マーズ(横山光輝作品)

登録日:2011/06/24(金) 19:15:02
更新日:2024/02/19 Mon 18:39:43
所要時間:約 8 分で読めます




【概要】

本作はかの横山光輝によって発表されたSF漫画作品。冷戦期のSF作品で度々見られた「高度かつ理知的な宇宙文明から醜い内輪揉めを続ける未熟な地球人への警告」という題材を扱った作品の一つであり、当時としては衝撃的なラストシーンで幕を下ろす。

ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』や漫画『地球が燃え尽きる日』には本作に登場する監視者や神体がスターシステムにより登場。むしろそちらの方が有名だろうか。

【あらすじ】

海底火山の影響で誕生した秋の島新島の取材に向かった岩倉記者は、島に全裸で佇む謎の少年と遭遇する。
保護された少年には言語を含めた一切の記憶がなく、身元も不明であったことから、収容先の病院の院長が面倒を見ることになった。
少年は周囲の人々を観察して言語や文化を分析・習得するという超人的な学習能力を発揮し、さらにはレントゲン写真に頭部が写らないという奇妙な特徴が明らかになった。
世の人々が少年の正体を疑問に思う中、少年に接触を試みる謎の男が現れ…


【登場人物】

◆マーズ
秋の島新島に現れた長髪の謎の少年。
その正体は太古の昔に地球を訪れた異星人が生み出した無性生殖人間(すなわち人工の生物)であり、異星人が用意した地球監視システムの要であるが、海底火山の影響で予定よりも100年早く覚醒してしまったために任務遂行に必要な知識を学習できず、最初は自分の正体どころか言葉すら知らなかった。

知能や身体能力は地球人の比ではなく、短時間なら数千度の超高温の環境下でも活動でき、さらに髪を鋼のように硬い針に変えて飛ばす攻撃も使える。
反面、負傷は地球の医療技術では治療できないうえに、一定以上の負傷は秋の島新島の収容施設にある人工細胞液の容器がある設備で治療しないと全身の細胞が壊死してしまう。

地球人に保護されて生活していたために地球人に対して敵意を持たず、あくまでも任務を遂行しようとする監視者たちと対立することになる。
だが、彼の地球人への好意はアクシデントから生じた偶然の産物に過ぎず、作中では守っているはずの地球人にすら「今のマーズは『壊れている』だけ。『正常な状態』に戻ったら即座に地球人を滅ぼすだろう(意訳)」と言われてしまっている。

神体の攻撃に恐怖する地球人から迫害されながらも、マーズは相次ぐ苦戦の末に最後の監視者と神体ラーを倒すが……

◆岩倉記者
マーズを保護した新聞記者。
物語中盤、神体攻略のヒントを得るために、マーズの収容施設がある秋の島新島の調査に向かうが島に取り残されてしまう。
その後、サバイバル生活をしながら異星の言語を一人で解読するという一介の新聞記者としては異例の能力を発揮し、地球監視システムの全容を解明したが…


◆院長一家
保護されたばかりのマーズが世話になっていた病院の院長とその家族。
マーズの地球人への認識は彼らとの暮らしで培われたものだが、神体との戦いの始まりと同時にフェードアウトした。


◆総理大臣と防衛庁長官
地球の運命を握るマーズが日本で保護されたために苦労するハメになる。
ラーの襲撃で死亡するが、岩倉記者のメモから判明したラーの攻略方法をマーズに伝えることには成功した。


◆一般市民
ある意味、真のラスボス。
ラーを破壊できないマーズに石を投げ、いざ攻略に成功すると、
神体の全滅と地球の無事を両立できることを知らされていなかったために、マーズが自分可愛さに嘘をついていたと誤解し…… 


◆監視者
マーズと同時期に地球に残された6人の無性生殖人間。マーズよりも早く目覚め、長年に渡り地球人を監視していた。
マーズと同レベルの身体能力を持つほか、各々が地球監視メカ「神体」の操縦者である。マーズを倒すために乗機を自分もろとも自爆させるなど、使命の達成のためならば自らの命さえ惜しまない。

作中の時点では地球人は滅ぼすしかないという結論に至っており、地球人殲滅に否定的なマーズを見限って自分達で直接地球人を滅ぼすべく、六神体を起動させる。


◆異星人
太古の昔に地球に立ち寄り、当時の地球人の闘争本能の高さを恐れ、地球にマーズを始めとした地球監視システムを残していった。
彼らの文明あるいは種族が作中の時点で存続しているのかは不明。



【メカニック】

◆タイタン
マーズの覚醒に反応して起動した巨人型ロボット。
武器を持たない地球文明の戦闘力を分析するための調査メカでありながら、自衛隊の攻撃が効かない程度の性能を持つ。
地球人殲滅に賛同できないマーズの命令で日本を離れた隙を突かれ、米軍に核で撃破される。


◆ガイアー
タイタンが破壊されたとき、すなわち地球文明の戦闘力が宇宙の脅威になりうる段階に達したときに起動する最終兵器。マーズの護衛役も兼ねており、マーズの生命の危機には真っ先に駆け付ける。
地球監視システムの中核を為す存在だが、マーズの命令に必ず従うようにプログラムされているため、マーズが神体を迎え撃つための切り札として使われた。

飛行能力を持ちその装甲やバリアなどの防御機構は神体の攻撃を寄せつけず、神体のバリアを貫通する光子弾や神体すらも逃れられない強力な人工引力、触れたものを分解・消滅させる両手などの装備を持ち、地球の兵器では歯が立たない神体すら完封する驚異的な強さを誇る。

また、地球を消滅させられるだけの威力の爆弾を内蔵し、

1.マーズが自爆指令を出す
2.マーズが死亡する
3.ガイアーが破壊される
4.全ての神体が外部からの攻撃で破壊される*1

のいずれかの条件が満たされると起爆する。
4番目の条件は岩倉記者が秋の島新島に行くまでは6人の監視者しか知らなかったが、それ以前からガイアーが神体を倒す度にアゴに設置された6つのランプが一つずつ点灯する演出で伏線が張られていた。

なお、地球の科学力ではガイアーと爆弾の解体は不可能であり、作中では爆弾の処分のために召集された技術者たちが溶接の跡すら見当たらないガイアーのボディに愕然としていた。

ついでに言うとガイアーは人型ではあるが腕以外はほとんど動かず、作中で確認できる主なポーズは

1.直立して胸の前で腕を交差
2.直立して腕を広げる
 \(=_=)/
3.直立しながら相手をハグして消し去る

の3つである。


◆六神体
監視者の乗り込むメカ。単体で北米大陸を滅ぼせる力を持ち、通常兵器はおろか、直撃しない限りは核兵器ですら通用しない。
なお地球監視システムの本命であるガイアーには勝てないように造られている。

◇ウラヌス
最初にマーズと戦った神体。白髪の初老の男性の姿をした監視者が操縦している。
ダルマのような頭だけの姿で、気球に偽装して登場した。
一定範囲内の気象を操作する能力を持ち、のような装置を介すれば真空状態さえも作り出せる。
バリアを張ることも可能だが、ガイアーには攻防ともに歯が立たず、監視者ごと塵になる。


◇スフィンクス
スフィンクスの中から現れた神体。サングラスをかけた監視者・ミロ*2が操縦する。
「黒光りする金属製スフィンクス」という表現がそのまま当て嵌まる姿をしている。
全身から太陽と同等の高熱や磁気嵐を発する能力を持ち、熱波の応用技として蜃気楼を発生させることもできる。
蜃気楼でマーズを翻弄するが、本体の位置を見破られた直後にガイアーの光子弾で蜂の巣にされて爆散した。


◇第3の神体(名称不明)
2本の角を生やした巨大な人面のような姿の神体。片眼鏡をかけた監視者が乗る。
金属をも溶かす高圧電流や多数の偵察用小型飛行メカを持つ。
ガイアーの破壊を諦めた監視者が狙いをマーズ本人に切り換えたため、ガイアーを引き付ける囮として乗り捨てられ、直後にガイアーの攻撃で消滅した。
神体を失いながらも監視者はマーズを追い詰めるが、あと一歩のところでガイアーに追いつかれ、光子弾の直撃で死亡する。


◇シン
スキンヘッドの監視者が操縦する、土偶のような姿の神体。なお、これ以降の神体は全て、核爆弾を1発内蔵している。
目から放つ破壊光線や全身を回転させて穴を掘る能力を持つ。
戦闘能力ではガイアーに敵わないが、マーズが体細胞の壊死で衰弱していることに気付いた監視者によって、マーズを地震で殺すために地中で自爆した。
マーズはガイアーの人工引力で救助されたが、誘発された土砂崩れに巻き込まれて虫の息になっていた。


◇ウラエウス
潜水艦のような姿の神体で水中でも活動可能。さらに飛行能力もある。外見的特徴の乏しい監視者が乗り込む。触手のようなパーツから破壊光線を発射する。
シンの連絡でマーズの体細胞が壊死し始めていることを知り、治療を阻むために秋の島新島の収容施設を攻撃するが、自動防衛装置に撃退され、学習装置を破壊するに留まる。
後に東京で破壊活動を行うが、マーズの陽動作戦にかかって戦闘不能になり、自爆した。


◇ラー
マーズと最初に接触した割れ顎の監視者が乗る最後の神体。
球形のボディの内部には触手にもなる突起や第3の神体の同型の小型メカが収容され、破壊光線や電撃、体当たりで戦う。
ガイアーの最後の起爆条件を知って手が出せないマーズを苦しめるが、内部機器の破損は起爆条件の対象外になることを知ったマーズと自衛隊との共同作戦で神体自体の弱点を突かれ、視界を完全に塞がれてしまう。外に出た隙に内部に侵入したマーズにコックピットを破壊され、直接対決で監視者も倒される。
だが…

【その他】


◆秋の島新島
マーズが出現した場所。彼はこの地下にある施設で目覚めの時を待っていた。
ここには学習装置やマーズの治療が可能な人工細胞液のタンクがあり、外敵の攻撃に備えた応戦装置も装備されている。
応戦装置は溶岩に埋もれていたため当初作動不能になっていたが、ウラエウスの攻撃によって偶然溶岩が除去されたため
機能するようになる。ただし、島に近づくものすべてを無差別に攻撃してしまうため岩倉記者が救出される機会も潰してしまった。
島に近づいた自衛艦と戦闘状態に入ってしまったためマーズによって応戦装置は解除されたが、マーズたちが島を離れた後
彼がこれ以上の知識を得られないようにするため無防備になったところをウラエウスの攻撃で破壊された。


【映像化】


六神合体ゴッドマーズ

1981年~1982年に放送されたテレビアニメ。
原作者の了解のもとに「マーズ」「ガイアー(ガイヤー)」「地球破壊爆弾」ぐらいしか残らない程のアレンジが加わり、最早別の作品となった。
詳細は項目参照。

マーズ

1994年に発売されたOVA。ガイアーが割と動く。
設定や登場人物、ストーリーに変更が加わっているものの、地球の存亡を巡るマーズと監視者の戦いという根幹は維持されている。
「4巻構成だが、売れなかったら2巻で打ち切り」というKSSの謎方針のせいで2巻で終了。次回予告まで流しておきながら、である。
一応、ソノラマ文庫で小説版が発売され結末まで描かれた。原作の後味の悪さを唯一踏襲している。

神世紀伝マーズ

2002年~2003年に放送されたテレビアニメ。AT-Xのみだったためか些かマイナー。
シリーズ構成・メインライターは「六神合体ゴッドマーズ」と同じく藤川桂介だが、今回は原作を概ね踏襲。
その上で登場した新キャラクターとマーズの来歴の変更、そして結末のアレンジについては賛否両論。



追記・修正はガイアーの爆弾をなんとか処理してからお願いします

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 漫画
  • 横山光輝
  • ロボット
  • SF
  • バッドエンド
  • 神体
  • マーズ
  • 爆発オチ
  • ゴッドマーズ
  • 地球破壊爆弾
  • 超展開
  • 絶望エンド
  • OVA
  • 週刊少年チャンピオン
  • 秋田書店
  • アニメ
  • ケイエスエス
  • スタジオガッツ
  • プラム

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年02月19日 18:39

*1 ただ、後から考えたせいかシンとウラエウスの自爆はカウントされている矛盾がある

*2 他の監視者は全員神体の名前で呼び合うので、「神体ミロ、通称スフィンクス」の可能性もある