ベルモット(名探偵コナン)

登録日:2011/09/14(水) 23:03:21
更新日:2024/04/23 Tue 07:50:57
所要時間:約 13 分で読めます





私の胸を貫いた彼なら…なれるかもしれない…  

長い間待ち望んだ…銀の弾丸(シルバー・ブレット)に… 


ベルモットとは、『名探偵コナン』の登場人物。作中に登場する犯罪組織「黒の組織」の女性幹部。


概要

表の顔はアメリカの人気女優、クリス・ヴィンヤード
変装と声帯模写を得意とし、老若男女問わず誰にでも変装でき、それを活かした情報の収集や操作、潜入工作を得意としている。故に「千の顔を持つ魔女」なる異名を取る。

変装技術は初代怪盗キッドこと黒羽盗一から教わったもので、工藤新一の母である工藤有希子とは偶然、同時期に弟子入りした。二代目怪盗キッド・黒羽快斗の姉弟子とでも言えるだろうか。もっとも両者に面識は無い。
ただし、『漆黒の特急』では、自らの計画を妨害される形でお互いがそうとは知らない間に対峙しているが。この出来事でコナンと怪盗キッドが手を組むことがあると知り、『工藤優作の推理ショー』では「優作に変装した怪盗キッド」を演じてコナンに正体がバレることがないまま、工藤邸を後にした。怪盗キッドの素の口調やコナンに対する態度をなぜ知っているかはいまだ謎。

アメリカ人だが日本語も堪能。もちろん英語が喋れないわけではなく、初登場時には通訳の人間に英語で意思を伝えていたので、どうやら公には日本語が解らないということにしているらしい。
更に頭も切れる他*1拳銃の腕前*2、精密機器の取り扱い*3身体能力など様々な方面に優れる。
作中においてベルモットが格闘戦を披露したシーンは未だ無いものの、少なくとも成人男性一人を素手で捩じ伏せるくらいは容易いらしく、民間人に変装している最中にナイフを突き付けられて人質になった(された)*4際には、江戸川コナンが「お前なら仮に拳銃を持っていなかったとしても余裕で対処できていた」と推察しており、当のベルモット自身もそれを否定していない。

作者曰く、ベルモットのコンセプトは悪い方の峰不二子で、いい方が有希子。だが、有希子は自身が観るミュージカルに間に合わせるために交通ルールを破って愛車を爆走させ現地警察から注意を受けているエピソードもある。
余談だが、担当声優の小山茉美は声優総入れ替えで評価が悪い『ルパン三世 風魔一族の陰謀』において 一度だけ峰不二子の声を担当している。


組織においての立ち位置及び同僚らとの関係

秘密主義者なベルモットは、どこで何をしているか誰にも言わず、単独行動を好む。
座右の銘”A secret makes a woman woman.”(女は秘密を着飾って美しくなる*5)は有名。

あの方」のお気に入りらしく、組織内での実質的な地位はかなり高いようだ。そのため、キャンティとコルンはとある一件から揃ってベルモットに恨みを抱いているが、手は出せないでいる。
しかしベルモットは組織内での人間関係の悪化など全く意に介していないし、更には不機嫌になったあのジン拳銃を突き付けられても平然と笑いながら受け答えをする胆力を持つ。
一方、組織のNo.2たるラムに対しては、『純黒の悪夢』で敬語を使い、彼の言葉には大人しく引き下がるなど命令を聞いている。

登場した当初は単独で暗躍しているか、ジンやウォッカと任務にあたっていた。
バーボンこと安室透が登場してからは、彼と組んで行動するシーンがよく描写されるようになった。秘密主義者同士通ずるものがあるから……というより、どうやら安室に秘密を握られているようで、協力関係となっている。詳細は不明だが「組織のメンバーが知ったら驚くでしょうね…まさかあなたがボスの…」と安室は発言しているが、そこまで言いかけたところで彼に拳銃を突きつけるあたりバレると非常にまずいようだ。

ジンとはかつて深く付き合っていたことがあった(83巻で作者が明言)ようで、初期は「久しぶりにマティーニでも作らない?」と発言している。「マティーニ」とは、ジンとベルモットを使用した無色透明なカクテルで、カクテルの王様と呼ばれている。
ちなみに、カクテルの女王は「マンハッタン」で、こちらもベルモットを使用する。



以下ネタバレ





















正体はクリス・ヴィンヤード……ではなく、その母親とされているシャロン・ヴィンヤード
少しややこしいが、名前はシャロンでクリスが偽りで、容姿はクリスでシャロンが偽り。少なくとも20年前に当時8歳だったジョディ・スターリングと対面した時から、まったく年をとっていない。

実年齢はおそらく50歳以上*6。アメリカの大女優で、マカデミー賞も獲得している。分野は不明だが、主演女優賞か助演女優賞だろう。アメリカハリウッド女優のトップで、ハリウッド映画界の大物。シャロンは作中の1年前に急死したとされており、以後はクリスとして行動している。
なぜシャロンの死を偽装したのか明言されていないため不明であるが「普段から老けたフリするのって結構辛い」と話しているので、周囲の目を老けメイク(有希子談)と演技で誤魔化すことに限界を感じていたのかもしれない。

シャロンは有名だがクリスのプライベートは一切謎で、クリスが撮影以外でマスコミの前に姿を見せたのは1年前のシャロンの葬儀の日だった。
ちなみに、ニューヨークで有希子に話した夫と娘の話は全部作り話だと原作者は明かしている。


作中での活躍


『黒の組織との再会』でピスコのサポートのため来日したのが初登場。
その際にシェリー(灰原哀)の存在に勘付き、女優業を休業して独自に調査を始めるが、その一環で新出智明に成りすまし、帝丹高校に校医として潜入していた。見抜くポイントとしては、眼鏡のブリッジの数が異なっているかどうか。本物は2本、ベルモットは1本。なお、アニメではこの描写は反映されていない。

第29巻『謎めいた乗客』においては、バスジャック犯への反撃に転じるコナンに対して「お手並みを拝見させてもらう」というベルモットのモノローグがあったことから、この時点で既に彼と入れ替わっていたことが確定しており、
第27巻『バトルゲームの罠』においての「敵は姿を変えて学校へ通っている」と電話で話すジョディの台詞は入れ替わりを示す伏線でもあった。
第26巻『命がけの復活』においては、新出の眼鏡が原作ではあまりはっきりと見えないのでブリッジの数も今一つ判然としないが、「新出先生は芝居の指導が凄く上手い」というの言葉や、第26巻の裏表紙の「鍵穴キャラ」がベルモットであったことを踏まえると、この頃にはもう成り代わっていたのかもしれない。原作者も(まだデザイン変更前の)文化祭の時にはベルモットの変装だった筈とコメントしている。

ちなみに成り行き上ではあるが、新出に化けている間に『本庁の刑事恋物語4』では高木刑事と佐藤刑事の一大事に出くわしたため、咄嗟に二人のキューピッドを務めたこともあった。
正体がベルモットだと明らかになった後で見返すと中々シュールな一幕である。
しかも、その時のコナンとのやりとりの一部が、地味に正体を示す伏線になってもいる。

『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』では来日する前の様子が描かれており、車でドラマのロケ現場に向かいながらジンからピスコをサポートするよう電話を受けていた中、ジョディに追跡されるもドライブテクニックを駆使して撒いていた。
また、スマホで新一の活躍を報じる記事に視線を向けてジンとの電話の中で「彼(新一)にも会いたいしね」と心の中で言っている。

なお作中では「ジョディ=ベルモット」というミスリードが巧みに仕掛けられていたため、驚愕した読者も多い。
実際はジョディの怪しげな行動はFBIであることを隠しているが故のもので、それを組織の一員としての行動だとミスリードさせていた。

紆余曲折を経て42巻では遂に『黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー』でジョディと対峙。
ジョディの仕掛けた罠に気づいており、逆に罠にかけたが、赤井秀一の登場により断念。車内でコナンに、「私の負けよ…シェリーはあきらめてあげる…」と言うと睡眠ガスを放った。
コナンが眠ると眠気を消すために自身の足を撃ってその場から立ち去った。

しかし78巻のベルツリー急行での一連の事件『漆黒の特急』の時は「殺るのは私じゃなくバーボン…彼女(シェリー)だけはこの世にいてはいけないのよ…」と約束を反故に。
再度抹殺に動くが、有希子に「私達があなたを出し抜いたら、今度こそ彼女から手を引いてくれるわよね」と持ちかけられた。怪盗キッドを利用したコナンのトリックに騙され、有希子が言っていたスペシャルゲストが怪盗キッドだった事に「最高のキャスティングだったってわけね、有希子」と負けを認めた。
以降はシェリーの件から手を引き、ジンたちに彼女の生存を伝えずにいる。


貴方は私の…宝物だから…

そう…この世でたった2つのね…


ちなみにコナンと蘭、及びその関係者(小五郎など)は組織の標的から極力外そうとしている。
これは『工藤新一NYの事件』で、NYで通り魔に扮して赤井の抹殺を図っていた際、誤って転落死しそうになったところを蘭と新一に救われたため。
しかも、ただ単に助けられたからではなく、自分が目撃者である彼らを口封じしようとしていたのに新一達が自分を助けようとした姿に何らかの希望を見出したからである。
それ以降、新一(コナン)の事を「シルバーブレット」、蘭を「エンジェル」と呼び、二人には組織の火の粉が降りかからないよう立ち回っている。
つまり通り魔=ベルモット=新出で、『謎めいた乗客』では命がけでコナンを守ろうとしていた理由はこれ。
ただしこの理由をコナン達が知るはずもないので、ベルモットがコナンを巻き込まないようにしているのは「友人の子供だから」と考えている。また「薬で幼児化してる事を隠す理由が何かあるんじゃないか」とも推察している。

だが、シェリーこと灰原の命は執拗に狙っている。
「恨むのならこんな愚かな研究を引き継いだ貴方の両親を…」発言から、どうやらAPTX4869の開発に関わった灰原とその両親である宮野夫妻を憎んでいる様子が見受けられる*7。そのため、事故とされている宮野夫妻の死は、ベルモットが関わっているのではないかと読者からは考察されている。

千の顔を持つ魔女の異名をもち、怪盗キッド張りの変装の達人とコナンに言われているが、その彼と同じくコナンに正体を見破られることや周りの人間に違和感を残すこともあり*8、常に完璧に周囲を欺けるわけではない。
もっとも、それで何かしらのピンチに陥ったことは今のところ無いが。
『裏切りのステージ』では、安室が「コナンと蘭には一切危害を加えない」という自分との約束を本当に守ってくれるのか半信半疑だったため榎本梓に変装したが、彼女について下調べする時間も無く急拵えだったせいで早々とコナンに正体を見破られる。
しかし、どうせコナンが公衆の面前でそれを指摘するようなことはしないと見抜いていた。不意討ちで蘭の声を出してコナンに質問をすることで梓の苗字を聞き出し筆跡鑑定を乗り切った他、蘭にも自らの思いの丈を打ち明けた。

現時点では、黒の組織内でコナンや灰原の正体に気が付いている唯一の(生きている)人物。
これは「ベルモットがAPTX4869について組織内で出回っている情報以上に詳しく(少なくとも幼児化をもたらす薬であることは)知っているから気付いたことだ」とコナンは推理している。

更に特筆すべきは、これだけ組織に貢献しているのにもかかわらず、組織の壊滅を企んでいるともとれる節があること。
コナンを「組織の心臓を射抜く銀の弾丸(シルバー・ブレット)」と称しており、長い間待ち望んだと語っている。『ブラックインパクト! 組織の手が届く瞬間』で、とある暗殺任務中にコナンがそれを阻止すべくFBIと共に奔走していることに早い段階で気付いても見て見ぬふりをし、盗聴器が仕掛けられていることを察しても黙っていたこともあった。
一方で、あの方が「銀の弾丸」扱いして恐れている赤井に対しては「銀の弾丸は二発はいらない」という考えのもと排除されることを望んでいるようなので、単に組織が壊滅すればいいと思っているわけでもない模様。
秘密主義者のベルモットの腹の内は我々読者にさえ中々明かされず、何を考えて行動しているのかは全くわからない。
……冷静に考えると、むしろ何かあるとすぐに抹殺されるようなこんな組織に厚い忠誠心がある方が不思議で仕方がないが。

漆黒の追跡者』だと、警察の捜査グループに潜入するアイリッシュに変装術を仕込む一方で、偶然会ったコナンに組織が動いている理由やアイリッシュの存在を直接リークしている。
黒鉄の魚影』だと、あの方に老若認証は「開けてはならない玉手箱」だと報告して「つぶせ」と指令を受けると偽装工作を開始し、ラムをシステムの破壊へと誘導した。
なお、同作では抹消したいはずの灰原を助けるような行動を取っているが、これはWebメディア『Febri』の立川監督インタビューによると「ベルモットがおばあちゃんに変装していて、ブローチを譲ってくれた灰原を助けた」は原作者のアイデアで、序盤とラストに持ってくる事は初めの段階から決まっていたそうだ。変装の達人による変装でのお返しといったところは『世紀末の魔術師』の怪盗キッドと類似している。

何かと謎が多い人物でもあり、ストーリー暗部に直結するため、最終回近辺まで明かされることはないと思われる。
作者から組織の事をすべて聞いている櫻井武晴氏はWebメディア『Febri』のインタビューで「やらなきゃいけないことがすごく多くて、いちばん重荷を背負っている人。いつも余裕たっぷりのスタンスですけど、組織の中でいちばん大変な人だと思う」と話している。

主な伏線は以下の通り
  • どうして年をとらない
  • 板倉卓が彼女との電話中に聞いたの鳴き声
  • 時の流れに逆らって死者を甦らそうとしている、の意味
  • ボスとの関係*9、お気に入りになった経緯
  • 組織の研究を「こんな愚かな研究」と言い放った理由
  • 組織の壊滅を狙う理由
  • 本当はいい人説。この説は『名探偵コナン50+PLUS SDB』にも載っている。*10

rotten(ラットゥン) apple(アップル)(腐った林檎)」とは、ジョディが付けた標的名で意味は赤井曰く「大女優シャロンが脚光を浴びたのは舞台のゴールデンアップル! あの時のままアンタは綺麗だか…中身はシワシワの腐った林檎ってな!!」とのこと。


”An excursus and a modification make a woman woman.”(女は追記・修正を着飾って美しくなるのよ)

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最終更新:2024年04月23日 07:50

*1 『漆黒の追跡者』では、組織の工作員を殺して極秘データを持ち去ったと当初疑っていた人物は肩を痛めていたためにナイフを大きく振り下ろせないので、現在データを持っていると思われる連続殺人犯とは別人だと長野県警の大和敢助より先に見抜いていた。

*2 アバラが3本折れた状態で車のサイドミラー越しに後方の車のガソリンタンクを一発で撃ち抜いている。

*3 『純黒の悪夢』では米花水族館の施設内の様々な箇所を停電にした。『黒鉄の魚影』だと海洋施設パシフック・ブイの海中ハッチを開けてピンガの逃亡を幇助した他、デコイ発射口を閉じるなどの遠隔操作をしている。

*4 人質として囚われること自体は元から彼女の思惑だった。

*5 直訳だと「秘密は女を女にする」。

*6 クリスの年齢は29歳と初登場時に表示されているため。

*7 宮野家の面々のうち、宮野明美についてはどう思っていたのか不明。また、登場初期はシェリーをあまり知らないような発言をしている。

*8 顔に傷がついたのに血が流れていない、銃のホルスターをそのまま付けているため体型が不自然。妊娠初期にしか見られないつわりの動作をお腹の大きくなった妊婦の姿でやっているなど。

*9 『黒鉄の魚影』においては、ラムにさえも内密にボスから独自の命令を受けている描写がある。作者によると「えええ!?そ、そうなのか」って感じの関係。

*10 新出が耳にした、自身に変装していた人物の人柄は「お人良し」「心配性」「優しい」だった。校長からは、教えてもらった健康体操のおかげで随分と腰が楽になったと話しかけられた。この現状に疑問を抱いた彼は「本当に悪い人だったんですか?」「学校で先生や生徒に触れる度に、とてもそういう風な人だったとは思えなくて…」と、ジョディに問い質した所、彼女は「バカね!!笑って人を殺すような人に、いい人なんているわけないじゃない!!」と怒り出してしまった。ジョディにとってベルモットは幼い頃に家族の命を奪った仇敵なので致し方ない反応ではある。また、これに関して、新一と蘭が通う学校で騒ぎを起こしたくなかったなどといった意見もあるが、その二人が文字通り体を張って灰原を守る姿を直に見ていて、何かあれば二人が悲しむと分かっているだろうにベルツリー急行で殺しにかかっているため、この線は薄いと思われる。