きさらぎ駅

登録日:2012/09/15(土) 00:51:16
更新日:2023/09/22 Fri 00:32:21
所要時間:約 3 分で読めます




とある私鉄を利用して行くことができる無人駅。
周囲に何もないことから利用者が非常に少ない、その沿線で一、二を争うほどマイナーな駅として知られる。
書く事も特にない。







追記・修正はきさらぎ駅に一度訪れてからお願いします。

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……というのは嘘で、2ちゃんねるのオカルト超常現象板において語られた奇妙な駅、またはその話を発端にする都市伝説のこと。
「きさらぎ駅」という名称の駅はJR・私鉄のいずれにも存在しない。

殆どの場合において「きさらぎ駅」とひらがなで記述されるが、「如月駅」「鬼駅」という漢字表記も稀に見られる(読みはいずれも「きさらぎ」)。




その話を大まかにまとめると次のようになる。

当該スレッドを建てたはすみというネットユーザーは、帰宅のため某私鉄(遠州鉄道だと思われる)に夜乗車したが、いつになっても停車しない。
おかしいと思い先頭の運転席を見たらそこには誰もおらず、さらには他の乗客が皆眠りこけているという不可解な状態であったという。

その後、ようやく停車した駅で降りたものの、その駅は『きさらぎ駅』という聞いたことのない駅名で、降りたのも自分一人だけであった。

きさらぎ駅は無人駅で、周りには住居もタクシーも何もないという殺風景な場所にあり、駅には時刻表すらなかった。
乗ってきた電車は既に駅から去っており、はすみ氏は夜中、見知らぬ土地(駅)に一人取り残されるという状況に置かれてしまった。

これはまずいと判断したはすみ氏は警察に連絡するもイタズラと思われ相手にされず、携帯電話のGPSで現在地を確認しようともしたが、エラーを起こしてしまう。
はすみ氏の親は真剣に対応してくれたが、地図にも駅名が乗っていないらしく迎えに行くのは困難と言われたため、仕方なく来た道(線路)を歩いて帰ることにした。

線路を歩いている最中にも、深夜にもかかわらず遠くから鈴や太鼓の音が聴こえたり、
後ろから「線路を歩くのは危ない」と声を掛けられ、振り向いたら離れたところに片足の無いおじいさんがいたがすぐに消えてしまったりと、
数々の怪奇現象に見舞われたはすみ氏だったが、やがて見えてきた『伊佐貫』というトンネルを目指し、近付いて来るかのような太鼓の音を無視しながら歩き続けた。

そしてトンネルを抜けたはすみ氏は、深夜にもかかわらず何故か線路上にいた人と遭遇。
どう考えても怪しいとスレ住民に止められながらも、はすみ氏はホテルが近くにある最寄り駅まで車で送るというその人物の申し出を受け、車に乗ることに。

はすみ氏は車中で件の最寄り駅を尋ねたが、元々乗った新浜松駅から遠く離れた『比奈駅』であると答えられ、「そんなはずはない」とはすみ氏は困惑。
駅に向かっているはずの車はどんどん山道を進み、運転手も話に応じることなく意味不明な単語を呟き始めたため、不安になったはすみ氏は逃げることを決意。

しかし、「バッテリーがピンチなので一旦書き込みを止める。隙を見て逃げようと思う」という書き込みを最後に、はすみ氏からの書き込みは途絶えてしまった――

というもの。


いかにも真剣そうに語るスレ主のはすみ氏や話全体の不気味な雰囲気から、その後広まり話題となった。
釣り宣言も無いまま終わったため(もっとも話の締め方は典型的だが)話の真偽も謎で、「きさらぎ駅」の有無もまた不明のままである。
また、車に乗せた人物のいう『比奈駅』という駅は実在するが、はすみ氏が通ったという『伊佐貫』という名前のトンネルは(少なくとも書き込み時点では)存在しない。


その後、同じくきさらぎ駅に着いたと報告した人物も現れたが、話を盛り上げるために出した写真によりガセと判明。
これによってきさらぎ駅、ひいてははすみ氏の書き込みそのものもガセだと主張する人もいるが、
あくまでこの人物の書き込みがガセだったというだけで、はすみ氏は一切関係していない(と思われる)ため、
大本であるはすみ氏の方までガセとする証拠にはならない。

もっとも、はすみ氏もはすみ氏でかなり危機的状況なのに割と頻繁に掲示板に書き込む余裕があったり(不安を紛らわせるための話し相手が欲しかったのかもしれないが)、
深夜で視界が悪いにもかかわらず10m以上離れた場所に立っている片足の人物を(声で判断したのかもしれないが)おじいさんと認識したり、
線路上に立っている、どう見ても不審者の「車に乗せていく」という提案を受けたり(ヒールが折れたなどの書き込みから、はすみ氏は女性と思われる)と、
冷静に読み返すとツッコミどころがあるのだが(スレの書き込みでもそれらの点に突っ込むものがある)。

それに加え、乗車中に「いつもは5分か長くても7、8分で停車するのですが」と書き込んでいるが、
新浜松駅がある遠州鉄道は全線単線の各駅停車であり駅の間隔はだいたい1、2分で、7分どころか5分も掛かる区間はない他、
「乗り間違えたかもしれない」とも書き込んでいるが、遠州鉄道は上述の通り単線かつ各駅停車しかなく、
乗り換えも始発駅の「新浜松」*1と終点の「西鹿島」しかないためまず乗り間違えることはないなど、
遠州鉄道を頻繁に使っている人物にしてはおかしな点がみられる。

あまりに焦って混乱したという可能性もあるが……。


なお、この書き込みから七年後、再び某掲示板にはすみ氏を名乗る女性が書き込みを行っており、
彼女によると、携帯電話の電源が切れた後、自動車は暗い森の中で停車し、何かの光が見えたという。
運転手は相変わらず意味の分からない単語を呟いていたが、そこに謎の男性が現れ、その瞬間辺りが光って車に衝撃が。

その時運転手は消え、現れた男性ははすみ氏を見るなり「なんでここにいる!ここにいてはダメだ!」と慌てた様子で警告し、
「今の運転手は、消した!今のうちに逃げるんだ!」と言ってはすみ氏を車から降ろし、混乱する彼女に「光の方へ向かって歩け」と告げた。

いきなりの出来事にはすみ氏は困惑しながら、泣きながら男性の言う通りに光の方に走っていくと、まぶしさが増していき、
そして目をあけると最寄り駅におり、自動車に乗った両親がこちらを呼んでいた。

安心した彼女が時間を確認すると、彼女がきさらぎ駅に迷い込んだ2004年の1月からおよそ7年後の2011年4月になっていた…という。

七年後という時間経過もあって、書き込んだのがはすみ氏本人であるという証拠はない上、
既に『きさらぎ駅』及びその結末の知名度は高かったこと、最後の「気付けば七年経過していた」という〆は不可思議ながら典型的なことから、
本人かどうかは疑わしいと言わざるを得ず、はすみ氏を名乗る第三者が書いた可能性の方が高いものの、
もしもこれが本人で、本当に2004年から2011年に現れたというのであれば、まさしく現代の神隠し事件と言えるだろう。


「いつも通りの生活から、急にわけのわからない状況に放り込まれる」という恐怖感から、
内容が事実か創作かは別として、秀逸な怪談としてネットを中心に語り継がれるようになり、
毎年夏頃になるときさらぎ駅関連の話題が掲示板に上るようになったほか(ただし、本スレが立ったのは冬である)、
似たような「存在しない駅の怪異」に巻き込まれたとする書き込みも見られるようになった。
近年ではテレビ番組で取り上げられるなど、一般の人々にもその存在が知られてきている。


ちなみにこの都市伝説は遠州鉄道の中の人にも認知されており、担当者は「さぎの宮駅をきさらぎ駅と見間違えたのでは?」と語っている。


真偽は不明だが、はすみ氏の書き込みや上述のガセ以降も「きさらぎ駅に迷い込んだ」とする体験談はちらほら語られ、
はすみ氏の顛末から「一度迷い込むと現実世界に帰ってこられない」という展開ばかりかと思いきや、
「何かしらを燃やして煙を上げる」ことで現実世界に戻ってこられたという話や、
異界の車掌や住民の協力を得て現実世界に戻ってこれたという話もあり、
迷い込むと二度と現実世界に戻れない恐怖体験談から、ふとした拍子に異世界に迷い込む不思議体験談へと話の趣きが変化しつつある。
ちなみに、はすみ氏とは別の体験談曰く、前後の駅は「やみ駅」「かたす駅」とそれぞれ書かれていたらしい。


この話は海外でも、特に台湾や香港で「日本の代表的な怪談」として人気を博しているようで、きさらぎ駅のように架空の駅を題材にした都市伝説が作られたり、
台湾のホラー作家が自身が展開する都市伝説の作品群の一つとしてきさらぎ駅を題材にした長編小説を発表したりしている。

日本でもホラー小説『裏世界ピクニック』シリーズで取り上げられた他、2020年にきさらぎ駅を題材にしたVRゲーム『the station -VRきさらぎ駅-』が発表されたり、
インディーズゲームクリエイターチーム「Chilla's Art」がきさらぎ駅も登場するホラーゲーム『幽霊列車』*2を発表したりしている。



追記・修正は片足のおじさんに注意されてからお願いします。

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最終更新:2023年09月22日 00:32

*1 おまけに乗り換えと言っても、新浜松駅からの乗り換え先である東海道線の「浜松駅」は完全に別の建物で、ぼちぼち距離がある。

*2 グッドエンディングでは、上述の後日談を下敷きにしたと思しき展開の生還EDとなる。