ヤヤ・バラード/Jaya Ballard(MTG)

登録日:2011/06/02(木) 13:23:23
更新日:2024/03/18 Mon 16:15:42
所要時間:約 5 分で読めます




数世紀前、紅蓮術師の灯が焦熱の火災を起こした。


マジック:ザ・ギャザリングには様々なプレインズウォーカーが存在する。
ヤヤ・バラードもそんなプレインズウォーカーの一人である。
古参プレイヤーならば一度はフレーバーテキストで見かけた事のある名前だろう。

全ての赤使いの師であり母と呼べる存在。
誰よりも自由な皮肉屋。

それが彼女である。


元々は甲鱗様のいたアイスエイジ期のドミナリア出身の魔導師。
アライアンスや基本セットでもフレーバーテキストに登場。
ザ・ダークからアライアンスを題材にした小説三部作では2作目と3作目のメインヒロインとして活躍。
赤毛で、小麦色の肌、肩幅の広い、少年っぽい顔立ちの美人。
氷河期にもかかわらず日焼けしているのは、強力な炎の呪文を大量に使うかららしい

元々は魔導師ではなく、ストリートで盗みや強盗などをして生活していた。
ある時、「魔導師ジョダー」の部屋に盗みに入るも捉えられてしまう。
しかし、ジョダーによって魔導の才能を見いだされ、彼の元で魔法を学んだ。
が、赤の魔法を幾つか習得した後、すぐに脱走。
以来、フリーの傭兵として活躍しながら、独学で赤の魔法を極めた。

性格は皮肉屋で、飄々とした喋り口調。
様々な次元で知り合ったいろんな人に皮肉めいた渾名をつけている。

また、酒を嗜み、親友「ベル」の部屋で飲みながらベットでゴロゴロしていたり、馴染みの“居酒屋The Great Dragon(巨龍亭)”に出入りしている。
折り合いの悪かった「グスタ」と“ヤヴィマヤ/Yavimaya”産の強い葡萄酒を一晩飲み明かして和解するなど酒には強い模様。

炎の魔道士として有名であるが、ストーリー中では、むしろ魔術師としてより交渉人や盗賊としての活躍の方が目を惹く。
侵入不可能とされる研究所に忍び込んだり、森の女神を説得したり。時には香水などを駆使して女の武器を使う事もあったようだ。
その為かアイスエイジのキャラクターの多くと面識があり、そのほとんどが仕事相手や友人、敵だったが味方になっている。
しかし、全く関係ない書物を盗み出したり、読書で誤魔化しているつもりが読んでる本が上下逆さだったりとドジな一面もある。

40歳前後には、少年のような丸みはとれ、大人の女性らしいシャープなイメージの顔つきに変わり、目元には笑い皺ともつかぬ浅い皺ができている。
服装は若い頃より落ち着いた感じで、真紅のケープに赤いローブを着込んでいる。
この頃の彼女の姿は、小説『The Shattered Alliance』の表紙に描かれている。
40歳近くになっても、以前と変わらず皮肉たっぷりの口調である。
この口調はプレインズウォーカーとして覚醒しても変わることはなかった。



小説『The Purifying Fire』では、“レガーサ/Regatha”という名の次元における彼女の影響が語られた。

かつて彼女がレガーサに滞在したことから、彼女に感化されたこの次元の炎の魔術師から信奉されるようになり、“ケラル山/Mount Keralia”に“僧院、ケラル・キープ/Keral Keep”が建立されている。
“信奉者Keralians(ケラル人)”は彼女の伝説や彼女のもたらした知識、言葉を教えとして伝えている。
今をときめく赤のプレインズウォーカー「チャンドラ・ナラー/Chandra Nalaar」もその一員である。
ちなみに、彼女が信奉者達に遺した言葉は
「追い詰められた時には一番強力な火力呪文を放てばいい」
といったような非常にヤヤらしいものである。
しかしながら彼女が去ってなお“ケラル・キープ”では『伝説の紅蓮術師』として石像が建っている。
詳しい描写は某萌えキャラ化したチャンドラの漫画にて



時は流れて時のらせんにてカード化。


特務魔導士ヤヤ・バラード//Jaya Ballard, Task Mage (1)(赤)(赤)
伝説のクリーチャー - 人間(Human) スペルシェイパー(Spellshaper)
(赤),(T),カードを1枚捨てる:青のパーマネント1つを対象とし、それを破壊する。
(1)(赤),(T),カードを1枚捨てる:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。特務魔道士ヤヤ・バラードはそれに3点のダメージを与える。これによりダメージを与えられたクリーチャーは、このターン再生できない。
(5)(赤)(赤),(T),カードを1枚捨てる:特務魔道士ヤヤ・バラードは、各クリーチャーと各プレイヤーにそれぞれ6点のダメージを与える。
2/2

スペルシェイパーらしく、赤霊破/Red Elemental Blast火葬/Incinerateインフェルノ/Infernoを内蔵した、まさに彼女らしい能力でカード化した。
最後の能力で自分も焼いちゃうのも彼女らしい。
時のらせん特有の「なんか強いんだか弱いんだかよく分からん結局使われないカード」の典型例……のように思われがちだが、実は一時期《絵描きの召使い》と組んで使われた。
召使いで青を指定することでどんなパーマネントとも1:1交換が可能になるため、《帝国の徴募兵》でのサーチを前提にレガシーのペインターデッキに採用されていたのである。

身体にぴっちりとしたライダースーツのような服を着こなしているものの、その服はぼろぼろで、新たにゴーグルをかけている。
これは塩の嵐が吹き荒れ、何処も彼処も乾燥した、未来の過酷な環境を凌いできたためらしい。
そんな状況下でもヤヤの笑みと皮肉は絶えることはない。
(とりあえず、塩の嵐の使い道は「料理」らしい。)

今となっては笑い話の伏線、次元の混乱の小説版におけるジョダーのセリフ「Jaya's gone.」もポイント。
この言い回しは直訳すれば「ヤヤはいなくなった」なのだが、本来「死んだ」ということを婉曲的に表現する口語表現である。
そのため「ヤヤ・バラードは死んだ」と解釈するのが自然であり、当時のヴォーソスの間で「ヤヤは死にました!残念!これが現実!」「は?いなくなったとしか言われてませんが?」というような、それはもう不毛な議論を起こすこととなったのである。
当時(タカラトミー時代)のストーリー系記事の翻訳はMTGにまったく関わっていないスタッフによって翻訳されていたせいで大混乱をきたしていた。*1今は翻訳も力が入ってるし、ストーリーも公式サイトで読めるいい時代になったが、そんな大変な時代もあったのだ。
最近はそういった「どうとでも解釈できる、伏線になってない伏線」はほとんど存在しない。


彼女の代表的な言葉
かつての日本語訳では男言葉だったが、コールドスナップを境に女言葉で訳されるようになった。一説には一時期まで翻訳版に男性だと思われていたともいわれている。
ただ怪我の功名というべきか、男言葉のおかげで「口の悪い皮肉屋らしさ」が強く出ており、若月繭子氏によるMagic Storyの日本語訳では《インフェルノ》や《倒壊の言葉》の頃を思わせる口調で訳されている。

インフェルノ
『そのむかし、破壊するだけじゃ能がないとぬかす連中に会ったことがある。やつらはどうなったと思う?残らず死んだよ。』

倒壊の言葉
『壁?そんなものがどこにある。』

火葬
『ええ、「こんがり焼けた」って言いえて妙だと思うわよ。』

拾い読み
『かつては偉大な散文も……これじゃ散々ね。』

紅蓮破
『こいつなら、こうるさい水の魔道師どもにうってつけだ。』


愛称は「ヤヤ」「夜々」(カード化当時、放送中だったストロベリー・パニックのキャラクターより)


ストーリー中ではプレインズウォーカーであるが、いわゆる「旧世代プレインズウォーカー」であるため、プレインズウォーカーカードとしてはカード化されていなかった。
しかし・・・

アモンケットでニコル・ボーラスに敗北したゲートウォッチの面々。チャンドラは伝説の紅蓮術師であるヤヤ・バラードから教えを請おうとヤヤのゴーグルを持ち出し、修道院長ルチの制止を振り切りドミナリアへとプレインズウォークを行った。
しかしチャンドラがドミナリアで出会ったのは……


すぐさまチャンドラは振り返った。そこに立っていたのはルチ修道院長で、赤いローブに革と金属の上着をまとっていた。ドミナリアで何を? それが困惑したチャンドラの最初の疑問だった。いや、ちょっと待って、どうやって、ドミナリアに? 修道院長はプレインズウォーカーじゃない。プレインズウォーカーだとは思っていなかった。
「ありえない――どうやって――?」

「それは、私のなんだがね?」

~ドミナリアへの帰還 第8話より~

ヤヤ・バラード/Jaya Ballard (2)(赤)(赤)(赤)
伝説のプレインズウォーカー — ヤヤ(Jaya)
[+1]:(赤)(赤)(赤)を加える。このマナは、インスタントかソーサリーである呪文を唱えるためにのみ使用できる。
[+1]:カード最大3枚を捨て、その後その枚数に等しい枚数のカードを引く。
[-8]:あなたは「あなたはあなたの墓地からインスタントかソーサリーであるカードを唱えてもよい。これにより唱えたカードがあなたの墓地に置かれるなら、代わりにそれを追放する。」を持つ紋章を得る。
5

ドミナリアで遂に登場した、プレインズウォーカーとしてのヤヤ・バラード。
なんと、伝説の紅蓮術師はチャンドラの師匠として彼女の成長を陽に陰に見守ってきていたのである。人工物であるカーンやドラゴンであるボーラス、人間ではあるが(おそらく)時間魔術の影響で極めて老化が遅いテフェリーなどと異なり、年老いた姿での登場である。

チャンドラと異なり盤面、そして相手プレイヤーに一切干渉しない赤としては極めてトリッキーなカードとなっている。
1つ目の能力はマナ加速。赤かつソーサリー、インスタントに用途が限定されるので、必然的にバーンデッキで採用することになるだろう。
2つ目の能力はかき回し式の手札交換。手札は増えないが質は増強できるので腐りにくい。
奥義では墓地からインスタント、ソーサリーを唱えることを可能にする。ルーター効果で墓地に送ったカードも活用でき、手札の枯渇もある程度カバーしてくれる。

活用するなら1つ目の能力による強力なマナ加速を活用できるようにしたい。必然的に赤単かそれに近く、インスタント、ソーサリーを活用するデッキが居場所となる。
しかし登場当初は汎用性が高く強力な《反逆の先導者、チャンドラ》がいたためにたいへん影の薄いカードだった。結局大した活躍をせずにスタン落ち。値段自体はサムトやドビンほど崩れることはなかったが。
運用もさることながら、今後のカードデザインもチャンドラとどう差別化していくかが重要となるということを大きく打ち出した課題の残るカードとなった。

ストーリーにおいては元々、イクサランの物語の最後の最後でちらっと顔見世。ジェイスがウェザーライト上にプレインズウォークしたのを受けて皮肉を言いながら登場した。
この時期はまだ名前は出ておらず、次回のエキスパンションがドミナリアということもあって「まさかあの人が登場!?」という見事な締めくくりに貢献した。
その後ドミナリアにて改めて登場。チャンドラがドミナリアの大地を冒険している最中に突然「モブっぽい口うるさいおばあちゃん」が出てきた挙句正体を現して次回へ続く!となるというしびれる登場を果たす。
日本語訳版ではルチ修道院長が丁寧語、ヤヤ・バラードが男言葉風という口調をつけられていたために口調がいきなり変化し、突然本性を現したような演出に貢献した。特にオールドヴォーソスの首筋に鳥肌を立てた。
どうやら前述のケラル砦の話は「レガーサでお酒に酔った時に適当にやったことが神のごとく崇められてしまい、その数十年後に久々にレガーサを訪れたところケラル砦で神格化されていた」ということらしい。
「自分の教えが歪むのもイヤだし、責任は持たないといけない」と考えて正体を隠して教師になった……という実に赤らしいいきさつだったようである。
その後は「正体を隠してるなんてひどい」と憤慨するチャンドラに「学校でちゃんと基礎を習ってりゃ教えることなんて何もない」と反駁して大喧嘩してカーンに心底うんざりされたり、
ニッサに倣って大地の精霊ムルタニと対話を試みた弟子を見て稽古をつけてやるかと言ったり、スライムフットにビビられたり、ゲートウォッチに「性に合わない」と距離を置きつつもしっかり一緒に戦ったりと往時ほどではないが見せ場を作る。
そして灯争大戦での「整理」対象になるかとも目されていたがしれっと生き残った。ボーラスがギデオンの自己犠牲による加護を受けたリリアナの手で討ち取られた後、後に残され機能停止をした永遠衆というゾンビにラヴニカの人々が八つ当たりしそうになるところを制止しチャンドラと共に故郷を蹂躙され死後もこき使われてきたアモンケットの出身の者達を火葬することで其の尊厳を救っている。
ウルザズ・サーガやミラージュ、インベイジョンや時のらせんという時代が主な活躍の場だったテフェリーとは別の時間を生きていること、
特に最近のサブカルでは非常に珍しい「ギャグ描写のない強いババア」ということもあり今後の活躍にも期待が高まる。

なお実際のジェイスの登場シーンは単にヤヤが「なんだこいつ」と疑問を呈しただけだったというなんとも肩透かしなシーンであった。
そりゃ確かに高速で移動する船に見知らぬやつが突然乗り込んできて顔見知りと話してたらそうも言いたくなるわな……。


敬慕される炎魔道士、ヤヤ/Jaya, Venerated Firemage (4)(赤)
伝説のプレインズウォーカー — ヤヤ(Jaya)
あなたがコントロールしている他の赤の発生源がパーマネントやプレイヤーにダメージを与えるなら、代わりにそれはそのパーマネントやプレイヤーに、その点数に1を足した点数のダメージを与える。
[-2]:クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。敬慕される炎魔道士、ヤヤはそれに2点のダメージを与える。
5

灯争大戦でのヤヤ・バラード。同エキスパンションに多数収録されている「常在型能力とマイナス能力を1つずつもつアンコモンプレインズウォーカー」の1枚。
マイナス能力でショック(実質稲妻)が2回まで使えるが、常在型能力が強力なので使いどころは見極めたい。
リミテッドでは火力を飛ばす能力を持った赤のコモン・アンコモンのパーマネントが複数あるのでそれらのサポートに向いている。
構築ではやはり5マナという重さがネック。エルドレインの王権以降、赤の発生源の与ダメージ強化能力を持ったパーマネントが次々出てきており、あえて採用する理由に乏しい。
リミテ用と評してもまったく過言ではなく、環境初期に構築でこぞって使われたティボルトと違ってこちらはまったく活躍しなかった。

灯争大戦のPWの例に漏れず、前河悠一氏が担当した日本語版の特別イラストが存在する。頭巾をかぶった白髪のイラストで、英語版のものに比べるとだいぶ若々しい。特に肌。
枠を燃やさんばかりに炎を撒いているのだが、マナ・コストだけは燃やしていないのがポイント。最近は名前を隠してしまうPWも増えたが、ここだけは絶対に隠せないようだ。


炎の精霊
「紅蓮術を本で学びたいなら、それを燃やしてみるのが一番だね。」
――ヤヤ・バラード

ヤヤの挨拶
「客人だって?だったら、伝統あるケラル砦流の歓迎をしてやらなくては失礼に当たるねえ。」

フレーバーテキストも相変わらずである。


こいつなら、暇してるアニヲタどもの追記修正にうってつけだ。

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最終更新:2024年03月18日 16:15

*1 ヴェンセールを「ヴェンサー」と訳すなど。これが不評だったためか、第10版の頃にはヴォーソスの重鎮である若月繭子氏をストーリー解説に起用している。ただし当時のスタッフを擁護するわけではないのだが、当時のストーリーは本当にもうぐちゃぐちゃのめちゃくちゃであり日本人で全貌を把握できている人なんてほぼいなかったことも併記しておく。MTG wikiの《ウルザの罪》絡みの話も雑誌に載っていた公式記事を参考に書いたものであり、英語版まで追いかけている超熱心なヴォーソスが書き直すまでおおもとの情報が間違っているなんて気づけなかったのである。