関口巽

登録日:2011/07/08(金) 07:48:00
更新日:2024/03/31 Sun 23:28:40
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「久遠寺家の……久遠寺家の呪いを解いてくれ!」


関口(せきぐち)(たつみ)


京極夏彦の同一世界観による小説作品シリーズである「妖怪シリーズ」の主要登場人物の一人。
同シリーズに於ける代表的な語り部であり、物語の多くは彼の視点と言葉により紡がれる事が多い。
シリーズを通しての主役、中心人物の一人であり、京極堂こと中禅寺秋彦は高等学校時代の同窓。探偵・榎木津礼二郎は一級先輩に当たる。
また、彼らと同じくシリーズを通しての重要キャラクターである木場修太郎とは、
学徒出兵(理系にもかかわらず手違いで徴兵された挙句に前線に送られた)した際に自身の部隊で副官として出会っている。
また、上記の様に物語の語り部を務めると云う立場からも判る様に劇中への登場頻度が高く、関口との縁から物語に参入する様になったキャラクターも多い。
不器用で駄目な人間として描写される存在であり、語り部にもかかわらず劇中ではおおいに惑い、挙句には投獄されてしまってもいるが、
だからこそ彼に共感を感じる人間も多く、それこそが彼の物語が描かれる事の多い理由とも考えられる。


【人物】

年齢は三十代半ば。
背が低く、更に猫背で姿勢が悪い為に余計に小さく見える風采の上がらない人物。
髭の濃い猿顔で、緊張すると言葉に詰まりすぐに大量の汗をかく……等、見た目に関しては余り褒められた描写をされる事が無い。
物心付いた頃から“そのケ”があったそうだが、学生時代には本格的に鬱病を発症していた時期があるが、
知己を得た中禅寺や榎木津と云った強烈な個性を持つ友人との出会いと関係により快方に向かったと云う経験がある。
そうした経験からか、中禅寺と榎木津を特に変わった人間として本人は捉えているのだが、件の二人からは関口こそ変わっていると評されている。
……複員後は、大学から僅かばかりの援助を受け乍ら粘菌の研究をしていたそうだが、
生活は楽では無かったので二年前に出版社(稀譚舎)に就職した中禅寺の妹・敦子を頼って小説家としてデビューを果たしている。
……尤も、生活に困っているのはその後も一緒なのだが……。

作風は前衛的幻想小説と云う、判る様な判らないもので、
「美文や名文を予感させ乍らも、最後には自らそれを壊してしまう」……と云う文体を特徴としているらしい。
また、友人の中禅寺によればその小説は凡てが自身の忌まわしい体験に基づく私小説……との事であり、
自身の作品の中では特に高い評価を受けた作品であり、
初の単行本のタイトルともなった『目眩』は、『姑獲鳥の夏』での哀しい体験が元になっている。

……世間からの反応が基本的に無い事に悩み、あったらあったで悪い方に過剰に反応していたりするのだが、
編集部や業界の、それも何故か大物からの評価は意外に高いようだ。
その一方で筆が遅く、小説一本で食っていくのが難しい為に「楚木逸巳」名義でカストリ雑誌に記事を書いており、
シリーズの主要人物の一人である鳥口守彦は、その縁から登場したキャラクターである。
両親は共に教師だが、余り実家にはより付かず、弟とも疎遠らしい。
ただ、関係が悪いとか、特に仲が悪い訳では無いようである。
……因みにこうした特徴は友人である中禅寺や榎木津、木場にも共通している。


【特徴・その他】

シリーズに於てはファンからはワトソン的なポジションとして捉えられる等(違うが)、
寧ろ他のキャラクター以上に登場頻度、活躍が多い人物であり乍ら所謂「困った人間」として描写されているのが関口巽と云う人物である。
対人恐怖症で、人と真っ直ぐに目を向ける事が出来ず、すぐに赤面し言葉を失う。
大量の汗をかき、反応が鈍くなる……等、散々な描き方をされている。
……一方で、鬱病治療の為に身に付けた心理学やそもそもの仕事であった粘菌関係の知識を始めとして確かに博学であり、
奥底には意外にも自らすら持て余す凶暴な一面もある……らしいのだが、
思いやりのある人物でもあり、実際に凄惨な事件の場にあっても関口との出会いに救われた人間も多い。
……ファンからは夏に死んだあの女(ひと)や、五度も妻を奪われたあの男(ひと)等が印象深いだろう。

……一方で、関口を良く知る仲間達からの評価は散々で、友人達との絡みでは一方的にやり込められる場面が多い……。

本人は否定するだろうが、親友と言っても良い間柄の中禅寺曰く、
その言動は「勘違い二割、間違い二割、嘘一割、思い込み五割」であり、信用出来ない語り手と評している。
他、木場修太郎も関口がそれなりに見所のある奴と理解していながらも「褒め甲斐はないが貶し甲斐はある」としており、
それこそが友人達から冷たくされる原因なのだとも云える。
基本的に性質が陰気で、からりとした天気よりもじめじめとした梅雨空を好む。
その所為か学生時代には榎木津から「陰花植物」と呼ばれている。
(初対面で「君は猿に似ているね」と言い放ち、最初に関口を猿呼ばわりしたのも榎木津である)。


【交遊関係】

  • 関口雪絵
駄目な旦那からは想像も付かない様な良く出来た奥さん。
関口とは何と恋愛結婚。
中禅寺の妻である千鶴子と仲が良い。
美人らしいが、疲れてる時には十人並に見えると、そうさせている張本人の関口に思われている。

古書店「京極堂」主人。
関口を友人では無く知人であると正すが、何だかんだで世話を焼く事が多い。
……ツンデレ?

ちなみに平成の世では、公に友人と認めている。……尤も、その頃には肝心の関口当人が故人のようだが。

薔薇十字探偵。
下僕の中の下僕たる関口の主人。
……だが、何だかんだで持ちつ持たれつの面も多い様である。

四角い刑事。
上記の様に学徒出兵した前線で、職業軍人だった木場と出会っている。
榎木津とも幼馴染みの関係にあった事が複員後にも変わらぬ親交を結んでいる原因だろう。
学生将校は職業軍人にいびられる事もあったそうだが、
木場は関口を立て、ただ二人のみが生き残った敗走の中で芋を分けあって食べた仲であるらしい。

  • 鳥口守彦
カストリ雑誌「實録犯罪」の記者。
関口との縁から物語の主要人物となる。

  • 益田龍一
薔薇十字探偵社の見習い探偵で、元は神奈川県警察本部の刑事。
今では軽い口を聞くが、関口にはそれなりに共感を抱いてもいるし、それなりに尊敬もしている様だ。

  • 久遠寺涼子
姑獲鳥の夏』のヒロイン。
……関口にとっての「運命の女」であった。
彼女と関口の特殊な関係は、以降のシリーズにも影を落としていると言って良い。

  • 久保竣公
本邦幻想文学の旗手となる事を期待された若手作家。
魍魎の匣』に登場。

  • 宇多川崇
幻想小説の大家。
関口を高く買っていた。
数々の事件に巻き込まれた関口の噂を聞き付け、彼に奇妙な依頼をする。
狂骨の夢』に登場。

  • 由良昂允
『陰摩羅鬼の瑕』の主人公の一人。
元伯爵由良家の当主にして儒学者。
生と死の境界を描いた関口の作品の愛読者であり、偶然にも館を訪れた関口と親交を結ぶ。


【演じさせられた役者】

■映画
●演:永瀬正敏
◆『姑獲鳥の夏』
●演:椎名桔平
◆『魍魎の匣』

■ラジオドラマ
●声:上杉洋三
◆『百器徒然袋 雨』

■アニメ
●声:木内秀信
◆『魍魎の匣』

■ドラマCD
●声:梶裕貴
◆『百器徒然袋 雨』

■舞台
●演:後谷智弥
◆『魍魎の匣(1999年初演、2001年再演版)』
◆『狂骨の夢』
●演:高橋良輔
◆『魍魎の匣(2019年版)』

■ミュージカル
●演:神澤直也
◆『魍魎の匣』


【余談】

関口にはモデルとなった人物が存在している。幻想小説家の関戸克己だ。残念ながらプロデビューを目前に控えた2002年に亡くなっている。
デビュー作として発表される予定だった短編集は没後、『小説・読書生活』という題名で世に出ている。
その本の装丁と解説は「古いなじみ」を称する京極夏彦によって手掛けられているが、解説内にて京極は関戸の事を友人と呼んでいる。
また、京極は自身のホームページにて、某ウェブ書店で関戸が「天才」と紹介されている事に対し
「いやあ、生前の彼に見せたら笑いころげていただろうなあ。泣いたかな(笑)」とコメントしている。



榎「見ろ! ここにサルのコーモクがある!!」

中「ああ──断れと言ったのに立てられてしまった。
  ──君は君の情けない、他人に見せるのも憚れる様な人間性をこれ以上晒されても良いのかい? ──真実(ほんとう)は厭な癖に……馬鹿だなあ」

木「オイ。オタクでもな、やって良い事と悪い事の線引き位はするもんだ。追記なんか──するんじゃねぇぞ」

鳥「うへえ。先生、言われてますね」

益「まだまだ足りないですけどね、ケケケ」

敦「酷いわ兄さん」

千「本当ですよ──気にしないで下さいね、雪絵さん」

雪「いいえ……」

中「なんだい関口君? ……まさか、愚かにも追記や修正を……頼む気では無いだろうね?」

関「あうう……」

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最終更新:2024年03月31日 23:28