第一回戦【時計塔】SSその3

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第一回戦【時計塔】SSその3

コロシアム。
時計塔。


「白虎の方角より現れ出てたるは!!」
コロシアム中央の舞台上で司会のフルダテが声を張り上げる。
フルダテは希望崎学園放送部OB、実況の猛者である。


「ラーメン維新集団『虹色(レインボー)ラーメン』チェーンにあって異色の台湾系!!店名は『白蘭』!


ウオー ワオー


フルダテの実況にオーディエンスの熱は高まる!!


現在ラーメン界を席巻しているのが『虹色ラーメン』グループ。
棟梁(ビッグボス)の太陽(サン)と呼ばれる謎の人物が日本ラーメン会の統一を目論むと噂されている。
白蘭はグループの中でも海外系の味を持つ有名店だ。
店の前には常に13kmの行列が並ぶという。


「白蘭よりの刺客!!創作ラーメンの麒麟児!!その瞳が見極めるのは真実か!?なんとグループに12人しか居ない黄金闘士!!スコルピオ!!ラーメン探偵!!真野真実だァァァッ!!」


ワー ワー ワー


「己のラーメン(La Amen)に恥じない戦いをしましょう、我が信念(La Amen)に賭けて。」


白虎門から登場したトレンチコートの青年が両手を天に掲げて観客にアピール!!
爽やかなメリケン粉の香りがコロシアムを包む!!
彼は英語使いであった。


マーノ マーノ タンテー タンテー
オーディエンスの興奮は冷めやらぬ!!


「オゥケイ!!オゥケイ!!みんな興奮するのは解るが、落ち着いてくれたまえ!!」
壇上ではフルダテが声を張り上げる。


「青龍の方角からはッ!!老舗中華料理店「龍息吹(ドラゴンブレス)」の助っ人料理人!!聞いて驚け!!かの暗黒お料理の生き残りが一人。リアル!!リアル伝説!!」


アバー アンコク ドラゴンブレス グワー 
オーディエンスから漏れる驚嘆の声!!
かつて世界の料理を裏から支配しようとした暗黒お料理は、もはや伝説である。
人々の心には暗黒料理への畏怖が刻まれているのだ。


「ヘイヘイヘーイ!!それだけじゃあないぜ!!一つの体に三つの心!!暗黒料理!!園芸!!手芸!!“ケルベロス”ミツコ!!蘇るのは老舗の味か!?それともゾンビの群れか!?」


シュゲイ エンゲイ コワイ 
オーディエンスの興奮は阿鼻叫喚に近い。
恐怖!!そう恐怖である!!
手芸と園芸は恐るべき恐怖の技であるからだ!!
しかしそれが料理に生かされるなら?
その好奇心は人々の食欲を刺激した。

「みんなーッ!!お腹はすいてるかなーッ!!さあ、ご飯の時間だよォー!!」

「うふふ…新鮮な食材を揃えましたわ。」

「あ、よろしくお願いします。」

青龍門から歩いてきたエプロンドレスの少女は大きな荷物を置いて包丁をクルクルと回転させた。

その口からは三種類の声が漏れる。

歩峰蜜子、満子、光吾の三姉弟は一つの体にその精神が宿っている多重人格者だ。

倒した相手の魔人の主人公力を吸い取るという恐るべき魔人である。

吸い取ったエネルギーで世界を平和にするという。

ワオー ウオー ワー ワー ワー




「さあさあさあさあ!!最後の一人の紹介だ!!」

フルダテは南の朱雀門を指差す。

そこには奇妙な武器を持った青年が呆然と立っている。




「銃グニルの使い手ッ!!黒田ァ武志ィ!!」

ワオー ガングニル ウオー

オーディエンスの興奮は絶頂に達している。

フルダテに促されるまま黒田も前に進む。




「そぉれでは!!制限時間は一時間!!この時計塔の分針が一周するまで!!お題は『餃子』『ご飯もの』『ラーメン』の三つの総合得点で決められます。よろしいですか?」

フルダテがルールを解説。

試合開始は間近だ。




「ふふふ、なるほど。この戦場はまさに私達の為にあるということでしたね。」

「制限時間もわかりやすくていいねーッ」

「……っとま…」




「負けた方は希望崎商店街から撤退する。条件はOK!?」

「無論(neuron)です。」

「約束破んないでよ?」

「…っとまてやコラ…」




「おや?黒田選手?何か?まさか!まさかまさか!?伝説の焼き土下座ルールを追加しようというのかぁ!!」

フルダテが大仰な驚きのポーズをとる。

ドーゲーザッ ドーゲーザッ ワー ワー

オーディエンスが更に盛り上がりを見せる。




「ちっげーよ!!なんだこれ!?なんだこれ!?何の茶番だ!!なんだよ料理ってお前ら!!戦うんだろ!!こう!!力と技と能力を駆使した魔人バトルをよぉーッ!!」

黒田が絶叫する。

当然だ。当然すぎる意見。

黒田は戦いに来たのだ。名を上げるために。



「ふっ(foot)…」

「あー…」「あらあら…」「だから言ったのに…」

「オーウ…」

「ってめッ!!コラ!!なんだその『ヤレヤレ空気読めよ』みたいなポーズは!!なんで料理なんだよ!!答えろよ!!あーッ!!納得できねーからな!!」

黒田は絶叫した。




「料理ではないラーメン(La Amen)勝負だ」

「うるせーッ!!」

コロシアムは静まり返っている。

静寂。

しかしフルダテはプロであった。




「なるほど会場の皆ァー!!黒田選手の意見は最もだ!!そうだろう!?」

オーウ… フー…

オーディエンスの反応は薄い。




「そんな事もあろうかと私は映像を用意していたのだッ!!」

「はあぁ?」

ワオー ムービー ワオー

活気がもどる。




「本来なら料理が始まってから適当なところで使おうと思っていたがッ!!求められれば致し方なし!!元より料理中は料理を楽しんでいただくのが基本!!ならば映像は今ここで!!ブゥゥゥイティィィィアァァァルッ!!スッタートゥ!!」

「ちょっと待てコラー」




ビヨン

コロシアムの玄武の方角。

大時計塔の下に設置された巨大モニターにドキュメンタリー映像が映る。





(ドキュメンタリー風音楽。)

ナレーションが流れる。



希望崎商店街。

破壊の波を乗り越えたこの商店街に老舗中華料理店『龍息吹(ドラゴンブレス)』。

老店主、龍宮威吹(たつみや いぶき)は「虹色(レインボー)ラーメン」のラーメン老師養田とはかつて同門であった。




養田が虹色ラーメンのビッグボス太陽とラーメン野郎の集団を立ち上げた時に袂を分かったのだ。

純粋な中華とラーメン野郎。

相容れぬ道、悲しい青春の日々!!

ああ!!元は美味しい料理を作るという同じ道を歩いていたのに!!

(悲しげなメロディー)




ある日、店を訪れたミツコ。

ミツコはこの店の馴染み、たまにアルバイトをする事もある。

しかし様子がおかしい。

『龍息吹』は人気店のはずなのに客がいないのだ。

なんと店のはす向かいに人気チェーン『虹色ラーメン』の新店舗がオーップンしたのだ。




独立システムを使い資金300万円の融資。

圧倒的な仕入れサポート。宣伝も豪華。

低価格。

お父さんの給料に優しい。

店内には子供が喜ぶ中華のターンテーブル。

家族と来ても楽しい。

キムチ食べ放題。

若者にも人気。

コラーゲンたっぷり濃厚スープ。

女性にも人気。




白蘭から独立した真野の店『ラーメン探偵(turn table)』。

『ラーメンの選択の真実はいつも一つ』を合言葉に大々的に出店してきたのだ。

よりによって“斜向かいに”!!

くっ。




「たこ焼きくいてーッ!!」「パン美味しいねん」「ソース?ソース?」

突如、関西モヒカンが店内に乱入。

しかし、おかしい!!何たる冒涜的言語!!邪悪!!

責任を関西に押し付け濡れ衣を着せて行われる卑劣な営業妨害行為だ!!

こいつらは偽関西人だ!!




関西の血が流れるミツコはモヒカンを店外にたたき出す。

更にこれらを半殺しにして拷問。

「うふ、誰の差金かしら?」




ミツコの拷問により3人のモヒカンのうち二人の皮膚は茶色に染まってしまった。

「アー…カレーアジ…アー…カレーダカラ」「アー…ミタメカレー…アー…モンダイナイ…」

園芸部の恐怖のゾンビ化術『生ける畑の肥やし』である。

こうなってしまって畑の養分になりながら野菜泥棒を捕食するトラップとして生きるしかない。

かつてウンゲロスと呼ばれる戦いで生み出された忌まわしき邪法。




「あなたも、こうなりたい?」

「嫌だー!!言う!!だから助けてくれ!!虹い…うぎゃー」

モヒカンの頭部が爆発!!




(CM)






(コマーシャル終了)



「それは違うよ!!破(hat)!!」

反論の拳がモヒカンの言葉と頭を打ち抜いたのだ。

トレンチコートの男がそこには立っていた。

「貴方は?」

「この店の店主、真野真実。まったく酷い営業妨害でしたね。喝(cut)!!」

回し蹴りでゾンビも爆散。




「証拠隠滅のつもりですか?」

少年の声。

ミツコの体からは三人の声がでる。




「なんの事かわかりませんが?証拠もなく動くのは探偵失格ですよ?ましてや事実無根の推論ではね」

真野の反論。

そう、光吾は探偵であり。

真野真実も探偵であった。




「はいはいはい、ミツゴくーん興奮しないの」

少女の声。

「でも姉ちゃん」

「成程(near ford)、複数の人格があるようだが、そのうちの一人は料理人でしょうか、その佇まいは中華の流れを汲んでいるようだ。」

一人で会話している少女の動きを見た真野が興味深そうに言った。

「その佇まい、中々の腕前をお見受けする」




「アタシが料理人だってわかるって事はあんたも相当ね」

「そこの古臭い…、おっと失礼。その中華料理店の料理人ですか?」

「たまにアルバイトしている程度だけどね、アンタも中々卑劣じゃない。」

「なんの事でしょう」

「小麦…」

「我社は独自のルートからメリケン粉を仕入れており安価(anchor)に提供することで荒廃(call high)した東京の食糧事情に貢献しておりますが何か?」

「国産の小麦も買い占めてるんじゃないの?」

「国産?あんな高価な食材は庶民には向きません、TPPという言葉をご存知でしょうか?」

「んあ?」

「メリケン粉はアメリカから安く提供され、貴方達はそれを食べればいい、米もそう、すべての食料はアメリカで生産し日本は消費するだけでよろしい、貴方たちは安く食事を食べられ、アメリカの農家も潤う、ウィンウィンの関係ですよ。」

政治的話題による論点操作。

いつしか真野の姿は政治家の様相である。

そう己の姿を状況に応じて変える真野の能力『“La Amen”』。

巧妙な交渉話術であった。

「よろしいですか?貴方たちも我々のチェーン店に参加すれば仕入れもラク(rack)、宣伝もラク(rack)。みんな幸せになれるのです。」

「騙されないよ」

「何です?」




「ラーメン勝負だ!!」

ラーメン勝負、これこそ龍息吹とミツコの逆転の秘策。




「むむむッ!!」

「負けたほうが商店街を出て行く、それでどうだ!!」

「ふッ(foot)いいでしょう。その勝負受けましょう。」




こうしてラーメン勝負が行われることになったのである。




(エンディングテーマが流れ スタッフロール ナレーション フルダテ)












「どうです?」

フルダテのドヤ顔。

相当の自信作のようだ。

ワー カンドー ウオー ナイス ドキュメンタリー ワオー

オーディエンスも興奮している。




「中々、良い出来(deck)です」

「うん、いいねーッ」

「良くねーよッ!!」

「え?」「理解(lee kind)できません」「面白いよ?」




「ちょっと不思議そうな顔してんじゃねーッ!!最後なんだよ!?なんで?なんでラーメン勝負言いだしたの?なんで受けるんだよ!!」

「意味わかんねーよ!!あと話に脈絡がねーよ!!あれなんなの?ああいうやり取りがあった後に撮影したの?馬鹿なのか?オイ!!」

「照れた顔してんじゃねー!!セリフ?あれあとで考えたセリフなのかよ!!」




ぽん。

フルダテが黒田の肩に優しく手を置く。

「ああ!?」

「そーゆーモンです。あと大体は事実ですから。」

「うるせー!!」




「ちょっと待ってよ」

ミツコが少年の声で発言する。

「確かに黒田さんには関係ない話だけどさ、でもメリットはあるんだ」

「はあ?」




「このラーメン勝負は僕達と真野さんの勝負だ」

「だから何だよ」

「僕たちは勝手に戦う、黒田さんはその勝った方と戦えばいい」

「どういう事だ?」




「僕たちは勝手に潰し合う、そしてこの戦いが終わったあとに料理勝負を黒田さんに強要する理由はない、そうですよね真野さん」

「無論(neuron)」

「だから黒田さんは見ていればいいんです、いや。むしろ審査員として試食してください。一時間も待ってる間ヒマでしょうし。」

「おおおおおおっっとぉ!!これはサプライズな提案だーッ!!さあ黒田選手いかがでしょう!!」

「お、おう」

「決まりだね」




ワオー シンサイン ワオー

オーディエンスも絶頂。




黒田武志。

目先のことに釣られる男であった。












「イヤーッ(year)!!」




おーっと真野選手 生地を空中に放り投げたーッ 解説のトミタさんどうでしょうかね

エー この試合はですね エー 熟成に時間のかかる生地は持ち込みOKなワケでしてハイ

ほうほう というと?

エー 虹色ラーメンチェーンの生地にはですね 秘密の調味料が加えられているとハイ

おお!!真野選手ジャンプ 頭上20mの生地に向かってジャンプ あああッ

エー パンクロックですね エー 真野選手はドラムの経験もハイ

真野選手の衣装がパンクロック風に変化 両手には綿棒だーッ




「混ぜる(mad jail)!!」




叩いたー 真野選手 二本の綿棒でドラムロールの如く生地を叩く叩く叩いて混ぜるーッ

エー ツービートですねハイ

さあッ 一方の黒田選手ですが

エー ヒマそうですねハイ

そして ミツコ選手 おっとこれは丁寧 丁寧な作業 生地を袋に入れて踏んでいるッ

エー 女子高生の足踏み生地 エー いいですねハイ

おっとここで情報が入りましたーッ ミツコ選手 体は男だそうです 残念ッ

エー それはそれでハイ




「ほほう、小麦を手に入れたのですか?」

「うちの寮の倉庫にね、北海道産オーガニックよ」

「なるほど、そうでなくては面白くありません、ならばッ」




で でたー 豚肉だー 輝くピンク 美しい油と赤身のコントラストーッ

エー これは エー




「イベリコ豚だ」




イベリコー イベリコです イベリコってなんでしたっけ トミタさん

エー … ハイ




「スペインのブランド豚だ、どんぐりを食わせて育てる」




だそーです

エー ハイ

真野選手豚肉をミンチにする一方で圧力鍋に調味料と共に投入だーッ

エー 使い分けるということでしょうハイ




「他にもポロ葱、ガーリック、オニオン、キャベツ、ふふ。」

「高級食材を使えば美味い、これがたった一つの真実」




うまそうです なんか聞いただけで美味そう

エー ハイ ヨダレがでますね ハイ

おおおっとー ミツコ選手に動きが 生地を細く伸ばしている これはどういう事だッ

エー ラーメンはまだ早いです エー 

餃子を捨てたのかッ 餃子に勝ち目なしと見てラーメンの仕込みか

エー ルール上は 問題ありません エー

しかしポイント的に捨てるのは厳しいぞ




「はっはー、だーかーらーッ!!アタシ達はチームだっていってるじゃん。ミツゴ君ッ!!」

「行きますッ。やーッ!!」




あああああッ 生地が 生地がッ




「なんだとォー!!これはッ!!」

「これがアタシの弟のミツゴ君の力だッ!!」




麺状の生地が編み上げられていくーぅ これは美しい仕上がりッ 網目が美しい

エー 驚きです エー これが 手芸者です ハイ




「くっ(cook)、貴様ッ!!だが(dagger)ッ」




さあ 真野選手は豚をミンチにして餡を作るッ そしてナンダーッ

エー ピンクですよ ハイ




「アルプスの岩塩だ、ふふ」




アルプスー ここでアルプス アメリカだけではない まさに世界 真野世界だッ

エー 黒田選手 寝てますねハイ

ミツコ選手の方は魚介です これを先ほどの生地に包む そして蒸したーッ

エー 小龍包のようなものでしょうかハイ 点心ですねハイ

さあ 真野選手も生地に包んで焼きはじめるぞーッ




「次ッ。ミツコちゃんッ!!」

「うふッ、お任せくださいお姉さま。」




おおっと ミツコ選手 早くも次の料理にとりかかるうっ

エー 蒸し料理にすることで エー 調理の手間を短縮したのですねハイ

な、なぁーッ なんとォー 穴だッ 穴を掘っているッ




「ウフッ 私の感が告げています ここである と」




こ これは ウサギッ 掘った穴からウサギがッ

エー 確かにウサギの仲間には 穴を掘るモノも居ますがハイ




「お姉さまッ!!」

「流石の仕入れだぜッ!!ミツコちゃん!!」




おおっと 襲いかかるウサギを難なく肉塊へと変えていくーッ 食材 食材なのかーッ

エー 真野選手が餃子を仕上げてきたようですハイ

真野選手 圧力鍋を アー 煮込み豚です 豚の角煮だーッ




「手間の短縮(turn short)だと?そのことを考えているのはお前たちだけではないッ」




ファイアーッ 真野選手 煮込み肉を豪快にファイアー これはチャーシューだッ

エー これは一気に逆転ですねハイ

おっとここで情報が入りました 先ほどのミツコ選手の倒したウサギですが おおおッ

エー どうしたんですかハイ

地下迷宮ッ この地下には迷宮が 希望崎大迷宮があるのですッ

エー エー!?

地下迷宮産の首狩ウサギですッ 一級即死生物 取り扱い注意ッ

エー コワイですハイ




「さあ、できたぞッ。特製チャーシュー丼だッ。」




これは美味そうだッ ご飯に煮汁が染みるッ 

エー ヨダレがズビっとハイ

ミツコ選手はチャーハンの様子 おおッ あれは 希望崎特産米『キボウノヒカリ』

エー 伝説の食材ですね ハイ

まだ現存していたのかッ 




「去年ミツコちゃんが作ったんだッ!!」




流石園芸部、自ら生産した食材を使う これは真野選手サイドとの違いが見えるぅー

エー 地産地消ですねハイ




「ふん、どこで作られようが味だけが真実。」




さあラーメンだッ おおっと真野選手 座り込んでしまった どうしたことかッ

エー 体調不良ですかねハイ

「ぬうううううううううんッ」




真野選手の衣装が黒Tシャツにッ いやバンダナだッ 前掛けだ これはー!!

エー ラーメン野郎ですねハイ




「Run!!Shout!!Say!!(いらっしゃいませという意味の英単語)!!」




出たーッ 最後はこうでなくてはッ 探偵といえども ラーメン ラーメン野郎ッ

エー これが最終形態ですかハイ




「かつてッ!!私の憧れた男は襤褸王などというラーメン存在になり死んだ!!」

「そしてッ!!別の尊敬すべき男はドラゴンとなった!!」




なんでしょうか これは一体ッ 真野選手両手を天に掲げるッ 

エー 何か言いたいことがあるのでしょうかハイ




「所詮、彼らは力を制御できなかったのだ!!制御し損ねたのだ!!私はッ!!私は違うぞッ!!」

「力に飲まれた彼らを超え!!私こそが真のラーメン野郎であり英語者となるのだ!!」

「想像せよ!!創造せよ!!出汁(dash)!!そして麺(main)!!」

「我が体内のラーメン回路よ、我が精神の英語機関よ。混ざって爆ぜろ。」

「我が心こそ精神(La Amen)、我が技こそ誇り(La Amen)!!」

「そして我が肉体こそ真実(La Amen)!!」




ああああ 真野選手の手に食材が吸い込まれていくゥー!!

エー どういうことでしょうハイ

光った 真野選手 光ったァー

エー そして黒田選手まぶしそうに寝返りをうちましたハイ




「ね、姉ちゃん…」「お姉さま…」

「大丈夫だって、しっかり丁寧に。さっき蒸し器に一緒に入れたナルトが完成ねー」




「かかかかかかかかかか喝ァァァァァッ(car)!!イングリッシュエナジー!!」




で 出たー 真野選手の手のひらから ラーメン!!ラーメンが!!

エー?! エー?!

そのまま宙に浮いてーッ 丼に入ったーァ!!

ハイハイハイハイッハイー!?




「ふっ、こちらは完成したぞ」

「チャーシューをのせてっと、こっちもできたわ」




エー 時間ですハイ

しゅううううううりょおおおおおおおおおおッ!!




「あ、できたのか?腹が減ったぜ」




黒田選手も起きたー












ワオー ウオー キャー



「えー会場の興奮も冷めやらぬところですがフルダテです」

フルダテは壇上に戻る




「両者の料理がでそろいましたッ」

フルダテは審査員の前にある料理を指差す




「真野選手、推理する焼き餃子、証拠のチャーシュー丼、真実のラーメン」

「ミツコ選手、編み上げ海鮮蒸し餃子、ウサギのチャーハン、醤油ラーメン」




ワオー ウマソー タベターイ ウオー




「続いて審査委員の紹介だー!!まず料理ジャーナリストのヨウリョクソさんです。報道部の料理レポーター。」

「頑張ります」

「そしてお金持ちのブッタ・ヴァラーさん」

「ブヒヒ、よろしくぅ」

「あと力士の股の海さん」

「ごっちゃんです」

「そして黒田選手」

「早くしろよー」




「それではッ。一品目実食!!まずは真野選手から」




「美味しい、肉の味が塩で引き立てられるようだわ、そして…そして…まるでこれは」

「おおっと早速飛ばしているヨウリョクソさん!!」

「世界を旅しているようだわー アハーン」

「美味いブヒ」

「ごっちゃんです」

「おーこりゃうめー」

「スペインの闘牛?いえこれは豚だわ、私が豚っ ああ あああー もっと罵ってェー」

「ぬ 脱いだー!!ヨウリョクソさん脱いだー!!」

「アルプスの雪解けを感じるぅうー 私も蕩けてしまいそうッ」

「溶けたー ヨウリョクソさん溶けたー」

「はぁ…はぁ… とっっっても美味しかったわ!!」

「ゲエー 復活 そして服を着ている!!」




「続いてミツコ選手の餃子です」




「中からお汁が溢れてくるぅーん これは? これは海?地中海バカンスッ!!」

「脱いだー!!ヨウリョクソさん 着た服をまた脱いだーッ!!」

「美味いブヒ」

「ごっちゃんです」

「おーこりゃうめー」

「なんという開放感ッ ああ 飛んでいってしまいそうッ!!でも!!」

「おおっとどうしたヨウリョクソさん」

「でもでもでも飛べないのッ、ああッこの網目が私を縛り付けるのッ!!束縛の愛だわッ!!」

「縛られたーッ!!ヨウリョクソさん縛られたッ!!亀甲縛りッ!!海鮮だけに海老反り亀甲!!ロープはどこから来たのかッ!!」




「それでは判定をどうぞー」

「ミツコ選手で」

「ブヒ、ミツコ」

「ミツコ選手でゴワス」

「真野かなあ」




「やったー」「さすがお姉さま」

「なんだとッ!!馬鹿なッこの私の餃子がッ!!」




「解説するでゴワス」




「おーっと股の海の解説だーッ!!」




「真野選手の餃子もとても美味であり正直甲乙つけがたいところでゴワス」

「しかしながらミツコ選手の蒸し餃子は試食の直前に蒸し器から出されておりアツアツでゴワした」

「対して真野選手の餃子はちょっと冷めちゃってたのよね、私を豚のように罵るプレイとしては良かったのだけれど、ほんの少し減点だわ」

「ブヒィ、良い豚だった、だが他の食材の個性が強すぎた、豚の良さを活かすにはもう少しバランスを考えるブヒ」

「やー、美味かったぜ。俺肉好きだしさ。」




「黒田選手以外の、とてもまともな解説ありがとうございましたーッ!!」



「ぬうううううッ」




「続いて二品目 まずはミツコ選手から」




「なにこれ、なにこれッ パラパラだわッ口の中で米粒の一つ一つ後ほぐれていくわッ はーん」

「ヨウリョクソさんの服がほぐれてパラパラにーッ 脱いだッ また脱いだーッ!!」

「美味いブヒ」

「ごっちゃんです」

「おーこりゃうめー」

「ああーん まってぇー うさぎさーん!!不思議の国へつれてってぇーん!!」

「ヨウリョクソさん 会場に空いていいる穴から地下迷宮へ飛び込んだーッ!!」

「ああーん 真っ暗 真っ暗だわ なにもみえなーい コワイヨー えーん」

「泣いたーッ!!ヨウリョクソさん迷子になって泣いたーッ!!」

「ああッ光?光だわッ!!これは何?そう希望の光よーッ!!」

「出たー!!ヨウリョクソさん穴から出てきたッ!!しかもレアアイテムで武装しているぞッ!!」

「属性は光ねッ!!」




「それでは続いて真野選手のチャーシュー丼をどうぞー」




「あああッこのタレ黒いタレが染み込んでいくッ 私が染められていくーん!! あなた色に染めてェー!!」

「染まったー!!ヨウリョクソさんが黒く染まったーッ!!そして光属性のアイテムが装備不可ッ!!結局脱いだーッ!!」

「マジやばいってェー!!美味しいんですけどーッ!!」

「黒ギャルだーッ!!でもちょっとセンスが古い気がするぞッ!!」

「ちょ、ほっといてよッ!!」

「美味いブヒ」

「ごっちゃんです」

「おーこりゃうめー」

「柔らかいわッ 箸で全く抵抗なく肉を切断するッ こんなに柔らかいモノに包まれて しあわせー!!私もバラバラにしてぇー!!」

「爆散!!ヨウリョクソさん バラバラに切断だー!!そして戻ったーッ!!元に戻った!!」

「素晴らしい味だったわ!!」




「それでは判定をどうぞー」

「真野選手で」

「ブヒ、真野」

「真野選手でゴワス」

「ミツコかなあ」




「くっ、負けたかー」「姉ちゃん」

「これで五分ということだな」




「解説するでゴワス」




「解説の股の海さんだーッ!!」




「ミツコ選手のチャーハン、ウサギの野趣あふれる味が素晴らしかったでゴワス」

「しかしながら米、これが良くなかったでゴワス」

「キボウノヒカリはとても美味しいお米。でもこれは新米じゃないわね?古米が美味しくないというわけではないの、暗闇にも光を見いだせる素晴らしい味だったわ。」

「しかし、微妙な水加減を間違えたでゴワスね、ウサギを狩る為の時間で微妙に水分量が狂ったのでゴワス」

「古米には古米の炊き方があるのは料理人に言う事ではないでしょうけれど、この差が勝敗を分けたのよ」

「ブヒヒ、対して真野の豚肉、これはご飯によく合ったでブヒ味付けも完璧ブヒ」

「俺は丼物より焼き飯が好きだぜ」




「黒田選手以外の、とてもまともな解説ありがとうございましたーッ!!」




「泣いても笑ってもこれで最後ねー」

「そうだな、だが。」

「何?」

「いや、進めてくれ」




「それでは最後の一品ラーメンだッ。まずは真野選手から!!」




「こ、これはッ なんの味かわからないわ ミステリアス ミステリアスだわッ!!この味の前では私には秘密なんて持ちようがない、ああッ全てをさらけ出してしましそうッ!!見てッ!!私の真実を暴いてェー!!」

「脱いだーッ!!ヨウリョクソさん脱いだーッ!!」

「美味いブヒ」

「ごっちゃんです」

「おーこりゃうめー」

「これはハードボイルド?私の全てがさらされていくゥー、記憶がッ。失われていた私の記憶が戻る、そう私は家が嫌で…」

「語りだしたーッ!!ヨウリョクソさん過去を語りだしたーッ!!」

「そう、私の苗字は真野…真野葉緑素。あなたは私の弟なの?」

「衝撃の事実ッ!!ヨウリョクソさんは真野選手の姉だったー!!」

「ダメよー、あなたと私は姉弟!!でもでも、構わないわッ!!無茶苦茶にしてーッ!!」

「また脱いだー!!結局脱いだーッ!!」

「でも弟でも審査は公平よ。美味しかったわ。」




「それでは、次はミツコ選手」




「あら?美味しいわ。普通に美味しい、これは鶏がらと煮干?」

「おお!!脱がないヨウリョクソさんが脱がない」

「美味いブヒ」

「ごっちゃんです」

「おーこりゃうめー」

「ああ…でも…懐かしい味。子供の頃よく弟と一緒に食べたラーメンの味…」

「オロローン!!泣かせるッ!!ヨウリョクソさん泣かせるぞッ!!」

「ごちそうさまでした」




「それでは判定をどうぞー」




「ミツコ選手で」

「ブヒ、ミツコ」

「ミツコ選手でゴワス」

「ミツコかなあ」




「おおっと全会一致だーッ」



「クハハハハハハハッ!!いいだろう解説を聞かせてもらおう!!」

「それは解ってるんじゃないの?」

「ほう、お前に私の何がわかるというのだ?」




「だって、ラーメンと英語って関係ないじゃない」

「グワー!!」




「確かにラーメン野郎は凄いけれど英語で味が良くなるわけじゃないでしょう?」

「グワー!!」




「そうでごわすな、英語による精密動作といっても体内で生成したスープや麺でゴワス」

「え?体内?」

「そうよ黒田選手、あれはあの子の体内に取り込んだ食材を体内回路で…」

「ゲボー!!うぎゃー!!男の体から出たもん食わされたのかーゲボー」

「あ、黒田選手が吐いた」




「まあ、食品衛生上も問題あるでブヒ、体内精製」

「まあ…でも…男の子のラーメン食べた男の子ってこう いいわぁ」

「あの?ヨウリョクソさん?」

「○ーメンって伏せるとヤラシイシ」

「ヨウリョクソさん?ヨウリョクソさーん」

「やめろー ゲボー なんかそんなモン食わされた様な気がしてくるじゃねーかー」

「ねえ白子って知ってる?」

「ゲボー 白子ォ? フグとかの ああ好きだぜ」

「大ジョブ、白子って魚の○玉よ?プレイだと思えばオールオッケー」

「グワーッ もう白子くえねえー ゲボー!!」




「そうだ、知っていた。確かに英会話は強力な技術、そしてラーメンは魔法。だが噛み合わない、いや違う!!噛み合うのだ!!噛み合いすぎるんだ、凄く!!」

「まあ、あれが噛み合うってのはねえ」

「そう、キメラだよッ!!キメラッ!!結局人外じゃん!!やってられるかッ!!」

「ゲボー…ゲボー… ゲ…ピクピク…」

「あ、黒田選手リタイアー」

「私は、普通に強くなりたかったんだ」

「大丈夫、きっと君は強くなれる」

「私の…負けだ。」












こうして戦いは終わった。



「クソッ相手が悪すぎたぜ、なあ銃グニル!!」

「そうだな」

「お前もっと喋れよー」




黒田は試合後には平静を取り戻した。

少しヨロついていたが。

ガングニルに愚痴を言いながら去っていった。

魔人が能力を使わぬまま負ける、そういう事もあるだろう。

結局黒田に止めをさしたのはヨウリョクソさんだったような気もするが。

だが真野のラーメンを食べてリタイアしたことになった。

さらにミツコに主人公力を吸われてしまった。

ちょっと、いやかなり可哀想だ。




「英語もラーメンも好きだけど混ぜるのはやめるよ」




そういって真野は負けを認めて去っていった。

彼は結局、偉大なるラーメン野郎 有村大樹に憧れ。

最強の英会話使い池松叢雲になりたかったのだ。

化物ではないかっこいい男に。

だが彼は主人公にはなれなかった。

でも、真野は思った。

“ケルベロス”ミツコ。

料理人であり、庭師であり、手芸者。

あれも大概キメラだよなー、と。













「黒田さんの主人公力ではまだ不治の病を消すほどにはならなかったね、一体いつになれば」

「うふ、まあ可哀想でしたけれど」

「まーいーじゃん。何とかさなるって。ほっれほれミツゴ君は心配性だなぁー」

「お姉さまも、もう少し心配してみては?」

「なんだよぉー、そんなイヤミ言うならさー。今晩のプリンは無しにするぞぉー」

「ああっ、それは勘弁して欲しいですわ。」

「結局、僕が食べればみんな食べる事になるのにな…」

「どーしよーかなぁー」

「お姉さまー」




仲のいい姉弟の戦いは続くッ




(エンディングテーマが流れ スタッフロール ナレーション フルダテ 制作協力報道部)








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