星新一

登録日:2011/09/12(月) 22:12:50
更新日:2024/04/24 Wed 17:23:00
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今年もまたご一緒に九億四千万キロメートルの宇宙旅行をいたしましょう。
これは地球が太陽のまわりを一周する距離です。速度は秒速29.7キロメートルのマッハ93。安全です。
他の乗客たちがごたごたをおこさないよう祈りましょう。



■経歴


星新一は、日本の小説家。
1926年9月6日東京都文京区にて製薬会社・星製薬の家に生まれる。1997年没(満71才)。
本名は星一で、名前は「親切第一」の略。

父は星製薬の創業者にして星薬科大学の創設者で、衆議院議員・参議院議員も務めた星一(ほしはじめ)
母方の祖父は人類学者の小金井良精、祖母は森鴎外の妹。
旧制中学にいるうちに太平洋戦争が開戦し、これにより英語が敵性語となって受験科目から無くなるだろうと予見し
英語を一切捨てて他の科目に集中して勉強した ことで飛び級で今の東大に合格した。
ただしそうして英語力が終わってる状態で東大の教育学部に入ったことで在学中から就職活動から後の作家生活に至るまで長い間辛い目にもあっている。
父の死後、親一は短期間ではあるが星製薬の社長も務めた。
ぶっちゃけ父親が死んで経営が破綻した会社の後始末であり、本人がいうにはこの数年間は 人生の中でもとりわけ辛い時期 だったそうな。
これらの「要領よくやったけど後でしっぺ返しを受ける」「若いうちにひたすら地獄を見る」などの体験が後の作風に関わってくる。

1957年、柴野拓美らとともに日本初のSF同人誌『宇宙塵』創刊。
翌58年での2号にて発表した『セキストラ』が推理小説雑誌『宝石』に転載。商業デビューを果たした。

【作風と特徴】
SF、短編を多く執筆している。特にショートショートが多い。
もちろんそれ以外にも祖父や父のことを描いたノンフィクションも執筆しているし、また『声の網』などの長編SFや、時代小説の『城のなかの人』もあるが。
そしてショートショートの数、なんと1000編以上。

これがどのくらいすごいか、おわかりになるだろうか。
集い的に言えば、一つの板を満スレにした上、すべて面白いスレを立てているようなものである。
1000スレ立てることが出来たとして、そのすべてを面白くするなど普通の人間には不可能に近い。

ショートショートにおける題材は宇宙人やUFO、未知の新薬や、ロボットなどのSFが中心。
一方で童話や昔話的な、物語の最後に教訓があるものも存在する。
……といっても伝わりにくいかもしれない。


上記のふたつは星新一、と名前を聞いてピンとこない人も知っていると思うが、そんな感じの作風といえば少し伝わるだろうか。
両番組いずれにおいても星新一の作品がいくつか映像化されているので、興味がある人は探してみるといいかもしれない。
NHKでは実写・アニメのシリーズ番組『星新一ショートショート』も放送された。
フジテレビのドラマ版なんてなかった

ブラックユーモアというか、作品の終わりに「何か」がのこる作風である。
子供向け、といわれることも多いが、大人が読んでも充分に楽しめる
それどころか、作品と発表年を見比べて驚くかもしれない。

1983年には「ショート・ショート1001編」を達成した。
なおこのとき様々な雑誌に作品を同時発表したため、「1001編目」の作品は特定できない。


自ら発表する作品に数々の制約をつけており、
  • 当用漢字表にない漢字は使用しない
  • 激しい暴力や殺人シーン、性行為等は描写しない(ただし例外もある)
  • 時事風俗は扱わない(こちらも例外が何作品かある)
  • 具体的な数量を挙げず、抽象的な表現を使う(「目もくらむような大金」など。具体的な数字を出すことで作品が古びることを考慮しての考え)
  • 人名をイニシャルだけで表す(エヌ氏など)
などが挙げられる。
おそらく、この読みやすさも子供向けだと言われる所以なのではないだろうか。

作中の登場人物に多用される、「エヌ氏」や「エフ氏」の名前は、星新一作品の代名詞ともいえるだろう。
すべて境遇、立場などが違い、同一人物ではないと考えられる。
「N氏」「F氏」としないのは、アルファベットでは日本語の中では目立つから、というのが理由のようだ。
また、過去の作品が再版されるたびに原稿に手を入れており、時代的にそぐわない記述(例として「電話のダイヤルを回す」など)を逐一修正していたという。

全集も存在しているが、未収録の作品も多い。
しかも単行本も新潮文庫から出されたエッセイ集の『きまぐれ暦』など絶版になっているものがあるので、作品をすべて読むのはかなり難しいかもしれない。

海外でも作品が読まれており、(少なくとも)20言語以上に翻訳されている。

手塚治虫とも交流があったようで、漫画『W3(ワンダースリー)』の主人公・星真一の名前の元ネタにもなっている。

影響を受けた作家としてヘンリー・スレッサーやSF作家のフレデリック・ブラウンの名を挙げている。また落語のファンであり、『タラチネ事件』などその影響を受けた作品も書いている。


■作品紹介

1000編以上ある作品をすべて丁寧に説明する訳にはいかないので簡単に少しだけ。
オススメの作品、好きな作品等の追記やコメントへの投稿をお願いします。
先述した世にも奇妙なやストーリーランドの他、NHKでも多くの作品が映像化されている。


■おーい、でてこーい
ある日突然、野原に空いた巨大な穴。何でも飲み込んでくれる穴を、人々はゴミ捨て場に使い始めたが……
(英訳されたものが中学の教科書に載ったことも。後にいかりや長介主演で『世にも奇妙な物語』で実写化。)

■おみやげ
人類発祥前、地球にやってきた宇宙人。
彼らは、いずれ現れるであろう知的生命体への贈り物として、様々な文物を砂漠に残すが……。
こちらも国語の教科書にも載った。

■殺し屋ですのよ
どうしても殺したい相手がいる男の前に「殺し屋」を名乗る女性が現れる。
自分に任せれば、絶対にバレることなく、確実に相手を殺して見せると言うのだが……?
(『世にも奇妙な物語』にて観月ありさ主演で実写化されている)

■ナンバー・クラブ
会員制のクラブは、どんな人とでも一瞬で親友になれるけれど……。
(現代のインターネット社会の暗示)

■生活維持省
人々は、ある法律のおかげで平和で豊かな生活を送っていた……
(『イキガミ』騒動で有名になった作品)

■悪への挑戦
死刑囚がテレビ中継で公開処刑される世界。
そんな世界で、興奮のあまり人殺しをした女性が死刑判決を言い渡されるが…

■繁栄の花
軍備を持たず友好的なメール星人からもらった花。人類はその花を増やして金儲けをしようとたくらむが……。

■処刑
ある罪を犯した男は、死刑のため、水を作り出せる銀の球を持たされ資源がとりつくされた火星へ送られ……。
(星作品の中ではやや長めの作品だがAA化されたものがある)

■とんとん拍子
ある男は腕時計を拾い上げた時から不運に見舞われるが、その腕時計の制作者が現れ……

■白い服の男
20世紀の終わりに終わった世界大戦の後、戦争の無い平和な世界になった地球。しかし……

■ボッコちゃん
バーのマスターが道楽で作った女性型アンドロイドのボッコちゃん。彼女に恋をした青年は親の反対を押し切り会いに行く……

■鍵
ある日、不思議なを拾った男。彼はこの鍵で開ける事が出来る扉を探し始める……

■盗賊会社
「盗賊株式会社」というなんと泥棒が仕事の会社があった……

■午後の恐竜
ある日何の前触れもなく、世界中で滅びた古代生物たちの立体映像が映し出される。

■どっちにしても
秘密情報部員のエヌ氏は緊急指令を受け、車を走らせるが……

■はい
近未来、人類は巨大コンピューターからの指示を受け一生を送っていた。

■妄想銀行
エフ博士は長年の研究によって人間の妄想を吸い取りカプセルに封じ込め、更にそのカプセルを飲んだ人間に妄想を植え付ける装置を開発しそれを元に「妄想銀行」を設立する。それから数年後、エフ博士は妄想銀行に来た患者の妄想を見てあることを思いつくが……

■古びた旅館で
三郎と春子の夫婦。二人は離婚する前に仲人の頼みで、山の古びた旅館に泊まるが……

■来訪者
ある日円盤状の物体から宇宙人から降りてくる。人々は様々な手段でコンタクトを試みるが…。

■情熱
宇宙研究所では宇宙探索のための世代間宇宙船計画が進められていた。
そんな最中、他の星から宇宙船が飛来する……。

■闇の眼
父母と幼い息子の三人家族。
一家は、ある理由から暗闇の中で生活していた……。


■ホシヅル

星新一によって産み出された架空の生き物で、星先生のトレードマークとなったキャラクター。

文明が発達した末に進化した鶴らしく、
美味いものを食べるためにクチバシが大きくなりテレビばかり見るから目玉が大きくなっている。身体には有害物質が蓄積されており食用には適さない。(これは星新一による後付け設定)。

元ネタは小松左京、筒井康隆、豊田有恒などのSF作家とバーで飲んでいた時にバーのママにプレゼントした色紙に描いたイラスト。
ちなみに星新一の誕生日である9月6日はホシヅルの日とされており、この日のGoogleトップにホシヅルが出てきた。

■余談

上述の様に普通の小説家から比べると圧倒的に作品が多く、その分登場人物の数もとんでもなく多い。
その所為もあってか「星新一作品 登場人物索引」なる本が出版されている。
氏の作品のファンであるならばなんとなく想像はつくだろうが、調査した人によれば、
・1位 エヌ氏  107人
・2位 アール氏 21人
・3位 エス氏  12人
という予想通りすぎるぶっちぎりの結果であり、約9ページに渡り様々な作品のエヌ氏が紹介されているという。
定価が5,000円+税と少々お高いが、場所によっては図書館に蔵書されている場合もあるようなので、興味がある人は探してみるといいだろう。


エヌ氏はアニヲタwikiの権威、wiki籠もりであった。
追記修正を求めるエヌ氏の前に、ひときわ大きな円盤が現れた。

円盤からは降り立った生物は冥殿と名乗る。
そして、それはこう言った。

(冥ω殿)「ラグナロク」

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最終更新:2024年04月24日 17:23