団三郎狸(伝承)

登録日:2011/08/17(水) 16:29:53
更新日:2023/01/22 Sun 11:29:17
所要時間:約 4 分で読めます




アニヲタ昔話
団三郎狸



昔々、今の新潟県は佐渡島に、それはそれは化けるのが上手な狸の総大将が住んでおった。

その狸は夜道を歩く人間を蜃気楼で迷わせたり、
壁を見せたりして驚かすのが趣味というはた迷惑な性格だった。

時々人間に化けて人里に下りてきては、木の葉を化かした金……、
つまり偽金で買い物をしたり、人間の医者にかかることもあった。

だが、悪戯するばかりではなく、佐渡の金山でせっせと働いたり、
悪人から奪った本物のお金も蓄え、貧しい人に与えたり貸したりもしていた。
その狸の住処に金額と返却日、名前を書いた借用書を置いておくと、翌日にはお金と入れ替わっていたという。


人々はそんなお調子者で堅気な狸に敬意と愛着を持ち、「団三郎狸」と呼んだ。


ある日、自分の変化の術を自慢する狐と出会った団三郎狸は、

「俺は大名行列に化けることができる。そこで見ているがいい」

といって姿を消した。
するとしばらくして、ぞろぞろと立派な大名行列が姿を表した。

「へぇ、上手く化けたもんじゃないか」

狐は感心して殿様の前に出た。
すると、「この無礼者!」
と、たちまち捕らえられ、哀れその狐は殺されてしまった。
つまりこの殿様は本物!
実は団三郎狸は本物の大名行列が来ることを知っており、それを利用して狐を騙したのだった。


また別の日。

「佐渡島へ渡らせて欲しいのですが」

と、ある狐が団三郎狸に頼んできた。

「いいだろう。だがその姿のままだと駄目だ。俺の草履に化けたら連れてってやる」

そう団三郎狸が言うと、狐は素直に従って草履に化けた。
すると、団三郎狸は海を渡るただなかで、その草履を捨ててしまった。

そんなこんなで狐たちは団三郎狸を恐れ、二度と佐渡には近づくまいと決意したのだった。


そうしてあちこち我が物顔で変化していた団三郎狸だったが、ある日ある男を騙そうとした時のこと。

若い女の姿に化けた団三郎狸は、具合の悪い振りをして男を騙そうとした。
だが、団三郎狸の話を聞いていた男は直感的に感づき、女を背中に乗せると縄で縛り上げた。

女「どうしてそんなにきつく締めるのですか?」

男「お前さんがずり落ちたら危ないだろう」

さすがに危険を感じた団三郎狸は下ろすよう頼み込んだ。けれど男はどこ吹く風。
ついには「尿意を催したので下ろして欲しい」と言った。すると男は、

お前さんのような別嬪さんのなら是非みたいもんだねぇ。おいらの背中でしなさいや

と笑って返した。

そうこうしている間に男の家にたどり着き、正体を表し平謝りする団三郎狸を男はしっぽり懲らしめた。
それ以来、団三郎狸が人間に悪戯することはなくなったという。


そうして愉快な化け狸は今では「二つ岩大明神」として佐渡の人々に祭り上げられているのだった。


おしまい。









淡路の芝右衛門狸、屋島の禿狸と並ぶ日本三大妖狸の一匹。
なお佐渡では狸を貉と呼ぶこともあるため「団三郎貉」と表記することも。
上記のように悪戯者だが人間の仕事を手伝ったりと友好的な存在で、神格として祀られている大妖怪でもある。

名前の由来は、1600年代に金山の道具に用いる毛皮を取るために養狸を始めた団三郎という人物が、その狸とセットで祀られたという説がある。

なお狐の件は、佐渡島に狐が住んでいないことの説明であると考えられる。


ジブリ映画「平成狸合戦ぽんぽこ」でも「佐渡の団三郎先生」として名前が出ている。

ただしすでに死んでしまっている。
(終戦時代の食糧難の時に人間に殺された)


また最近になって幻想入りしたとの情報があるが、真偽は不明。





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最終更新:2023年01月22日 11:29