっ、ふ……あ、……っん、」 *
ぴたり。 *
聞こえてきた声音に反応してようやく掌を離す。
左手にはなんとも形容しがたい極上の感触。
左耳にはなんとも形容しがたい極上の声色。

そこで初めて、野上葵はここに――このベッドの上にいるのが一人ではなかったことに気付く。
「え、えええええええええええええ!!?」

 * * ○ × △ * *

そして時は冒頭へと進んでいった。
胸を揉まれて目を覚ました、明らかに年上ながらもどこかぼんやりとした女性に話を聞き。
やっぱりこれは現実なこと、殺し合いをしなくちゃいけないこと、これからどうするか、どんな道具が渡されたのかを話し合う。
小瀬川白望と名乗った女性相手に対し最初は緊張していたものの、終始寝転んだまま話を続けようとする相手に次第に警戒は解れたのか今では容赦なく突っ込みを入れるまでに到っていた。
支給された道具がお笑いなどでよく見るハリセンだったことも手伝って二人の関係性は明確に構築されていく。
「……ちょっと、貸して……?」
「何を?」
「手か、肩か、体……」
「何で?」
「……起きるから」
「…………………………………」
「……起きるから?」
「なんでちょっと不安になってんねん! っちゅうか小学生の子供に肩借りんと起きられへん高校生っておかしいやろ!」
スパンとハリセンを振るう。
ちぐはぐでどこか噛み合った二人はこうして出会った。 *


【D-3/洋館/一日目-朝】

【野上葵@絶対可憐チルドレン】
[参戦時期]:不明、少なくとも小学生時代からの参戦
[状態]:健康
[装備]:ハリセン@現実
[道具]:基本支給品x1、不明支給品(1~2)
[スタンス]:不明
[思考]
 基本:不明
 1:薫と紫穂を探す *

【小瀬川白望@咲-saki-】
[参戦時期]:不明
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品x1、不明支給品(1~3



ここに雀荘を建てようッ! 投下順 hope
GAME START 野上葵 保護者ディオ
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