リョコウバト

登録日:2011/11/01 Tue 20:52:08
更新日:2024/02/11 Sun 02:21:46
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  • 名称
 リョコウバト
  • 分類
 鳥綱ハト目ハト科
  • 学名
 Ectopistes migratorius
(仮名転写:エクトピステス・ミグラトリウス)

リョコウバトとは北・中米を中心とした地域を生息域としていた渡り鳥。
夏はカナダ南部、冬はメキシコ湾沿岸へと渡る事で暑さや寒さを凌いでいたためこの名前がつけられていた。
鳥類の中で最大の生息数を誇っており、ウィスコンシン州では1億3600万羽が確認され、ケンタッキー州では22億3000万羽以上が生息していたと推計された。
何と一説には50億羽近くいたとされている。


〇リョコウバト伝説

鳥類の博物画家として有名なジョン・ジェームズ・オーデュボンが記した所によれば、
  • リョコウバトが通った際はそのあまりの多さに太陽の光が遮られ、しかも3日3晩途切れる事が無かったという。
    オーデュボンはリョコウバトの生息数を1兆と見積もっていたが、流石に多すぎ。
  • 休憩に止まった大木の枝がポッキリと折れ、あっという間にフンだらけで雪のように真っ白になった。


〇絶滅までの経緯

1800年代に入り、ヨーロッパ系の移住者達が次々に北米大陸の開拓を開始。
餌場を失ったリョコウバトは人間の畑を荒らし始め、害鳥として認識されるようになる。
これだけならまだしも、その数の多さから「ハト撃ち」と称してスポーツの的にされて行った。
しかも肉が美味だった為に食用としても重宝され、大陸横断鉄道が完成した後は貴重な商売道具となる。
羽根は布団やコートにされ、余った死体はブタの餌として処理された。
というか、撃ちまくって持って帰れなかった分を処理させる為にわざわざブタを連れていったとか。
中には1日で1万羽も捕まえる者もいたとの事。
前述のオーデュボンも「Even if catches a lot. OK and no less than 5billion birds are.」という言葉を残している。
意訳すると、「50億羽もいるんだから、どんなに捕まえたって平気っしょwwwwww」という意味である。アホか。


案の定、僅か50年で個体数は激減。1890年代にようやく保護活動が開始される。
しかしこの当時は現在ほど野生動物保護に対する意識が高くなく、ハンター等に対する啓蒙活動はなかなか功を奏さない。
それどころか、生き残った群れなどハンターにとっては「狩猟対象のかたまり」でしかなく、残された25万羽の群れにハンターが殺到するという事件さえあった。

その上この鳥、繁殖期が年に1回、なおかつ1回に生まれる卵が1個という、個体数からは信じられないほどに繁殖力が極めて低い鳥であった。
もちろんただでさえむちゃくちゃ多かったリョコウバトに繁殖力が加われば個体数が増えすぎ、リョコウバト自体が生態系を破壊しかねなかっただろう。
だが、絶滅回避という視点からはこの進化は完全に裏目に出てしまった。(なお、卵を一度に複数産む近縁種のナゲキバトは今でもアメリカでごく普通に見られる野鳥である)

生息地の森林伐採もあいまって、個体数は減少の一途を辿った。
野生では1906年(1907年とする資料もある)にカナダのケベック州で撃ち落とされた個体が最後に記録されたもので、
飼育下の記録ではシンシナティ動物園に飼われていた「マーサ」というリョコウバトが1914年に死亡する(1910年に1羽となり、4年間1羽で過ごした)。リョコウバトは群れでなくては繁殖しない習性だったようで、飼育下の少数の個体は全く繁殖しなかったことも種の存続をはかるうえで致命的であった。

たった100年でリョコウバトは絶滅した。

マーサは死後標本にされスミソニアン博物館に展示された為、古代エジプトの石板があればもしかして……
皮肉の意味も込めて、リョコウバトは「世界で一番美しい鳥だった」と評されている。


〇フィクションにおけるリョコウバト

ドードーも登場した「モアよドードーよ、永遠に」の回でのび太がこっそりリョコウバトを連れて外出し、通りすがりの鳥類学者に見つかり大騒ぎになった事がある。
その後、ドラえもんたちが作った無人島で生活し、しばらく後の大長編「のび太と雲の王国」では天上世界に移住させられた(と思われる)。

同じく藤子作品から。現代で密かに二羽だけ生息していたつがいのリョコウバトがアメリカのギャングに狙われ、キテレツ達はギャングから守るべく奔走するという、かなりシリアスな物語が展開される。
最終的に保護されたリョコウバトの一羽(片方は死亡)はリョコウバトが生息していた過去にタイムスリップをして野生に帰された。
ちなみにそのリョコウバトの名前は「マーサ」であった。

  • 「50億のマーサ」
「漫画界のシートン」の異名を持つ漫画家の佐藤晴美がマーサの最期までを描いた読み切り漫画。
……が、表紙に描かれているのは雌のマーサではなく雄のリョコウバト

  • 「オーデュボンの祈り」
伊坂幸太郎の小説。
劇中の登場人物・田中が前述のリョコウバトに関するオーデュボンの話を主人公に語っている。

  • 「ワイルドサイド~ぼくらの新世界~」
SF作家スティーブン・グールドの小説。
主人公・チャーリーがタイムトラベルの可能なトンネルを利用し、リョコウバトを捕まえて動物園に売りさばくシーンがある。

ハカセがハトを出す手品を披露しようとした際、何故かリョコウバトが出現。
なんでも、偶然見つけた絶滅種のつがいを増やしてあげたらしい。無事何羽かのリョコウバトが自然に放たれた。が、オリジナルの2羽はネコに食われるという悲劇に見舞われる。

絶滅種のフレンズとして登場。名前からツアーガイド風の外見をしている。
『けものフレンズ2』ではジャパリホテルのお土産コーナーで、サーバルやジャイアントパンダのぬいぐるみがある中、彼女のだけは棚に置かれていないという描写があり、
絶滅種と非絶滅種の差異がわりと曖昧(トキが仲間を探すエピソードなど数えるほどしかない)なアニメ版においても、ここだけは珍しく意図的な演出がなされている。

  • PCゲーム「大航海時代II」
発見物としてリョコウバトが登場するが、その説明文が「これだけ繁栄している動物が絶滅することは決してないだろう」と史実上の後の顛末を痛烈に皮肉ったものになっている。
PSに同ゲームが移植された際に何故かこの説明文が差し替えられたことは有名。




追記・修正は50億を100年で使いきってからよろしくお願いします。

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最終更新:2024年02月11日 02:21