空の境界

登録日:2010/03/13 (土) 00:04:51
更新日:2024/04/23 Tue 05:51:28
所要時間:約 5 分で読めます





――三月の終わり、雪の夜
僕は彼女に出会った。


概要

空の境界(からのきょうかい)は、奈須きのこ原作の長編伝奇小説で、サブタイトルは『the Garden of sinners』。
イラストはTYPE-MOONおなじみの武内崇が担当している。

1998年10月に『空の境界式』の題でweb小説として同人サークル『竹箒』のホームページ上に掲載されたものが『月姫』のヒットをきっかけに知名度を伸ばし、その後ドラマCD、同人誌、ハードカバー書籍と徐々に幅を広げていった。

現在では文庫版が刊行されている他、2018年に20周年記念として特装版が発売されている。

本作はきのこの処女作であり、ある意味型月作品すべての始まりとも言える作品なためか、登場人物がその後の型月作品のキャラクターの原型になっていたりする。
また主人公・両儀式の持つ直死の魔眼の能力が『月姫』の遠野志貴のものと同様である事や、蒼崎橙子と蒼崎青子が姉妹と設定されているなど、共通の世界観を持っているなど、クロスオーバー色が目立つ。

ドラマCDを作る際、僅かな出番しかないとある人物を演じることになった中田譲治が役作りのために同人版の本書を入手して全て読破したというのは有名な話である。
その姿勢がきのこらに大きな影響を与え、以後氏は型月レギュラー声優として多くの役を演じることになったという。


メディアミックス

2006年12月、ついにufotableによる全七部作の劇場版アニメ公開が決定し、その独特の世界観を完全再現した超美麗な作画なども相まり、時をかける少女の持つテアトル系歴代興業収入の記録を塗り替えるなど一躍大きな話題を獲得した。
その後も終章、「未来福音」が劇場公開されている。映画本編を再編集したTVアニメ版も制作されているが、非常に大事な「矛盾螺旋」がごっそり抜けているのでダイジェスト程度に考えたほうが良い。
映画本編も定期的に動画サイトなどで一挙放送されているので見るのは容易。

当初は3部作で制作される予定であったが後にアニプレックス社長となる岩上氏がフタコイ オルタナティブに感銘を受け、型月に対し制作をufotableにすることを打診。
全7部作になることが決定しきのこも制作は丸投げするつもりだったがufotable社長から「一緒に作りたい」と依頼されたことで本格的に参加することとなった。
その際にきのこは第一章の作りなおしを考えておりプロットも完成していたが、ufotable側からあくまで原作を重視したいとのことでほぼそのままとなった。
この関係で第一章より前日談になる四章まではもしものことを考慮して同時進行で制作されていたことが明かされている。
ここまで綿密に打ち合わせしながら作られたため一部設定の改変等はあったものの破綻するものはなく、もっとも改変の多かった六章もきのこ発案が殆どである。

結果的に前述のように成功を収めたことで型月・ufotable両社の知名度は上がり、特にスタジオの方向性に悩んでいたufotableにとっては大きな転機となった。
以降型月作品のアニメ化ではかけがえのない会社となり、アニメ化が難しいと言われたHeaven's Feelも同社が製作を行っている。


主要人物









各章あらすじ(若干ネタバレあり)


第1章:俯瞰風景
Thanatos.

「自殺に理由はない。たんに、今日は飛べなかっただけだろう」

1998年九月。観布子市では少女達の飛び降り自殺が多発していた。
共通点はみな決まって取り壊しの決まった巫条ビルで自殺することで、調査に乗り出した式はそこで巫条霧絵という文字通り「浮遊」した存在と出会うことになる。

主題歌「oblivious」


第2章:殺人考察(前)
……and nothing heart.

「私は、お前を犯(ころ)したい」

1995年三月。高校の入学式で黒桐幹也は両儀式という少女に出会い、親交を深めようとしていた。そしてそんな純粋な彼に他人を寄せ付けない性格の式も徐々に心を開いていく。
だが同じ頃、市内では連続猟奇殺人事件が話題となっており、その現場には決まって式の姿があった。

主題歌「君が光に変えて行く」


第3章:痛覚残留
ever cry, never life.

「生きているのなら、神さまだって殺してみせる」

1998年七月。巷では複数の男達がねじ切られたような変死体で発見されるという新たな猟奇殺人が発生していた。
そんな中、式の雇い主である蒼崎橙子のもとに舞い込んだ依頼はその犯人浅上藤乃の保護、それが不可能ならば……殺すことだった。

主題歌「傷跡」


第4章:伽藍の洞
garan-no-dou.

「ええ、本業は魔法使いなの」

1998年六月。約二年間の昏睡から目覚めた式はそこで自らが多くのものを失った代償に、万物の「死の線」を見る能力を身に付けたことを知り、絶望から生きる気力を失っていた。
しかしそんな彼女の前に魔術師を名乗る謎の女性と、得体の知れない「何か」が現れ始める。

主題歌「ARIA」


第5章:矛盾螺旋
Paradox Paradigm.

「――その闇を見ろ。そして己が名を思い出せ」

1998年十一月。両親殺害の罪で逃亡していた臙条巴は、ふとしたきっかけで出会った式と奇妙な共同生活を始めていた。
だがその後、殺人現場を確かめに行った二人は、そこで殺した筈の両親が平然と普段通りの生活を送っているという異常な光景を目撃する。
そしてそこには、かつて協会で蒼崎橙子の同期だった魔術師コルネリウス・アルバと、同じく魔術師であり、同時にこの一連の事件の黒幕でもある人物、荒耶宗蓮の存在が関わっていた。

主題歌「sprinter」

八卦ヲ束ネ四象ヲ回シ両儀ニ至ル
今宵、相克スル螺旋ニテ君ヲマツ

第6章:忘却録音
fairy Tale.

「月の明るい夜。私達は星を見上げた」

1999年一月。幹也の妹で魔術師見習いでもある黒桐鮮花は、魔術の師である橙子から自らの母校、礼園女学院で起こった「妖精に記憶を奪われる」という不可解な事件の調査を依頼される。
そこで妖精の見えない鮮花の代わりに、共に学園潜入を命じれた式は渋々調査を開始するが、その中で彼女は生徒会長である黄路美沙夜と、どこか幹也と同じ雰囲気を持つ教師、玄霧皐月と出会う。

主題歌「fairy tale」


第7章:殺人考察(後)
……not nothing heart.

「それは本当に――――夢のような、日々の名残」

1999年二月。ある日を境に幹也の前から忽然と姿を消す式。そして同じ頃、市内では例の未解決のままだった連続猟奇殺人が再び発生していた。しかもその犯人の姿は式と似通った人物だという。
そこで彼女の無実を証明するため調査を始めた幹也だったが、その過程で彼はその背後にとある麻薬事件とかつての高校時代の先輩、白純里緒の存在があることを知る。
そしてその白純里緒こそ、あの荒耶宗蓮が残していった最後の駒(コマ)だった……。

主題歌「seventh heaven」


終章:空の境界

「――――さあ、あなたは何を望むの?」

――1999年三月。彼は、再び彼女に出会った。

主題歌「snow falling」




……なお、上記のあらすじを見てもらえば分かる通り、本作は各章の時系列がバラバラになっており、実際には第2章→4→3→1→5→6→7→終章が正しい時系列になっている。
これは当時サイトで掲載してたきのこが気ままに書いていたからである。
サイトに掲載されていたのは5章までであり、同人版から追加された6章以降は普通に時系列順になっている。

また2008年8月に、同人サークル『竹箒』としての数年ぶりの新作として、本作の続編にあたる『未来福音』を販売した。


第※章:未来福音
recalled out summer

「私の世界は二つある。どちらが どちらの影であるかなんて、正直確かめることさえ 忘れてしまった。」

1998年八月。未来視の少女・瀬尾静音と出会った黒桐幹也と、同じく未来視の連続爆弾魔・倉密メルカと出会った両儀式。
ふたつの“未来”が重なり合う結末(みらい)の行方は――!?

未来  現在
幸せは、キミの側に。


主題歌「アレルヤ」














第_章:終末録音
the Garden of oblivion

「でも安心してほしい。ここで終わっても、どうせ話は続いていく。」

映画『空の境界 未来福音』の来場者特典として配布された、書き下ろし小説。本編とはあまり関係ない、小説版ファンディスク的なもの。
書籍としては唯一収録がなくプレミア化していたが、特装版に初めて収録された。
ちなみに時系列としては1999年4月以降のお話。












あたりまえのように生きて、
あたりまえのように死ぬのね

ああ、それは―

なんて、孤独――



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最終更新:2024年04月23日 05:51