スーサイドブラック(MtG)

登録日:2011/01/21 (金) 23:22:58
更新日:2024/04/21 Sun 14:55:43
所要時間:約 6 分で読めます




病弱な天才剣士、沖田総司がそうであるように。

突如として天まで走り去った快速馬、サイレンススズカがそうであるように。

強さと脆さの混在というのは、いつの時代も人を魅了するものなのだろうか……。




スーサイドブラックは、MtGのビートダウンデッキの一つ。デッキカラーは
圧倒的な速さに宿命的な欠点を内包した、愛好家の多いデッキである。

概要

肉占い/Sarcomancy (黒)
エンチャント
肉占いが戦場に出たとき、黒の2/2のゾンビ・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
あなたのアップキープの開始時に、ゾンビが1体も戦場に存在しない場合、肉占いはあなたに1点のダメージを与える。

カーノファージ/Carnophage (黒)
クリーチャー ゾンビ
あなたのアップキープの開始時に、あなたがライフを1点支払わない限り、カーノファージをタップする。
2/2

肉裂き怪物/Flesh Reaver (1)(黒)
クリーチャー ホラー
肉裂き怪物がクリーチャーか対戦相手にダメージを与えるたび、肉裂き怪物はあなたにその点数に等しい点数のダメージを与える。
4/4

走り回るスカージ/Skittering Skirge (黒)(黒)
クリーチャー インプ
飛行
あなたがクリーチャー呪文を唱えたとき、走り回るスカージを生け贄に捧げる。
3/2

ファイレクシアの抹殺者/Phyrexian Negator (2)(黒)
クリーチャー ホラー
トランプル
ファイレクシアの抹殺者にダメージが与えられるたび、その点数と同じ数のパーマネントを生け贄に捧げる。
5/5

隠れ潜む邪悪/Lurking Evil (黒)(黒)(黒)
エンチャント
あなたのライフの半分(端数切り上げ)を支払う:隠れ潜む邪悪は飛行を持つ4/4のホラー・クリーチャーになる。



ご覧の通り、デメリット持ちにキツいコスト付きばかりである。だがそんなことは問題ではない――
彼らはコストの割にパワーが高いのだ。はっきり言えば

相手を殴り殺すのが速いのだ。

そんなわけでリスクはほとんど無視して攻める。攻める。攻める。

白ウィニーよりも速く、誰よりも速く、速攻で攻める。

その捨て身っぷりが由来し、ついた名前が「自殺する黒」――スーサイドブラック、というわけである。

これらのクリーチャーを補助するカードもまた、いっそ清々しい程にひたすら前に出ようという呪文だ。


暗黒の儀式/Dark Ritual (黒)
インスタント
あなたのマナ・プールに(黒)(黒)(黒)を加える。

言わずと知れたパワーカード。初手儀式からの爆発力は他の追随を許さない。


よじれた実験/Twisted Experiment (1)(黒)
エンチャント オーラ
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは+3/-1の修整を受ける。

パワーを上げてタフネスを下げる。どうせ無いに等しい防御力、
守らないのでデメリットなし。

相手のタフネス1クリーチャーに撃てば除去にもなる。



そして、このスーサイドを語る上で欠かせないカードこそ――憎悪だ。

憎悪/Hatred (3)(黒)(黒)
インスタント
憎悪を唱えるための追加コストとして、X点のライフを支払う。
クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで+X/+0の修整を受ける。

土地が1ターンに1枚しか展開出来ないMtGでは、
(3)(黒)(黒)というコストは通常5ターン経たないと払えないが、
そこは暗黒の儀式を擁する黒。なんと、
理論的には1ターン目に、
理想的には2ターン目に、
現実的には3ターン目に、
憎悪のかかったクリーチャーで攻撃することが出来るのだ。

A「カーノファージを対象で憎悪!18点支払うぜ!」
B「負けました」
※2ターン目です

まさに瞬殺。華麗に勝利。嗚呼、スーサイドよ永遠なれ。








『そんな速すぎるデッキ、ゲームバランス大丈夫か?』
とお思いの方、実に正しい。
「大丈夫だ、問題ない。」
次は冒頭で述べた宿命的な欠点について語らねばなるまい。


ショック/Shock (赤)
インスタント
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。ショックはそれに2点のダメージを与える。

という色の代名詞たるこの種のカード――
いわゆる「火力」に、スーサイドブラックは絶望的なまでに弱かったのである。

暗黒の儀式やよじれた実験の補助を受けたクリーチャーが焼かれればアドバンテージが消し飛び、
自軍のクリーチャーは働く際にいちいちライフを要求する為プレイヤーが焼かれれば途端に首が回らなくなる、というわけだ。

初手儀式から意気揚々と抹殺者を展開し、ショックでも撃たれようものなら血反吐もの。
紅蓮地獄で文字通りの地獄となる。
憎悪に対応して稲妻ならば死が見える。

黒の特色である手札破壊を使用すればいくらか欠点は緩和できるとはいえ、
やはり基本構造からして安定感を捨て去っているため、スーサイドブラックで対戦する際には『赤いデッキとなんて当たるワケねーし!』という開き直りも大事だがメタの分析が必要不可欠であろう。

もしくは『焼かれる前に攻めきれ!』


デュエルファイター刃の登場人物、ラインハルトは前述の手札破壊をスーサイド気味のデッキに盛り込み、コントロールデッキとして使用。
「電撃戦(ブリッツ・クリーク)」と銘打たれたこのデッキは多くの読者の記憶に残ったため、
現実世界でもブリッツと言えば同種のデッキを指すほどに。

これを解説するに、極端に言ってしまえば、盤面で優勢ならば自分の手札など必要なく、
相手が盤面への干渉に使う手札を持っていなければ勝てるため、
「瞬時に盤面を制圧する高速戦術+手札破壊」
は大変理に適った構築と言うことができる。参考にしよう。

余談

これの登場以来、何かしらのリスキーなアドバンテージ獲得手段に対し、保険を用意しないデッキが「スーサイド〇〇」と呼ばれるようになった。
有名所だと速度重視型で、《ネビニラルの円盤/Nevinyrral's Disk》を入れない《ネクロポーテンス/Necropotence》デッキ【スーサイドネクロ】が有名。
同じスーサイドの名が付く【スーサイドオース】の場合はもうちょっと複雑で、誘発ごとにライブラリーが削れる《ドルイドの誓い/Oath of Druids》を安定運用するため、ライブラリーから直接墓地に落ちると墓地のカードがライブラリーに戻る《ガイアの祝福/Gaea's Blessing》でライブラリーアウトを回避する手段がメジャーだった。
しかしスタンダードのローテーションにより《ガイアの祝福》が使用不能になってしまう。それでも《ドルイドの誓い》のカードパワーは本物だったため、ライブラリー修復を諦め(というか環境に有力カードが存在しなかった)LOで負けるか殺すかというスーサイド戦略を取ったという経歴がある。
現在では【Super Crazy Zoo】からスタートした【デスシャドウジャンド】が、《死の影/Death's Shadow》のサイズを大きくする手段としてライフを積極的に削る後継者となっている。

自分のライフを削っていく緊張感、相手の一手一手にドキドキするスリル、
使っても使われても、勝っても負けても納得がいく漢らしさ……

『ライフは1までかすり傷』

何も言わずにお試しあれ。

『あいつは恐くないの!!自分のLPがどんどん減るのが!!』
『けっ!!安全な戦法なんかくそくらえ!!』


18点のライフを支払い、追記・修正を頼む!

オアリムの詠唱
対抗呪文
四肢切断
ショック
濃霧


ぎゃああああああああ


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最終更新:2024年04月21日 14:55