デハ620形/モハ2620形
製造初年 |
1952(昭和27)年 |
製造メーカー |
日本車輌製造 近畿車輛 新木南車輌 |
車輌定員 |
70名 |
全長 |
10,510mm |
全幅 |
2,240m |
全高 |
3,800mm |
車両重量 |
11.9t |
駆動方式 |
吊掛式 |
制御方式 |
抵抗制御(直接制御) |
出力 |
40kw×2 |
台車 |
扶桑金属ブリル76Eコピー |
在籍両数 |
14両 うち現存車2両 |
昭和20年代後半、姫澄市内線には今だ大正末期に姫澄市街軌道が導入した木造単車が数多く残存していた。
これらの単車は製造20年を経過し車体が老朽化しきっており、またそれ以上に収容力が圧倒的に不足している
という問題を抱えており、早期の置き換えが必須とされていた。
1951(昭和26)年にはモハ2600形が発注されたのだが、しかしこのモハ2600形は単車の置き換えと云うより
はラッシュ時の遅延緩和策としての側面が強く、大柄な車体故に使用は駅前線や外堀線と云った幹線路線に
のみ限られていたのだ。
そのため姫澄市内線は多くの路線で使用出来、なおかつ収容力にも優れた中型ボギー車の大量増備を決定した
のである。
だが、ボギー車を導入するには姫澄市内線には避けては通れない問題があった。
それこそが武家町線と上小路線の存在である。
この二路線は城下町姫澄特有の狭い路地を通り、また曲線半径12m級の急カーブが多いため車両限界が極端に
小さく、先に導入されたモハ2400形木造ボギー車も入線できず、単車運行に頼らざるを得ない路線であった。
そのため、姫澄市内線はこの二路線を運行できる小型ボギー車と、通常型中型ボギー車の2形式を発注すること
としたのである。それがここで紹介するモハ2620形と、モハ2650形である。
車体は前述のとおりに上小路線の車両限界に合わせたために全長10m、全幅2.2mと小柄に仕上がっており、同じ
く路線故に小型狭小な北陸鉄道金沢市内線のモハ2000形などとはほとんど同一寸法となっている。車体工法は当
時としては一般的な半鋼製であり、名古屋市電1400形をモデルにした張り上げ屋根のすっきりした印象の軽量車体
も特徴的な点である。製造当初は塗装の試行錯誤期でもあったため、試験的に同形式は桜色とアイボリーのツート
ンカラーをまとったのだがこの塗装は好評であり、アイボリーと茶の標準塗装の浸透後も生き残り続けた。
走行系は定番となったブリル76Eのコピー台車を装備しており、モーター出力は40kwに増強された。本当はこれ
でも姫澄の水分を含んだ雪をかき分けての運行には辛い部分があるのだが、小柄軽量な車体でに出力不足を補って
いた部分もあったようだ。また登場当初からビューゲルを装備していたことも特筆すべき点である。
当形式はモハ2650形の増備と並行し、また北陸鉄道が資金を出し渋ったこともあって製造が3年の長期間に渡り、
多くの会社によって製造が担われたためにウィンドシルの有無、前部扉や車内照明などバリエーションも豊富だった。
製造後はほぼ全車が紙屋町車庫と常音寺車庫に配備され、定員70人と収容力に欠けていたために上小路線と武家
町線の二路線の運用や鍛冶町線・海岸街線・青葉線などの昼間運用に徹していた。いずれも運行線区は武家屋敷街
や庭園の多い場所で、それらの景色によく合う車輌であった。
この車両も1960(昭和35)年に姫澄電鉄が成立した際に頭の2を取ってデハ620形と改称している。この頃631~634
が姫神車庫に回されて姫神線の運用に就いていたが、こちらはデハ800形の導入で5年程度で結局元の鞘に戻ったので
ある。
1965(昭和40)年ごろから順次集電装置のZパンタグラフ化、ロックフェンダーの排障器化、扉の交換、方向幕
大型化と側面方向幕の取り付けなどの工事が実施されたが、Zパンタグラフ化と排障器化以外はいずれも実施程度は
まちまちで、ほぼすべての工事が実施された車輌もあれば、全く手付かずの車輌もあった。
1971(昭和46)年にワンマン改造工事も行われたが、やはり小型で収容力不足と云う問題もあったために限定的な
運用が続いていた。そして、最終的にはこの限定運用がデハ620形の命運を分けたのである。
1978(昭和53)年、主な職場であった上小路線と青葉線が廃線されると小柄で車齢もかさんでいた当車は廃車の対象
として紙屋町車庫の5両と常音寺車庫の2両が廃車され、両数は一気に7両まで減少したのである。
その後はほぼ武家町線を受け持つ5系統の専用車として運用されており、他線区を運行することはまず無くなった。
また1998(平成10)年からは順次デハ1200形への更新も始まっており、現在残るのは631号、634号の2両のみとなった。
このうち631号は2002(平成14)年に冷房化され、現在姫澄市が舞台の一つとなったアニメのラッピング電車と
なっている。これは条例でラッピング広告車が禁止された姫澄市内線では異例の車両である。
最終更新:2013年01月07日 16:29