データイースト株式会社

登録日:2012/01/31 Tue 05:51:49
更新日:2023/12/02 Sat 22:06:45
所要時間:約 8 分で読めます




桝田「ヘンなゲームなら任せておけ!」

社員「この我々のゲームがヘンだとォ?」




データイーストとは、1976年から2003年まで実在したゲームメーカー。
社名は「データウェスト社(同名国内メーカーではない)のような企業を目指す」と言うことに由来している。
本社の所在地は東京都杉並区。

英字表記のData East Corporationからファンに「DECO」或いは「デコ」と親しまれている。

元々はアーケード製品の部品下請けなどを行っていたが、76年のスーパーブレイクからゲーム市場の展開を始める。

また、アーケード機での初のメディア交換対応基板(デコ・カセットシステム)を開発したのはこのメーカー。*1
後のMVS(NEOGEO)等がこの影響を受けている。
さらに言うとアーケードゲーム筐体のコネクタ規格、(旧)JAMMA規格を提唱したのもここの社長さんである。

また、86年にはアメリカでデジタルピンボール事業を展開し、
紆余曲折を経て現在のスターン・ピンボール社の基盤となっている。

…これだけ書けば至って普通の企業じゃんと思うだろうがデコは違う、違うのだ。

●デコゲー
大体展開するゲームがやたら「ヘン」なことが最大の特徴。
一例として、
  • アクションゲームの重力法則がやたらふんわり。(デコジャンプとも)。その為かは不明だが、DECOゲーではノーダメージで敵を踏みつけられる作品が多い。
  • 助ける対象は常に大統領。よその会社ではお姫様やギャルであるところだが…
    • 例外的にシークレットエージェントではギャルを侍らせてるが、これは元ネタが英国の某スパイ映画だからかもしれない。
  • アメリカ大好き。
  • ミッドナイトレジスタンスのOPで「妹たちよ」のテロップの直後に白目剥いた濃い野郎2人のアップ。 
  • 暑苦しい男達熱い漢達を描いた作品も多い。
  • チェルノブイリネタ。詳しくは後述。
  • 中年デブの「カルノフ」が看板キャラ。(名称は社長命令らしいが、とあるゲームライターによる真偽不明の記事があるのみ)
  • ゲームバランスは大味気味。当社のアーケードゲームの9割に永久パターン、カウンターストップがあり、スコアラーからは「開放台」などと揶揄されることも。
    全国○○名の皆様だぜヒャッハー!
  • そしてギャルゲーを作ったらヒロインが無残な姿で死にまくる
  • ゲーム内テキストのフォントが何故か勘亭流*2
  • 挿入される英語ボイスが本格的過ぎる
    • ミッドナイトレジスタンスの「ホーミンミッソー!」「ナィトゥロゥ!」、サンダーゾーンの「ヘビィマスィンガン!」などを一度聞いたら忘れられなくなる。
    • 当時DECOの海外向け営業責任者だった後のスティーブ・ミラー氏*3などが担当していたという。どうりで本格派なわけである。
  • 演出面に力が入っている。
    • エドワード・ランディでは時系列とステージ順序が異なるという演出が採用されており、トレジャー作品等に影響を与えている。
…等など。

キャッチコピーや台詞もやたらインパクトが強いものも多く、
  • さあ牛だ(空手道)
  • アツクテシヌゼ ワカッタラサッサトイケ(ならず者部隊ブラッディウルフ)
  • いきなりクライマックス(エドワード・ランディ)
  • 我前に敵は無し(チェルノブ)
  • 竜退治はもう飽きた(メタルマックス)
  • 艶姿三強男之勝負拳(トリオ・ザ・パンチ)
  • このゲームには2196のフェイタリティがあるよ!(タトゥー・アサシン)*4

と、こんな具合。
項目冒頭での「ヘンなゲームは~」は当時広告マンの桝田省治が考えたものだが、社員はこのコピーに対して憤慨していた。
至って真面目にゲームを作っているのは解るが、出来上がった代物が「ヘン」なことに気付いていなかった。

こうしてヘンなゲーム、所謂「デコゲー」を大量に排出したのは上層部のチェックが殆ど無しで企画が通っていた為らしい。チェックしろよ!
そもそも上層部チェックそのものが怪しかった可能性もある。
『大怪獣デブラス』のプレゼンをした時は社長、役員、そして多くの社員らの前で、
2人してゲーム中に出す予定の踊りのシーンを踊ったんです。
それだけ、どれだけ楽しくて面白いゲームなのかを、必死に訴えて企画を通したりしました。
引用元:https://pubs.iir.hit-u.ac.jp/admin/ja/pdfs/file/2346
「空牙シリーズ」の様な一切のネタ抜き作品もあるにはるんだが…。

●ヘンな方針
ゲームショーではスーパー戦隊シリーズのパロディ「販促戦隊デコレンジャー」という、ろくすっぽ販促しないヒーローショーを披露。
が、これは100万単位の金がほぼノーチェックで動いた上に「社長、またやってしまいました」と事後承諾。
その社長も「ワシも出たい」と発言。
…この会社よく30年近く持ったな。

あまりに有名なのが末期のしいたけ事業をはじめとした多角経営。
ドコモ向け衛星受信アダプタ・心電図・マイナスイオン清浄機・ガスマスク等、ゲーム企業と思えない方向に突っ走っていた。

●アーケード事業撤退
90年代に入ってもウルフファング・マジカルドロップなどの良作を展開していたものの、
格ゲーブームに押されて隠れてしまったことやSTGの衰退などによりアーケード市場で苦戦。
社運をかけて発売したザ・グレイト・ラグタイムショーも結果的に惨敗。

その後はファイターズヒストリー等で好評を博すも、会社の運営方針にゴタゴタがあったらしく、 稼働すらしなかった タトゥー・アサシンなど結局覆せず98年にアーケード事業から撤退し、コンシューマー一本化に至る*5

コンシューマーでは神宮司三郎シリーズや慟哭等で高い評価を受けている。
ただ、当時のコンシューマー作は下請けが忠実移植のしなさに定評のあるXING作や、ファンから不評なPS版蒼穹愚連隊等も…。
メタルマックスが何度も企画ポシャったり、野島一成の移籍により5作目が実現できなくなったヘラクレスの栄光の件も大きいか。

そして2000年からコンシューマー市場も事実上撤退状態に陥る。

●そして倒産へ…
そうして2003年、上記のしいたけを筆頭とした数々の多角経営も功を成さず、破産申告を申し出て正式に倒産してしまった。

…ちなみに倒産はこれで2回目。 
1999年にも1度倒産したのだが、その後3時間で資金の目処が付き和議申請が通った。(3時間倒産事件
前述の経営方針転換、多角経営化はこの後から。

しいたけだのマイナスイオン清浄機だのガスマスクだの抱えて最期まで突っ走ってしまった辺りもデコだった。

●その後
その後のデコ作品の版権はG-modeやパオン・ディーピー、D4エンタープライズ等に分かれた形で保有されている。
メタルマックスはデコ子会社の新宿エクスプレスに譲渡→その後長いこと手放せず、2009年にエンターブレイン→2016年には角川ゲームズに移譲。
この為ファンからは恨まれがちだが、元々新宿エクスプレスはデコ版権管理の会社であり、
このシリーズ自体外注だったことや製作元のクレアテック(今は解体)の企業体力に起因していたこともある。
別に両社にわだかまりや誤解があったわけではない。

ちなみに神宮寺三郎シリーズは倒産前からワークジャムに権利譲渡していた(その後、アークシステムワークスに権利が譲渡された。)

尚、デコ社員が興した企業はアイディアファ
亡きテクノスジャパンもデコ元専務のくにおくんが独立して興した会社。

●ゲーマデリック
デコ作品と切っても切り離せないのが音楽制作チームゲーマデリック。
名称は「「ゲーム」を「デリシャス」にしよう」ということから。
他社で言えばセガのS.S.T・タイトーのZUNTATA・コナミの矩形波倶楽部・SNKの新世界楽曲雑技団等に相当する。
デコがアレだからかコミックバンドとしてのカラーが強いが、
ハードロックからジャズ、ラップ等多種多様な楽曲を作り上げゲームを盛り上げるのに一役買っている。
空牙ではディストーションギターのサンプリングに拘りすぎて曲数がやたら減ったと言う逸話がある。
2001年に解散したが根強いファンは多く、2007年にベストアルバムが発売されている。
現在でも第一線で活躍している酒井省吾氏はキーボード担当だった。

●事件
◆チェルノブ
代表作の一つチェルノブは、「被爆した炭鉱夫が主人公」「戦う人間発電所」「タイトル」「EDが自由の女神顔面爆破」等を理由に、
チェルノブイリ原発事件を茶化していると朝日新聞から見事に突き上げを食らった。そりゃ食らうよな。
TV番組におけるデコ側の釈明は「チェルノブと同社作品のカルノフは従兄弟であり、事故とは無関係」とシラを切った。 
また、記者にもこの説明を行い、記事にするのを諦めさせた。 

◆カプコンとの裁判対決
格ゲーブームの頃にカプコンから「ファイターズヒストリーはストリートファイターⅡの盗作」として販売停止を求められたが、
デコ側は「対戦格ゲーの原点は当社の対戦空手道であり、ストリートファイターこそパクりだ」と主張。
裁判沙汰になるが、和解に至った。

尚、この時期のカプコンはデコのみではなく他社格ゲー作品にも同様の主張をしていた。

◎代表作一例
●アーケード作品 

◆B-WING

◆ダーウィンシリーズ(同じく進化システムを持つアクトフェンサーが含まれる場合もある)
  • ダーウィン4078
  • スーパーリアルダーウィン(SRD)

◆空牙シリーズ

◆ザ・グレイト・ラグタイムショー

デコ三大奇ゲー 

◆キャプテンシルバー

◆戦え原始人 JOE&MAC
  • JOE&MACリターンズ(固定画面アクションになった続編)

◆サイコニクスオスカー

◆ならず者戦闘部隊ブラッディウルフ
  • サンダーゾーン(ブラッディウルフの2人がプレイヤーキャラとして登場している)
  • ガンハード(ストーリー上ではブラッディウルフとサンダーゾーンの後の話が舞台)


◆エドワード・ランディ

◆ダークシールシリーズ

◆空手道シリーズ(テクノスジャパン製作)
  • 空手道
  • 対戦空手道 美少女青春編

◆ファイティングファンタジーシリーズ


ロボコップ作品
  • ロボコップ
1作めのゲーム化作品
  • ロボコップ2
2作目のゲーム化作品、ベルトスクロールアクションだがメインウェポンが銃という異色作。ただし殴ったり投げたほうが強い。
他にコンシューマー向けロボコップ作品が存在するが海外専売。AC版とも別物。
当時のデータイーストはロボコップフランチャイズに制作協力しており、映画の方のロボコップ2の中にもDECO製ゲーム筐体が登場したりする。

◆ドラゴンニンジャ
スパルタンXに似た横スクロール格闘アクション。ドラゴンニンジャは主人公を指すものではなく敵の組織というよくわからないタイトルである。
海外版は"BAD DUDES VS DRAGON NINJA"なのでまだわかりやすい。

◆ヘビーバレル
ループレバーシューティングゲーム。DECO版、ていうかSNKより許諾を得て作成した怒基板コンパチ製品。
しかしリバースエンジニアリングした部分を勝手に流用したことが発覚してSNKにられるというトホホなことになってしまった。

◆シークレット・エージェント
ローリングサンダー007がコンセプトのすごい作品。海外ではかなりヒットしたらしい。ヘビーバレルのシステムを流用した黄金銃というアイテムが有る。



◆ハンバーガー(ファミコン版は「バーガータイム」)
  • Peter Pepper's IceCream Factory(バーガータイムの主人公によるスピンオフ作品)
  • スーパーバーガータイム

◆タトゥー・アサシン(稼働中止)

◆マジカルドロップシリーズ

◆フライングパワーディスク
いわゆるエアホッケーをビデオゲームとしてアレンジしたスポーツゲーム。
海外ではWindjammersの名で知られており続編が作られたりeスポーツ大会で採用されるなど知名度も高い。

◆レーザーディスクゲーム作品
  • 幻魔大戦
  • 幻魔タロット
  • サンダーストーム
  • ロードブラスター
  • キャッシングストーン(未発売 後にメガLD、3DO、セガサターンなどに移植)

◆超次元竜ドラゴンガン
ガンシューティングゲーム。ドラゴン型のガンコントローラーが特徴。スピーカーが内蔵されており銃が「しゃべる」。
ちなみにこの「竜」の担当声優は野沢雅子氏だったりするのだが、本作のダークファンタジー風の世界観からみると明らかに浮いており、
こんなところでもDECOの社風が感じられる。

●コンシューマー作品 

METAL MAXシリーズ(クレアテック製作)

◆ヘラクレスの栄光シリーズ

◆探偵神宮寺三郎シリーズ

◆大怪獣デブラス
怪獣VS人間兵器という今でも数少ない非対称型ウォーシミュレーションゲーム。

◆超人狼戦記ウォーウルフ(タカラ発売)

◆サイレントデバッガーズ

◆ダークロード

◆慟哭シリーズ


デコ社員「我々の追記・修正の何処が変なのか!?」

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最終更新:2023年12月02日 22:06

*1 ちなみに当時のメディアはカセットテープ。お世辞にも堅牢とはいえないメディアで実現してしまうのがデコらしい。

*2 筆で書いたような見た目のフォント。相撲や歌舞伎関連でよく使われるあれ

*3 後にUBI日本支社長も努めてるすごい人である。

*4 ちなみに日本はおろか海外でも正式にはリリースされなかった。

*5 この頃から外注開発も手掛けるようになる。セガの『ウィンターヒート』はAC/SS版の両方に関わり、『ソンビリベンジ』ではDC移植版を担当している。