智代アフター ~It's a wonderful life~

登録日:2009/06/01(月) 22:40:30
更新日:2023/07/22 Sat 20:09:47
所要時間:約 5 分で読めます





人生の宝物を探しにいこう




『智代アフター 〜It's a wonderful life〜』はkeyの第5作目である18禁恋愛アドベンチャーゲーム。
CLANNAD』のスピンオフ作品であり、坂上智代を題材とした作品である。
テーマは「人生」。



【概要】

最初から全年齢対象として発売された『CLANNAD』から一転して、18禁作品として2005年11月25日に発売された(無印版)。
Key作品としては初めて、延期せずに発売された作品で、かつ初のフルボイス作品となった(主人公以外)。
無印版の売り上げは5万本を越えているが、初回版しか発売されなかったため、入手困難でプレミアがついている。

本作は『CLANNAD』制作後の自由な時間を使って麻枝准が私的に作り上げた作品で、
同人作品として発売される予定だったものが急遽Key作品として発売されることになったという経緯がある。
そのため、他のKey作品と比べても麻枝の書きたかったものがストレートに表れた作品となっており、
極端に賛否が分かれる作品となっている。
原画も原作の担当者だった樋上いたるが別口で動いていたこともあり、外注のフミオが担当している。

過去作品の例にもれず、本作も多くのコンシューマ機に移植された。
2007年1月25日に18禁要素を削除し、シナリオとCGを大幅に追加したPS2版が発売されたのを皮切りに、
2009年3月19日にはPSP版が、2010年9月22日にはXbox360版が発売された。
PSP版以降は本編に岡崎朋也のボイスも追加され、完全フルボイスとなった。
PS3版は2012年7月29日にビジュアルアーツ大感謝祭の会場限定でパッケージ版が販売され、後にダウンロード販売が開始された。
いずれもプロトタイプから発売され、レーティングはCERO:B(12歳以上対象)。
ちなみにコンシューマ版は、後の『リトルバスターズ!』の主要ライターである都乃河勇人のデビュー作である。

PC版では、2009年にPSP版までの要素を結集したメモリアルエディション(全年齢対象)が、
2014年には18禁要素も含む完全版を銘打った『智代アフター ~It's a Wonderful Life~ PERFECT EDITION』(PE版)がそれぞれ発売された。
ただし、声優の都合か、本編の朋也の声がなくなったため、その点については否定的な意見もある。
漫画は黒歴史



【スタッフ】

企画:麻枝准
シナリオ:麻枝准・樫田レオ・都乃河勇人(コンシューマ版以降)
キャラクターデザイン:樋上いたる・フミオ
原画:フミオ
音楽:麻枝准・折戸伸治・戸越まごめ・井内舞子・清水由紀



【登場人物】
声は特記ない限り無印版本編の声優を明記し、その他のメディアや「DUNGEONS & TAKAFUMIS」での異同ついては併記する。
PE版の声優は無印版に同じ。

岡崎朋也
声:なし/同左(PS2版)/中村悠一(左記以外すべて)
D&Tの声:新田祐一/同左(PS2版)/中村悠一(左記以外すべて)
主人公。智代と交際しており、現在は廃品工業に務めている社会人。

坂上智代
『いや、これだっ、これがまさしく私が求めていたヘンなものだっ!』
声:一色ヒカル
本作のヒロイン。朋也の恋人であり鷹文の姉。
今作では子供好きな面も見せ、ともを溺愛している。
CLANNAD本編からは想像が付きにくい弱さを多く見せるが、
これに関しては本編のバッドエンドを見るといろいろと納得がいくようになっている……
というか、本作はCLANNADの彼女のルートのバッドエンドを読んでおかないと恐らく「誰だこいつ!?」となりかねないぐらい弱い面ばっかりが強調されている。
それが後述の賛否両論に更に繋がったともいえる。

坂上鷹文
『ハルバルニポンキマーシター、セオヨギデウミヲワタッテキマーシター!』
声:涼森ちさと/すずきけいこ(左記以外すべて)
智代の弟。PCが得意。朋也とは仲が良い。

河南子
『オレ新潟市、オマエ近寄りがたし』
声:涼森ちさと/すずきけいこ(左記以外すべて)
鷹文の元カノ。毒舌。

とも
『仲直りのちゅー』
声:佐々木あかり
智代の父親の隠し子。母親に捨てられ、現在は朋也のアパートに住んでいる。

三島有子
声:朝咲そよ
ともの母親。精神的に脆く、とも残して失踪する。

春原陽平
声:なし/阪口大助(左記以外すべて)
朋也の悪友。立ち絵すら無く、たった一言のセリフしか無いが、その言葉には朋也との友情の深さを物語っている。



【ゲームシステム】

Keyの過去作品同様、選択肢によってその後の展開が変わるオーソドックスなADVである。
しかし、大きなシナリオの分岐となる選択肢はいずれもバッドエンドに繋がるため、基本は一本道。
選択肢によるキャラクター同士の掛け合いは18禁版とそれ以外では異なる箇所も多く、どちらも萌えや腹筋崩壊のギャグを提供してくれる。
PE版では、コンシューマ版・無印版両方のイベントを味わえるのが売りとなっている。

一度Trueエンドを迎えたあとで、本編内のとある選択肢を選ぶと、作中で鷹文が作ったTRPG「Dungeons & Takafumis」を実際にプレイできる。
そのプレイ時間は公式でも10時間を超えるとされ、「こっちが本編」というプレイヤーもいるほどに作りこまれている。
ゲーム内でのクリア日数に応じてプレイヤーランクが設定されており、上級のランクを取ろうとするならば難易度が高い。
一方でクリアするだけならばさほど難しくないという、本編とは異なって敷居の低い作品となっている。



【音楽】

本作では麻枝准折戸伸治・戸越まごめという、おなじみの3氏が作曲を担当した。
そのほか、編曲のみで井内舞子・清水由紀の2氏がBGMの編曲を担当している。
楽曲はすべて新規曲で、『CLANNAD』からの使いまわしはない。
ミドルプライス作品であるがゆえに楽曲数は少なめだが、それが逆にそれぞれの楽曲を印象深いものにしている。
なお、戸越が本格的な作曲をしていたのは本作までで、2007年にはKey(ビジュアルアーツ)を退社している。
本作のサウンドトラックは2007年に単体で発売されるまで、無印版の付録としてしか出回っておらず、
希少価値の高いコレクターズアイテムとされていた。

OPテーマ

  • Light colors
 作詞:麻枝准
 作曲:折戸伸治
 編曲:高瀬一矢
 歌:Lia

「プリズムを通した世界の色も褪せ
 こんな灰色に全て埋ずもれても」

曲自体のクオリティもさることながら、『AIR』の名曲『鳥の詩』と同じスタッフが、
その曲を意識したメロディ作りをしたということで注目された。
流れるようなメロディラインに普遍性の高い(ネタバレの)歌詞が乗せられている名曲。

EDテーマ

  • Life is like a Melody
 作詞・作曲:麻枝准
 編曲:戸越まごめ
 歌:Lia

ひとりで僕らは歩けるか
誰もいなくなってそれでも
手を取り過ごしてきた今日までを
まだ見ぬ誰かの明日へと



本作を締めくくる最強の涙腺破壊兵器。
本作のシナリオすべてを表した歌詞が、あの『青空』を彷彿とさせる高らかな声で歌い上げられる。
Key屈指の神曲とも言われ、鍵っ子でなくても一聴し、歌詞を読む価値のある逸品である。



【評価とその後の展開】

上記の通り、麻枝の私的作品として制作されていた背景もあって、麻枝の個人色と癖がかなり強い。
麻枝曰く、魂を削ってまで求めた、自分の想いを最もストレートにぶつけた作品なのだとか。
しかし、それゆえに匿名掲示板では、歴戦の鍵っ子が真っ二つに分かれて大荒れになるほどの賛否両論で、
特に結末部分に関しては当初多くのプレイヤーが否定的な評価を下したとされる。
具体的には、公式のBBSで「あのラストは有り得ない」との意見に賛成した人が2000人以上いた程。
(もちろんそれは「合わなかった人」の感想であり、ハマった人からは「Keyの最高傑作」とまで激賞された)

麻枝としても「批判は覚悟の上」としていたものの、さすがにショックは大きかったようで、
後に麻枝は1~2か月ほど休職し、『リトルバスターズ!』を最後に一度シナリオライターとしての座を退いている。
(2010年のアニメ『Angel Beats!』で仮復帰し、2015年の同作品のゲーム版で完全復帰)
その関係でこの作品のレスはやたら荒れる。

肯定派・否定派ともに結末部分にいたる描写の説明不足を訴える者が多かったこともあってか、
コンシューマ版・メモリアルエディションのストーリーは1.5倍に補強された。
また、結末の描写がぼかされ、ある程度の希望を持てるラストに変更された。
だが、コンシューマ版の終わり方も賛否両論で、無印版の方がいいと言う意見もある。
また、Keyとしては珍しく、極めて評価が高く、必然性のあるエロシーンがあったため、それが削られたことを残念がる意見もある。

結末部分については制作陣のなかでもかなり揉めたらしく、麻枝と新人の都乃河が怒鳴り合いのバトルにまでなったという。
「無印版の結末を踏襲する」(麻枝)vs「結末を変えて間口を広げる」(都乃河)という争いだったようだが、
最終的には都乃河寄りの方針になったようだ。*1
よく考えるとかなりのベテランである麻枝を相手に、新人の身でありながら都乃河は一歩も怯まずに堂々と意見したわけである。凄い。

かなり人を選ぶゲームで、こればっかりはプレイしなければ解らないとしか言えない。

とりあえず、CLANNADと同じ様なハッピーエンドを期待してはいけない。期待すると確実に後悔する。
鬱になった人の大半はそれが原因だと言われている。
ある意味ハートフルボッコ
前述の通り、智代ルートのバッドエンドを読んでおけばわりと本作の描写は理解はしやすくなる。


後に発売されたPE版は、コンシューマ版にエロシーンを復活させたようなシナリオとなっており、
現在普通に購入できるバージョンはすべてコンシューマ版準拠の内容となった。
しかし、麻枝のファンのなかには、麻枝の思想がストレートに出た無印版を探し求める者もいるようだ。



【備考】

タイトルの通り、CLANNADの智代ルートのその後を描いた話で麻枝も認めている。
しかし、ソフ倫関係なために、あくまで「形式上」は蔵とは別の作品。

外伝と言う事もあって、比較的安い値段で売っていた(当初は5800円)。
だが、上記の様に評価が散々だった事で即中古屋に売り出す人が続出。
一時期は買い取りできなくなったり、未開封の新品でも1000円を切る程の勢いだったとか。
しかし、初回版しか発売されてないので、数が限られ在庫が切れているので結構なプレミアが付いており、中古でも軽く1万する程。
当時、投げ売りした人は色々と後悔しているだろう……

販売数は5万本を超える大ヒット作でありながら、プレミアが付いている事から結構な人気作だったりする。





さあ、いこう
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そして
追記・修正はかくも素晴らしい
It's a Wonderful Life!

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最終更新:2023年07月22日 20:09

*1 後に「ある程度は許せるようになった」と麻枝は語っている。