石田歩成SS(第一回戦)

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dangerousss

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第一回戦第七試合 石田歩成

名前 魔人能力
姦崎双 なし
のもじTHEアキカン・クイーン・ヘッド 超強奪拘束裁判~DP奪取ver
石田歩成 伊藤流・盛上駒踊り食い

採用する幕間SS
なし

試合内容

ーーここはーーどこだ……?
俺は……なぜ……何を……
どうして……
どうして触手でぐるぐる巻きにされながら上裸袴で手足を拘束されているんだ……?
「こんなの男でやっても誰得じゃないかァーー!!」
ぐちゅる……
「んひい!?」
体中を撫で回す触手姉、そどむの動きに悶えながら、歩成は状況を整理しようと顔を上げた。
ーーそうだ、俺はSNOW-SNOWトーナメントオブ女神オブトーナメント
~「第一回結昨日の使いやあらへんで!チキチキ秋の大トーナメント」~に参加したんだ、それで……
「ってかトーナメントのネーミングなげーよ! 適当に考えすぎだろ主催者ァ!!」

『さあ、死のブロックと言われた第7試合もいよいよ中盤戦! 姦崎選手とのもじ選手の一騎打ちがご覧のスクリーンには映されています!
もう一人の石田選手はどこにいってしまったのでしょう?』
現実逃避に勤しむあまりメタなツッコミに手をつけ始めた歩成を止めるかのように、法廷空間に実況の声が響き渡る。
『のもじ選手が能力を真っ先に発動してから中継のみになってしまいましたので、諸事情により放送が見られなかった方向けに特別にこれまでのハイライトをお送りしましょう。
『まず試合開始と同時に姦崎選手がのもじ選手、石田選手に飛びかかりました。しかし姦崎ごもら選手の手が届く前にのもじ選手が何かを叫んだと思ったら、あら不思議、闘技場から全員の姿が消えてしまったのです!
そして更に不思議なことに、放送の映像が捉えたのは、謎の法廷空間でした!』
(ここは法廷なのかよ)
今度は心の中でツッコミを入れる。周りには多数のモヒカンが転がっていたり穴から落ちて行ったりと、とても普通の法廷とは思えない。実況の明るい声のトーンのお陰で、歩成はかなり落ち着いた思考ができるようになってきていた。
『そしてこの法廷空間で、姦崎そどむ選手が両触手を拘束されてしまいます。しかし弟のごもら選手は無事でした。そして今、男と女の一騎打ちがまさに繰り広げられているところなのです!!』
「一騎打ち? てことはあの二人はまだ戦ってるのか」
言われて歩成がよくよく触手の間から目を凝らすと、アキカンを頭に被った阿野次のもじが、触手の弟側の部分である姦崎ごもらに追いかけられつつ、カウンターでビンタをかましているのが垣間見えた。
「僕らのモットーは『気持ちよく勝つ』! さあそこのゴスロリ女王様も一緒に気持ちいいことしようよー!!」
「いやじゃー!! 絶対にいやじゃー! わらわは触手が嫌いなのじゃー!!」
ベシン! ベシン!
女子高生のビンタも多少はダメージはあるようだが一向にごもらは攻勢の手を緩めない。彼らが激しく動きまわる事でモヒカン達は次々と穴の中に落とされていた。
だが歩成はそれに気を止めるでもなく、素早く現状を解析し始めた。
「ふむ……してみるとこの空間作成能力は……あのゴスロリ少女、のもじさんの能力か……触手弟のごもら君とのもじさんの戦闘(というか叩き合いの追っかけっこだが)を見るかぎり、身体へのダメージが服へのダメージになって現れるというもののようだ。ごもら君の服が脱げ掛けているし、俺も上裸だしな……」
歩成は自らの格好を省みる。
「俺が和装になったのも恐らく同じ能力によるものなのだろう。これはきっとプロ棋士の正装だからな……とすると、これまでに姦崎姉弟は能力を使用していないのか……」
考え込んだ歩成に気付いたのか、
「あら、意識が戻ってきたみたい。急に気を失うんだからびっくりしちゃった。まだまだプレイはこれからなのよ?」
姉のそどむが優しく歩成の身体を揉みほぐす。
その絶妙な動きに悶えながらも、歩成は思考を必死に紡ぐ。
「く、くうぅ……こうして俺は体力を奪われていたのか……だが、いつまでもヤラレっぱなしではおれん……待てよ。そもそもなんでごもら君は拘束されてないんだ?
能力の対象に入れられなかった……? 能力は二人までしか相手にできない訳か。ならば……」
歩成は一つの作戦の実行意志を固めながら絶頂に達した。
「この作戦で行くしかない、い、イクゥッ~~~!!!」

アキカンクイーンは逃げながら戸惑っていた。
「何故じゃ? わらわの能力の対象は2人まで。姦崎姉弟を両方ともを拘束できるはずなのに…」
先ほど歩成が考察したように、二人目の能力対象者として選ばれたのはごもらの方ではなく、そどむに拘束されていた歩成だった。それでごもらは拘束を免れている。しかしアキカンクイーンにはそどむに拘束された歩成の姿は見えていない。
「まあいい。触手は手強いが、着実にDPは奪えている……このまま持久戦なら勝てるわ」
そうクイーンが笑った瞬間ーーー
コツン。
のもじの足が何かを高らかに蹴り上げたかと思うと、
「キャアアアアア!」
ゴッツーン!
派手に宝箱に向かって転がり込み、アキカンクイーンは頭から吹っ飛ばされた。
「な、何が? モヒカンには躓かないようにルートを剪定していた筈なのに……」
慌てるアキカンクイーンの足元には、
「扇子……? なんで世紀末にこんなものが……」
首を傾げるアキカンクイーンの耳に、
「お姉ちゃああああああん!!!!!」
ごもらの悲痛な声が突き刺さった。

歩成は拘束された両手両足を引きずって物陰に隠れていた。「法廷空間なのに廃墟があるのはどこか間違ってるぜ、全く……」
まだ手足を拘束されているものの、そどむの触手から逃れた彼は、まず第一に身の安全を確保することを選んだのである。眼前では触手の先端近くにある小さな穴から、そどむが駒をポロポロ落としながら倒れている。そしてそのそばに、ごもらが寄り添おうと屈み込んだところであった。歩成が逃げたことは全く気にも停めていない様子だ。
「この手の能力ってのは、勝敗を決定する論理能力の可能性が高い。そして論理能力ならば、勝者が確定すれば解除されると相場は決まっている。現に俺の能力がそうだ。ならばクイーン本体を弟くんに始末してもらい、俺は姉を相手すれば良かった。と思ったんだがーーー」
歩成はため息を付いた。
「まさか弟くんが姉の変調を即座に感じ取って助けに戻ってくるとは……誤算であった」
扇子は歩成のプロ棋士コスプレ用小道具の一つだったのだ。それを足元目掛けて投げつけることでアキカンクイーンに隙を作らせ、一方的な蹂躙劇を楽し……もとい、能力者本人を倒してもらおうというつもりだったのだ(まさか転ぶとは思ってなかったようだが)。
「折角そどむちゃん相手に能力を発動したけど……これはなんとかアキカン少女もやっつけるより他ねえな……」
歩成はさきほどふっ飛ばされたアキカンを探すべく、芋虫のようにその場を去っていった。

ごもらは、そどむの突如として口の中へ現れた駒への違和感、そして苦しみを敏感に察知したのだった。元々触手の食事管=口というのはひどく細長いもので、ここへ将棋の駒のような物が詰まるとかなり痛いのである。精神感応を持つほどに深く結びついた二人がお互いの身の危機を優先するのは、当然であった。
「お姉ちゃん……お口の中、辛いの?」
「ふ……ふぉんふぁふぉふぉないふぉよ?」
「駄目! お姉ちゃんまた無理してる。もう無理しちゃ駄目だよ。お姉ちゃんの苦しんでる姿を見るのが、僕は一番……辛いんだ」
「この駒だよね? 息が苦しいんでしょ? いいよ、僕が全部出してあげるからね」
「ふぁめ! ふぁふぁかふぉ……」
「罠かもしれないっていうんでしょ? 分かってる。でも、無理だよ。例え罠だとしても……こんなに苦しんでるお姉ちゃんをそのままにして戦うなんて、僕には出来ない!」
「ふぉもら……」
「ほら、じっとしてて。お姉ちゃんが元気で居てくれさえすれば、僕は……たとえ優勝しても、それがお姉ちゃんを傷つけた末に掴んだものなら、そんなものは僕はいらない」
やがてごもらがそどむの口から"玉将"を取り出すと、
「息が苦しいんでしょ? 触手口呼吸してあげるよ、お姉ちゃん」
「……バカ。触手工呼吸、でしょ?」
「えへ。漢字間違えちゃった」
「もう。やっぱり私がついてないとダメなのね」
そして、二人の口が重なる。と同時に、姉弟のDPが空になったことを知らせるブザーが鳴り響く。しかし合いの営みを始めた二人には、もう服など無用なものだった……。

一方、のもじwithアキカンクイーンは、
『さあ戦闘もいよいよ大詰めか?
先ほどすっ転んでアキカンをふっ飛ばしたのもじ選手絶体絶命のピンチだったのですが、なんとそどむ選手は姉の看病をした後にそのままリタイア!
先ほどモヒカンに埋もれていた石田選手と合わせ、両者の一騎打ちとなっています……』
実況の声が響き渡る中、アキカンを取り戻そうと孤軍奮闘していた。アキカンは思ったよりも遠くへは飛ばなかったため、のもじの身体を操っているのは相変わらずクイーンである。しかし飛んでいったアキカンはあろうことかモヒカンに拾い上げられ、今まさに蹂躙されようとしていた。
「返せー! わらわの本体を返さんかー!」
「ヒャッハー! わりいなお嬢ちゃん! 俺達はこの缶で缶蹴りをするんだ!」
「そうだそうだ! こんな良いアキカンを見つけたら、缶蹴りをしないでは居られないぜ!」
「ぐっ……数が多すぎる……あれだけ穴の中に落ちたのに、何故これだけの人数が要るのだ……?」
のもじの身体は身体的には女子高生の体力と同じ。いくらザコとはいえ、こんな人数のモヒカンに囲まれてはアキカンクイーンに近づくのも容易ではない。
『おっと、どうやらあのアキカンがキーアイテムのようです! モヒカンザコに奪われてしまっていたのか!
これはのもじ選手、ピンチを脱出出来ていなかったようです! おや? 向こうの方のモヒカンが次々に倒れていくのが見えますが……』
クイーンのいる方とは逆のほうで、モヒカン達が大きくどよめき、散り散りになっていくのが見えた。よく見ると、駒を吐きながら倒れているようだ。
「ふぁ、急に口に駒が現れたぜ! ペッ!」
「なんだこの駒は、ペッペッペッ!」
「こ、駒を吐き出したら力が出なくなっちまった~……立ってられねえ……」
モヒカン達の中から姿を表したのはーー
『な! なんと石田選手です! 駒を吐いて倒れるのは石田選手の能力だったようです!』
「ふう、こいつらホントバカで助かるよ」
突如として現れた3人目に、クイーンはあとじさる。
「お、お前は……そうか、お前がわらわの能力の二人目の対象者になっていたのだな、えーっと……」
「石田歩成だ、対戦相手の名前ぐらいは覚えておいて欲しいものだけどな……」
影の薄さを指摘された歩成は、ポリポリと頭を掻いた。
「わらわが姦崎ごもらと戦っていた間、コソコソ逃げ回っていた奴に言われたくないな」
「言うじゃないか。ま、そんな口を聞いていられるのも今のうちだ」
歩成は拘束された両手両足を器用に使い芋虫のようにアキカンクイーンに近づいていく。近づいてくたびに駒を吐いてばたばたと倒れていくモヒカン達。
「全く……缶蹴りってのはな、頭脳のチームスポーツなんだぜ? てめーらみてーなアホじゃあマトモな勝負にならないだろうが」
「お、お前まさか」
「小学校時代よく缶蹴りをやったが、俺の作戦でカンを蹴りに行けばまず間違いなく蹴れたね。缶蹴りの作戦って将棋に似てるんだよ。幾つかの駒を駆使して目標に迫る辺りとか」
「やめろー! やめてくれー! け、蹴らないで」
「お・こ・と・わ・り・だね!」スパーン!!!!
駒を吐いて崩れ落ち、ブリッジの格好で仰向けに倒れこんだモヒカンに腰掛けると、歩成はブランコの要領でアキカンクイーンを蹴飛ばした。
『け、蹴飛ばしたァーーー!! なんと石田選手、アキカンを両足を使って蹴飛ばしました! アキカンはくるくると弧を描きながら地面に激突!
ワンバウンド、ツーバウンド』
「女王たるわらわを蹴るなんて……ゆ、許せんぞ貴様ァ! じわじわとなぶり殺しにしてくれくれるぅぅ~……」
断末魔を吐きながら穴の中へ転がっていくクイーン。
『そして脇の穴へと吸い込まれていったァーー!! のもじ選手、降参、投降です! 石田選手、見事な、鮮やかな逆転勝ちィ~~~~~!!』
まさかの大波乱に声を枯らして絶叫する実況をよそに、歩成は独りごちた。
「ま、モヒカン風情、アキカン風情が俺に缶蹴りで勝とうだなんて、100年早いな(カンを自分で蹴ったのは初めてだけどな! 上手く蹴れて良かった)」ドン!


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