糺礼SS(第一回戦)
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dangerousss
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第一回戦第一試合 糺礼
名前 | 性 | 魔人能力 |
白王みずき | 女 | みずのはごろも |
糺礼 | 女 | この胸にキミを抱きしめたい |
意志乃鞘 | 女 | HERO DESTINY |
試合内容
ぶしゅ、とマウンド上の意志乃鞘、三塁側ベンチから出てきた白王みずきにも聞こえそうな音が鳴る。
一瞬の停止。
そして、力が抜けたように足が崩れ。
胸から盛大に血を拭きながら、糺礼は地面へと崩れ落ちた。
―――
始まりは鞘の呼びかけであった。
ヒーロー研究会部長などをやっていることからも分かるように、鞘は細々とした権謀術数を好む性質ではない。
ゆえに、彼女は試合が始まると同時に野球場の中心、ピッチャーマウンドへと駆け上がり、大声で宣戦布告をした。
ヒーロー研究会部長などをやっていることからも分かるように、鞘は細々とした権謀術数を好む性質ではない。
ゆえに、彼女は試合が始まると同時に野球場の中心、ピッチャーマウンドへと駆け上がり、大声で宣戦布告をした。
「諸君!私は逃げも隠れもしない!正々堂々向かってきたまえ!」
一見すると奇人の所業にしか見えないこの行動だが、鞘が行う場合に限ってはそうとも言えなかった。
彼女の能力により付与されたヒーロー補正により、現在、マウンド上に鎮座する彼女の身体能力は大幅に向上している。
それと野球場の中心という遮蔽物の無い環境が合わされば、拳銃程度の弾丸なら彼女には見て落とすことが可能だろう。
彼女の能力により付与されたヒーロー補正により、現在、マウンド上に鎮座する彼女の身体能力は大幅に向上している。
それと野球場の中心という遮蔽物の無い環境が合わされば、拳銃程度の弾丸なら彼女には見て落とすことが可能だろう。
実際、彼女の口上に合わせるように三塁側・一塁側ベンチの奥から水の弾丸と拳銃の弾が撃ち込まれたが
彼女はそれをなんなく左手で摘み取っている。
マウンド上にヒーローの如くそびえたつ彼女は、現在ちょっとした要塞的な防御力と存在感を持って君臨していた。
彼女はそれをなんなく左手で摘み取っている。
マウンド上にヒーローの如くそびえたつ彼女は、現在ちょっとした要塞的な防御力と存在感を持って君臨していた。
この結果から狙撃は不利と判断したのか、一塁側、三塁側それぞれのベンチに隠れていた人物が姿を表す。
三塁側ベンチから現れたのは 「KIBOUSAKI」と刺繍のされた野球ユニフォームに身を包んだ少女。
白王みずきだ。
彼女の野球ユニフォームは右腕の裾が短くなっている。
これは彼女の能力『みずのはごろも』により、右腕部分を構成する衣服化された水が、先ほどの攻撃で消費されたためである。
白王みずきだ。
彼女の野球ユニフォームは右腕の裾が短くなっている。
これは彼女の能力『みずのはごろも』により、右腕部分を構成する衣服化された水が、先ほどの攻撃で消費されたためである。
一方、一塁側ベンチから現れたのはスーツ姿の女性――警視庁公安部第六課所属刑事 糺 礼だ。
さて、先ほどまでほぼ同じ行動をとっていた一塁側と三塁側ベンチに隠れていた二人であるが、姿を現してからの行動は大きく異なる。
一塁側ベンチから現れた糺 礼は、ベンチからグラウンドに足を踏み出すや否や即座に拳銃を構え二発目の弾丸を意志乃鞘に撃ちこもうとした。
奇襲。だが、それは身体能力の強化された鞘相手には遅すぎた。
奇襲。だが、それは身体能力の強化された鞘相手には遅すぎた。
礼が構えるよりも早く、鞘は腰に納められた改造ペンを抜く。
一方、鞘から一瞬遅れたものの、みずきもとっさに右腕を礼に向け迎撃の姿勢をとる。
一方、鞘から一瞬遅れたものの、みずきもとっさに右腕を礼に向け迎撃の姿勢をとる。
……そして、舞台は冒頭に戻る。
胸から血を噴き出し地面に倒れた糺礼を見た二人の判断はこうであった。
鞘は、自分の狙いからずれた場所から血が出たことから、おそらく礼に止めを刺したのは相手であると認識。
先ほどの狙撃と合わせて相手の能力を「水を弾丸として打ち出す」能力だと判断した。
自分もビームによる遠隔攻撃が可能だが、ここは野球場だ。
土埃を起こされればビームは届かず一方的に狙撃されることになる。
先ほどの狙撃と合わせて相手の能力を「水を弾丸として打ち出す」能力だと判断した。
自分もビームによる遠隔攻撃が可能だが、ここは野球場だ。
土埃を起こされればビームは届かず一方的に狙撃されることになる。
ゆえに、鞘は即座にかけだし みずきとの間合いを詰め接近戦に持ち込もうとする。
一方、みずきはまだ自分が攻撃を放っていないにも関わらず礼が倒れたことから、鞘の出したビームが決め手となったと判断した。
ヒーロー部の噂と合わせて、鞘の持っている飛び道具はビームのみ。
だが、ビームなら水の盾を張れば屈折させ労なくかわすことが可能だ。遠距離で戦い続ければ勝利の道はある。
ヒーロー部の噂と合わせて、鞘の持っている飛び道具はビームのみ。
だが、ビームなら水の盾を張れば屈折させ労なくかわすことが可能だ。遠距離で戦い続ければ勝利の道はある。
ゆえに、彼女に必要なのは距離をとることだ。
しかし、鞘はヒーローの脚力を活かし彼女との距離をどんどん詰めていく。このままでは接近戦に持ち込まれてお終いだ。
しかし、鞘はヒーローの脚力を活かし彼女との距離をどんどん詰めていく。このままでは接近戦に持ち込まれてお終いだ。
ならば――
ダッシュで距離を詰める鞘の視界から、突然みずきが消える。
みずきの居た場所の土がぬかるんでおり、また土埃が立っている。
足跡はない。そして、みずきの能力ではワープでは無い。
ならば、みずきが行ける場所は一つ。
みずきの居た場所の土がぬかるんでおり、また土埃が立っている。
足跡はない。そして、みずきの能力ではワープでは無い。
ならば、みずきが行ける場所は一つ。
鞘の思考がそこまで追いつくとほぼ同時に、上方から水の弾丸が降ってくる。
そう、みずきは地面に向けて水の弾丸を放ち、その反発力で空へと飛んでいたのだ。
もはやホットパンツにタンクトップのようになったユニフォーム姿を気にすることもなく、みずきは弾丸を放ち続ける。
撃てば撃つほど、反動で鞘との間に距離は開き、また鞘にダメージが蓄積されていく。
このまま、客席に逃げれば。追いつかれるより前にダメージを蓄積させ、倒すことが可能である。
みずきが勝利の感覚をつかもうとしたまさにその時だった。
そう、みずきは地面に向けて水の弾丸を放ち、その反発力で空へと飛んでいたのだ。
もはやホットパンツにタンクトップのようになったユニフォーム姿を気にすることもなく、みずきは弾丸を放ち続ける。
撃てば撃つほど、反動で鞘との間に距離は開き、また鞘にダメージが蓄積されていく。
このまま、客席に逃げれば。追いつかれるより前にダメージを蓄積させ、倒すことが可能である。
みずきが勝利の感覚をつかもうとしたまさにその時だった。
「逃がすかぁぁぁぁああああ!!」
鞘が飛んだ。
なんの補正も無く、なんの策もなく。
みずきを追いかけるようにジャンプした。
なんの補正も無く、なんの策もなく。
みずきを追いかけるようにジャンプした。
みずきは面を喰らったが、読者諸氏にとっては驚くべき展開ではないだろう。
鞘はヒーローであり
目の前に、敵がおり
届かぬ場所から、雨あられと攻撃が降ってきている。
目の前に、敵がおり
届かぬ場所から、雨あられと攻撃が降ってきている。
ならば、ならばこの困難に立ち向かわずして何がヒーローか!
みずきは必死に水の弾丸を撃つ。服がどんどん削れ、威力がどんどん増していく。
常識的に考えれば、いくら鞘が飛んだところで水の弾丸に押し返されみずきに追い付くことは出来ないだろう。
だが、鞘はヒーローだ。
常識なんぞ、知ったことか――!!
常識的に考えれば、いくら鞘が飛んだところで水の弾丸に押し返されみずきに追い付くことは出来ないだろう。
だが、鞘はヒーローだ。
常識なんぞ、知ったことか――!!
「く、来るなぁー!!」
みずきは全力を振り絞り、残りの水をすべてを込めた弾丸を撃ちだそうとする。
対する鞘も、天に足を向け必殺のキックで迎撃を、いや、弾丸ごとみずきを撃ちぬこうと構える。
対する鞘も、天に足を向け必殺のキックで迎撃を、いや、弾丸ごとみずきを撃ちぬこうと構える。
「う、うわぁぁぁぁぁ!!」
「必殺――ヒーロぉぉぉぉ」
「必殺――ヒーロぉぉぉぉ」
そして、交差する弾丸とキック
「いけええええええええ!!」
「キィィィィィィック!!」
「キィィィィィィック!!」
結果は、言うまでも無いだろう。
キックを受けたみずきは空中で停止し、着地しポーズを決める鞘の背後で爆発四散した。
キックを受けたみずきは空中で停止し、着地しポーズを決める鞘の背後で爆発四散した。
「ふぅ、これで一回戦終了か」
鞘は息を吐き地面に座り込む、短い戦闘ではあったが、命のやりとりだっただけあってなかなかの疲れを感じる。
「終わったら、また元のばし――」
どん。どん。どん。
背後から撃ちこまれた3発の弾丸は、鞘の心臓と違わず撃ちぬき。
そして、意志乃鞘は絶命した。
背後から撃ちこまれた3発の弾丸は、鞘の心臓と違わず撃ちぬき。
そして、意志乃鞘は絶命した。
「死んだふり、成功、っと」
地面に倒れていた糺 礼は立ち上がり体についた土を払う。
「私の能力はどちらかというとタイマン向きですからね。ちょっと卑怯な手を使わせていただきました……って、もう聞こえてないか」
そう、初めの出血は偽装。彼女の能力で胸に生えた手に持ったナイフでもう片方の手の動脈を傷つけ出したものだ。
両手を見せた状態で、胸から勢いよく出る血液は死を偽装する――それも自分でやったものと見せない――のには十分であり。
2人が戦闘に集中している間には傷ついていない方の手で圧迫止血をし致命的な出血となるのを抑えていたのだ。
両手を見せた状態で、胸から勢いよく出る血液は死を偽装する――それも自分でやったものと見せない――のには十分であり。
2人が戦闘に集中している間には傷ついていない方の手で圧迫止血をし致命的な出血となるのを抑えていたのだ。
「しかし……ちょっと聞いたことはありましたが、ヒーロー補正ってのは恐ろしい能力ですね。あそこからおいつくことができるとは」
でも、と口の端に笑いを浮かべ
「戦いが終わった瞬間なら、ヒーロー補正は無くなる。よくあるでしょう、一息ついた瞬間に襲われて大けがを負うヒーローもの」
能力に確証が持てなかったのでこれはかけであったが、上手く行った。と礼はにやりと笑う。
「ま、ヒーローさんも強かったですが」
「警察官を、舐めるなよ」
了