あの日の向こうへ -anohi no mukoue-

Outline

部屋のおもちゃ箱から出てきた鈴と、一枚の絵。
それを見て、少女――あかねは、廃村となってしまった生まれ故郷を思い出す。
幼い頃に迷い込んだ神社の先で出会った不思議な少年。

゛――そうだ。ワタシ、謝らなきゃ・・・〟

少女は走る。
あの日の後悔を胸に。
幼い頃、伝えたくても伝えられなかった言葉はありませんか?

誰しもが持つであろう、伝えられなかったあの日の後悔を、もう一度――。



Story

高知県のとある場所にある鈴鳴(りんめい)村。
7年前まであかね達はそこに住んでいたのだが、その村を支える工場が潰れた為にその村を出ていくことになり、後に廃村となってしまう。
あかねはその時、唯一の友達と離れ離れになった。
その友達の名は神木一。あかねは彼と村を出たかったのだが、彼はそれは出来ないと断った。
その時に彼はあかねにお揃いの鈴を手渡したのだが、幼いあかねは彼の態度が気に入らず、「嫌い、最低」等の言葉を浴びせてしまう。
そしてそれっきり、それから7年経ってもあかねは彼と会うことはなかった。





16歳の夏、あかねは母に頼まれて部屋の古い道具などを片付けていた。
そしてあかねの幼い頃のおもちゃ箱から出てきた鈴と一枚の絵。
あの時の後悔が蘇る、神木一との思い出が。
あかねはポシェットにその鈴と絵を入れて家を出た。鈴鳴村に向うために。
バスで一時間、海の近い山奥にその村はある。村の入口付近には小さな神社もあり人が全く来ていないということは無さそうである。
こわい
人がいた頃の村しか知らないあかねはそう思った。
昔とほとんど同じままの村を一人歩いていると、村のバス停にテールランプのついたバスが停まっていた。
運転席を覗き込むが誰もいない。
すると、後ろから何者かに押され、あかねはバスの中に押し込まれてしまう。
きっと犯人は、悪戯好きのカッパにゃんだ。
客のあかねしか乗っていないバスはあかねの家に向かって走り出す。
あかねは自分の昔の家の前で降り、そこからようやく道を思い出して走りだす。
いつ行っても彼はそこにいた。森の中にある誰も来ない神社に。
神社に辿り着くが、彼の姿はない。もう少し奥に進むと大きな木があった。どうやら御神木のようだ。
あかねはその御神木の札に書いてある名前を見て驚いた。
「御神木 一」
その直後、後ろから「あかね」という声がして振り向くと、大人になった彼がいた。
あかねは彼に泣いて抱きつき、ごめんなさいと謝る。
あかねは変わらないね、と彼は優しくあかねの頭を撫でるとあかねとお揃いで持っていた自分の鈴を渡す。
そして立ち上がり、「またね」――――。
強い風が吹き、彼は消えてしまった。

あかねのあの日の後悔はこうしてなくなった。
最終更新:2013年01月20日 03:51