グングニル(武器)

登録日:2009/09/25 Fri 22:43:03
更新日:2022/11/27 Sun 20:52:15
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北欧神話における主神オーディンの持つ槍。
作品によってはグーングニル、グングニールと表される場合もある。


FF、テイルズシリーズ等多くのRPGで登場する為、北欧神話は知らないがグングニルは知ってると言う人も多い筈。


名前の由来は「貫くもの」という説が一般的だが、古ノルド語では「剣戟音」を意味する言葉でもある。


神の一柱トールの妻シヴの髪は黄金と同義ともされる美しい髪を持っていたが、それを皆ご存じのおバカ息子が刈取り、
ブチ切れたトールが、ロキをぶち殺さんばかりの勢いで彼に髪を元に戻すよう確約させた。
そうした時に、ロキがドヴェルグ(分かり易く言えばドワーフのこと)の鍛冶イヴァルディの息子達と取引をして、彼らによって三つの宝が作り出された。
布のように折り畳み運搬できる至上の船、スキーズブラズニルと、着ければ本物同様になる金髪のヅラ、そしてこのグングニルである。

この三つはオーディン、トール、フレイらに品定めされた後、オーディンへ渡された。
ちなみに、彼らは神々御用達の鍛冶師である。

また、賢者の神ミーミルの管理する知恵を授ける泉で水を飲んだオーディンが、記念品として自作したとする逸話もある。
この槍の柄はトネリコという落葉樹から作られ、穂先にはルーン文字が刻まれている。
自分に槍をぶっ刺して樹に吊るし、自分に自分を献上するという奇行(まあルーンを会得する為の修行?なのだが)にも使用された。


ちなみに投げ槍であるのは有名な話であろう。
この時代は、携帯の問題もあって膂力があれば弓矢より槍が強いので、個人が携帯する武器としては投げ槍がメジャー。
各地の伝承も「相手は死ぬ!」な効力の槍投げが必殺技な場合が多い。
この槍について端的に書けば
『ぼくのかんがえたさいきょうのぶき』(by 古代の人々)


その性能は凄まじい。
『古エッダ』やその元となった伝承の時代には鍛造(特に鉄等の)というのは魔法のようなものと捉えられていた、
という説もあるが、それを表現するかのように、オーディンが生み出したルーン文字を刻んだことにより、
あらゆる鎧(要は守り)と貫くとも言われている。

更に、投槍の欠点は一回投げるとそれまでという点にあるが、投げれば相手に必ず命中する完璧なホーミング性能に加え、
自動で持ち主の所へ返って来る、チートじみた武器である。
この槍の穂先を敵に向けると、自陣は必ず勝利する、というチートを超えた力も持っていた。

考古学の視点から見ると投げ槍は大体1mか1m半辺りの長さである為グングニルも同じ位の長さと思われる。
ただし、オーディンは巨人なのでこのグングニルも馬鹿でかい槍だったんじゃないか。という説も存在する。
オーディンはともかく、小人のイヴァルディの息子らがどうやって作ったんだ……。

柄を神聖な樹とされたトネリコの枝から作ったためにあらゆる武器でも破壊出来ない、とする説もある。
トネリコは世界を支える世界樹に近い種、もしくは儀礼等では同一の神聖な樹と認識されてもいたため、
ワーグナーは『ニーベルングの指輪』内で、
「この髭のおっさんが世界樹に枝をむしりとった所為で世界樹が枯れた」
という独自設定を編み出したりもしている。
このトネリコの枝の頑丈さ云々については、どうやら最近適当に作られた設定という訳でもないようだが、確かなソースはよく分からない。



どうにもオーディン的に便利らしく、シグムンドが戦っていた時に、こいつでシグムンドの剣(後のグラム)を折ったりしている。
このグラムもオーディンの私物であり、樹から引き抜けた戦士に対する寵愛の証なので、これを自力で折ったということは、すなわち
「お前もそろそろヴァルハラ来いや」
という意思表示を意味するものでもある。

最終決戦ラグナロクの際もオーディンと共に巨大な狼のフェンリルと戦うものの、持ち主もろとも呑み込まれてしまった。

……胃の中で刺さってそう。まあ、そもそもフェンリルもオーディンが死んだ後に息子のヴィーザルに殺されてるが。





最も有名な伝説の槍ということで、様々な創作物において三指に入るくらいの性能として登場することが多い。
主神の槍でありながらも、ラグナロクにおける末路が末路なだけに、最強武器よりどことなく使い勝手が良くない調整をされていることも間々ある。
かなり扱いが悪いものもあるが、アニヲタ界で比較的有名だろう例としては下記がその一例である。


FINAL FANTASYシリーズ

作品自体が圧倒的知名度を誇り、このゲームで初めてグングニルという単語を目にした当時のチビッコ(現大きなお友達)も少なくない。
主神の振るう強大な槍だが、

製作スタッフ「召喚獣オーディンは即死技使いにしよう。武器は勿論グングニル」
天野氏「オーディン描いたよ。武器は剣ね」
製作スタッフ「……オーディンの武器は剣ですね。決定。即死の剣っつったら……斬鉄剣かな」

という次第で、グングニルはデビュー前から悲しい運命を背負っていた。
しかし、オーディンが即死耐性のある敵にもひたすら斬鉄剣で斬りかかる。
そんな、かつて存在したどこぞのザラキマシーン染みた存在にならないように、即死耐性持ち用の攻撃としてこの槍は登場機会を得た。


召喚獣の技としては、斬鉄剣の代打を務める残念性能の技扱いされることもあるが、
燃費や登場時期の割には高威力で、かつ大抵無属性な為に汎用性が高い。終盤まで重宝するプレイヤーも少なくない作品もある。
……斬鉄剣にはとんでもない黒歴史が有ったりするしね。

装備としては、作品によっては最強武器より総合能力が高い作品もあるが、大抵の場合最強武器が手に入ると手放される。
ただし、キマリさんに関しては、最強の武器である七曜の武器が、入手がクッソ面倒な上に、最大HP依存という扱い難い性質を持つ。
そのため、自分なりの最強武器を造ろうとして生まれたこの槍を持たされるケースが多い。


こんなグングニルもFF9に限ってはイベントシーンで大化け。
この作品における召喚獣の強大さを示すイベントシーンではあるのだが、オーディンさんが放り投げたこのグングニルのただの一刺しで、
街一つが瞬く間に壊滅した

…………何故ベストを尽くしてしまったのか。いや、普段からべストを尽くさないのか。


Fateシリーズ

他の作品同様極めて有名な武器なので、宝具として出てくる。例によって、『大神宣言』なる厨二なルビ付。持ち主は無論オ-ディン。
これも北欧神話の他の宝具の例に漏れず、遠距離での強烈な因果逆転効果等があるらしい。



この宝具が作中で使用されたのは二度。

士郎が、キャスター(Fate)アーチャー(Fate)から、囚われたセイバー(Fate)を救出する為に、
バーサーカー(Fate)陣営に共闘を申込みに行き、バーサーカーがギルガメッシュに圧倒され、『ゲイ・ボルクの原典』で止めを刺されたのが一度目。
そこで士郎達が立ち往生していたところへ、ランサーが協力を申し出て、それを受諾し共にキャスターの拠点へ向かう。
そこに立ちはだかったアーチャーの足止めをランサーが引き受け、『突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)』『熾天覆う七つの円環(ローアイアス)』が激突。
そこで『大神宣言』についてアーチャーが語ったのが二度目。




戦姫絶唱シンフォギアシリーズ

この作品ではガングニール表記。元ネタは同じ金子彰史氏作品のワイルドアームズ3に登場する武器から。
第3号聖遺物「ガングニール」の欠片を基に作られたシンフォギアシステム。
この作品のキーアイテムの1つであり、ある意味ではこのガングニールを巡る物語ともいえる。(特に2期まで)
装者は天羽奏立花響マリア・カデンツァヴナ・イヴ
同じ聖遺物から造られたものだが、装者に応じてアームドギアや兵装に個性が出ている。詳しくは個別項目を参照のこと。  



テイルズオブシリーズ

多くの作品に登場するが、作品によって表記がグングニルだったりグングニールだったりと、一定していない。
また扱いも、接近戦用の槍だったり投げ槍だったり、中盤の武器だったり最強の槍だったりと一定していない。
初登場のファンタジアでは、人間がオーディーンの墓から勝手に持ち出した物とされており、
クレスがアルヴァニスタ王子を救出した際に、王子を操っていたジャミルが持っていた物を報酬として受け取るも、
クレスは城を出た際に「そこの剣士! 分不相応なものを持つでないぞ!」という謎の声を聞く事になる。
その後のイベントで、クレスは声の主であるヴァルキリーに呼び出され、槍を返す代わりに彼女のペガサスを一時的に借りる事になる。



終わりのクロニクル

意志を持つ10th-Gの概念核兵器「G-Sp2」(Gの読みは「ガングニール」)として登場。
全竜交渉部隊の一人風見・千里が装備しており、光の翼も装着した彼女が振るうその様は、最終巻では戦乙女に例えられている。
通常時は機殻に覆われた槍だが、形態変化により「光砲」→「光竜を召喚」と派手になっていき、ラストで披露した最終段階では光竜で長大なる「真大神槍(タイタニックランス)」を形成、大群を薙ぎ払った。




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最終更新:2022年11月27日 20:52