第二回戦【鍾乳洞】SSその2

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第二回戦【鍾乳洞】SSその2

ザ・キングオブトワイライト第二回戦、第一試合とほぼ同時刻――。

本会場近くの警察署、地下留置場の一室。

「こちらです。南刑事」

南と呼ばれたコート姿の男は、隣の警官に促され、留置場の中へと入った。
そして視線を留置場の隅に向ける。そこでは拘束衣をつけた一人の女が座り込んで震えていた。

「彼女か」
「はい。本日午前10時頃、下着姿で街を徘徊しているところを保護されました」

警官は手にした資料を読み上げながら、南に報告する。

「目立った外傷は無かったのですが、その……、精神的な錯乱状態にあるようでして、保護された際も、よく分からないうわ言の様なことを叫びながら激しく抵抗しました」
「その際に、彼女が魔人であることが判明しました。攻撃に特化した能力は持たないようですが、常人を凌駕した身体能力を持っています。警官数人がかりでやっと取り押さえることが可能でした」

南は留置場の中の女へ目を向ける。
背格好は、10代後半程度だろうか。顔は、元々は幼さを残す、愛らしいものであったことが想像できるが、今は衰弱によって酷くやつれていた。

「また、先ほど判明したことですが、彼女が保護された個所から2、3キロメートル程離れた裏通りにて、街の不良が数人惨殺されているのが判明したそうです」
「おそらく、彼女を暴行しようとして、逆に返り討ちにあったものと思われます。発見された時の彼女は、数か所程血に汚れていた状態だったそうです」
「そうか……とにかく俺が話してみよう」
「お願いします。拘束衣を着た状態ですが、注意してください。」

南は留置場の扉を潜り、震える女の元へ近づいて、声をかけた。

「初めまして。私は南。魔人公安だ」
「ま、魔人……公安……」

女は顔を上げ、南の顔を見つめる。

「ああ、君に何が起こったのか聞かせて……」
「ひいっ……!」

女は突然小さく飛び上がり、そのまま反対側の部屋の隅へと這いずって行った。

「お、おい……ちょっと待ってくれ」
「い、いやっ……いやあ……」

南は咄嗟に駆け寄り、女を押さえようとした。
しかし女は激しく痙攣し、南は思わず手を放した。

「はあー……はあー、もう、もう止めてーー!」
「お、おい、俺は君に危害を加えるつもりはない。落ち着いて話を聞いてくれ」
「もう嫌、もう嫌なのお……。もう話したでしょうーー!」

女ひたすら何かに怯えたような様子でじりじりと後ずさる。
その視線は全く焦点があってない。
ただならぬ様子に、南は女を追うのを止め、落ち着いた口調で女に語りかけた。

「何があったんだ。何が君をそんなに怯えさせている。まずそこから話してくれ」

女は一旦動きを止め、そして言葉を発した。

「ファ、ファントム、ルージュ……」
「何……?」

(ファントムルージュ……だと……?)
ファントムルージュ……、その言葉は南の心に、いや一部のベテランの魔人公安の心に今も暗い影を落とす言葉であった。

「ファントムルージュだって!?おい、君……どこでそれを?」

思わず詰め寄ってしまう南。
だが、女は再び大きく後ずさり、頭を抱えて蹲った。

「いやあーーーー!!もう止めてぇーーーーー!!」
「ひ……、お、恐ろしいーーーーー!!」

涙を流しながらガクガクと震え、大きな叫び声を上げる女。
そのただならぬ様に、南はただ立ち尽くすのだった……。

「一体彼女に何が起こったというんだ……」

*********************************************

ザ・キングオブトワイライト第二回戦、第一試合。
本試合会場――。

「さあ、ザ・キングオブトワイライト第二回戦、第一試合の開始はもう間もなくです!」
「こちらは本試合場から。まずは各転送ルームの様子を実況します!」

明るい声で実況を行う少女、「佐倉光素(さくらこうそ)」。
彼女は本会場にて、解説役の少女「埴井(はにい)きらら」と共に、モニター観戦している観客へ試合の解説を行っていた。

「さて、まずは山田選手の転送ルームの様子です。きららちゃん、どうでしょうか」
「えーっと、何やら巨大なライフルを抱えていますね。形状から察するに、これは……狙撃用のスナイパーライフルでしょうか。光素ちゃん、分かりますか?」
「そうですね。うーん……、私、ライフルには詳しくないので、どんな銃かは不明ですが、後で情報を入手しましょう。しかし山田選手、準備は万端のようですね」
「そうですねー。随分と気合が入っている雰囲気です。これは相当心に燃えているものがありそうですね!私には分かります!」

モニターに映された山田はライフルを両手で握り、ガッチリと構えている。
埴井きららは、自身も熟練の格闘家である。彼のただならぬ雰囲気をモニター越しからでも感じ取ったようだ、

「さて、他の二選手はですが……、なんと既に試合場入りしているようです!」
「なんと!光素ちゃんの転送を使わない!?あの鍾乳洞、かなりの僻地なんですけどねー」
「早速、今回の試合場、鍾乳洞の様子をモニターしましょう!まずは偽原光義(ぎばらみつよし)選手の方から」

二人の発言と同時に、モニターが鍾乳洞の映像へと切り替わる。

「おおっと!確かに開始地点の入り口付近に、偽原選手の姿が見えます!」
「偽原選手。今回は随分と厚手のコートを着ていますね」
「おそらくは、防弾コートでしょうが……、まあ今回は前回のサバンナと違って、内部はひんやりしていますからねー。厚着で臨んだというところでしょうかー」
「いや、きららちゃん。そういう意味ではないと思いますけど……。なお、前回はアサルトライフルを所持していた偽原選手ですが、今回は手ぶらです」
「むむー、ということは……、あのコートの中に色々仕込んでいるなー!」
「偽原選手もやはり準備万端、整っているようですねー」

なお、彼女らの実況は、選手の耳には届いていない。
ゆえに、彼らが試合前にどのような装備で望んでいるかは他の選手には伝わらない。あくまで観客が知るのみである。

「さて、最後はアキカン選手……じゃなかったぁー!!オーウェン・ハワード選手です」

モニターの映像が、今度は鍾乳洞の別の入り口へと切り替わる。
そこでは一個のアキカンが、ポツンと佇んでいた。

「オーウェン選手は一回戦と同じ、武器はパームピストル一丁の様ですね」
「他に武器を隠し持ってる……様子はないですね。アキカンですから」
「ま、まあこっちも準備は万端ですかね……。わざわざ試合場まで直接来ていることですし」
「アキカンって、車とか電車に乗るときに料金払うのかなー。それとも、アキカンの振りしてタダ乗りかなー」
「と、ともあれ三選手とも遅刻せず、開始地点には来ているようですね」

モニターは、三人の選手の様子を画面に三分割して同時に映し出す。
三人とも特に動く様子も無く、じっと開始の合図を待っていた。

「この大会は遅刻、即失格ですからね。一回戦では幸い遅刻者は誰もなく、各試合場で激戦が繰り広げられました!」
「ええ、この三選手全員、一回戦で強豪の魔人を打倒して二回戦へ勝ち上がった猛者達です!」
「それだけに二回戦も、一回戦以上の死闘が期待できます!」

「あ、そうこう話している内に試合開始三分前だよ、光素ちゃん!」
「おっと、もうそんな時間!それでは山田選手も試合場の入口へ転送しましょう!」

光素は目を閉じ、手を前方に掲げる。
すると転送ルームにいる、山田の姿が一瞬で消滅する。

「さて、モニターの方をどうぞ!山田選手、無事試合開始地点に転送されたようです」

モニターには、他の二選手とは別の入り口へ山田が一瞬で転送された様子が映し出されていた。

「これで三選手それぞれが試合開始の位置に転送されましたね」
「はい、後は開始時刻を待つだけです。ううー、緊張してきたぁー!」

少女二人はその後、他愛もない会話をしながら、じっと開始を待ち続けた、

「さて、開始十秒前です」
「観客の皆様も、準備はよろしいでしょうか!」
「5、4、3、2、1、ゼロッ!それでは、ザ・キングオブトワイライト、第二回戦、第一試合!」
「スタァーーートォーーーーッッ!!」

そして、決戦の火蓋が切られた。


*********************************************



試合開始の合図が告げられるやいなや、山田はすぐに両手でライフルを携えながら、鍾乳洞の入り口へと進んだ。





入り口からしばらく歩いていくと、すぐに下りの坂が見える。

(偽原光義、オーウェン・ハワード)
(二人のどちらかが、澄診(すみ)ちゃんと穢璃(えり)さんを……!!)

落ち着いた足取りで坂を下りながらも、山田の心の中は静かな怒りで燃えていた。


三日前。


「遅いな、澄診ちゃん……」
「そうですね。約束の時間に遅刻するなんてこと、無いはずなんですが」
「だよな、この時間に作戦会議しようって言ってたの、澄診ちゃんだし」

四つ目興信所所有のパネルバンの中、山田と兎賀笈穢璃(とがおいえり)の二人は互いに首をひねって顔を見合わせた。
彼らは毎日この時間に、次の試合の対策会議を行うのが常であった。
各々が調査した敵の分析結果を報告し、そしてその報告を元に、次の敵に対して有効な対策を練るのである。。
だが本日、彼ら三人の中の一人、魔人の能力分析を担当する兎賀笈澄診(とがおいすみ)が約束の時間を30分過ぎても姿を現さなかったのだ。

「まさか、敵の調査をする時に何かあったんじゃ」
「それは考えたくないです……。澄診さんは素人じゃありません。戦闘だってこなせますし、もし危険を感じたなら、私たちのところへすぐに連絡がくるはずです」
「だよな。けど、だからこそこれは只事じゃない気が」

次第に、二人の表情が深刻なものになっていく。
不安が、徐々に大きくなっていく。

「山田さん、とりあえずここまでの敵の分析結果を話してもいいですか?気もまぎれると思いますし」
「そうだな。とりあえず始めよう、穢璃さん」
「はい。ではモニターを見てください」

穢璃は手元のノートPCを操作し、前方の大きなモニターへ画像を映し出す。
モニターには、一枚の経歴書が映し出された。

「まず二回戦の対戦相手の一人。偽原光義」
「39歳。元魔人公安。公安時代は、それは正義と理想に情熱を燃やす人物であったそうで、凶悪な魔人犯罪者達を逮捕、あるいは殲滅する作戦の中心に何度も立っています」
「任務においては常に冷静沈着。犯罪者を倒すことにかけては一切の容赦が無く、事前に綿密なプランを立てて、徹底的に追い詰めていくやり方を得意としたそうです」

モニターの画像がスライドされ、魔人公安時代の偽原が、多くの悪行魔人達と戦うシーンが映し出されていく。


「ふうん、1回戦を見る限りでも、俺たちと同じ、あらかじめ敵や戦場の情報を詳細に調査した上で、どう戦うかを具体的に詰めているタイプですね」

「そうですね。しかし7年前に彼は突如として魔人公安を退職しています……。そしてそれからの経歴は一切不明」

穢璃はPCを操作し、モニターの画面を切り替える。
7年前の精悍な偽原の画像は、現在の頬が痩せこけた姿へと変わった。

「そして今回、突如として今回の大会に姿を現しました」

「そこですよね。まず、なんで魔人公安を退職したんですか?」

「そこについては私も手を尽くして調べようとしたんですが。7年前に起きたある事件がきっかけということしか……。その事件で彼の妻子が死亡したそうです。彼は事件の直後もしばらくは魔人公安を続けたそうなのですが……結局やがて退職したそうです」
「その事件の詳細は?」
「そこがまったく分からなかったんです」
「穢璃さんでも調べられなかったんですか!?」
「はい。警視庁のコンピュータにもハッキングを試みましたが、その部分に関してだけ何重にも厳重なロックがかけられていて、とても情報を盗み出すのは不可能でした」

表情を曇らせる穢璃。
更にPCを操作し、モニターの映像を切り替える。

「分かったのはこの、『ファントムルージュ』という単語のみ……」
「ファントムルージュ……、なんなんですか?それは」
「どうやら都市伝説の一種ですね。これは映画のタイトルで、その映画が7年前、関西に甚大な被害をもたらした原因だとか」
「7年前の関西?確か、その年も魔人能力による大規模テロ事件が関西地方で起きてますが……。その原因が映画?」
「ええ、ネットの一部ではそんな噂が流れているようです」

「馬鹿馬鹿しい話ですね。いくら魔人の力でも、映画だけで関西は滅ぼせないですよ」


山田はやれやれといった感じで首を振った。
しかし次の瞬間、あっ、と穢璃の方を向きなおす。

「けど、こいつの能力、確か敵に映像を見せる能力みたいでしたよね」
「はい、一回戦を見る限りは。まだ詳細は不明ですが、映像を見せることで、敵を……なんというか色狂いにしてしまう能力、でしょうか」

「うーん、男の俺が受けたら、どうなるんだろうか……。想像はしたくないですね。けど、映画と映像……偶然、なんでしょうか?」

「分かりませんね……。ただ、調査した限り、魔人公安時代の彼の能力はもっと別の能力だったようです」
「え、それって……」
「魔人能力は一度身につけた後であっても、稀に変質することがあります。主に精神に強力なショックを受けた場合が、原因として多いと言われてますが……」
「じゃあ、やっぱり7年前の事件がきっかけで?」
「その可能性は高いと思いますが、能力の詳細が分からない事には……」
「やはり、澄診ちゃんがいないと厳しいか」

表情を険しくする二人。
その後、更に穢璃の分析結果を元に話し合うも、結局分かったのは、手強そうな相手である、ということだけである。

「うーん、とりあえず気を取り直して、次にいこう」
「そうですね。では、もう一人の相手、オーウェン・ハワードについてですが」
「彼は元々は人間で、元はアメリカ陸軍所属。第75レンジャー連隊魔人部隊長で当時は『紅蓮の英雄』と……」

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「成程、結局相手について分かったのはこんなところか。経歴については二人とも大分分かったけど、能力に関しては、やはり澄診ちゃんがいないときついな」
「……結局、今日は来なかったな、やはり何かあったとしか思えない」

「俺、澄診ちゃんを探しに行ってきます。今回の対戦相手の事を調べに行って、何かあったのは間違いない。穢璃さん、対戦相手の現在の居場所は分かりますか?」

「そちらの調査も進めましたが……、山田さん、今回は何か嫌な予感がします」

表情を曇らせ、山田へと語りかける穢璃。

「澄診さんのことは気がかりですが、今回は既に作戦の方針も大体固まっていますし、ここは私がもう少し調査しますので、山田さんはそれを待っていた方が」

「なに言ってるんだって、穢璃さん。俺だけじっとしているなんて、できないですよ」

「けど、皆にこの大会の参加を進めたのは、元はと言えば私ですし」
「私のせいで、二人に今以上の危険が及ぶのは……」
「穢璃さん!」

山田は穢璃の手を握り、そしてじっとその瞳を見つめて、語りかける。


「穢璃さん。俺も澄診ちゃんも、穢璃さんに促されたからってだけじゃない。それぞれ自分の意志と目的を持って、この大会に出ている」
「だから、穢璃さんが気に病むことなんて何もない。穢璃さんも自分の為に戦えばいい」
「山田さん……」
「なぁーに、大丈夫。二人の万全なサポートがあるんです!今度もきっと勝てますよ!」

そして山田は穢璃から手を放し、立ち上がった。

「じゃあ、行ってきます!ライトバンのロックはくれぐれも厳重にかけておいてください!俺か、澄診ちゃん以外の人を入れないように。なんかあったら連絡よろしくです」





「じゃ……」

山田は振り向き、ドアへと向かう。
その時。

「山田さん!」

穢璃は、山田の背後から腕をまわし、突然彼に抱きついた。

「死なないで、ください」
「ああ、勿論ですよ。でもこんなこと……まだ早いです。澄診ちゃんにも怒られちまう」

山田は穢璃の手を優しく掴み、そっと自分から引き離した。

「俺は生きる。で、優勝して見せますよ!穢璃さんのために!」
「山田さん……」
「じゃ、行ってきます!」

山田はライトバンのドアを開け、見送る穢璃に手を振って、外へと出た。

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そして二日前。
山田が戻った時、穢璃の姿は無かった。
ライトバンのロックは解除され、中には何者かが入った形跡があった。ライトバンの内部も、特に持ち去られたものは無かったが、明らかに荒らされた形跡があった。
間違いなく、穢璃は山田が澄診を探しに外に出ている間に、何者かに連れ去られたのである。
山田の怒りは激しかった。二人は確実に今回の対戦相手、どちらかの犠牲になったのだ。
二人の生死は今も分からない。

(穢璃さんの話を聞いた限り……どちらもプロ意識の高い魔人。無暗な危害は加えないと思いたいけど)
(けど、二人に何かしていたら、ただじゃおかない……!)

闘志を燃やし、山田は鍾乳洞の内部を進む。
鍾乳洞内は冷え冷えとした空気である。ところどころ、天井や壁に電灯が取り付けられているため、内部は比較的明るい。

(まずは対戦相手の場所を探し当てないとな……)
(半径500m以内には、まだいないか)


山田の魔人能力『目ッケ!(アイスパイ!アイ)』は、半径500m以内にいる魔人を壁などの遮蔽物を透過し、シルエットとして見る事ができる能力である。

現在、彼は常に魔人能力を発動し、索敵を行いながら慎重に進んでいた。

(まあ、まだ開始地点からさほど進んでいないし、この鍾乳洞内は結構広いから、そう簡単には……)

「いるよ、そばに、一番近く~♪」

その時。
突如として、山田の耳に歌声が聞こえてきた。
遠くから、微かな……、しかし確かな歌声が。

「なっ……」

驚き、歩みを止める山田。

「今は、ただそれだけでいいから~♪」

更に歌声は続く。
歌声は男のもの……。これは一回戦の映像で見た、ある男の声と一致する。

(偽原光義か。何のつもりだ。歌なんか歌って)

「ウォウーウー、ウォウーウーー~~♪」

歌の調子はフォークソング風である。それが絶え間なく、山田の耳へ聞こえてくる。

(聞いたことのない歌だな……)

山田が知らないのも無理はない。その歌は、2013年、関西地方でのみ公開されたとある映画の主題歌なのだ。
だが、その映画が完全に封印されたことによって、その主題歌も知る人のいない、幻の曲となってしまった。
だたし、その歌は特別な歌ではい。あくまでただの歌である。
(いや、むしろ良曲である。そしてそれがあの映画の主題歌になってしまったことが、また悲劇の一つであったのだが……、これは現在の本筋とは関係ない話である)
当然、魔人能力とは何の関係もない、特殊な能力など無い歌なのだが……。

「僕らにどんな世界が、道なき道の先に待ってる~♪」

(下手くそだな、こいつ)

聞こえてくる歌は、元の歌を知らなくても音程がかなり外れている、と分かるものであった。
はっきり言って、音痴と言えるものである。


(ちっ、俺はおっさんの歌を聞きにここに来たわけじゃない)

(しかもこんなところまで聞こえるってことは、わざわざマイクを使って歌ってやがるな)

絶え間なく響く、調子はずれな歌に神経を尖らせる山田。
しかし、すぐに気を取り直した。

(落ち着け……、これは俺の心を乱す、単純な奴の作戦かもしれない)
(事前に澄診ちゃんと穢璃さんがいなくなった原因は、おそらく偽原光義、奴の方の可能性が高い)

もう片方の可能性も無論あるが、何しろそちらはアキカンである。
アキカンとはいえ、魔人であり、只者でないことは承知していたが、女性二人をさらうのは難しいと思われた。

(ここで冷静さを失ったら相手の思う壺。目的は分からないけど、俺も勝てる作戦を持って、今ここに来ている)
(わざわざ自分のいる場所を教えてくれるなら好都合だ。ギリギリのところまで接近して……作戦通り仕留める!)

心を決め、山田は手に持ったライフルをしっかりと握り、歌が聞こえる方向へと足を進めた。

(方角的には……、中央、最深部の地底湖の方向か?確かに下の方から聞こえてくる)
(ここからなら、このまままっすぐいけるな)

(待ってろよ、歌の下手なおっさん……)


山田はゆっくりと、慎重に進んでいく。

「向かい風と知っていながら~、それでも進む理由がある~♪」

聞こえる歌は、ちょうどサビの部分に差し掛かっていた。

*********************************************

4日前。まだ澄診が姿を消す前のこと――。

「で、今回の武器だけど、試合場が決まった時から、もう既にこれだ!ってものがあるの」

兎賀笈澄診は明るい声で、前方に座る山田と穢璃に語りかける、
そして、机の下から、大きななライフル銃を取り出した。

「ジャジャーーン!!50口径!携帯用、対物狙撃銃!またの名をアンチマテリアルライフル!」

「お、おおおー……」

「これはまた……凄い装備を用意しましたね」

澄診はおもむろにライフルを構え、二人の前へ見せつけながら、語りかける。

「これを選んだ理由は、まず今回の場所だねー。例によって大会主催者から見取り図を入手してるんだけど」

澄診はライフルを置き、机の上に鍾乳洞の見取り図を広げた。

「この鍾乳洞、あっちこっちに細かい道があって結構入り組んでる。内部もかなーーり広い」
「鍾乳洞にはいくつかの入り口があって、選手はそれぞれ別の出入り口に配置される。んで、内部は巨大な地底湖の空洞部分を中心にして、蜘蛛の巣のように周囲に道が張り巡らされてるってわけ」

山田と穢璃も見取り図を注視する。

「こんな鍾乳洞が国内にあるんですね……」
「うん……、まあ流石に自然の物だけじゃなくて、今回の大会用に内部を人工的に改造してるねー。大会主催者達は結構派手な演出好きみたいだし」
「さて、んで、実際の戦いになった時だけど、こういう場所だと、山田君の能力が有利だよねー。何しろ、基本的に一方通行の道ばかり。接敵する際には大体正面からになる」

澄診は見取り図に書かれた道を指でなぞりながら、二人へ向けて解説する。

「成程……、俺の能力なら、接敵する大分前に、相手が近づいてくることを悟れるな」
「そういうこと。まあ内部には抜け道も結構あるから、回り込まれちゃったら、後ろから接近される可能性もあるけど。そこさえ慎重に気を付けて進めば、まず先に敵を察知できるのは山田君!」
「ふむ……、鍾乳洞内の構成は、よく頭に叩き込んでおかないとな」
「で、敵の接近を察知できた時に、確実に先手を取れるのが……」
「そいつってわけか!」
「そういうこと!ほいっ」

澄診はライフルを手にして、山田へと投げ渡す。
山田もそれをキャッチし、感触をしっかりと確かめた。

「へへっ!自衛隊時代にこれの扱いも習得済みですよ」
「そう、威力は折り紙付き!遠距離から確実に敵を狙撃でき、一発で確実に敵を仕留められる高性能!バキューン!」
「それどころか、威力がありすぎて、敵の頭が吹き飛んじゃいますよ……」

指で鉄砲の形を作り、狙い撃ちの姿勢を取る穢璃へ、冷静な突っ込みを入れる澄診であった。


「まあちょっと派手な装備ですよね。敵の先手を打って、狙い撃つなら、普通の対人用スナイパーライフルでもいいんじゃないかな?」
「これだと、少し味気ない気もするな」

「まあ、私としても一発でドン!終了~というのは、ちょっと見ていて物足りないものがあるけどね」

山田と澄診は一瞬目を合わせる。
しかし、一呼吸置いた後、すぐに真剣な顔に戻る。

「けど、今回の敵は二人とも手ごわそうだからね。一本道と言っても、洞窟内部には遮蔽物も結構あるし。そこに隠れられて下手な手を打たれても困る」
「また今回はアキカンなんて小柄な相手もいるからねー。天井に抜け穴があって、上からくるぞ!気をつけろ!なんて可能性もあるしー」
「けど、こいつならどんな遮蔽物があろうと、それを貫通してズガ――ン!!アキカンがどこに潜もうとも、隠れてる場所ごとドカーン!」
「成程、俺の能力なら相手がどこに隠れていようと関係ない」
「透過して、敵の居場所を見抜いた上で、撃ち抜く……というのが今回のプランですね」
「そういうことっ!」

穢璃は、えへん、と胸を張る。
戦場と山田の能力、そして敵の特徴も踏まえた上での武器の選択とプランに対し、他の二人も納得してうなずいた。

「さて、後の懸念は相手の能力だね。一回戦で大体は把握しているけど、二人とも詳細な仕様については映像を見ただけだとちょっとわかんないねー」
「片方は映像を見せることで相手の精神に影響を及ぼす能力。もう片方はアキカンを大量に召喚する能力……でしょうか」

「これだけだと、射程範囲や発動条件などの具体的な内容は不明ですね」


ディスプレイに今回の対戦相手の一回戦の映像が表示される。
三人とも、それを食い入るように見つめていた。

「まあ、そこは私が調べ出してきてあげるよー。」
「注意してくださいよ、澄診ちゃん」
「危なくなったら、深追いはせず、必ずすぐ連絡してください」
「あはは、心配症だなあ、二人とも。大丈夫、私だって素人じゃないし、たった三秒間、相手を直接見るだけでいいんだもの」
「両方とも注意深い性格みたいだけど、まあ四日間もあれば何とか探し出せるかな」
「私も経歴と一緒に、彼らの居場所についても調査してみます」
「ははは、まあ、私が見つけられなかった時はお願いね」

澄診は立ち上がり、出口へと向かっていく。

「じゃあ、私は行ってくるね。明日もまたこの時間に。戻れないときは事前に連絡するね」
「いってらっしゃい、澄診ちゃん」
「気を付けて」
「はっはっはっ、言っとくけど、二人とも私がいない間に、くれぐれも変なことするなよー!!」

歪つに笑い、山田と穢璃へクギを指す澄診。

「なっ……」

「そ、そんなこと……しないですよ!」

驚き、顔を赤らめる、山田と穢璃であった。

「はっはっはー。ではー」


澄診はドアを開け、外へと出て行った。

*********************************************

(そして澄診ちゃんは戻ってこなかった……。その後、穢璃さんも)
(けど、二人が教えてくれた情報と、今回の作戦は完璧だ)

ゆっくりと、坂を下っていく山田。
中央の地底湖までの距離が、次第に近づいていく。

(二人の想いの為にも……俺は勝つ。そして、二人を取り戻してみせる)

そして、曲り角の前に差しかかった時だった。

(見えた!)

山田の目に、人型の赤いシルエットが映った、

彼の能力、『目ッケ!(アイスパイ!アイ)』が敵を捉えたのだ。






(この壁を透過した500m先……、ちょうど地底湖の前ぐらいか?)
(じっと動かないな……。特に武器も持っていないみたいだし)

「だから友よ、老いてく、為だけに生きるのは、まだ、早いだろう~~♪」

(歌だけは、まだ聞こえてくるけど……)

山田が歩みを進める間にも歌はずっと続いていた。その歌の方向へと山田は進んできたのである。
既に数ループ、同じ歌を歌い続けていたが、一向に歌が上手くなる様子は無かった。

(よく声が続くもんだ……。しかしどういうつもりだ?まさか俺は、誘われているのか?)

容易に敵の居場所を察知し、索敵範囲内まで接近できたこの状況に対し、山田は少し違和感を覚えていた、

(相手も俺の能力が、敵の位置を把握できるものであることは一回戦を見て知っているだろう)
(だから、逃げ隠れしてもあまり意味がない、と思ってるのかもしれないけど)

果たしてこのまま進んで、奴を撃つべきか? 山田の心には迷いが生じていた。
また、戦場には今シルエットが見えている偽原以外にも、アキカン……否、オーウェン・ハワードがいる。
そちらに対しても警戒しつつ、偽原への対処を決めねばならない。

(せめてもう一人の位置も分かれば……ん?)

その時、山田の視界の中にもう一つのシルエットが見えた。
決して見間違うはずもないシルエット。約5cmの円筒サイズ……。
もう一人の対戦相手、アキカンの姿を持つ男。オーウェン・ハワードである。
そしてアキカンのシルエットは、山田とは反対側の方向から偽原のシルエットへと近づいていた。

(そうか、俺だけじゃない。アキカンの奴だって、あの歌から偽原の居場所を察知して、近づいて行ったんだ)
(ここで二人が接触すれば、戦いになるかもしれない。そうすれば、その隙を突くことも)

山田は固唾を飲んで、二つのシルエットの動向を見守った。
だが、アキカンのシルエットは、偽原のシルエットの数十m程前で止まった。
そして、それきり二つのシルエットは動かなくなった。

(どういう事だ……? アキカンは偽原と戦うつもりはないのか?)
(シルエットを見る限り、パームピストルで攻撃した様子もない。完全に二人とも止まっている)
(まさか……、一回戦の時みたいに、二人は既に手を結ぶ約束をしているのか?)

偽原光義は、一回戦、別の対戦相手と事前に協力関係を結ぶことで、もう一人の対戦相手に自分の能力をかけることに成功している。
その情報が、山田を更なる疑念へと誘う。

(くそっ、しばらく待っても、どちらも動く気配は無いな)

「夜の風が 記憶を掻き乱す~~♪」

(歌だけは、まだ続いている……)

未だ続く偽原の音痴な歌が山田の神経を更に苛立たせた。

(落ち着け、俺。もう対戦相手の位置は確実に把握できている。これは想定していた中で一番有利な状態)
(後はプラン通り……、相手が察知できない位置から、確実にこいつをお見舞いするだけだ)

山田は手の中のアンチマテリアルライフルをしっかりと握る。
そして、澄診と穢璃、二人の顔を思い浮かべる。

(二人の為にも、勝たないといけない……)
(よし!)

山田は意を決し、二つのシルエットが浮かぶ方角へと歩みを進めた。
そして地底湖へ続く直線の道を、音を殺しながら進む。そして地底湖の約百数十メートル程手前で、歩みを止める。

(見えた、地底湖だ)
(偽原の方は……手前の柱に寄りかかっているのか。ここからでは顔は見えないな。シルエットも後ろ姿だけだ)
(アキカンは……更に向かい側の道の中か。相当狭いところにいるな)
(けど、奴らの場所からは、角度的に俺の位置はまず見えない)

山田は前方の入り口を通じて、内部の様子を伺う。
内部は中央の大きな地底湖とその周囲の地面、そしていくつか並び立つ柱によって構成されている。
偽原のシルエットは、その一本の柱の近くにあった。

(よし、まず偽原の方を狙い撃つ。それから、アキカンだ)
(頭を撃ち抜けば確実だけど、奴には聞きたいこともある。足を狙おう)

山田は更に少し歩を進め、偽原がいる柱を射角に捉えられる位置に出た。
そして、手に持った対物狙撃ライフルを、構える。

(こいつの威力なら、柱ごと貫通して、足に風穴を開けられる)
(その次にアキカンいる穴を狙い撃つ。それでジエンドだ)

(偽原の奴は、その後……、二人の事を聞き出す。俺のナイフで抉りながら……な)
(たっぷり苦しめて、殺してやる……)

山田は集中力を高め、偽原の足へ狙いを向ける。
山田の能力を使用すれば、スコープも必要ない。シルエットで見える相手の足を一発狙い撃つだけである。

(確実に……決めるっ!)

そして引き金を引く。
轟音と共に、12.7×99mm弾が飛んでいく。



ドォーン



そして、更に轟音。
弾は柱を貫通し、確実に標的の脚へと当たった。

(命中……!)

そして山田の眼は、シルエットが倒れ込む姿を捉える。
能力を解除し、柱から倒れ込む人影を凝視する。
そして山田の目に、シルエットではない、今自分が撃ち抜いた標的の「顔」が見えた。

「えっ……」
「穢璃……さん……?」

その顔は……。
ロングヘアーを刈られていたが、まぎれもなく彼が探していた相手の一人、兎賀笈穢璃のものだった。



ザシュッ、ザシュッ



そして。
山田に、自分の両足の腱を斬られる静かな感触が走った。
驚き、振り向いたその先には……。
今、自分が狙い撃ったと思ったはずの男の顔、偽原光義が映っていた。

「いつかそっと、言いかけた、夢の続きを、聞かせてよ~~♪」

歌は、穢璃が倒れると同時に鳴りやんだ。

*********************************************

「おっはー。山田君」
「お、お前は偽原……なんで……」

山田は偽原光義の左腕によって、首を羽交い絞めされる格好になっていた。
両脚の腱を切られているため、既に立つ力もない。偽原のおかげでやっと立てる状態である。
更にその後、右腕にもナイフを突き立てられたため、もはやライフルを握る力も無い。
地面にライフルが落ちる。

「ん、別にもう解説の必要もないだろう。実に単純なトリックだ」
「お前がシルエットとして見ていたのは俺ではなく、あの女、兎賀笈穢璃。そして、お前は別人のシルエットをその目で追って向かっていった」
「俺はその隙に、別の道から大回りして、お前の後方に回り込む。そして、お前が接近してライフルで狙い撃つのを決めたあたりで、後ろからこっそりと俺も近づいていき…」

偽原は右手に握ったナイフをプラプラと手首で振り回す。

「お前が銃を撃って、やったー!となった瞬間、スパアッ、だ」
「な、何を言ってやがる……!大体、なんで穢璃さんが試合場にいるんだ!」
「この試合場には参加選手以外、誰もいないっていう話じゃ……」
「はあ?それは大会側が、試合に無関係な人間を試合場に入れることはないっていうルールだろう」
「参加者が、『事前に試合場に立ち入ることも』、『別の人間をあらかじめ立ち入らせておくことも』、特に禁じられてはいないぜ」「なっ……」
「まあ、反則ギリギリの手ではあるがね」

つまり偽原が仕掛けた手はこうだ。

あらかじめ試合場に立ち入り、兎賀笈穢璃(薬で眠らせている)を試合場中央の地底湖の柱に固定しておく。
この時、固定するのは、山田の開始位置とは反対側の方向である。これで高確率で山田は顔を見ない状態で、穢璃を狙撃することになる。
更に、事前に録音しておいた、あの映画の主題歌を吹き込んだレコーダーを穢璃の首に下げておく。
これは遠隔操作が可能な代物で、開始と同時に手元のスイッチを入れることで、歌を響かせることができる。ボリュームを最大にすれば鍾乳洞中に歌を届かせることもできる。

この歌で、山田を中央へと誘導し、そして自分は別方向から迂回して、山田の後方へと接近していったのである。
なお、事前に山田が通りそうな道には、随所に小型の監視カメラが仕掛けられていた。
(カメラが仕掛けられていたのは、道を照らしていた電灯の内部である)
これで山田の動きを随時把握していた偽原は、山田の能力射程である500mには入らずに、山田を追えたのである。

「ぐ、そんな汚いこと……!」
「ま、ルールの盲点を見抜けなかったお前さんの負けってことだ。しかし、汚いはないな」
「ちゃんと事前に主催者側に確認は取ったぞ?渋い顔はされたがな……」
「とはいえ、一回戦にはコンビで参加してた奴や、お料理対決をしていた奴だっていただろう?」
「あ……!」
「天が認める限り、この大会はなんでもアリってことだ。あんた、意外とルールやマナーにこだわるんだな」
「ちく……しょう……」

偽原による罠の解説に、力が抜ける山田。

「さて、山田君……、いや、本名の、翅津里淀輝(はねつりでんき)と呼んだ方がいいかな?」
「な、なんであんた……俺の本名まで……。それにさっきの作戦、俺の能力の詳細を知らなきゃ、できるはずが……」

そこまで言って、山田は息を呑んだ。

「まさか、澄診ちゃんか、穢璃さんが……。お前、二人に何を……」
「ああ、それはな……」

*********************************************

三日前。

「見つけた……偽原光義」

人気のない、とある街角。そこで、兎賀笈澄診は自分が分析すべき相手、偽原光義の姿を捉えた。

(こんなあっさり見つかるなんてね。元魔人公安の割に意外と警戒心が薄いのかしら)
(さて、後は……あいつの能力を見せてもらうだけ)

そして澄診はやや離れた場所から、物陰に隠れ、眼鏡越しに偽原を凝視した。

澄診の魔人能力「フォーアイズアナライズ」
それは魔人を3秒間凝視することで、その能力を……完全……に……。

(えっ)
(な、なに……これは……)
(あ、ああああああっ……)


ドスッ。

澄診の思考が混沌に陥った瞬間。
彼女の意識はブラックアウトした。
その近くに、偽原がいる。
澄診が叫び声を上げる前に、拳を腹に当てて昏倒させたのだ。

澄診の魔人能力「フォーアイズアナライズ」
それは魔人を3秒間凝視することで、その能力を『完全』に把握する能力である。
つまり相手の魔人能力に関するすべての情報を、半ば強制的に脳内へとインプットしてしまう、
勿論、インプットするのはあくまで情報としての魔人能力である。仮に即死能力を分析しても、澄診が死ぬわけではない。
ただし、どのような手段で即死させるのか、その全ての詳細を情報として、理解できる。
例えば、それが毒物による能力であれば、その毒の特性に関する『知識としての』情報が頭の中に流れ込んでくるだけである。

だが、今回彼女が分析した能力、「ファントムルージュ・オンデマンド」
これは対象に3秒間映像を視聴させることで、相手に世界最狂の映画、ファントムルージュの全場面を体感させる、というものである。
そして、ファントムルージュの毒性とは、すなわちその映像、その内容、その背景にある情報全てである。
「ファントムルージュ・オンデマンド」を3秒間の凝視で分析(アナライズ)し、ファントムルージュの『知識』を得た彼女は。
実質、「ファントムルージュ・オンデマンド」そのものを受けたに等しい衝撃を、その脳内に受けた。

(おっと、まだ叫び声を上げるのは早いぞ)
(本当のお楽しみは、これからだ)

偽原は彼女をそっと、抱きかかえ、そのまま路地裏へと運びこんでいった。

*********************************************

「う、うう、あうううーー」

暗闇の一室。
わずかな光のみが部屋を照らす。
その中で、女のうめき声が響く。

――――なんだ?

暗闇から、男の声が響く。

――――お前の仲間の能力は、なんだ?

「い、いや、あああっ……」

――――質問に答えろ。

「ひいいいっ……!」

注射針が、女の腕に突き付けられる。
女は全身を震わせる。

――――答えなければ、ずっとこの映像が続く……。

「モ、モウヤメデ……。モウミタクナイ……」

部屋を照らすわずかな明かりは、女と男の前方にあるTVからのものである。
そして、そこに映し出される映像こそは、ファントムルージュ。その内容は、筆舌に尽くしがたい、人間の精神を破壊する、世界史上最悪の映画である。
女、兎賀笈澄診は今、延々とその映像を見せ続けられていた。

身体は椅子に縛られた形で固定され、身動き一つできない。
耳にはTVと接続されたイヤホンがガッチリと貼り付き、一字一句、ファントムルージュから流れる言葉を聞き逃すことはできない。
両目は洗濯バサミによって吊り上げられ、ファントムルージュの映像を、瞬き一つも見逃すことは許されない。
(目が乾かぬよう、ポタポタと定期的に目薬が差されている)
意識を飛ばそうにも、たびたび腕に差し込まれる注射(中には非合法の薬物が入っている)によって、強制的に意識を覚醒させられる。
一分一秒、絶対に意識を逸らすことなく、目の前のファントムルージュをただ見せ続けられる。それが、今の澄診に課せられた拷問であった。

――――さあ、答えろ。お前の知るすべてを

女の耳元で質問を繰り返すのは、当然、この拷問の仕掛け人、偽原光義である。
眼前のTVに映る映像は、彼自身が所有するファントムルージュ、オリジナル版DVDの映像である。
それを絶え間なく標的に見せ続ける……、ファントムルージュが見せる悪夢は、一度見ただけでも人間の精神を粉々にするに十分なものであるが、繰り返し見続けることによって、粉々になった精神は、更にガリガリと砥石で削られるかのように摩耗していく。
真につまらない映画とは、何度見ても慣れることは無い。見れば見るほど、そのつまらなさに、もう見たくない、もう嫌だ、もう生きたくないという苦痛を倍増させていく。


エンドレス・ファントムルージュ


それは、地獄の業火すらぬるま湯になるであろう、偽原が考案した究極の拷問方法であった。
その恐怖を言葉で表現する方法を、筆者は持たないが、あえて例えるならば、脳髄を麺棒でかき回される不快感と、心臓を何度も鷲掴みにされる激痛を、同時に味あわせられる感覚、とでも言おうか。
そして、その衝撃は、常人を超える精神力を持つ澄診であっても、まったく耐えられるものではなかった。

「や、山田の能力は……『目ッケ』。な、内容は……」

――――では、お前のアジトは?お前たちの仲間の情報は?

「そ、それは……」

エンドレス・ファントムルージュのショックにより、心神耗弱状態に陥った澄診は、こうして自分の知る情報を全て吐き出してしまったのであった。

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「え、エンドレス・ファントムルージュだと……、なんだそりゃあ」
「今のお前では想像もできんだろうな……。まあ、この世の地獄だ」
「て、てめえ、よくもそんなものに澄診ちゃんを……」
「飛び込んできたのは、あの女の方だ。だが、あれは良くもった方だ。3ループ目の終盤まで情報を吐かなかったからな。お前はあの女を褒めてやっていいぞ」
「外道が……。澄診ちゃんは、澄診ちゃんはそれからどうしたんだ」
「さあな。情報を聞き出した後は用済みだったからな。試合が始まる前には、監禁した部屋を抜け出せるようにしておいた」
「今頃は……運が良ければ警察に保護されてるんじゃないか?」

偽原が言うとおり、今の彼女は警察署の留置場の中であった。
もっとも、その精神はエンドレス・ファントムルージュに深く蝕まれ、未だどこにも抜け出せることは無い……。

「で、あの女からお前の能力を聞いたときに、今回の作戦を考えたわけだが……、あの女と俺では体格が違いすぎてな。流石にこれでは入れ替わりは無理だと思ったんだが」

偽原は地底湖への出口まで、山田を羽交い絞めしたまま進んだ。
そして、内部で倒れている穢璃の方へ山田の顔を向ける。

「そこであの女だ。たまたま、あの澄診という女が持っていたお前達の写真を見てな」
「気づいたんだよ。女にしては、やたらと身長が高いな。170cm以上はある。日本人男性の平均身長並だ。そして俺とほぼ同じ身長だ」
「これなら、今回のトリックを実行できると思ったわけだ」

山田の能力は相手をシルエットとしてしか見ることができない。
ゆえに身長がほぼ同じ二人の人間が、ほぼ同じ格好をしていれば、その違いを見分けることができない欠点があった。
彼の透過は遮蔽物に対してのみであり、着ている服までは透過しないのである。ゆえに体型の違いは厚手のコートによってごまかされてしまっていた。
(参考例:要はこう見える→http://kage-design.com/i/ninja1.jpg)

この特性は、相手の持っている武器も見える(例えば、オーウェン・ハワードの持つパームピストルは見えていた)メリットもあるが、今回は裏目に出てしまった。

「で、お前さんが外出したところを見計らって、あの女から聞き出したパスコードで侵入し、あちらの女の方を捕まえた、というわけだ」
「骨が折れたぞ?試合前に女一人をこの鍾乳洞まで運んで、色々仕掛けを施すのは……」

「そんなことの為に穢璃さんを……。くそっ、穢璃さん……、すまない」


山田は後悔の眼差しで、倒れている穢璃を見つめる。
穢璃の足は、山田によって先ほどライフルで撃ち抜かれており、血が大量に流れていた。

「あれでは無事で済むまいな……。もっとも、このまま死んだ方がマシかもしれんが」

「なっ……、ま、まさかてめえ、穢璃さんにも、そのエンドレスなんとかって奴を……」





「ああ、心配するな。あの女からは、特に何も聞き出すことは無かったからな」
「えっ……」

一瞬、戸惑いの声を上げる山田。
その眼前に、突如ひょいっと、スマートフォンのディスプレイが突き付けられた。

「皆で仲良く鑑賞したよ」








「ヒャッハ―!ヒャッハ―!」


奇声を上げ、両手を上げて歩き回るモヒカン頭の男達。
ぐるぐると、一つの物を中心に回っている。
その中心へは、四方から、緑色の太い、ブツブツとした糸……生物の触手が伸びていた。
四肢を触手で掴まれ、天井から吊り下げられている物体……、いや、それは全裸の女性の体。
その顔はまぎれもなく、兎賀笈 穢璃――!!

「い、いやあああああーーー!!ファントムルージュゥー!ファントムゥゥ―――――!」

絶叫が響く。
その視線の先は当然、あの映画、ファントムルージュオリジナル版の映像が流れている。

「もう嫌ぁーーー!!山田さん!澄診さん!お父さーーーん!お母さーーーーん!」

はちきれんばかりの女の泣き声が、部屋中にこだまする。
その『映像』は、スマートフォンを通じて、山田の網膜へと焼付く――――!

「う、うわぁぁぁぁーーーーーーー!!穢璃さぁーーーーーーーーーん!!」











ファントムルージュ










「う、うう……、澄診ちゃん、穢璃さん……。すまねえ、すまねえ。俺は……俺はなんてものを二人に」
「こ、こんな……、こんなものを……、二人は何度も、何度も、ううっ……」

ファントムルージュ・オンデマンド。
山田の脳内に、スマートファンのディスプレイを通じて、ファントムルージュの全場面が流れ込んだ。
山田の大切な人間達が既に何度も味合わされ、精神を破壊されたという悪夢の映画。
その想像を絶する惨さに、山田の目からはとめどなく、涙が溢れる。

偽原は既に山田から手を離していた。山田は這い寄りながら、倒れている穢璃の元へ向かっていた。


「え、穢璃さん、俺は……」







パスッ

一発のプラスチック弾丸が、山田の首筋に当たる。

「ぐっ……ううっ……」

山田は少し呻き声を上げた後、やがてその動きを止めた。
山田に命中したプラスチック弾には、人間の致死量に十分達する、強力な神経毒が込められていた。
それにより、山田の苦悶の時は、一瞬にして終わったのだ。
そして、その弾丸の射手は……。

「中々面白い見世物だったメカ」

渋い声が響く。

「しかし、少々演出過多だメカね……。最初の一撃ですぐに仕留めてやればよかった、メカよ」
「こちらにも、そうせざるを得ない矜持がありましてね」

言って偽原は声のする方向を確かめる。

(天井か……)

地底湖内部の方へ目を向けると、良く見れば天井には小型の穴が点々と、随所に開いているのが見えた。

(成程、準備を整えていたのは俺だけではなかったか。しかし俺がここにいた時にはあんな穴は無かった)
(俺がここに仕掛けをしていたのを見ていたな。それで、ここが戦場になることを見越して、天井にあらかじめ穴をあけていたか)
(だが、内部の天井から、今俺のいる位置は狙えない。しばらくここで待機して様子を見……)


ドドドドドドドド……

偽原の後方から轟音が響く。
振り向けば、背後から数百、いや数千のアキカンが滝のように絶え間なく降り注いでした。

「お前は、既に俺のテリトリー内だメカ」

(ちいっ)

無数のアキカンは瞬く間に偽原の背後の道を塞ぎ、さらに怒涛の勢いで、偽原の方へと流れ込んできた。
思わず地底湖内部側へと飛び込む偽原。

「既にチェックメイト寸前メカよ」

見れば、地底湖の別の出入り口からも、やはり大量のアキカンが、ドドドドド……と、まるで工場排水のように、勢いよく吐き出されていた。

(既に逃げ場は塞がれている、という事か)
(奴の能力、まさかここまで大規模な能力だったとはな……。こいつは少し予想外だ)

『アキカン招来』、それがアキカンとなった、オーウェン・ハワードの能力である。
能力内容は非常に単純であり、半径100m内の任意の場所に1~1000個のアキカンを召喚する、というものである。
だが、この能力、特筆すべきは、ほぼ断続することなく、アキカンの連続招来が可能である点。
そして召喚できるアキカンの対象は世界中……すなわちほぼ無尽蔵な点である。

オーウェンはこの能力で、地底湖周囲にある道の全てをアキカンで埋め、偽原を追いつめていた。
地底湖の空洞地帯の半径も、ほぼ100mであった点も、オーウェンにに有利に働いていた。

(だが、俺も今更逃げる気はない……この場で決着をつけてやる)

偽原はまず、アキカンが吐き出される道から離れ、数メートル程走った後、壁を背にしてピッタリと張り付いた。
そして、その手には先ほど山田が手にしていた、対物狙撃銃が握られている。
偽原は先ほど、咄嗟に山田が落としていたそのライフルを持ち出していたのだ。
そして、上方向へ向けて、連続で銃を撃ちだす。
連続する号砲。それにより、偽原の天井に大きな穴が開いた。

(よし、これで……)
(後はコートの中に用意した、大量のCSガス弾を天井へ連続で投げ入れて奴を燻し出す)
(そうすれば、あとは――)

その瞬間、
地底湖内部全体が、暗闇に染まる。
ブラックアウト――。

(……!!)
(既に電気系統も制圧していたか!!)

咄嗟の暗闇ではあったが、偽原の心は落ち着いている。
おそらく、オーウェンは地底湖内部へ通じる電線部分にも既に仕掛けを施していたのだろう。
だが、これは偽原にとって既に予測された事態の範囲内である。

(コートの中から、暗視スコープを……)

次の瞬間。
偽原の鼻孔を、激痛が襲った。

「ぐあっ……!がっ……!」

一体何が起こったというのか。
偽原の天井から大量のアキカンが降り注いでいた。
だが、それはただのアキカンではない。
そのアキカンにはこうラベルが貼られていた。

"Surstromming"

それは世界最臭のアキカン、シュールストレミングのアキカンであった。
それをオーウェンは世界中から大量に召喚したのだ。
オーウェンの能力、アキカン招来は、アキカンの中身までは召喚できない、しかしアキカンにこびり付いた臭いだけは、そのまま運ばれて召喚される。
地底湖内部に、あっという間に強烈な生物の腐敗臭が立ちこめた。
まして、アキカンの直下にいた、偽原にはひとたまりもない――!
呻き声を上げ、その場にうずくまる偽原。

(終わりだ……メカ)

オーウェンは天井からスッと降り立つ
その顔にはアキカンサイズの小型暗視スコープと小型防毒マスクが身に着けられていた。

(トドメは一瞬で、確実に決める……メカ)

アキカンは締めの一撃を天井ではなく、暗闇に乗じて偽原の近くから一撃で仕留める方策を取った。
偽原が蹲り、天井からの攻撃の回避に集中していること。
更にシュールストレミングの臭いの苦痛により、予想外の動きを取るやもしれないことから、天井からでは確実な狙いはつけられない。
なので、暗闇とこの臭いによる混乱に乗じて、着実に接近して叩く……。



カッ――――



突如、
偽原の背後の壁が、明るく照らされた。
光が、オーウェンの前方に出現する。
偽原へ狙いをつけるところだった、オーウェンの前方を照らす光。
それは――。


(あれ……は……)











ファントムルージュ











パスッ。


パームピストルの銃声が響き、その後、完全な静寂が辺りを支配した。


*********************************************

偽原光義は立ち上がった。
地底湖内部の電灯はまだ消えており、辺りは薄暗い。
唯一の明かりは、少し離れたところで倒れていた、兎賀笈 穢璃の体から自分の背後へと伸びている一筋の光。
正確には、穢璃のコート内に仕込んでいた小型プロジェクターから発せられた光である。
それが偽原の背後に一枚の画像を投影していた。

(ぐうっ……、やっと臭いにも少し慣れたか……)

辺りにはまだシュールストレミングの腐敗臭が立ち込めている。
思わず立ちくらみを起こしそうになるが、偽原は何とか気を取り直す。

(だが、ギリギリでうまくもう一つの仕掛けを動かすことができていたようだ)

偽原は強烈な腐敗臭による苦痛で眩暈を起こしながらも、穢璃に仕掛けていたプロジェクターのスイッチを入れ、後はひたすらファントムルージュという思念だけを周囲にばらまいた。
オーウェンが仕掛けた、暗闇を利用する、という作戦は、実は偽原も事前に考えていたことだった。
穢璃のコート内にプロジェクターあらかじめを仕掛けておき、周囲をブラックアウトさせて、そこから投影した画像を見せる。
オーウェン相手に思わぬ苦戦を強いられた時に、打てる手としてあらかじめ用意していた算段である。
自らも考えていた、暗闇による作戦はともかく、シュールストレミングは完全に予想の外だったが、オーウェンが自分に視線を向けた瞬間、咄嗟にこのトラップが発動できたのは、まさに幸運としか言いようがなかった。

(幸運、だったのはこの画像を入手できたことも、だな)

偽原は振りむき、自分の背後の壁に投影されている画像を見る。
それは、十数人の軍服姿の男達が、笑顔で敬礼姿勢を取った写真であった。
右上に、英語でこのような文字が書かれていた。

『Blaze Hero,Owen Howard's Last Sally 2015 Year』

紅蓮の英雄、オーウェン・ハワード、最後の出撃2015年。
それはバンデミックによって世界中に災厄を撒き散らす寸前となった関東を灰燼と化すため、アメリカ政府の要請によって、まだ人であったオーウェンが今まさに出撃しようとする直前。
オーウェンが自分の部下たちと共に撮った最後の写真であった。
中央に座っている精悍な男こそ、かつてアメリカ陸軍の第75レンジャー連隊、魔人部隊長、紅蓮の英雄と恐れられたオーウェン・ハワードその人である。

兎賀笈 穢璃はオーウェン・ハワードの情報を調べる時、アメリカ政府のサーバから、この写真のデータを入手していた。
彼女たちの陣営にとっては、オーウェンの経歴を知る上での参考資料の一つに過ぎなかったが、穢璃をさらった時、たまたま彼女の持つPCからこのデータを見た偽原は、今回の策の一つとして、この写真を使用することを思いついたのだった。

「もう一度、人の姿に戻ること。それがあなたがこの大会にかけた願い」
「あなたが人の姿を捨てるきっかけとなった最後の任務、英雄としての、最後の想い出の姿」
「そのたった一つの妄執が、あなたにわずかな隙を作らせた……」

偽原は自分の眼前で倒れるオーウェン・ハワードの姿を見る。
彼の姿は、背後に映る凛凛しい男の姿ではなく、アキカンのままであった。
彼がアキカンとなったのは、世界を救うため、人であった時の、己の魔人能力を使った制約によるもの。
そして、魔人が特殊能力の制約で失ったものは、死亡しても解除されないものがほとんどである。(※1)
死しても尚解けないアキカンという呪い……、だからこそ、彼はどうしても再び人の姿へ戻ることに拘った。

オーウェンの頭部には、自身のパームピストルの銃口が突き付けられている。
彼は、ファントムルージュ・オンデマンドを喰らった瞬間、その映像のおぞましさ、この世のものに非ざる恐怖を開始数分で理解した。
そして、見苦しい己の姿を晒す前に、自らの手で即自決することを選んだのだった。
ファントムルージュを前にし、ためらうことなく自分の死を選んだ精神の高潔さ。
アキカンの姿で死んだ目の前にいる漢は、しかしまぎれもなく英雄の魂を持った人間であった。

「見事でしたよ。オーウェン・ハワード。それだけが、おそらくファントムルージュに抗うための、人に残された唯一の手でしょうね」

偽原は、自然と敬礼の姿勢を取っていた。
それは彼が公安を退職してからの7年間、一度も取ることが無かった姿勢。
それが、ファントムルージュに打ち勝つことはできずとも――。

見事に人として抗ってみせた、目の前の英雄に対する彼の最大限の敬意であった。









二回戦、終了――。

*********************************************

※1魔人の能力の制約が死亡で解除されないのは、ダンゲロスのベーシックルールにも記述されていることです。
(ベーシックルール2.1、「状態異常死亡」より。
参考URL:http://www46.atwiki.jp/dhrule21/pages/19.html#id_8f6b6d59)

ちなみに、ベーシックルールを使ったダンゲロス本戦形式キャンペーンが6月に開催予定!キャラ募集開始は、最速で6月2日!
ルールとか全然分からない!という人も大丈夫。参加はキャラクターを適当に作って投稿するだけでOK!
後はキャンペーンのメインGK(ゲームを管理する人)に相談すれば、ルールに沿ったキャラクターが誰でも作成可能!
さあ、これを読んだ貴方も今すぐダンゲロスに参加しよう!








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