大同人物語

登録日:2010/01/02 Sat 18:52:01
更新日:2022/06/12 Sun 09:58:42
所要時間:約 5 分で読めます




手前ェ同人なめてんのか!!


『大同人物語』は、コミックガムにて連載されていたヒラコーこと平野耕太による漫画。
発表順で言えば『進め!!聖学電脳研究部』に続く、エロじゃない作品第二弾。

内容は珍奇なカッコマンが同人誌とかコミケに血道をあげる話。
同人を題材としているが、その内容は仲良しこよしのほのぼの物などでは無く、互いにしのぎを削る策謀渦巻くドロドロの戦場を描いている。
絵は今のヒラコーと比べたらかなり未熟だが、独特の平野節とも言えるセリフ回しは当時から健在で、時折語られる同人論、オタク論などは見逃せない。

あと、やはり平野作品なのでシリアスな時とステポテな時の落差が激しい。


■あらすじ

1994年の冬、晴海にて「オタク」最大のイベント「マンガマーケット」'94冬が開催された。

物語の主人公・木之下友はプロ作家、柴田のサークルで自分の本を委託させてもらう代わりに売り子をしていたが、柴田は木之下の本を公然とバカにし始めた。

最初こそ耐えていた木之下だったが、柴田のあまりに傲岸な態度にキレ、柴田をこき下ろした後にその場を去る。
しょんぼりとしながら帰り道を行く途中、本を誤って落としてしまうが、道行く男の一人が手伝ってくれたおかげで事無きを得る。
その男は木之下の同人の欠陥を指摘した後、「柴田のような大物気取りのバカをなんとかしたいのだろうが、いまの君では知識もノウハウもないから無理だ」と言う。

木之下が謎の男が何者かと問うと、
俺の名前は明智慎一、君と同人になる運命の男だ
と謎の男――明智は答えた。

かくして謎の同人ゴロ明智と木之下は運命的な出会いを遂げ、その誘いのもとに木之下は明智、そしてもう一人のメンバーである雑賀と同人になり、同人誌を創ることになる。


■敵

題材が同人なのに敵がいると言うのも少しおかしな話かもしれないけど、この作品では明確な敵がいる。
その名も「黄金の夜明け(ゴールデンドーン)」とその一党。

本当に一握りしかいない真の同人ゴロである。
「織田」に率いられた巨大サークル。
元は明智と織田の二人だけのサークルだったが、傘下に外周大手級10を中心とする37の男性向け同人サークルを始めとした数々のサークルを従える程の巨大サークルとなった。

一回のマンガケットで売り上げる一党の総売上部数は「黄金の夜明け」の直参部隊約8000を加えた約40000部で、同人バブルが生み出したまさに「王」。
明智は黄金の夜明けの主催、織田に対して過去からくる因縁があり、それを晴らすべく木之下と雑賀を仲間に引き入れた、明智はたった三人でこの巨大サークルを滅ぼそうとしている。


■登場人物

  • 木之下 友
物語の主人公。高校1年生。
気弱なようでいて、言う時はしっかり言うタイプ。
作品は割りと上手いがまだまだ素人っぽさが残っている、しかし強烈な個性と才能を潜在感させているため、明智に「同人にならないか」と誘われ、以後明智と同人になる。

酒を飲ますともう手が付けられない。

「僕は…同人ゴロになる!」

  • 明智 慎一
木之下を修羅の同人道に引きずり込んだ張本人。
「金になるためならどんな汚い裏の同人稼業でもやる男」
「業界内の鼻つまみ者」
「商業主義にまみれた下衆」
と、“健全な”作家からは散々に嫌われている。
元は織田と共に「黄金の夜明け」を立ち上げて漫画を描いていた。
大抵どんな絵柄の漫画でも描け、しかもかなり上手い。
しかし織田に売れ線の絵を様々な種類で大量生産する為の技術を教育された結果、「絵に個性が全く無い」という作家として致命的な弱点を持ってしまった
故に今は織田と袂を別っており、失った個性を取り戻すために織田に宣戦布告をする。

「お前を引きずり降ろして、オレはオレを取り返してやる」

  • 雑賀 京一郎
元サークル「OUTSIDE」のメンバーの一人 織田に大事なサークルを吸収されたので、織田に一矢報いんと明智に協力する。
軍隊オタクで、ラインハルトと聞いてラインハルト・ハイドリヒを想像し、「ひむらけんしん」を「ヒムラー謙信」と書く男。
漫画を描くのは全く駄目、描いたとしても「宇宙大統領とその部下5000兆万人vs魔法のマダムバタフライさん刑事」とかそんなん。
そんな彼の武器は人脈と舌先三寸。

「滅ぼすよ―そりゃも―スゴイ勢いでネ―ッ!」

  • 織田 焉(おだ しずく)
サークル「黄金の夜明け」を率いている90年代最高の同人誌オタク、その同人界ではほぼ万能と言える腕で数々のサークルを吸収している。
ただの同人作家のはずなのに、ものすごいオーラを放っている、まるでどこぞの大隊指揮官みたい。これがカリスマか。

腹心の森や明智との関係は一部のおねいさん達が喜びそうな感じ。
例:俺の元に戻れ、おまえはオレの物だ

「夢が あの日の夢想が、誇大な妄想が!現実となる!もうそこまで!!」

織田の腹心、いつも一緒。鼻をならすクセがある。
明智曰く「カマっぽい面」。
当然ながらオカマっぽいと言う訳ではなく、女っぽいという意味。

  • 柴田
織田の傘下のプロ作家。自分の本を買いに来る客を「バカオタク」として蔑んで見下すなど、傲慢な性格の持ち主。
木之下に「豚」よばわりされたり、森に鉄拳を食らわされたりと、割りと不憫な人なのかもしれない。

  • 川原景虎
本部直属マンガマーケット特別混雑対応隊。
通称「景虎中隊」の隊長。

オタクに準備会に即売会に同人誌やアニメやマンガやそういう世間一般に侮蔑されているものたちに仕える一匹の狗。
眼帯をしているが、隻眼と言う訳では無いようだ。

「狗は意見をのべはしない。誇りを持って主人(あるじ)を守るのみ」


■余談

物語そのものは1998年に著者の代表作となる『HELLSING』が始まった為に、物語の最終局面になるであろう夏のコミケが始まる前に連載が止まってしまっていて、未完。
単行本は1巻のみ刊行されたが、未収録のエピソードも存在する。

2005年頃に「大同人物語完全版発売!」とアナウンスがあり、そして2006年のコンプエースの旧『以下略』の予告に明智や雑賀が出演したが、それ以来音沙汰無し。

読者からは、エース桃組版並びにゲーマガ版未収録分の『以下略』、その他の数々の作品群と共に、書店に並ぶ日を心待ちにされている。
ドリフターズ』も連載十周年を過ぎた事だし、早く出してくれヒラコー。というのがファンの心情だろう。

登場人物の名前は戦国武将から織田と森の関係だったり…(木之下は秀吉の事)。



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最終更新:2022年06月12日 09:58