聖槍院 九鈴幕間その8

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dangerousss3

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雨竜院雨雫・死の3日前の話

九鈴と雨雫は、小さな喫茶店で夕食を共にしていた。
高校卒業後も二人はしばしばこうして会っているのだが、どうも今夜の雨雫は様子が変だと九鈴は感じていた。

「明日は学園祭で久々に希望崎に行くんだ。九鈴は来れないのかい?」

「ざんねんだけど。秋の清掃キャンペーンが重なってしまったの」
残念なのは本当だが、九鈴の目は別のことを語っていた。
本題は違うんでしょ? 何か言いたいことがあるんでしょ? と。

「ええと、うん、雨弓君が新潟に行ってることは、もう言ったよね」
九鈴の視線に観念して、雨雫はついに本題に入った。
「で、あの、約束したんだ。新潟から無事に戻ったら……あげるって」

「それってフラグ……」

「ちょっと九鈴! 不吉なこと言わないでくれ!」

「ごめんなさいね。それで、もしかして、ソレについての相談?」

「そうなんだ。私、不安で……。経験豊富な九鈴に、アドバイスを貰いたいんだ」

「ほうふじゃないよ……!」
豊富、は言い過ぎだが、とある事件で胸が大きくなって以降の九鈴はかなりモテていた。
付き合った男性の数は三人。ただし、いずれも長続きはしなかった。

「やっぱり、初めてはすごく痛いんだろうか?」

「ひとによるけど……。覚悟しといた方がいいよ。雨弓先輩は特に凄いもの持ってそうだし……」

「ひゃあああ」

「だいじょうぶだよ。最初は大変かもしれないけど、何回目かで慣れると思うよ」

「うん……。あと心配なのが、毛のことなんだ。毛深すぎるのは嫌われるよね?」

「うーん、どうかな? 雨雫の場合は、自然な感じである程度の手入れは必要かもね」

◆業務連絡◆
ふたりのトークはまだまだ続きますが、僕の限界を既に超えてるので端折ります。
◆業務連絡(了)◆

笑顔で小さく手を振って、二人は別々の帰路についた。
気紛れにトングで、目に付く路傍のゴミをひょいひょいと拾いながら、九鈴は雨雫を羨んだ。
心から愛する人に、初めてを捧げられるなんて、なんて幸せなんだろう。
興味本位で気軽に経験してしまった自分が、ゴミのように汚なく感じた。
雨弓さんと雨雫は、いよいよ永遠に結ばれるんだ。
そう思うと、九鈴は嬉しくも寂しくもあった。
まさか、この三日後に雨雫が死ぬなどとは、夢にも思わなかった。








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