ニホンミツバチ

登録日:2012/11/09(金) 21:15:41
更新日:2023/12/27 Wed 22:07:24
所要時間:約 7 分で読めます




ニホンミツバチ(Apis cerana japonica)とは、その名の通り日本の固有種であるミツバチの仲間。
アジアで広く生息するトウヨウミツバチの亜種にあたる。

○概要

女王バチを中心に、大量の働きバチと働かない雄バチで構成される大家族で生活をしている。
巣は大型で外部を覆う六角形の筒の中ではたくさんの卵や幼虫、蛹が育っている。好物は花の蜜や花粉など。

……要するに皆様のイメージする(セイヨウ)ミツバチとだいたい同じである。
ただし巣の形は様々で、市街地に進出したものは狭い場所でも見事な巣を形成する。

巣の中がハチでぎゅう詰めになって来ると、以前から巣を仕切っていた女王バチが多くの働きバチと共に外へと飛び立つ。

その後は一旦太い枝などに集まり、巨大な塊(蜂球)を形成する。
そして、そこから飛び立った働きバチが丁度良い場所を見つけるとみんなで移動し、そこに新しい巣を作る。

これを「分蜂」と呼び、ニホンミツバチが各地に勢力を広げる際に重要な行動となる。
元からあった巣も、新しい女王バチに開け渡されて維持されていく。

子孫を残す時期になると、雄バチは集団で巣を飛びだし、空中で女王バチと交尾を行う。
しかし彼らの射精とは生殖器を爆発させてその勢いで精子を送り出すというもので
つまり交尾するとちんこが爆発して死ぬ。リア充爆発した。
どうも 一度しか交尾しない上にそれが終われば用済み という生態なので
効率よく精子を送りこむために射精=爆発という進化を遂げたらしい。
それでも性交して死ねただけ幸せかもしれない。
最近の研究では 限界を超えた熱を浴びるとその爆発機能が誤動作を起こす ことが判明した。
よって極端に暑くなると雄蜂たちは勝手に射精しながら死んでいく。
ちなみに交尾に失敗したオスも、その後繁殖期が終わると巣から追い出されたりしてどちらにしろ死ぬ。男はつらいよ……。

基本的にはおとなしいが、巣を闇雲に刺激すると一家を守るため働きバチが毒針を刺してくることがある。
しかし他のハチが何十回と毒針をさせるのに対し、ミツバチの働きバチは人間の皮膚に1回針を刺すと内臓が引き千切れ、やがて死んでしまう
巣を守るのは文字通り命懸けなのだ。


○セイヨウミツバチとの関係


ミツバチと言えば、美味しい蜜を集めてくれるという事でも有名である。
日本でも、紀州藩などで古くからニホンミツバチの飼育が行われていた。

だが、明治期に入るとめっきりとその飼育数は減少する。
ニホンミツバチの三倍以上という多くの蜜を集めてくれるセイヨウミツバチが海外から導入され、それに置き換わってしまったのだ。
そう、いわゆる「外来種」の導入である。

普通、外来種が侵入すると、その圧倒的な強さや繁殖力を武器にしてそれまでいた在来種が次々に減少したり、
また天敵がいない環境で異常繁殖したりという場合が多い。

事実、アメリカでは野生化したセイヨウミツバチが各地で増え続けており、
最近は攻撃性や毒性をより高めた混血種まで現れ問題となっている。

日本でもセイヨウミツバチが導入された際、ニホンミツバチが逆に減少してしまうのではないかと懸念されていた。

確かに一部の地域では野生化し、在来のハチたちを押しのけて勢力を広めてはいる。
だが、それ以外の大半の地域では生態系を圧迫するどころか、逆にセイヨウミツバチの方が駆逐されると言う事態が起こっている。

その原因は、日本の生態系にあった。

ミツバチの天敵の一つに、肉食性のスズメバチがいる。
集団で巣に襲いかかり、幼虫など何もかも根こそぎ持っていかれてしまうのだ。
昆虫相手なら何度針を刺しても内臓がちぎれることはないのだが、3倍以上の体格差を有する相手に集団で攻めかかられては勝てるわけがない。
特に日本などアジア地域では、ご存じ世界最大のハチであるオオスズメバチが猛威をふるっている。
それに対抗すべく、ニホンミツバチはある手段を編み出した。

スズメバチは餌を求めて各地を単独で偵察し、
丁度良い場所を見つけるとまず下調べをしてから一旦巣へ帰り、仲間を連れて戻って制圧するという戦法をとる。
そこで、その偵察部隊を抹殺する事で本隊から身を隠す事にしたのだ。

その手段として用いられるのが「熱殺蜂球」と呼ばれるもの。

巣の中に侵入したスズメバチを大量のミツバチが一斉に取り囲み、
羽根を震わせるなどして熱を生み出すことで、内部に48℃という高温の空間を作りだす。
スズメバチの致死温度が自分達よりも僅かに低い事を利用し、敵を熱で蒸し殺すのだ。

およそ20分後、残されるのはあのオオスズメバチの息絶えた姿である……。
もっともニホンミツバチも寿命をすり減らす代償があり、再びオオスズメバチに襲われた場合は熱殺蜂球に参加した個体が迎撃して巣に残された個体へ後を託す生存戦略を採っている。

一方のセイヨウミツバチも、大群でスズメバチの腹を圧迫し、
そこにある呼吸器官を塞いで窒息死させる「窒息スクラム」という手段を持っており、
また場合によっては蜂球による攻撃を行うこともあるのだが、あくまで対象は原産地のスズメバチ。
窒息スクラムはオオスズメバチ相手には力が足りず、蜂球もニホンミツバチに比べて高温を出せないため、
「敵を針で刺してわざと暴れさせる」という危険な手段で足りない熱を補っている。
いずれにせよ超巨大なオオスズメバチに対しては為すすべなく、僅か数時間で無抵抗のまま巣が全滅してしまうのである。
あまりにもインフレ化した日本の生態系の強さについていけなかったのだ。
しかし最近はセイヨウミツバチも 熱殺蜂球を使い出した。
正確には共通の祖先の蜂が会得していたのだが、環境のために必要性がなく忘れていた古代の技を思い出したらしい。
セイヨウミツバチ「いつまでもやられっぱなしだと思うな-!」

また、偵察を殺しきれずオオスズメバチの本格攻撃を受ける事になったとしてもニホンミツバチは簡単には全滅しない。
ニホンミツバチは適わぬと見れば即座に巣を放棄し、新たな場所に巣を作る。

木などに大量のミツバチが集まっていたりするのは、オオスズメバチの攻撃など様々な事情で巣を放棄したニホンミツバチの集まり。
全滅するよりは巣を捨ててでも群が生き延びる戦略である(貯蔵した蜜や幼虫などの多くを捨てるのでリスクはあるのだが)。

もっとも、神経質なニホンミツバチは案外簡単に巣を捨ててしまうため、養蜂をやりにくくしている一因でもあるのだが……

セイヨウミツバチの場合は籠城して無謀にも徹底抗戦を挑んでしまうため、結局は圧倒的な戦力差の前に全滅するのであった。


そしてもう一つ、ニホンミツバチは寄生虫に対しても強かった。

現在世界各地で被害を拡大しているハチの寄生虫に「ミツバチヘギイタダニ」という吸血ダニがいる。
寄生されるとバロア病という病気が感染してしまい、幼虫は死滅、成虫は羽が縮んで飛べなくなってしまう。

だが、実はこのダニの原産地は他ならぬ日本などの東アジア
ずっとこのダニと戦い続けていたニホンミツバチにはあまり効果がない一方で、
抵抗性を持たないセイヨウミツバチは重症化が著しいのである。

それと関連して、現在世界各地で問題視されているセイヨウミツバチの減少、
消失問題の原因の一つにこのダニが挙げられているが、ニホンミツバチ(およびトウヨウミツバチ)に関しては全く問題となっていない。

目まぐるしく変わる季節や恐るべき捕食者、そして厄介な寄生虫との戦いの末、
気付けば外来種を凌ぐ凄まじい強さを手に入れていたニホンミツバチは、近年再び注目を集めている。


ちなみに二種類のハチの見分け方は、腹の色(セイヨウミツバチは黄色っぽく、ニホンミツバチは黒っぽい)と、後ろの翅の模様の違いだとか。




追記・修正は外来種を駆逐するほどの能力を持った在来種の皆様がお願いします。

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最終更新:2023年12月27日 22:07