雷(自然現象)

登録日:2019/4/13 Sat 00:48:00
更新日:2023/12/20 Wed 00:07:53
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概要

雷とは自然現象の一つである。
「稲妻」という言い方もあるが、あちらは雷の要素のうち光そのものを指している。
なので音の意味では「稲妻」は基本的には使用されない。

雲から発生して地上に落ちてくる*1
どの雲からも落ちるわけではなく、積乱雲と呼ばれる上下に分厚い雲から発生することが多い。

英語ではthunder(サンダー)と表記し、北欧神話の雷神thor(トール)と同一語源である。
ただし一般的に英語圏ではthunderは「雷鳴」、すなわち「雷の音」だけを意味し、雷光や落雷は意味しない。
そのため日本のゲームやマンガなどで雷を落とす魔法や技をサンダーと呼ぶことがあるが英語圏の人間からするとこれは違和感を覚えてしまう*2
雷を意味する英語には、
  • 雷光を意味するlightening(ライトニング)
  • 落雷を意味するthunderbolt(サンダーボルト)lighteningbolt(ライトニングボルト)
などがあり、雷自体のことを言いたい時はlightening(ライトニング)thunderbolt(サンダーボルト)を使うことが一般的。
  • 単に雷と言いたいならlightening(ライトニング)
  • 雷が落ちて地上に何かしらの被害が発生する現象全体を表現したいならthunderbolt(サンダーボルト)
という使い分けをする。

ちなみにサンダーボルトのbolt(ボルト)は本来はボーガンの太矢を意味する言葉であり、落雷を天から雷鳴とともに落ちてくる矢に例えている言葉である。
BとVをあまり区別しない日本人は混同しがちだが、電圧の単位は「volt」であり無関係。


メカニズム

積乱雲に溜まった氷の粒や塵、水滴などが上昇気流によって上昇する中で他の氷の粒や塵と衝突することで摩擦による静電気が発生して荷電していく。
この時、小さな粒はプラスに帯電し、大きな粒はマイナスに帯電する*3

大きな粒は重たいので雲の中の下層に溜まり、小さな粒は軽いので雲の中の上層に溜まる傾向がある。
そのため雲の下層はマイナスに帯電し、上層はプラスに帯電していく。
この現象が長時間続き、帯電した粒の量が多くなると雲は上下に分厚くなっていき、上層と下層の帯電した粒の層も大きくなるため電位差も非常に大きくなる。
この上下に分厚い雲こそが積乱雲や大型積乱雲(スーパーセル)である。

そして積乱雲の下層の強大なマイナスの電荷によって真下の地上にプラスに帯電した空気中のイオンや塵が引きつけられて集まり*4、地表全体がプラスに帯電していく。
積乱雲の下層のマイナスの電荷と地上のプラスの電荷はお互いに引きつけ合うが、空気は絶縁体であるため通電しない。
しかし空気中に十分なイオンや水蒸気や氷の粒があると時間が経つごとに積乱雲の中の荷電した粒は増えていき積乱雲と地上の間の電圧は上昇していく。
そしてその電圧があるレベルを超えると絶縁体である空気を押しのけて*5積乱雲と地上の間で通電し、激しい放電現象が発生する。
これが落雷である。

また、空中の電荷の状態によっては雲と雲の間で通電して雷が地上に落ちてこないこともある。
放電現象でありながら建物が揺れるほどのすさまじい衝撃波が発生し、耳をふさぐほどの轟音や爆発音がするがこれは放電によって空気が押しのけられ、尚且つ短時間で3万℃近くまで温められる事で急激に膨張するのと音速を超えて空気の壁に当たる圧力の差によるものである。

本来空気は電気を通しにくいが雷ほどの激しい電圧が生ずる放電現象の場合は空気が押しのけられ、そこへ急激に熱が加わることで膨張する。

つまり落雷があのギザギザした独特の形状になり衝撃波や爆発音を伴うのは、空気中の分子の偏りによって生じる比較的電気抵抗の低いところを通ることで空気の壁や音の壁に当たる為なのだ。

当然ながら人間含めた生物に直撃すれば命に関わり死亡率も高い。
仮に生き延びたとしても強い電圧によって神経がズタズタに破壊される為、高確率で後遺症が残ってしまう。

空気が乾燥している状態で木に直撃した場合は発火することがあり、自然発火による山火事の原因にもなる。

無機物に当たった場合はその物体の電気抵抗や水分の含有量、大地に接しているかなどによって被害は大きく変わる。
電気抵抗の小さい金属などの場合は電気はほぼ抵抗なく流れて地面や周囲の空気に拡散するためほとんど被害はないことが多い。
ただし金属の形状によっては*6高圧電流が流れるために高温になって変形やひび割れや焼き鈍しなどが発生して壊れたり強度が劣化することもある。
いっぽう濡れたコンクリートなどに直撃した場合は電気抵抗が大きいため非常に高温になり含まれている水分が水蒸気爆発を起こして破裂することがある。


対策

積乱雲は上に伸びる独特の形状をしている為、比較的わかりやすく、遠くから稲光が見えたり雷鳴が聞こえたら建物の中に避難すること。
雷は地面から突き出したものに比較的落ちやすい性質がある為、傘などをさしているのも危険な状態である。
また間違っても木の下や即席の小屋やテントに逃げてはいけない。
車を持ってる人であれば車の中に逃げるのが良策だが念の為金属部分には触れない様に。

しかし平野などでどこにも逃げるところがないということもある。
その場合はつま先立ちをした状態で耳を塞いでしゃがむこと。
こうすることで雷によって受ける怪我を最小限に抑えることができるのだ。

よく「雷の時はなるべく体勢を低くしろ。」と教わり、うつ伏せになろうとする人もいるが、この体勢は落雷に対しては安全なのだが、地面との接地面積が増えて地面を流れる電流を受けやすくなるのでかえって危険である。

また電圧が極めて大きい為、ゴム製の長靴やレインコートのような不導体を纏ったり、逆にそれまで身に付けていた眼鏡や金属アクセサリー等を外すなどの対策をしても効果はほぼ皆無である。
むしろ金属品はつけていた方が万が一落雷を受けてしまった際に電流がそちらへ流れることで結果的に身体への電流が減る為に生存確率が高まるという説も。

逆に導体に囲まれた内部にいた場合、直撃を受けても電流は外側を通って抜けていき、導体の内部には流れてこない。
このため、鉄筋造の建物や自動車・航空機に乗っている状態で落雷を受けた場合、少なくとも内部の人間が落雷で傷つくことはない。
ファラデーケージと呼ばれる現象である。
もちろん直撃を受けると機材が高電圧にやられることがあるので、決して安心は出来ないが、一時的に雷を凌ぐには十分安全である。

また、落雷の影響を防ぐ対策としてアースや避雷針などのような装置もある。
専門的な解説は端折るが、簡単に言えば落雷があったときに過剰な電流を逃がすことで落雷の被害を防いでいる。
そのため「避雷針」とあるが、それ自体は雷を避けるわけでなくむしろ積極的に受ける(受け流す)存在である。


雷のあれこれ

南米のベネズエラにあるカタトゥンボという地域では雷が頻発することで有名であり、なんと一分間に平均して28発もの雷が落ちるのだという。
その為世界で一番雷が落ちる地域として2013年にギネスにも記録されている。

暑い季節に発生することが多いが実は冬の雷の方が危険である。
理由としては夏などの暖かい季節に発生する雷と違い、雷鳴が鳴ることが少なく、何の前触れもなく突然ドカンと落ちてくるのと、発生する雲が積乱雲よりも低空の雲の事が多く、なんと最大で夏の雷の100倍近くのエネルギーを持つことがあるからである。
海外では国によってはそう珍しいものでもない一方で日本では日本海側の地域で比較的多く発生し、太平洋側ではあまり見られない現象でもある。

室内で入浴していた人が雷で感電死したケースが存在する。
原因は水道管が金属でできていたことと電気が雨水から下水道、さらにそこから上水道を伝って来るという不運が重なったことによるものだが、現在の建築方法では水道管は電気を通さない素材でできているので事故が起きることはまずない。
このように水道管が金属でできている場合はレアケースとはいえ事故も起こり得るので、心配な人は家の水道管が何でできているかを調べるといい。


神話における雷

古今東西の神話において雷をつかさどる神は大抵の場合上位の神格であることが多い。

例えばギリシャ神話におけるゼウスや古代インドのインドラなどは最高神であるし、北欧神話のトールや日本神話のタケミカヅチは最高神でこそないが神格としては上位である。
雷神としての側面を持つ神が農耕神としても信仰されている例もある。

これは雷が簡単に人の命を奪う恐ろしい自然現象であると同時に雨を伴うことが多く、作物が実るのに欠かせない自然現象でもあったため。
日本において雷のことを稲妻ともいうのは父なる天と母なる大地の交わりによって作物が実ると考えられていたからであり、正に豊穣を象徴する自然現象だった。
ちなみに稲妻には窒素固定などの性質があるため、それ自体も農作物を育てるのに重要な存在である。

(かみなり)という言葉の語源に関しては日本では「雷は神が鳴らしていたもの」だと信じられており、神鳴りという言葉に由来しているという。
また、「いかずち」という呼び方もあるが、こちらは荒々しい神や恐ろしい神を意味する「(いか)()」が語源とされている。
意外にもこちらは漢字に対して、あまり農業とは由来に関しては関わりが薄いらしい。


創作上における雷

炎使い同様に漫画などではかなりメジャーな属性
電気使いの切り札として雷を放つ、或いは雷使いが電気使いの上位互換として登場することも。
または比喩的な表現で人が怒った時に雷が落ちるといった表現がされることもある。

SF作品では、雷は人工的な環境で生まれ育った人物が初めて目撃して驚く自然現象の一つとして描写されることがある。
機動戦士ガンダム」では雷雲の中に突っ込んだランバ・ラル隊が雷を敵の新兵器と勘違いしてパニックになりかけるも、過去に地球に滞在したことがあったラルが「うろたえるな。これが地球の雷というものだ」と一喝、落ち着きを取り戻すというシーンがある。

ところで、同作のプラモデル展開「MSV」には「真紅の稲妻」の二つ名を持つジョニー・ライデンなる人物が登場するが、彼は本物の稲妻を見たことがあるのだろうか?




追記・修正は雷に打たれてからお願いします。




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最終更新:2023年12月20日 00:07

*1 厳密に言うと電気の流れ自体は雲と地上の両方から引きつけ合うように発生するので雲から落ちるだけでなく地上から雲にめがけて上がってもいる。

*2 轟音で攻撃する技のように感じるらしい。

*3 なぜ小さな粒がプラスで大きな粒がマイナスに荷電するかははっきりとは分かっていないが、大きな粒のほうが質量の差により電子を引き込む力が強いためそうなるのではないかという説がある。

*4 静電気誘導という現象。

*5 絶縁破壊という現象である。

*6 角や尖っている部分などは電圧が高まり高温になりやすい。