マチカネイワシミズ(競走馬)

登録日:2011/06/18(土) 13:05:59
更新日:2023/12/23 Sat 20:58:50
所要時間:約 4 分で読めます




戦後最初の三冠馬シンザン
元祖アイドルホース「ハイセイコー」
芦毛の怪物「オグリキャップ

そして新世紀の衝撃「ディープインパクト」……

日本競馬史に残る記録を作り、競馬の枠を越えて社会現象を巻き起こした偉大な名馬たち。

が、もしかしたら彼ら以上に人々に深い印象を残したかもしれない一頭の馬がいる。

それが彼


マチカネイワシミズ(1983.5.20 - ?)


である。

現役時代の成績は5戦3勝[3-1-0-1]。GⅡ阪神大賞典2着を最後に故障で引退した、競馬の世界ではよくある「未完の大器」であった。

母方が名牝スターロッチ系、全兄に77年の皐月賞馬ハードバージがいるという血統のよさを買われて引退後は種牡馬となる。
ここまでは特筆するようなこともないのだが…


1994年、SFCソフト「ダービースタリオン2」が発売。
マチカネイワシミズはこのゲームに種牡馬として登場した。
種牡馬リストに燦然と輝く一番下のポジション。



種付け無料馬として


俺のチンコはタダじゃ……いいえタダで結構です


一度聞いたら忘れられない名前のインパクト、しかもタダチン。
実際に競馬を見たこともないような小中学生のダビスタユーザーが爆笑したのも無理からぬところだろう。



※なお、マチカネイワシミズの種付け無料は実際にあった出来事である。
馬社会の男性も競争が激しいもので、かつてのノーザンテースト御大やサンデーサイレンスのような優秀種牡馬に種付け依頼が殺到する一方で、
人気のない馬には質量ともにろくな牝馬が来ない。
そこで種付け料をダンピングしてとにかく種付け数を増やし、実績を作ろうという目的であった。

初登場のダビスタ2ではただのネタ要員だったが、翌年に次回作である「ダービースタリオン3」が発売されると、ある噂が少年プレーヤーたちに衝撃を与えた。

「マチカネイワシミズで簡単に強い馬ができる……」

もちろんマチカネイワシミズの種牡馬としてのパラメータは最低レベル。
しかしダビスタ3はゲーム的にインブリード(近親配合)が非常に有効な仕様であり、
マチカネイワシミズは血統表にプリンスリーギフト、ナスルーラ、ネアルコなど強力な祖先を持っていた*1

そのためゲーム開始時に与えられる最低額の牝馬であっても、上記の血統が共通している「オオシマナギサ」「タケノマジック」と配合することで嘘のような強力馬が生まれるのだ。
濃い近親配合になるので気性難や脚部不安は当たり前で、スタミナや勝負根性もろくに付かないのだが、とにかくスピードだけは超一流の馬が簡単に手に入る。
あとは走らせて賞金を稼ぐもよし、生まれたそばから売り払ってもよし*2

かくしてマチカネイワシミズは破産に怯える子供たちの救世主となり、
最強馬生産を志すヘビーユーザーからもしばしば「マチカネイワシミズ限定大会」が行われるなど愛された。
おそらくダビスタ3で最も種付けされた種牡馬であろう。

その次回作「ダービースタリオン96」でもマチカネイワシミズは続投。
ダビスタ96では初期牝馬では「エドムラサキ」との配合が特に強力といわれている。

その次のダービースタリオン(PS版)やダービースタリオン98では降板し、無料種牡馬の枠をムーンライトパレスに譲っている。
またこの頃になると近親配合のペナルティが強化されたり、多様な血統により強化されるシステム(通称「ニトロ理論」)が設定されるなど、ダビスタ3のような極端なインブリードが効果的とは言えなくなっている。

スマートフォンアプリ「ダービースタリオンマスターズ」にも登場。
☆1種牡馬と低レアリティだが、交換すると3000Pになるのでほぼ交換用である。
そのまま種牡馬として使ってもいいが、☆1なのであまり強い馬は作れない。
「オオシマナギサ」や「タケノマジック」も登場しているのでダビスタ3の再現も出来るが、ダビマスでは配合しても特段強くなったりはしない*3


現実のマチカネイワシミズは種牡馬として目立った成績をあげることができないまま、ダビスタ3発売と同じ95年に用途変更となった。その後の行方は知れない。

サラブレッドは経済動物である。名前の知られた馬でも利益を上げられなくなれば処分されることも珍しくない。

屠殺場に送られたか、兄ハードバージのように労役に回されて死んだか、
あるいは心ある人のもとで人知れず天寿を全うできたかもしれない。

確かなのはマチカネイワシミズは他の多くのサラブレッドたちと同じ歴史の陰へと葬られたということ。

かつてのダビスタ少年はいまやいい大人である。
あの頃の気持ちのまま競馬にハマっている人もそうでない人も、マチカネイワシミズの名前をまだ覚えているだろう。
子孫に残す血でもなく、実際に走る姿でもなく、24メガのゲームソフトに思い出を刻んだサラブレッド マチカネイワシミズ。

偉大な名馬たちと形は違えど、彼もまた永遠を手にしたのだと思いたい。




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最終更新:2023年12月23日 20:58

*1 ちなみにイワシミズは、ナスルーラに関しては3×4のクロス…いわゆる『奇跡の血量』だったりする。

*2 成長タイプ早熟の場合の当歳馬は売却評価額が高くなりやすい。この配合であれば1000万~2000万程度の仔馬を作ることも簡単で、序盤の金策として利用できる。

*3 一応、運がよければGⅠを取れることもあるようだが。