性懲りも無く蘇りし矢塚一夜SS(第一回戦)

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第一回戦第六試合 性懲りも無く蘇りし矢塚一夜

名前 魔人能力
小宅麗智奈 リアライズフォトグラフ
真野風火水土 イデアの金貨
性懲りも無く蘇りし矢塚一夜 インスタント・テング・ポータル・ジツ

採用する幕間SS
なし

試合内容

「ここが第一回戦の戦場か…結構賑やかな祭りやねんな」

一夜が「第一回戦 第六試合 3番ゲート」と書かれたドアを開けると、そこは
明るく賑やかで、そして夏の終わりを思わせるどこか寂しげな空気の漂う
夏祭りの会場へと繋がっていた。

一夜が会場の中に入りドアを閉めると
道の真ん中にポツンと置かれた異様なドアは
そこに何も無かったかのように突然姿を消した

「戦場なんだからもっと作りもんっぽいのかと思っとったけど
普通に本当のお祭りって感じやな、なんかテンション上がって来たぜ!」

一夜はおもむろに左手を横に突き出し水色のポータルをその場に作り出すと
祭りの持つ独特の雰囲気に乗せられ、戦いの事など
忘れてしまったかのようにいきなり大はしゃぎし始めた。

予め主催者側からアキカン達の扱いについて
好きにして良いと言われていた一夜は
屋台の食べ物を片っ端から略奪しながら辺りを探索する

「ひ、酷いメカ!ちゃんとお金を払うメカ!」

「ああ?なんやお前アキカンの癖に生意気やぞ!
だいたいここは元々今回の大会の会場で、お前らは
勝手にここに来て、勝手に屋台とか乗っ取っただけやんか!」

「う、それを言われるとちょっと返す言葉が無いメカ…」

「それに俺が優勝したら賞金で食ったモンの金くらい倍返しにして払ってやっから安心しろ」
(大会が終わった後にここに来る方法があるのかよう分からんけどな!)

「はあ、分かったメカ…」
(こいつ絶対に優勝しそうにないメカ…)


ターンッ!――――――

一夜がすっかり祭りを満喫していると突如、何かが破裂するような音が鳴り響く。
その音に驚いた一夜は身を屈めホルスターから拳銃を抜き屋台の影に隠れ
周囲をキョロキョロと見回す。

(今のは銃声!?もしかして狙われてたんか?
いやしかし、今の音はあまり近くで発砲したって感じやなかったし
着弾の音とかも聞こえんかったし恐らくは、もう二人の参加者が
既に戦闘を始めたってことか!)

一夜がそう判断し、音の発生した方を見ると数十体のアキカン達が
叫びながら石段を慌てて走り下りている姿が目に留まる

「メカァアアアアア!!」
「コワイメカア!」
「助けてメカァァアアアアアア!」
「メカアアア!?マジン!?マジンナンデ!?」

「やっぱ向こうじゃ既に戦闘が始まってるんか!
やっはー、あいつ等こっち来んくて良かった!」

一夜は少し嬉しそうにそう言うと、周囲を警戒しつつ石段を登る。
他の二人がお互い潰しあってくれれば残った一夜は
漁夫の利を頂戴できる。そしてもし二人の能力や装備を予め
確認する事が出来れば、例え二人の戦いがワンサイドゲームになり
生き残った一人が全快の状態で一夜とタイマンになった場合でも
一夜が有利に立ち回れる可能性が高い。

しかし、もし二人が一時的に休戦して一夜を優先的に攻撃し始めたら?

先ほどの発砲音から考えて恐らく二人は既に戦闘を開始してる。
二人が手を組む可能性は低いかもしれないが
それでも二対一のリスクは圧倒的である
いち早く戦況を確認しなければいけない!

時折、足を滑らしたアキカン達が上から降ってくるが一夜は
左手に持ったククリと右手に持った拳銃で殴り
的確にアキカン達を弾き返していく。

ダーンッ!――――――

「メカアアアアアアアー!!」

石段を登る途中、先ほどより発砲音が大きく聞こえ、その直後に
アキカン達の大きな悲鳴が再び響き渡る。
どうやら一夜はだいぶ二人に近づいてきたようだ

やがて石段の終わりが見えてきた所で一夜は石段の左手側の
木の陰に隠れ、慎重に先ほど音がした方を覗く

その先には神社の敷地内でも特に明るくライトアップされた盆踊り会場があった。
成程、どうやら先ほどのアキカン達の多くは盆踊りを楽しんでたようだ。
そして石段から見て左手側奥の大判焼きの屋台の脇に人影が見える。
よく見てみるとその人影と屋台の対角線上、更に左の道の真ん中にもう一つ人影が。

一夜は「いか焼」と書かれた屋台へと素早く身を隠し二人の姿を確認する。

(道の真ん中に突っ立って拳銃を構えている赤い髪の女…恐らくあれが小宅麗智奈。
んでもって大判焼きの屋台に隠れている探検家のようなナリをしたあの男が真野風火水土…
小宅は何か機械の様な物を背負ってっけどありゃなんだ?髪に隠れてよう分からんな
しっかしあんな無防備に突っ立ってっとは随分と迂闊な奴やな、もしかして
こっからこっそり撃てば一撃で仕留めれるんちゃうかな?
真野の方は屋台に隠れてよう分からんが少なくとも手には何も持ってないようやな、
小宅の様子を屋台の影からチラチラと覗き込んで反撃のチャンスを伺ってるって感じなんか?)

一夜は自分なりに出来る限り冷静に状況を分析し、おもむろに自分の隠れている屋台の
商品が「イカの姿焼き」である事を確認すると物凄く残念そうな表情をしつつも
それを一本手に取り、齧り付きながらそのまま二人の様子を眺めていた

「美しいお嬢さん、ちょっと話を聞いてくれないかね?」

真野が屋台から顔を半分出しながら小宅に向かって
話しかけると、小宅は銃口を下に向け答えた

「そうね、聞くだけなら聞いてあげるわ。但し、それで私を
油断させる事が出来るなんて甘い考えは持って無いわよね?」

小宅の返事を聞いた真野はゆっくりと屋台の影から姿を現し、
両の手のひらを小宅に向けて「武器を持ってませんよ」
といった風な動作をしてから話を始める

「君はなかなか良い銃を持っているようだね
実は私も銃の扱いにはちょっ自信があってね。
どうだい?ここは一つ銃使い同士、早撃ちの勝負でもしてみないかね?」

真野はそう言うとポケットから一枚のコインを取り出す

そして一夜はイカを頬張り、様子を伺い続けながら考える
(あいつら随分とまあ紳士的やな、相手がもし急に
騙まし討ちしてきたら一瞬であの世行きやと思うねんけどなあ)

一夜は気づいていなかったが二人は一見隙だらけではあったが
お互い相手の行動に常に注意を向け、少しでも妙な動きをするのであれば
即座に回避と反撃を行える状態だったのだ

「ルールはこうだ、このコインを私が――――」

「お断りするわ。私は銃を使うけど、腕前に特別自信がある訳じゃないの。
あんたこそ、本当に銃の腕前に自信があるならそんな下らない余興なんてせずに
さっさと自慢の銃で私を仕留めたらいいんじゃない?」

小宅は真野の言葉を遮り決闘の申し出を断った。
一夜はその言葉に、真野の飄々とした態度に対する
小宅の苛立ちのような物が含まれているように思った

「君は実に痛い所を突くね、実の所、私が銃を持ってるのは
殆どファッションでね、本当は早撃ちにほんの少し自信があるだけなんだ。
しかし、せめて最後まで話を聞いてくれないかね?
こうやって私がコインを上に弾く、そしてこのコインが――――」

真野は持っているコインを宙へと弾いた

それに対して小宅は「もう話を聞く気は無い」と意思表明するかのように
やや大げさに拳銃の銃口を上げ真野に狙いを定める
それを察知した真野は咄嗟に大判焼きの屋台の影に飛び込む!

ズダンッ!―――

小宅は真野に向けて発砲するが銃弾は外れ、後方の盆踊り会場の中心にある
太鼓のヤグラの柱に命中した。そのヤグラはかなり老朽化しており
小宅の放った銃弾により脚の一本が折れ、めきめきと音を立てながら
バランスを崩し傾いてゆく

「メカアアアアアアアア!!」

何たるマッポー的光景! 太鼓を鳴らしていたアキカン達と
ヤグラに避難していたアキカン達が悲鳴を上げながら真っ逆さまに落ちて行く!

「ウソをついて相手を自分の土俵に誘い込もうなんてとんだエセ紳士ね!」

「いや、すまなかった!君の言うとおりだ、嘘をついて
レディを騙そうとして、更に断られたのにも関わらず
しつこく誘いをかけるなんて我ながらスマートじゃなかった」

「…我ながらスマートじゃなかった……な…」

真野は屋台の裏から小宅に対して謝罪しながら
どことなく寂しそうに同じ事をもう一度呟いた。

真野は屋台の裏に完全に隠れ、小宅は銃を真野の隠れた
屋台に向けたまま慎重に、ゆっくりと屋台の方へと足を進めた

(二人は完全にお互いの事に夢中のようやな、これやったら
こっから死角になってる真野はともかく、距離の近い小宅やったら
コイツで一撃でやれそやな…)

一夜は拳銃をホルスターから取り出し
ゆっくりとハンマーを上げる

(もう少し近けりゃ、ポータルを作って
「無限の落とし穴」に放り込んでやる事もできんねんけどなあ)

一夜は静かに、しかし素早く身体を上げアイアンサイトを覗き
小宅の頭部に狙いを定め、トリガーに指をかけようとする!

しかし次の瞬間、突如小宅は一夜の方へと振り向き
素早く銃口を一夜に向けたのだ!

「んなっ!?」

小宅の行動に対して一夜は驚きの声を上げながらも
狙いを定めたままトリガーを引く!

バズンッ!!

一夜の拳銃が火を噴き鈍い音をたてる!
しかし小宅にとってこの距離で、発射位置が明確な
銃弾をかわす事などたやすい事、小宅は上体を
素早く横に傾け回避行動を取る。弾丸は小宅の横を
掠りもせずに、ただ音だけを残して飛んでいく。
そして弾丸はそのまま小宅の背後にあった射的の屋台へと向かい
景品の振りをして隠れていたアワレなアキカンの身体を貫く!

一夜は小宅が弾丸をかわし、自分に狙いを定めていることに気付くと
咄嗟に身を伏せ屋台の中へと隠れようとした。

ズダンッ!

小宅の拳銃が一夜に向けて火を噴く!
一夜は絶体絶命のピンチ!

しかし咄嗟の回避が功を奏した!
小宅の弾丸は一夜の左耳耳たぶを抉ったのみで
致命的な一撃を与える事にはならなかったのだ。
もしこの回避行動があと0.05秒以上遅れていれば一夜の頭には
今頃ゴボ天のごとく牛蒡を入れれる位の穴が開いていただろう

しかし、無防備な状態から見事な回避と反撃。
これも全て小宅の卓越した反射神経がなせる業か!?
いや、違う!小宅は決して無防備などでは無かったのだ。
小宅は実は真野と対峙したときから常に目の前の真野よりも
奇襲や漁夫の利を狙ってくるであろう三人目の参加者、一夜を警戒していたのだ

そう!つまり遮蔽物のない道の真ん中に立っていたのも
一見無防備な状態で真野との会話を続けていたのも
全ては一夜を油断させて襲い掛かった所を返り討ちにするためだったのだ

しかし小宅が卓越した動体視力と反射神経の持ち主であるとはいえ
どこから来るかも分からぬ相手を誘い出して返り討ちにする程の達人ではない。
つまり小宅は接近してきた一夜がどこから来るかを知っていたのである。

では一体どうやって?
実は一夜はある重大なミスを犯し、小宅に自らの位置を教えてしまったのだ

そのミスとは?
今にして思えばなんと愚かな行動であろうか、屋台のイカを取った事である!
周囲を常に警戒していた小宅にとって、過剰にライトアップされた
屋台のイカの姿焼きを取る一夜の行動はあまりに目立ちすぎていたのだ。

あの時イカさえ取ってなければ恐らく、小宅は一夜を油断させ誘い出す
ような行動はとらず、一夜は無謀な奇襲をしなかっただろう。
或いは一夜は完全に小宅の虚を突き、小宅を殺害できたかも知れない。

あの時イカさえ取ってなければ!!

「そんな奇襲で私を仕留めれると思ったなんて全く浅はかよね」

「いっいいい痛ってえ!!畜生!」
「メカア~メカア~!!」

耳を撃たれた一夜と流れ弾を受けたアキカンが悲痛な声を上げる

しかし一夜は心の中で盛大にのたうち回りながらも
反撃の策を考えていた。

(このイカの姿焼きのコンロの下の机部分、よく見たら骨組みの以外は
かなり薄い板で出来てるみたいやな、これなら…)

一夜は拳銃を構え屋台の机越しに
先ほど小宅がいた辺りを狙い発砲する

バズンッ!!
バズンッ!!
バズンッ!!
バズンッ!!

素早い動きで拳銃を4連射する。
一夜は、屋台の机越しに銃撃することによって
発砲場所と発射方向を読まれずに
不意を突く事が出来ると考えたのだ

(やったか?一発でも銃弾が当たっていれば恐らく
奴も満足な回避行動も出来ず、残った最後の一発で止めを刺せるはず!)

一夜は即座に拳銃を前方に向けて構えながら屋台から顔を出す。
しかしそこには小宅の姿は無い

(な、消えた!?一体どういうことだ!?…この音は!?)

一夜は耳の痛みと反撃の策に講ずるのに夢中なあまり
気付くのが遅れたがほんの1秒ほど前から
上空ではバイクのエンジン音のような唸り声が鳴り響いていたのだ

一夜が空を見上げるとそこには赤く長い髪をなびかせながら
空中を自在に飛ぶ小宅の姿があった。
小宅は机越しの一夜の銃撃を咄嗟に飛び上がり
フライトユニットで飛行する事によって回避したのだ

「な、なななんなん!?」

一夜は拳銃の最後の一発を空に向けて発砲する。しかし小宅の動きを
捉えることは出来ずに弾丸は明後日の方向へと飛んでいく

「まさかあんな所から弾が飛び出して来るとはね、
でもこれで終わりにさせてもらうわ!」

小宅の銃がまた火を噴く!

ズダンッ!
ズダンッ!
ガチッ!
ガチッ!
ガチッ!

上空からの恐るべき2発の銃弾が一夜に降り注ぐ
一発は一夜の頬を掠り、もう一発は一夜の右足の甲に当たる!
そこで小宅の拳銃が弾切れとなったのは一夜にとって
不幸中の幸いであった

「ぐあっっふぁああああああああああ!!」

一夜は痛みのあまりとてつもない悲鳴を上げつつも
右手を前にかざし赤色のポータルを作り出しそのままそこに飛び込んだ
一夜は試合開始地点に予め作っておいた水色のポータルから飛び出し
そして素早く両手を合わせポータルを消失させる

「あれ何なん!?あれホンマ何なん!?」

一夜は息を切らしながらも一先ず圧倒的不利な状況から
戦線離脱できた事にホッと肩をなでおろす

「しかし、どうしたもんか…」

拳銃のシリンダーを振り出し、空薬莢を捨てジャケットから
スピードローダーを取り出し素早くリロードを行う

(あの女の背負った機械はジェットパック的なもんやったnか…
どういう仕組みで浮いてんのやろ、バーニアとかやったら間違いなく
あの長い髪が燃えるやろうし…いやそんなんどうでもええねん)

一夜は考えをまとめながら近くの屋台から
綿菓子をふんだくって食べ始めた

(問題はあの女をどうやって仕留めたらいいか…銃弾をかわすうえに
飛び回る事も出来る…そういやあの女の特殊能力は一体?
あの機械そのもが特殊能力やったらええねんけど、まあ
多分違うんやろうなあ…そんでもってあの真野って奴も
結局どういう能力なんかよう分からんかったし…
あいつも銃使うみたいではあるけど)

考えながら再び左手で水色のポータルを作り出し
3m程離れたゴミ箱の上に赤色のポータルを作り出し
食べおわった綿菓子の箸を水色のポータルに投げ放り投げゴミ箱に入れる

(あー、よう考えたらポータルを逃亡に使わんと
相手の攻撃を返したり、こっちの弾丸を相手の背後から
飛ばしたりすれば良かったんかな…
いや、でもそもそも弾丸を回避するような奴相手に
そんな手が効くかどうか怪しかったしなあ…
あの飛び回る女はせめて何かマシンガンみたいに
連射できる銃か或いは…)

そこで一夜の思考が一瞬停止する。3秒ほど呆然とした後
一夜の頭の中に打倒小宅のアイディアが流れ込んで来る

(そうか…!こうすればあの女はなんとか倒せるかも!
そうと決まれば早よ行動せんと、もしかしたら小宅は
真野を無視して俺の方に飛んで来るかもしれんし
或いは真野が偶然こっちに来ててそれを小宅が
追っかけてきて結局二人と戦わなあかんくなる可能性だってある…)

一夜は周囲を見渡した
辺りには沢山のアキカン達がいる。
盆踊り会場付近から逃げてきた、怯えた様子のアキカンもいれば
一夜が来たときから変わらずに祭りを楽しんでいるアキカンもいる

そんな中で一夜は言った

「おい!アキカンども!命がおしけりゃ俺の言う事を聞け!!」

「メ、メカ!?」
「一体どういう事だメカ?」
「なんだテメーはメカ!なんで俺たちがお前の言う事なんか
聞かなきゃいけないんだメカ!?ふざけんなメカ!?」

一夜は反抗的なアキカンを一睨みすると
ジュースを販売している屋台から缶ジュースを5本取り出し
それを屋台の平らな部分に並べた

「……?い、一体何のつもりメカ!」

「はああ…ぬおうりゃあっ!!」

シャンッ!プッシュゥアアア

一夜は並べたジュースをククリで一閃
見事に真っ二つにしてしまった

「お前らもこうなりたいんか!?」

「ヒ、ヒィィイイイメカ!!」
「メカカカカカ…」
「言う事聞きますメカ。どうか許してメカ…」

「よしよし、言う事を聞くならお前らちょっとここに集まれ」

一夜はそう言うとアキカン達を一箇所に集め
そしてアキカン達砂や小石を詰め始めた

「こ、これは一体何メカ?」

「後で教えてやっから今は黙ってな、それとも死にたいか?」

「い、いえ、すいませんメカ」

「あ、手の空いてる奴は自分や他のアキカンに同じように砂を詰めとけよ」

2分後―――――

「よーしこんなもんでいっか、結構早よ終わったな
砂の入った奴らはここに出来るだけ固まって集まれ」

そうして30体のアキカン達が一箇所に集められた

「んじゃあ、まあお前らはこれから暫くの間ポータルをくぐって落下し
続ける事になんねんけどまあ出来るだけ地面に落ちないように上手い事
ポータルの中をくぐり続けてくれ」

一夜の言葉に対してアキカン達は意味が分からない様子である
しかし一夜はそんなアキカン達の事を気にせずに
アキカン達の集まった場所の真上に水色のポータルを表側を下にして作る
そしてアキカン達の真下、地面に向かって赤色のポータルを表側を上にして作った

すると二つのポータルが繋がる事によりアキカン達は
赤色のポータルに落下。そして上にある水色のポータルから
現れたれたアキカン達はまた赤色のポータルに落下する。
こうしてアキカン達は半永久的に落下を続ける事になる

「こぉお、わぁああ、いぃいいい、メェエエエエエ、カァアアアアアア!!」
「そんじゃ、ちょっとの間そのままよっろしっくねー」

一夜は叫び続けるアキカン達にテキトーな挨拶をしながら
木々に隠れ小宅と真野がいないか周囲を確認しながら
先ほど戦闘のあった盆踊り会場へと向かう

(これでお互いボロボロになるくらい
戦っててくれとったらええねんけどなあ)

一夜が石段の脇の坂道を木に隠れながら上りきると
盆踊り会場では先ほどと同じように真野と小宅が
屋台を遮蔽物にしながら対峙していた。

先ほどと違う点といえば今回は小宅の方も屋台に隠れ
そして小宅が構えていたのは銃ではなくカメラであった

「君の能力は既に割れてしまっている。
もう降参した方がいいのではないかね?」

「降参するのはあんたの方ね、例え能力が分かったとしても
それを防げるかどうかは別の話じゃない、それに私の
能力が本当に分かったのなら、今ので貴方がどれだけ
不利になったのかも分かるでしょう?」

(なんだかさっきと似たようなシチュエーションやな
しかし、真野は小宅の能力が分かったんか?そして小宅の口ぶり
からすると小宅の能力には何か発動条件があんのかな?
「今ので」って一体なんなん?)

「それはどうかな、私としては君みたいな美しい
お嬢さんが怪我をするのを見たくないのだがね」

「人に決闘挑んでおいて何を言ってんのよ!」

小宅は手に持ったカメラから現像された写真ともう一枚
ジャンパーから取り出した写真を手に取りそこから
一丁ずつ拳銃を取り出した。
写真に写ったものを具現化する能力「リアライズフォトグラフ」である
小宅は一夜が戦線離脱している間に真野の拳銃が写っている
写真を二枚撮影していたのだ

小宅は更にフライトユニットを使い浮遊、
猛スピードかつ変則的飛行により真野の背後へと廻りこみ
真野に向けて二丁拳銃を構え、拳銃が火を噴く!

パァアンッ!!

しかし、火を噴いたのは拳銃の銃口からでは無く
銃身からであった。そう、小宅の拳銃は二丁共に腔発したのである

「キャァ!」

小宅は運よく腔発による直接的なダメージは無かった
しかし突然の腔発により思わず怯み、小宅は空中で
ほぼ静止した状態になった

(小さな爆発…!?一体何が起こったん?いや、とにかく
小宅の動きが止まった…正に今がチャーンス!)

一夜は嬉々としながら表側が小宅の方向に向くように水色のポータルを作り出す。
次の瞬間落下を繰り返し続けていた30体のアキカン達が
水色のポータルから物凄い勢いで小宅の背中目掛けて飛び出す。
阿鼻叫喚の地獄絵図!

「「「「「「「「「「メカァァァァァァアアアアアアア!!!!!」」」」」」」」」」

アキカン達は中の砂の量の微妙な違いから重さがバラバラであり
尚且つお互いにぶつかり合うため軌道が歪つで予測しづらい
これには超人じみた動体視力と反射神経を持つ小宅であっても
一つ一つをかわすのは不可能、アキカン達の飛来に気づいた小宅は
フライトユニットの出力を最大にしてアキカン達を大きく避けようと試みる。
が、銃の腔発によって反応が遅れた小宅はアキカン達を回避しきれず
わき腹に一体、右脚に一体のアキカンが命中してしまう。
砂を詰められ高速で飛ぶアキカンの威力は絶大
小宅はそのまま地面へと落下していく

真野はそれを感心した様子で眺めている。どうやら既に
一夜の存在には気づいた様だが、今のところ攻撃する様子はない
一夜はそんな真野を若干警戒しながら
小宅の墜落した場所へと足の痛みを我慢しながら走る

墜落場所はにはとてつもなく大きな、小宅が地面を転げまわった
跡らしきものが残っていた。それを見る限り小宅は地面を20m以上
転げていったようである。どうやらアキカン達を回避しようと
フライトユニットの出力を最大にしたのが仇となったようだ

小宅は僅かに動いており息はある様だが仰向けに
倒れたまま起き上がる気配は無い

「ハッハー!どうやら貴様の負けのようだな、え?お嬢ちゃんよお」

小宅は両腕に力を込め上体を起こしながら
一夜に軽蔑の眼差しを向けながら言う

「あぁ…はぁ……く…だ、誰があんた…みたいな下衆に…負ける物ですか…」

一夜は左手で小宅の顎を乱暴に掴み自分の顔を
小宅の顔の高さに合わせ小宅の首をガクガクと前後に揺すりながら言う

「嬢ちゃん、その様子じゃあもう録に動く事も出来ねえんだろ?
大人しく観念して降参したらどうだ?」

「ふ……ふざけるな…私はまだっ…!?ふぁ…ああ…ふぁぐ…!!」

一夜は激昂する小宅の口に拳銃の銃口を突っ込み
銃身を無理矢理咥えさせ言葉を遮らせた

「まあ、嬢ちゃんがまだ負けを認めないってんなら
根を上げるまで続けてやってもいいぜ?
俺なりのやり方でな。くふっく…くふっふふっくふ…」

一夜は下衆で気味の悪い笑い声を漏らしながら
ニヤニヤとした顔つきで小宅の顔を眺める

小宅は一夜を睨み付けたが、暫くして目を閉じ
ゆっくりと両手を上げ降参の意を示した。

「くっくふふ、なんだあ、結局あっさり降参しちまうのか」

一夜は相変わらずニヤニヤとした笑みを浮かべながら
小宅の口からゆっくりと拳銃を引き抜き、左手を放す

『参加者、小宅麗智奈のギブアップを確認しました』

一夜の頭の中に女神オブトーナメントのテレパシーが鳴り響く
と同時に突如小宅のすぐ横に大きな扉が現れ中からワン・ターレンと
担架を持った救護班が現れ小宅を担架に乗せ再び
扉の中へと消えていき、扉そのものも消滅する

(これで後はあの男を倒すのみ…か)

パチ パチ パチ パチ

「甘酒・粕汁」と書かれた屋台の影から静かに拍手をしながら
ゆっくりと真野が姿を現す

「なかなか見事な手腕だった。
もっとも、レディの扱いに関してはあまり褒められたものじゃなかったがね」

「ふん、探検家気取りのエセ紳士め、お前だって参加者である以上
俺がやらんかったら自分の手であの女をぶっ殺すなりなんなり
するつもりだったろ」

「私が言っているのはもっと立ち振る舞いといったものの話なのだが…
まあ君の言う事も一理あるな。この大会の参加者である以上あらゆる
覚悟を決めた上で戦いに望むというのもまた当然といえば―――」

そこまで言いかけたところで真野は一夜のある行動に気づき
とっさに飛び込み前転で屋台の影に隠れる

バズンッ!!

突如鳴り響く銃声
一夜は真野との会話中、突然拳銃を抜き真野を狙って発砲したのだ

「クソっ!外したか」

「まだ話の途中だと言うのにせっかちだね、君は」

「殺し合いの相手と悠長に会話するほうがどうかしてっぜ
さっさと決着をつけさせてもらうぞ!」

一夜と真野は屋台越しに会話を続ける

「いや、すまなかった。それじゃあさっさと本題に入ろう。
今の君の早撃ちはなかなか見事な物だった。
どうだ?それで私と勝負をしてみる気はないか?ルールは―――」

「ルールは俺に決めさせろ、それが勝負を受ける条件だ!」

真野の言葉を遮り一夜が吠える

「良いだろう、それじゃあ君が決めてくれ」

「ルールはコインで決闘開始の合図をする事、コインが地面に着いたら決闘開始だ。
それまではお互いその場から一歩も動いてはいけない、そんでもって得物に手を
触れるのもナシ、その他相手を攻撃する行動全て禁止、そしてコインが地面に
着いた後はどんな得物や手段を使おうが何しようがOK、こんなんで良いか?」

「分かった。そのルールで良いだろう
合図のコインは私がやっても良いかね?」

「……ああ、いいぜ」

「それでは始めるとしようか」

真野がそう言って屋台の陰から道の真ん中へと出てくるのを確認すると
一夜も同じように道の真ん中に立つ

二人の距離は約5.8m程、真野は右手を前に突き出しコイントスをしようとしている
対する一夜は左手を腰に着けたククリの鞘の上に、右手を銃の
ホルスターの上に置いた、アキンボ・ポーズを取っている。

そして今まさに、真野のコインが弾かれようとする。
コインが宙を飛ぶとき、それは真野の勝利を意味する

――真野が小宅に対してコイントスを行い『イデアの金貨』
を発動させた際には、真野は小宅の能力を逆に利用する
事によってダメージを与え隙を作る策を思いついた。

そもそも真野は一夜が来る前に小宅によって写真を撮られ
そして小宅は自分と同じ銃をいつの間にか所持しているのを見て
小宅の能力が写真に写った物の具現化だと気づいていたのだ。

真野の思いついた策とは、小宅にわざと危険な武器を
撮影させてそれを使わせて自爆させるという物。
真野は自分の拳銃の銃身に弾薬と砂利を詰め、
土で硬く蓋をしたのだ。
この拳銃を撮影し、具現化してしまった小宅は
拳銃を腔発させてしまい大きな隙を作ってしまったのだ――

そして今、真野が再びコインを親指で弾き、宙に舞わせるとき
『イデアの金貨』により真野は森羅万象を味方につけ
勝利への妙案によって一夜を倒し勝者となる。

真野の親指がコインを弾く――――

次の瞬間、真野の視界からさっきまでじっと見つめていた自分の
右手とコインが姿を消す、代わりに目前には一面の星空と
満面の笑みを浮かべ逆さまに立つ一夜の姿が映った

「しまった!」

真野は状況を瞬時に理解し、拳銃を抜こうとする
しかし、真野が拳銃に手をかけた瞬間
一夜の放った銃弾が真野の胸を貫く!

一夜はトリガーを引いたまま左手で素早くハンマーを起こし
続けて連続で銃弾を4発発射する。

一発は真野の右足に命中、一発は腰に、一発は左肩に
最後の一発は外れて後ろにあったお面屋の
ミルキーレディのお面の額に風穴を開けた。
真野は銃撃によって膝をつく

一夜は決闘のルールを破り、コインが
地面に着く前に真野を撃ったのか?

いや違う、既にコインは地面に落ちているのだ。

真野がコイントスをする瞬間、一夜は
真野の腕のすぐ上に水色のポータルを表を下にして作り
地面スレスレに赤色のポータルを表を下にして作っていったのだ
これによって真野のコインは水色のポータルをくぐり
赤色のポータルから出て、コイントスとほぼ同時に
地面に落ちていたのだ

一夜は両方のポータルを消し、少し前に進むと
真野の背後と自分の目前にポータルを作り
真野の後頭部に拳銃を押し付ける

「コインが落ちるまで『攻撃』は一切しなかった。
ちゃんとルールは守ったぜ?」

「…まさかそもそもコインが宙を舞わないとは…ね…」

「俺はせっかちなもんでな」

「……流石に…これは私の…負けだな…降参するよ…」

『真野風火水土選手のギブアップを確認しました。
第一回戦第六試合の勝者は矢塚一夜選手です』


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