羽山莉子SS(第二回戦)

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dangerousss

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第二回戦第一試合 羽山莉子

名前 魔人能力
白王みずき みずのはごろも
羽山莉子 メルティーボム

採用する幕間SS
【ダンゲロスSS運営SS『オープニング』】
(結昨日司のパンツが全国公開された)
【白王みずき幕間SS】
(白王みずきが意志乃 鞘に唇を奪われた)
【白王みずき 幕間SS こやしもん】
(一回戦第一試合の映像には、みずきのシャワーシーンまでもが映されている)

試合内容


「早く早くー!」
「ああもう、走っちゃダメよ。ほら、着物が乱れてるじゃない」
腰を下ろし、少女の服を直す女性。
その光景は、見知らぬ人からはまるで親子のように見えるだろう。

「……何やってるんですか。女神様、斎藤窒素様」
「「あっ、痴女」」

がっくり、と結昨日司の肩が落ちる。
全国に自身のスカートの中身を公開されたという事実は、今もなお彼女を苦しめている。

「声を合わせて言わないで下さいよ……。で、何です?その格好?」

女神は、まるで男の子の七五三のように紋付袴に身を包んでおり、一方の斎藤窒素は、長い髪を後ろに束ねグレーのスーツを着こなしている。

「だって!二回戦第一試合の会場は『地下闘技場』でしょー?」
「ならば、この服装こそが正装でしょう」
「「ねーっ?」」

お互いの顔を見ながら、声を合わせる二人。
「あぁもう、嫌な予感しかしませんよ……」


†††


「いたた……えと、ここは……?」

天然芝の上で尻もちをつきながら、少女・白王みずきは小さく呻いた。
希望崎学園の制服に包まれた尻を叩きながら少女はたちあがり、辺りをキョロキョロと見回す。
遥かな客席、巨大なバックスクリーン、背後に見えるは一塁側ベンチ――そう、ここは、まごうことなき、

「……野球場?」

少女の目には、先日死闘を繰り広げた野球場が映っていた。
はじめての感動
銃弾から発せられる硝煙の匂い
胸から生える手
全て鮮明に思い出せる。
そして、意志乃鞘――――

「っっ!」
意志乃鞘の真っ直ぐな目
腰に回された手と、その手に込められた力強さ
意志乃鞘の柔らかい唇
全て鮮明に思い出せる。

「な、何を考えているんですかっ!」
ぶんぶん、と首を振り、邪念を払う白王みずき。
頬はより一層の熱を帯び、その鼓動は早まるが、みずきはそんな自分を意識的に考えないようにした。
だが、考えまいとすればするほど、意志乃鞘の顔ばかり浮かんでくる。
そんなみずきの邪念を吹き飛ばしたのは――――

「白王みずき様、羽山莉子様。無事に転送完了しましたね。」
脳に響く、斎藤窒素の声だった。
「そうです……。ここは戦場なんです……」
みずきの表情が一遍する。
すでにその顔は、浮かれた少女ではなく、闘いに臨む戦士のものであった。

「白王みずき様は一塁側ベンチから、羽山莉子様は三塁側ベンチから。それぞれ廊下に出て、地下へ向かって下さい。」

「(私には、負けられない理由があるんです……)」
左手首に巻かれたミサンガを、右手でぎゅっと握りしめながら、少女は薄暗い廊下を進んでいった。


†††


「地下に着いたら、そのまま廊下をまっすぐ進んで下さい。一本道なので迷うことはありませんよ。」
「はーい」

脳に響く声に対し、独り言のように返事しながらチョコボールを一粒食べる。
ん。甘くて美味しい。

「しっかし、何で野球場の下に闘技場を作ったんですか?」
「あら、こんな都市伝説をご存知ありませんか?『野球場の下には地下闘技場があり、そこではルール無用の格闘大会が開かれている』って。」

はじめて聞いた。
噂話には疎い方なのだ。
茉奈は知っているだろうか。
後で聞いてみよう。

「まぁお遊びみたいなものですね。都市伝説に合わせて、江戸時代に行われていた御前試合闘技場を野球場地下に持ってきた、と。ふふふ」
やはりこの人の声は安心する。
薄暗い廊下を歩く恐怖も、この人と話をしていたおかげですっかり忘れていた。

「さぁ、そろそろ闘技場入り口です。合図があるまで、それぞれ入り口で待機していてくださいね。」
その言葉で、自分にスイッチを入れる。
戦闘が始まる。
相手は、同じ学園の白王みずき。
強敵だが、負けるわけにはいかない。
チョコボールを一つ口に含み、ポニーテールを結びなおした。


†††


薄暗い廊下に光が差し始める。
恐らく、ここが闘技場の入り口だろう。
足早に歩を進める。
目に飛び込んできたのは、眩しいくらいのライト。
聞こえるのは、怒号と喧騒。

「ウォォー!」
「ワアァー!」

人。
人が居る。
目の前には、バスケットーコート2面分くらいの戦場があった。
床は一面の砂。そして、戦場を囲むよう、観客席が並べられていた。

「……何これ?」
停止された思考を再び起動したのは、戦場の中央に佇む、紋付袴姿の少女の声であった。
「地上最強のバトルを見たいかー!!」
「ウォーーーー!!!!」
「わたしも!わたしも、みんな!!」
「せーの!」

「「「「選手入場!! 」」」」

より一層大きくなる喧騒。
会場のボルテージが一段とヒートアップしているのが分かる。
「ぷっ……あははは!」
自然と笑い声が漏れてしまった。
浮かれているのか、会場の熱気に毒されているのか。
こんなノリは嫌いじゃない。

「白虎の方角より!白王みずき!!」
「青龍の方角より!羽山莉子!!」
「両者!中央へ!!」

「おりゃー!」
天高く突き上げた私の右拳に、会場中の歓声が降り注ぐ。
うん、やっぱりこんなノリは嫌いじゃない。



†††



「……以上でルール説明は終了です。何かご質問は?」

スーツ姿の女性が、丁寧な口調でルール説明を行う。
ルール自体は一回戦と同じだ。
それよりも、この声……もしかして……
私の考えに気が付いたのか、女性はウインクで返事をする。
(そうか、この人が斎藤窒素さんなんだ)
先ほどまでの会話を思い出し、少し嬉しくなってくる。

「あの……あそこに居る人たちは……?」
申し訳なさそうに尋ねるのは白王みずき。
彼女の視線の先には、大勢の観客が居た。
「ふふふ。見ての通り、この試合の観客です。せっかくの闘技場なんだから、この試合に限り、観客を招待することにしているの。それと――――」
「観客席は闘技場と位相をずらしてるから、観客への被害は気にしなくで大丈夫だよー!」
割って入ってきたのは、先ほどの少女。
紋付袴がやけに似合っている。
「ふふふ。ありがとう、女神」
斎藤窒素に頭を撫でられ、女神は嬉しそうに、はにかんだ。

「あの……はじめまして、莉子せんぱい。白王みずきと申します。」
おずおずとみずきが話しかけてくる。
「うん、はじめまして、みずきちゃん。操子から、貴方のことは聞いてる」
「!! 操子先輩の事を知ってるんですか?」
「同じクラスだしねー。それに、1回戦の映像も見させてもらったし」
「うっ……」
みずきの顔が赤くなる。
みずき自身も、1回戦の試合は見た。
その際、自身のシャワーシーンまでもが映されているのを思い出したのだ。
「何ていうか……えっちぃ能力だよね…………」
「うぐぅっ…………お、お恥ずかしいです…………」
みずきの顔が、一層赤くなる。
茹でタコのように顔を真っ赤にさせ、みずきは口を開いた。

「そ、それでも……私は負けません。負けられない理由があるんです」
真っ赤な顔とは対照的に、真っ白で、それでいて真っ直ぐな瞳を向けるみずき。

「覚悟はしています。例え死ぬことになっても。殺すことになっても」
獅子の如き誇り高さが感じられる。
この信念を手折るのは、容易いことではないだろう。

「お話はそれくらいにして、ね。」
斎藤窒素が促す。
確かにその通りだ。

「それでは両者離れて!二回戦第一試合、白王みずきVS羽山莉子!勝負開始ぃ!!」



†††


先手必勝!!
チョコボールを1つ投げつける、が。
みずきの放つ水流によって、チョコボールは弱弱しく弾かれた。

「(そういえば、1回戦では銃弾すら弾いていたっけ……)」

2つ、3つ、と、再度チョコボールを投げつけても、結果は同じだった。
水壁に阻まれるチョコボールと、みずきの足元に広がる水たまり。
その映像が、淡々と繰り返されるのみであった。

「そろそろこちらからいかせていただきますっ!」

袖口を向けるみずき。
その右手からは、勢い良く水流が放たれた。

「っ……!」
放たれた水流が、武器塚に刺さっていた刀をへし折る。
鉄をも断ち斬る水流を寸前で避け、返す刀でチョコボールを投げつける。
が、チョコボールは再び水壁にその行く手を阻まれる。

「ふっ!はっ!」
「えいっ!えいっ!」

チョコボールと水流
それぞれの銃弾が幾度となく飛び交う。
チョコボールは全て弾かれる。その数、実に26個。
水流は全て避けられる。みずきのカーディガンは、すでに肩口まで消費されている。
みずきの足元にできた水たまりは、どんどん大きくなるばかりだ。

「これなら!どうですっ!」

右手に続き、左手をこちらに向けるみずき。
二丁の拳銃が、私に狙いを定める。
「ていっ!」
右手から放たれる水流。
ワンテンポ遅れ、左手から放たれる水流。
歯と爪が埋まっている砂塚に身を隠すが――――

「甘いですっ!」
――――水流は、砂塚ごと私をえぐる。

どん!
轟音と共に、砂塚は砕かれた。
その衝撃により、砂と爪、歯が勢い良く飛び散り、私の瞼を切り裂く。
が、それに構っている猶予は無い。
「うっ…………」

腹部に走る鈍い痛みに耐え、勝利に向け思考を重ねる。
(威力は凄いけど……命中率はそれほどでも無いのかな?)
みずきの足元にできた水溜りを見て、そんな考えを巡らせる。
そう、みずきは戦闘開始から、一歩も動いていなかったのだ。
(動きながら狙うのは難しいもんね。となると……)

「まだまだ闘い方はあるって事だよね!」
言うや否や、チョコボールを投げつける。
それぞれの指の間にチョコボールを挟み、一斉掃射。
8つのチョコボールがみずきを狙うが――――
その全てはまたも水壁に阻まれる。

「何度やっても……同じことですっ!」
きちり、と狙いを定めるみずき。
両手から放たれる水流――――

「それを待ってたの」
ぱきり、と取り出した板チョコを噛み割り、その甘さを楽しむ。
ん。美味しい。
板チョコをさらに割り、それぞれの欠片を両手に持ち――――
「動かないっていうなら、水流の軌道も読みやすくなるしね。ふっ!」
――――二枚のチョコ欠片を、二本の水流に向けて投げ込んだ。

投げ込まれたチョコ欠片。
それは、まるで生き物のように。
水流に弾かれながら、みずきの元に向かっていく。
「あっ……。あっ……。」
「水切りってやつよ。昔、やらなかった?」
そう言い終わる頃には、二つの爆発音が響いていた。



†††


「うぅ……。」
致命傷を避けたみずきの胸には、ある思いが過ぎっていた。
(遠距離戦は分が悪いですっ……となると、あとは……)
接近戦。
このまま遠距離戦を続けても、ジリ貧になるだけだろう。
事実、すでにカーディガンは消費し尽している。
ブラウスも、すでに肘のあたりまで使いきっている。
すでにみずきの心は決まっていた。

「死中に活有り!ですっ!!」


†††


みずきは、瞬く間に私との距離を詰めてきた。
その指先からは、一筋の直線が備えられている。
「……ウォーターカッターだね?1回戦でも使ってた」
なぎ払われた直線を避け、そう告げる。
みずきは答えなかった。

「ていっ!」
続けて放たれるみずきの蹴り。
私が避けるのを見越し、ウォーターカッターをなぎ払う。

蹴りとウォーターカッターの二重攻撃。
その威力は筆舌にし難い。
だが。
私には、空間把握がある。
距離を測り、正確にみずきのこうげきを避けていく。
それに。

「悪いけど、もっと早くて!重くて!痛い蹴りをもらったことがあるの!」
それに、みずきの蹴りよりも、灰堂の蹴りの方が何倍も恐ろしかったのだ。
私の頭部を狙ったみずきの蹴りは空をきった。
それに合わせて放つ蹴り。――――カウンター。
私の蹴りは、みずきの無防備な腹部に――――

ガィン

まるで、鉄板を蹴ったのかと錯覚した。
起こった事象が理解できない。

「隙ありですっ!」
「しまっ――!」
ウォーターカッターが、ワイシャツごと私の腕を切り裂いた。

「っっっっ…………」
苦痛で顔が歪む。
幸い、骨や神経は無事だ。
だが。
出血により赤く染め上げられたワイシャツが、この傷の深さを物語っていた。

「今のは……」
みずきの追撃を避け、思考を続ける。
「身にまとった衣服、つまり水。この水を振動させ、鉄板のような強度を持たせているんだね……」
みずきは、えっへん、とでも言わんばかりに言葉を放つ。

「ただ水を放つだけではありませんっ!水を自在に操れてこその水使いですっ!」

「これがあるから、接近戦を挑んできたんだね。」

距離を取ろうとする私。
私を追うみずき。
「その通りですっ!それに、接近戦ならば、自分が巻き込まれるので強力な爆弾は使えないでしょうっ!」

図星だ。
それに、こんな事まで喋るってことは。
「距離をとらせるわけにはいきませんっ!」
みずきの刀が私を付けねらう。
逃げる私。
追うみずき。
まだ。
まだだ。
もう少し。

「てやぁーっ!」
「うっ……」
再び、みずきの刀が私の腕を掠める。
それでも、私は逃げ続ける。
あそこまで行けば。



†††


「うっ!」
ウオォーターカッターが、私の足を掠める。
傷は浅いが、出血は多い。

「これで、もう逃げることは出来ませんっ!降参するなら今のうちですっ!」
転がりながらも、みずきの刀を避ける。

「逃げる?」
笑みがこぼれるのを抑えられなかった。
ここでいい。
ここがいい。
もう逃げなくていい。
ここに辿り着けたのだから。
チョコを一破片だけ口に含み、私は勝利を確信した。



†††


響く轟音
巻き起こる爆風
戦場を包む砂塵

「ふぇっ!?」

みずきの視界は、砂塵で覆われた。
目に飛び込んできた砂を払うため、ウォーターカッターを解除するみずき。
その瞬間を――――
――――逃さない

「つ~かま~えた♪」

右手でみずきの左手首を、左手でみずきの手首を捕まえる。
お互いが両手を挙げた格好。
そのまま――――

ドン

壁にみずきを叩きつける。

「かはぁっ…………」

「形勢逆転ってとこだね」
みずきを押さえつけたまま話しかける。

「うぅ……何で、急に爆発が……。チョコを投げる隙なんて無かったはず……」

その言葉に、にっこりと笑顔で答える。

「チョコなら投げてたでしょ?全部弾き落とされたけど」
「あっ……」
弾かれても、再三とチョコを投げていたのはこのため。
銃弾とチョコは違う。
銃弾ならば、運動エネルギーが無くなれば、それに殺傷力は残っていない。
しかし、チョコならば、弾かれてもその場に落ちるだけ。爆弾としての性能は生きている。

みずきの言葉を借りて言うならば。
「ただチョコを投げるだけではありません。自在に起爆できてこその爆弾使いです!」
「うっ……」

「後は、チョコが散らばってる箇所にみずきちゃんを誘い込めば良かったってこと」
「ぜ、全部覚えていたっていうんですかっ!?チョコが散らばってる場所をっ!?」
首を横に振り、否定の意志を告げてから続ける。
「覚える必要なんてなかったよ?みずきちゃん、大きな目印を付けててくれたでしょ?」
先ほどの場所に視線を移すみずき。
そこには、大きな水たまりがあった。

「あっ……」
にししし、とみずきに笑顔を向ける。

「で、でも、これからどうするんですかっ?両腕は塞がって、蹴りは私の服が弾きます。後できることといえば――――」

――――そう、頭突きだけ。
みずきの脳裏に浮かんだのは、お互いの頭部を使った撃ち合い。
「(ダメージは莉子せんぱいの方が大きいはずですっ!あとは、我慢くらべです!)」

そんなみずきの考えをあざ笑うかのように。
そんなみずきを包み込むように。
その凛々しい顔からは不釣合いな、まるでいたずらっ子のような笑顔を向け、莉子は微笑んだ。

「ごめんね」


瞬間、みずきの唇と莉子の唇が重なり合った。


†††


「んっ、ふっ」
両腕を押さえつけられたまま、唇を奪われるみずき。
そのか細い腕は、一切の抵抗を示すことなくぐったりとしている。
頬は熱を帯び 鼓動はより早くなる。
「はむっ、んっ、ぷはぁっ」
莉子の唇
その柔らかさ 暖かさ 艶やかさ
意志乃鞘とはまた別の感触に、みずきは溺れている。
「(こんな……)んっ、(こんなにも……)あっ、(熱くて……)はんっ、(甘くて……)」
まるで全身がとろけてしまっているのではないか。
みずきはそんなことを考える。
莉子の体温を唇で感じる。
その甘美なひと時は、まるで永劫に続くようにも感じられた。
「あむっ、ぷふっ、はぁ、」
莉子の唇は、みずきの唇を離さない。
荒々しく求められる感覚に、みずきは何も考えられなくなっていた。
「(莉子先輩の唇……甘くて美味しい……)」


ごくん

異物が喉を通るのも気にせず、みずきはその甘い感覚に身を委ねていた。


†††


「ぷはっ」
1分ほどであっただろうか。
唇が重なりあっていた時間は。
みずきが飲み込んだことを確認し、ゆっくりと唇を離した。

「ふ、ふえ?い、いまのは……」
ダメだ。
恥ずかしくてみずきの顔を直視できない。
顔が真っ赤になっていることを自覚しながら、笑顔を向ける。

「甘くて美味しかったでしょ?」
「っ!」
ぺろ、と舌を出し、みずきに見せる。
その舌には、かすかにチョコが残されていた。

「言ったでしょ?自在に起爆できてこその爆弾使いって」

「いくらその服でも、身体の内側からの爆発は防げないでしょ?」

みずきは驚いたような、悔しいような、ちょっとにやけるような、複雑な感情が入り混じった表情を浮かべる。
「(そうです……これは闘いなのに……私は何で……)」
「(でも……私は諦めません……。爆発に耐えれば……)」


「それじゃ終わりにしようか、みずきちゃん」
その言葉に、みずきは覚悟を決めたようだ。
ぐっ、と目を瞑る。

「BOMB!」


†††


こつん

死を覚悟したみずきは、頭部に走る感覚に、おずおずと目を開ける。
そこに映ったのは、まるで友人同士がふざけあってるように、チョップをみずきの頭で止めている莉子の姿だった。
呆然とするみずきを横目に、告げる。

「と、いうことで、私の勝ちでいい?」

大きな目をまん丸にして、みずきが尋ねてくる。

「な、なんで爆発させないんですか?」
「するよー。まだみずきちゃんが続けるつもりなら、ね。僅かでも攻撃してくる動作をしたら、その瞬間に爆発させる」
「…………」
ぐむ、と口をつぐむみずき。
やはり、まだ諦めていなかったようだ。

「みずきちゃん、最初に言ってたよね。死ぬ覚悟も殺す覚悟も出来てるって。」


「みずきちゃんは自分が傷ついてもいいって言うけど。」

「みずきちゃんが傷つくことで、みずきちゃん以上に悲しむ人も居るんだよ。」

「あっ……」

その言葉を受け、みずきは、はっと何かを思い出す。

(操子せんぱい……鞘せんぱい……)

そして。

(お母さん……)

豆乳をちうちう飲む母、白王みどり。
みずきの腕が、だらりと下がった。

「で、どうする?続ける?」

ふふ、と笑いながら、みずきは答える。

「負けましたっ♪」
「ん♪」

笑顔を向けるみずきに、笑顔で頭を撫でてあげる。
お互い、気恥ずかしいやら何やらで、顔が一緒に赤くなる。
でも、撫でるのはやめてやらない。

みずきの頭を撫でながら、茉奈の事を思う。
私も、茉奈にたくさん心配させてたんだなぁ。
心配かけてごめんね、と胸の内で謝る。
(それと……)

みずきちゃんにキスしちゃって、ごめんね

目の前の少女を見つめると、また頬が赤くなるのが分かる。
どちらかというと、こちらの方を謝りたい気持ちで一杯だ。
茉奈は泣くだろうか。それとも怒るだろうか。
こんなことならば、朝の教室で唇を奪っておくべきだったか――――
そんな思いが巡る。
いいんだ!優勝したら、たくさんのキスをしてやるんだ!してもらうんだ!

そんな思いを吹き飛ばすかのように、会場中から私達に向けて歓声が飛んできた。
激闘を讃える歓声。死闘を讃える咆哮。あーあー、泣いてる人まで居る。
うん、やっぱりこんなノリは嫌いじゃない。
喧騒の中、勝者を讃えるアナウンスが告げられた。



「二回戦第一試合!!勝者!!羽山莉子!!」


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