ボルネオSS(第一回戦)

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dangerousss

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第一回戦第四試合 ボルネオ

名前 魔人能力
ボルネオ モルグ街の殺人
池松叢雲 統一躯
不動昭良 インフィールドフライ

採用する幕間SS
なし

試合内容

ここは一回戦第四試合の戦場であるホームセンター。
ホームセンター内は商品棚が等間隔で並べられており、
それぞれの棚にはユキノマーケットから提供された商品が丁寧に陳列されていた。
辺りは静寂に満ちており、これから始まる闘争の様子を微塵も感じさせない。
まるで普通のホームセンターのように営業して閉店、また明日の開店を待っている。
ホームセンター内はそんな雰囲気に満ちていた。
だが、そうではない。ここは戦場なのだ。
辺りに並べられている生活感漂う日用品の数々は本来の用途とは違った使われ方をするだろう。
人の生活を便利にするためのものが全て人の生を終わらせる凶器へと変貌する。
ここは日常の反転した非日常そのもの。
その非日常に相応しい三人の魔人がここに降り立つ。
――― 一人目は不動昭良。
力を注ぎ込んだ物体を自在に操作する魔人能力『インフィールドフライ』の持ち主、
魔人警察課助手としてアルバイトをしている中学2年生。
―――二人目は池松叢雲。
英語検定40段の完全熟達者であり、自身の心身を完全制御する魔人能力『統一躯』の使い手。
―――三人目はボルネオ。
ありとあらゆる情報が秘匿され、開催者やスタッフですらその正体を不明とする謎の魔人。
この三人それぞれがこのトーナメントに選ばれるだけの強力な魔人であることは言うまでもない。
この三人のうち誰が生き残るのか、それは誰にも分からない。
さて、それでは始めよう。
―――血で血を洗う闘争を。


池松叢雲は息を殺しながら慎重に敵を探していた。
一見行き当たりばったりの無策に見えるがこれには勿論理由がある。
まず一つに叢雲の出現地点の近くに最強の近接武器『バール』が存在していたのが要因の一つである。
バールは本人の腕力に左右されない万能破壊である。
これは周知の事実でありこれを手に出来たのは幸運としか言いようがない。
その破壊力は生物、無機物を問わず所有者が“攻撃”した箇所はたちまち破壊される。
二つ目は叢雲が一番危惧した事は罠を仕掛け追い詰められる事を一番に嫌ったのだ。
篭城策をとれば確かに攻めてくる敵にはある程度のアドバンテージが得られるだろう。
だが、相手がこちらの想像以上の力で押してきた場合はどうしようなく潰されるだけである。
また、罠の誤爆がある可能性も捨てきれないというのがあった。
その為、隠れて罠にはめるというスタイルではなく先制バール攻撃による一撃必殺スタイルをとることに決めたのである。
そして三つ目、自身の魔人能力『統一躯』の存在が最大の理由である。
一言で言えば自由意志による自身の心身完全制御能力である。
この能力単体で言えば大したものではないがこの状況においては非常に有効な能力である。
この戦場は商品棚という障害物が立ち並び、視界が悪く敵と何時出くわすか分からない。罠も仕掛けられているかもしれない。
そういった風に疑心暗鬼に陥り自分自身を追い詰めて心身ともに消耗してしまうという側面を持っている。
だが魔人能力『統一躯』は張り詰めた神経をコントロールし、精神的な疲労をなくしてしまうのだ。
他の魔人ならば数分も持たない集中力を『統一躯』により永続的に発揮し、確実に敵よりも早く敵の存在を感知できる。
敵が仕掛ける罠もこの集中力ならば確実に看破できるという自負がある。
そして罠を看破出来るとはいえ仕掛けられるのも面倒になる。
以上の理由で叢雲はこの先制必殺スタイルをとったのである。
「……」
その時、叢雲の超人的な感覚が敵の存在を捉えた。
敵の様子は一言で表すのならば無用心そのもの。
圧倒的強者が自信の力に驕り、他を見下すそれである。
叢雲は次々に訪れる幸運に浮き足立つことなくあらゆる可能性をシミュレーションする。
「OK……」
その言葉とともにシミュレーションが終わり、叢雲は気配を殺して敵に近づいていく。
やがて見える敵の姿。
その姿は黒い霧に包まれて全貌がはっきりとしない。
不気味さを漂わせる敵に動じず、叢雲は冷静に観察する。
まず、疑うのはアレが召喚能力の存在であるかどうかである。
叢雲が認識できる範囲内では黒い霧を纏った敵以外の存在は感じられない。
また、この場に自分が存在した時間から現在までの時間を考えて大掛かりな罠を用意は不可能である。
召喚能力だった場合は黒い霧で足止めを行い、狙撃が一番妥当であると判断。
また、自爆の可能性があることも叢雲は考慮に入れる。
よって敵に襲い掛かるタイミングを計る。
一撃を加えた後、即座に商品棚に隠れられるタイミングである。
敵は何も考えていないという雰囲気を感じさせる足取りで近づいてくる。
「Ready……」
その絶好のタイミングまで新しく得た情報を元に再シミュレーションする。
ありとあらゆるパターンを想定し、即座に対応可能にする。
このような状態でも冷静に思考する叢雲。シミュレーションは完了した。
そして訪れるその瞬間。
「……Go!」
弾ける様に飛び出す叢雲。
叢雲の必殺の一撃が敵に襲い掛かる―――


断続的な地を揺るがす振動と轟音がホームセンターを襲っていた。
それらは叢雲と謎の敵が引き起こしていると不動昭良は感じ取っていた。
また、それ故に不動は焦っていたのである。
「落ち着け、落ち着け、落ち着け……」
振動と轟音。その二つが不動の不安を煽り、焦りを産み、自身の戦術の準備を遅らせているのである。
焦りが焦りを産み、悪循環を引き起こす。
不動が忍耐強いとはいえ味方が居ない敵だらけの状況、
一刻も早く準備を終えないといけないという焦燥感。
断続的に襲う振動と轟音、何時巻き込まれるか分からない恐怖。
それらの要素が神経をり詰めている状態の不動を精神的に追い詰めていたのである。
これが歴戦の魔人警察ならばそういった感情を押さえつけ作業に影響が出ないのだろうが
いかんせんアルバイトであり、精神的に完成されていない中学二年生ならば仕方が無いと言える。
「とんだ貧乏くじを引いたかな……」
ここにはいない誰に対する不満を漏らすことで不動は精神の安定を図り、
幾ばくか精神を安定させることに成功した不動は作業に集中する。
「後、少し……」
不動が行っていた作業、それを語るにはまず彼の魔人能力について説明する必要があるだろう。
魔人能力『インフィールドフライ』。
物体に「力」を注ぎ込み、自由に動かすことができる、いわゆる念動力。
単純であるがゆえ応用が利き、制限も特にない。
弱点は、対象となる物体に一度は触れてエネルギーを注ぎ込まなければならないこと。
重い物体はゆっくりとしか動かせないこと、例えば建物一棟クラスになるとそもそも動かすこともできない。
そして、力を注ぎ込んでもその物体が有している運動エネルギーはそのままだということ。
ただし、なぜか重力による落下のエネルギーだけは瞬間的に中和し、消滅させることができる。
以上の条件さえクリアできれば、たとえば自身より質量の低い物体なら200km/hほどの速度で動かすことができるが、
それ以上の重さだと重量に応じて速度に制限が出てくる。
もっとも、高速な動きを長時間にわたってさせようとすると注ぎ込んだエネルギーを使いきってしまい、能力の影響下から外れてしまう。
操作は彼自身の意思で行うため、見えない相手を追跡し続けるような使い方はできない。
また、一度に多数の物体に複雑な動きをさせることにも限度がある。
無論、生物にも使用可能である。
以上が『インフィールドフライ』の能力の説明である。
彼が行っていた準備はホームセンター内にあるハサミ、包丁といったありったけの刃物を支配下におくというものである。
不動が用意した刃物の数は百以上にものぼる。
最早、用意した刃物の殆どが不動の支配下におかれ、残るは数本のみとなった。
これらが敵に高速で飛来したならば即死は必至である。
また、罠としての使用も可能でありホームセンターは不動のホームグラウンドと言っても過言ではないだろう。
「これで……ラストッ」
そして最後の一本を支配下におく。
それと同時にホームセンターを揺るがしていた振動と轟音も止まった。
戦闘が何らかの理由で終わったのだ。
敵のどちらかが死んだのか、逃げおおせたのか。
準備が全て終わり、不動は敵を待つ事に決めた。
現時点で篭城するには精神的な疲労が大きく難しいものがあるが
それでも『インフィールドフライ』の支配下におかれた刃物の結界は不動の精神を安定させるのには必要だったからである。
また、この場所は狙撃されない位置であり、敵は正面からの突破を余儀なくされる。
「さて、吉とでるか凶と出るか……」
不動は心を落ち着かせ、やってくるであろう敵を息を潜めて警戒する。
やがて、一つの足音が不動の結界の中に侵入してくる。
不動の目に映った侵入者は黒い影を纏った謎の敵であった―――


「What a monster!」
叢雲は先ほどまで戦っていた敵が追って来ないかどうかを確認しながら逃げていた。
その様子は『統一躯』により心身を完全制御されているにも拘らず若干の疲れを見せていた。
並みの魔人であればあの敵の圧倒的な暴力性の前に打ちのめされているだろうが
この程度に抑えてられているのは流石は叢雲と言った所である。
叢雲は辺りを探り逃げ切ったと確信し、商品棚の間に隠れ、息を潜める。
息を潜めながら叢雲は冷静にあの敵のことを考察する。
(まず、あの敵は召喚された存在ではないという事は分かった。
なぜならばあの敵に数回攻撃を行ったが召喚者の動きが一切感じ取れなかったことが大きい。
召喚された存在は完全自立か操作型の二つに分類される。
操作型なら当然召喚された存在を視認出来る場所に居るし、完全自立ならば囮としての使用を第一に考えるだろう。
召喚者が相当の馬鹿だったならば純粋に召喚された存在に任せるという事も考えられるがそれはないだろう。
叢雲はあの敵にかかっている霧自体が能力であると予想した。
あの霧で姿を隠し、身を守る。そう考えれば試合前の相手の情報が読めなかったのに合点がいく。
ならばあの霧を晴らす方法が存在すると叢雲は判断する。
この大会の趣旨上絶対に勝てない敵は排斥されているはずである。)
また、その方法が物質的なものではなく情報、概念的なものでもあると看破していた。
叢雲はこの時点で相手の能力の破り方に至っていた。
「……Unmask」
だがここで一つの問題がある。
何を持って正体となすのか、その定義自体が曖昧である。
定義が曖昧ゆえにあの敵の情報を多くを手にする必要がある。
ならばあの怪物の元へと戻らなければならない。
そう考えた叢雲は立ち上がり、遠くから観察する事に決めた。
叢雲が立ち上がったとき、叢雲の服から何かが落ちる。
―――それは長い赤毛であった。


「行けッ!!」
不動の命令に従い、百本以上もの刃物が敵に突撃する。
その全ての刃物が命中し、不動は殺したと確信する。
だが、その敵は倒れなかった。
自分の体に刺さった刃物をさながら服についた埃の如く、鬱陶しげに払い落としていく。
その様子を見た不動は愕然とする。
―――攻撃無効能力者
そう判断し、冷静さを取り戻そうとする不動。
(本以上もの刃物の突撃が無効化されたのならば攻撃回数による解除ではない。
なら、時間制限があるはず)
不動は落とされた刃物を操作し、敵の下半身に向けて突撃させ時間を稼ぐ事にした。
だが、その攻撃も意にも介さない様子で刺さった刃物を払い落としていく。
(このままだとまずい!)
不動は慌ててこの場から逃げ出すために唯一の退路に向かって駆け出す。
その様子を見た敵は商品棚そのものを持ち上げ、退路に向かって思いっきり投げる。
投げられた商品棚は並べられた商品を撒き散らしながら放物線を描いて他の商品棚と激突する。
けたたましい轟音を立てて商品棚は破壊され、折り重なったようになり不動の退路を塞いでいた。
「■■■■■■■■■!!」
敵は大声を張り上げ、不動を罵倒しているようである。。
その言葉はどこか異国の言語であり、この敵が言葉の通じない存在である事を物語っていた。
不動は恐怖する。この怪物に。
(どうする、どうする、考えろ!)
不動はこの窮地を脱するべく頭をフル回転させる。
だが怪物が一歩近づくたびに頭に恐怖というノイズがかかり思考の邪魔をする。
(どうしたら―――)
一瞬の閃光の如き閃きが不動の脳内を駆け巡る。
この起死回生の案に不動は賭ける事にした。
(……出たとこ勝負!!)
もう怪物は目前であり、後数歩で怪物の攻撃範囲内に入る。
不動は意識を集中してタイミングを見計らう。
今の不動は絶体絶命の状況下にあるおかげで自身の最大の能力を発揮できる最高のコンディションであった。
この極限下において不動の迷いは一切無く、一つの事のみに集中出来たからである。
敵が最後の一歩を踏み出す。
と、同時に不動の体が弾けるように敵に向かって駆け出す。
敵が拳らしきモノを不動に向かって突き出す。
その拳は風を切り、神速だった。
並みの魔人ならその拳は視認出来ない回避不可の攻撃だった。
先ほどまでの不動ならばたちまち体が爆散していただろう。
だが、しかし不動は避けた。
最高のコンディションにより限界を超えた運動性を引き出せが故に。
相手の攻撃を掻い潜り、敵の懐に潜り込んだ不動。
不動は能力を発動させる。魔人能力『インフィールドフライ』を。
力を注いだ対象を自由に操作する能力。
そしてこの能力は生物にも通用する能力。
そう、不動はこの敵を操作出来る可能性に賭けたのだ。
結果。
不動は賭けに負けた。
怪物は操作不可能であり二度目の攻撃が不動に向かって揮われる。
「賭けに負けちゃったか……残念」
不動は少しだけ悔しそうに呟く。
―――次の瞬間、不動の体は跡形も無く爆散した。


遠くから叢雲は不動の最後を見ていた。
先ほどの不動とあの敵との戦闘を見て、見立て通り相手の正体を暴かない限り
倒す事は不可能だという事を叢雲は確信した。
(恐らく、能力の全貌はこれで間違っていないはず。なら正体は何だ、何を持って正体とする?)
ここで叢雲の考察は行き止まってしまう。
何回も考察するが変わらない。
(……だが、絶対に解ける問題である事はこの大会が保障している。答えが絶対にあるはず)
叢雲は自分の体に引っかかっていた赤い毛を手に取り凝視し、臭いを嗅ぐ。
(この臭いは獣特有の臭い……、アイツは人ではなく動物?)
叢雲は過去に幾つモノ戦いで魔人能力を持つ動物は数多く観測されているという事を思い出す。
ならばこの大会においても魔人化した動物が紛れ込んだという可能性があるという思考に至る。
(としたら、こいつが何の動物か考えてみる必要がある)
叢雲は黒い霧に覆われた敵を遠巻きに凝視する。
二足歩行を行っていることから霊長類である事は予想させる。
熊や、パンダといった可能性は手の短さから考えてまず無いだろう。
そして、あの大きさの霊長類といえばゴリラかオランウータンといったところだろう。
(赤毛のゴリラは存在しない……なら、アイツはオランウータンか)
叢雲がその確信を持った途端、黒い霧に包まれた敵に異変が起こる。
そう、敵を包んでいた黒い霧が晴れたのだ。
現れたのは一匹の赤毛のオランウータン。
オランウータンは自身の異変に気付かず辺りをうろついている。
(正体とはこういうことだったのか)
叢雲はオランウータンの周りを再確認する。
先程の戦闘のおかげでオランウータンの周囲には障害物が無くなったため、身を隠す場所は存在しない。
オランウータンと闘うならば正面衝突は免れないだろう。
また、何らかの要素によってあの黒い霧が戻る可能性がある。
そういった可能性を考えるならば今を逃しては倒せないだろう。
そう考えた叢雲は闘いに向けて自身のコンディションを整える。
「―――Here goes」
叢雲は覚悟を決め、オランウータンに向かって駆け出す。


ボルネオにとって闘いは一方的な殺害である。
どんな相手もボルネオの前では無力と化し、ボルネオの怪力の前では粉砕される。
ボルネオにとってそれは普通のことであり、何もおかしくはない。
希望崎学園を脱出した時も無数の魔人を屠り、脱出後も何人もの人間を潰してきた。
その全てが一方的な殺害である。
先程の人間の子供の時も変わらなかった。
故に、今のこの状況がボルネオは理解できない。
「■■■■■■■―――――――!!」
ボルネオの絶叫がホームセンター内に響く。
ボルネオは魔人能力に覚醒以降、初めて攻撃を喰らったのだ。
ボルネオの左腕はぐしゃぐしゃにひしゃげて使い物にならなっていた。
それは叢雲がバールで攻撃し、ボルネオはそれを受け止めるつもりで左腕を突き出した。
その結果、ボルネオの左腕は破壊された。
だが、その判断は間違いではなかった。
何故なら叢雲はボルネオの頭部向けて攻撃をしたのだから。
「■■■――――!」
ボルネオは何がなにやら分からず辺りに拳を振り回し、距離をとる。
叢雲もその状態を危険と判断し距離をとる。
そうしてお互いが睨み合う形となった。
ボルネオは考える、何故こんな事になったのかと。
最強の魔人能力を持っている自分が負傷している。
その答えは簡単だ、能力が破られたからである。
自身の魔人能力に絶対の自信を持っていたが故にボルネオはその答えを否定する。
だが、魔人として覚醒し増大した野生の勘が危険信号を発している。
そのままでは死ぬぞ―――と。
「……」
ボルネオは己のプライドを捨て、魔人能力が破られた事を認める。
つまり、ボルネオ理性を捨て、野性を取ったのである。
故にここにいるのは一匹の野生動物である。
己の生存本能を全開にした正真正銘の野獣。
それが今のボルネオである。
ボルネオは叢雲を見据え、一人の敵と認識した。


ボルネオと叢雲は同時に駆け出した。
叢雲は右腕を狙い、ボルネオを無力することを優先した。
ボルネオの両腕が健在ならば勿論、頭部狙いだったろうが叢雲は万が一を潰す方向を選んだ。
ボルネオは叢雲が右腕狙いだという事を看破し、体を回転させ、左腕で攻撃を行うことにした。
右腕が破壊されてしまったら後は殺されるだけとボルネオ自信も理解していた、
よって、左腕の激痛を無視して無茶をする必要があったのだ。
叢雲はこのとっさの攻撃にも動じず、冷静にボルネオの左腕を打ち落とす。
ボルネオの体に激痛が走る、だがボルネオはそれを無視して右腕を地面を叩きつける。
ホームセンターのタイル、その下のコンクリートが爆散して破片が両者に襲い掛かる。
いかに叢雲の『統一躯』といえど無軌道に飛んでくる破片に対応しきれず、動きが止まってしまう。
だがボルネオはそれをものともせず叢雲へと突進する。
勿論、ボルネオも叢雲よりも多くの破片を浴びているが動物と人間、体の頑丈さは段違いであった。
そのまま、ボルネオは叢雲に衝突する。
「Jesus……」
―――それが叢雲の最後の言葉だった。


不動昭良は既に死に絶え、池松叢雲も今しがた死んだ。
故に今ここに生きて立っているのはボルネオただ一人である。
ここに一回戦第四試合の勝敗は決した。
―――勝者、ボルネオ。
「■■■■■■■■―――――――ッ!!!!!!!」
ボルネオは自分が勝った事を感じ取り歓喜の雄叫びを上げる。
生まれて初めての闘争を勝利を与えてくれた好敵手に感謝してボルネオは雄叫びを上げ続ける。
それはこの戦場からボルネオが消えるまで続いた。


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