自在法

登録日:2019/03/13(水) 20:35:00
更新日:2023/11/12 Sun 18:34:11
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自在法とは、ライトノベル「灼眼のシャナ」に登場する能力の一つである。



概要

作中に登場する“紅世”関連の技法の一つで、“存在の力”を使用し、『在り得ぬ不思議を現出させる術』の総称。
本来この世に在り得ない事象を、無理矢理に押し通すことで存在させることで成り立つ。

“存在の力”を操り、「この世にないものを実体化させる」ことを『顕現』という。“紅世の徒”などが「この世」で実体化しているのも全てこの「顕現」によるものだが、この中でもイメージや意思に沿って外部の存在に干渉するものを特に「自在法」と呼ぶ。

“存在の力”とは簡潔に言えば「大きな可能性を秘めた『そこにいることのできる』力」であり、これを自己に及ぼせば強化などに、他に及ぼせば自在法となる。
作中では「魔法のようなもの」と言われているが、ファンタジーものの魔法とと決定的に違うのは、普遍的な体系や形式を全く持たないこと。

「自ら在る法」と書くように、自在法の形態は使用する“徒”や討ち手の個々によって全く異なり、“螺旋の風琴”リャナンシーなどが開発した、あるいは“覚の嘯吟”シャヘルが伝えたものなど、一般に広まった共通のもの以外は、それぞれの本性・本質、存在の在り方に根差した効果を発揮する。

また、自在法の扱いに長けた者は「自在師」と呼ばれる。この中でも“螺旋の風琴”リャナンシーは本物の天才であり、自在式と自在法に関する造詣が深い上に構築にも長け、さらに自身の本質として自在法を思うが儘、文字通り自在に行使できる。

自在式

自在法を扱うための“存在の力”の結晶。
定義としては「自在法の構成と“存在の力”の流れを現す式」「自在法行使の際に現れる紋様」「自在法を強化する紋様」の三つがあり、式ごとに役割は異なる。

自在式だけでは意味がなく、そこに“存在の力”を込めることで対応する自在法が発動される。
ちなみに、自在法を使うために必須と言うわけではないのだが、効果の増大や補助などの効果が見込める上、式さえ用意しておけば“存在の力”を込めるだけで同じ効果が見込めるというメリットもある。
“探耽求究”ダンタリオンは一時、人間と共同で式のみの研究を行っていた時期があり、リャナンシーが後にこのうちのいくつかに目をつけ、自動的に“存在の力”を込められるように改造したことで実用化している。

VII巻ではこれら自在法と自在式について、マルコシアスが端的にまとめている。
「よーするに、自在式は『譜面』、自在法は『歌』ってことよ。封絶みてえにミナミナ知ってる名曲ってな例外で、ほとんどの奴ぁ、他人の譜面読んで歌うより、気楽な自前の鼻歌を選ぶのさ」

式そのものが特殊な事例としては、以下のものがある。

  • 大命詩篇
構築者:“祭礼の蛇
創造神が、願いを叶えて大がかりな創造を行う際、その設計図として組み上げる自在式。
かつては『大縛鎖』を作ろうとして失敗し、狭間をさまよう中で書き直しを続けて『無何有鏡』の設計図に変わった。
ベルペオルの右目だった『旗標』とヘカテーとの共振を手がかりに、試作の式をどんどんもたらし続けたが、創造神自身も試行錯誤を繰り返していたため、実用に耐えないものも多くある。
しかし、それら古すぎるものも含めて「完全一式」という特性を持ち、一度ものに刻めば干渉や破壊を受けなくなる。
こうなった場合、オリジナルの式を持つヘカテーが近くまで出向き、共振によって破壊するしかない。
ちなみに、アラストールは神威召喚されていれば、この式を問答無用で破壊できる。

  • 転生の自在式
構築者:“狩人”フリアグネ
宝具『アズュール』の内側に刻まれていた式。膨大極まる“存在の力”が必要だが、起動すれば『アズュール』を持っていた者を、他の“存在の力”に依拠せず在ることのできる「確固たる存在」に変化させる。
フリアグネは自身の“燐子”である『可愛いマリアンヌ』にこれを使おうとしていたが失敗、後に『アズュール』の持ち主となった悠二に対し、リャナンシーが「シャナとのキス」を起動条件として加えたものが発動、彼の存在を確立した。

  • 復元の自在式
構築者:“螺旋の風琴”リャナンシー
「この世」で存在を完全になくした器物を復元する。さすがに「死」という普遍的現象は払えないものの、“存在の力”を失ったことによる存在の欠落ならば、この式によってその欠落に“存在の力”を補填することで復元可能。
ただし、空前絶後の莫大な力が必要になるため、実質的には机上の空論に近かった。
そのため式そのものは編み上がっていたが、起動に必要な“存在の力”が足りず、トーチを拾って地道に蓄えていた。
後に『無何有鏡』創造が成された際、「この世」を出て行った“徒”の残した“存在の力”によって起動、ドナートがかつて描いたリャナンシーの絵を再生させた。
その後、悠二がこの式を受け取り、御崎市全体に生じた欠落を(悠二自身の分を除いて)完全復元させている。


主な自在法

ハッキリ言って枚挙にいとまがない。
ここでは名前の明示されているもののみを挙げるが、名前がなく使用の描写のみの自在法まで含めると恐ろしい数になる。
なお、炎が介在する場合は使ったものの炎の色になる。

共通化されているもの


  • 封絶
マルコシアス曰くの「名曲」その1。“存在の力”でドーム状の壁を作り、内部の因果を世界の流れから切り離すことで、外部から隔離、隠蔽する因果孤立空間を作り上げる。
内部では“紅世の徒”、討ち手、『零時迷子』のミステス以外は全て停止し、外部からは封絶の張られた一帯が認識不能となる、というか一時的に「ない」ものとなる。
また因果が断ち切られているため、討ち手であっても外部からの感知は難しい。
内部で破壊されたものや人は、トーチなどの“存在の力”を使用し、外部の因果との整合性を取ることで「修復」が可能。
自在法としての難易度は非常に低く、基本中の基本とされる。
有用性に反して歴史は結構浅く、19世紀にリャナンシーが完成させ、シャヘルが神託で広めた。
“徒”にとっては人食いを隠すため、討ち手にとっては被害を狭めるため、意図に違いはあれど「超常の力を用いる時は封絶」というのは20世紀ではもはや常識であった。
ちなみにオルゴンやニティカなど、移動式の封絶を張れるものもおり、“天目一個”は自身のみを効果範囲とする封絶を張っていた。

  • 炎弾
「名曲」その2。“存在の力”にもっとも単純な「破壊」のイメージである炎の形態をとらせて射出・炸裂させる。
自在法としては封絶よりもちょっと難しい程度だが、それでもほとんどの“徒”や討ち手は常識レベルで使用でき、ウコバクなど特別弱い者は例外中の例外。
非常に単純かつ使い勝手が良いためか、作中では戦闘になるととにかく多用され、中には時間差起爆や別の自在法を織り込んだ者もいる。

  • 達意の言
「名曲」その3。言葉の意味を翻訳する。“徒”の世界では辞書として使われているらしい。
ちなみにシュドナイが使った際の事例を見るに、“徒”の「この世」での公用語は英語のようだ。
“徒”は例外なくこの自在法を使用できるが、もし使わないと「音でこんな声が出せるのか」という違和感バリバリの声になる。
さらに正しく使っても「声がそのまま表れたような」違和感が残る。
また、文字については筆記は対象外だが、読み取りはOK。

  • 清めの炎
「名曲」その4。討ち手と契約した“紅世の王”が使う自在法で、炎で討ち手の体を覆うことで汚れなどを落とし、精神状態や肉体の異常を正常化させる。
あらかじめ纏っておくことで、その手の自在法を防御することも可能。
ちなみにアラストールは契約前のシャナ(と後に呼ばれる少女)に対して使用していたことがあり、“徒”ならば一応使えるようだが、逆に討ち手側の意志では基本使えない模様。

  • 調律
人食いで歪んだ地域に対し、その地域で育った人間の「あるべき地域のイメージ」を元とした修復を行い、歪みをならして緩和する。
戦いに疲れた討ち手はこれを目的として世界を回る「調律師」になることも多い。

  • 遠話
読んで字の如く、遠くの相手と会話する。
この手の通信系自在法の中では基本的なものだが、封絶が広まって以降は内部で通信機器が全く使えないことからより重要性が高まっている。
ただし、最も必要になるだろう戦場では混線するリスクの方が大きいため、伝令が現役なのが実情。

  • 人化
シャヘルが伝えた自在法の一つ。「この世」に渡り来た“徒”が、人間の姿に化身する。
元々の姿とは当然異なるが、ある程度の要素は残る。近世になり、“徒”が人間への憧憬を抱いたことで爆発的に広まった。
人間社会にいない“徒”はもちろん使わないこともあったが、『無何有鏡』では仮装舞踏会(バル・マスケ)の重臣の面々もしっかり使用している。


討ち手の自在法

フレイムヘイズの自在法は、本人の抱く「強さのイメージ」と、契約した“王”の力の融合によって発現する。
そのため、“徒”と異なり、本質そのままではなく討ち手側のイメージの影響を強く受ける。特にアラストールやタケミカヅチなど、用いる力に明確な形がない場合はこれが顕著。

  • 真紅
使用者:『炎髪灼眼の討ち手』シャナ
アラストールの炎を衣として纏う。この衣は近づくものを弾き飛ばして焼き尽くす、いわば攻性防御の性質を持つ。
御崎市に来てから使い出した「紅蓮の双翼」の完成型であり、衣の状態から翼、腕、足、頭部などアラストールの体を象って具現化させることで、格闘戦のリーチを大きく伸ばすことが可能。
熟練してからはアラストールの全身を具現化させ、本人の意志を表出させることで、天罰神の疑似神体を顕現させるという応用を身に着けている。

  • 飛焔
使用者:『炎髪灼眼の討ち手』シャナ
指向性を持たせた炎を放つ。
貫通力・攻撃範囲に優れており、習得後のシャナはこれを主力として使用している。

  • 審判
使用者:『炎髪灼眼の討ち手』シャナ
光背の形で背負った炎の一つ目。これと視覚を同調させることで“存在の力”の流れ、つまりは自在式や自在法、“徒”の位置などを観測する。シャナ自身が使いだして間がないためか、見えたものに気を取られて周囲の警戒がおろそかになる欠点あり。

  • 断罪
使用者:『炎髪灼眼の討ち手』シャナ
御崎市に来てから身に着けた「炎の大太刀」の完成形。『贄殿遮那』の刀身を媒介として、アラストールの炎による実体の刀身を生み出し、接触したものを焼き滅ぼす。「飛焔」の応用で刀身だけを飛ばすことも可能。
ちなみにシャナは前身である「炎の大太刀」を素手で使用しており、やろうと思えばこちらでも可能と思われる。

  • 屠殺の即興詩
使用者:『弔詞の詠み手』マージョリー・ドー
正確には自在法そのものではなく、マージョリーが自在法を使用する際に読む「マザー・グース」を元ネタにした詩。
マルコシアスとの掛け合いで自在式をその場で組み上げ、自在法として発動する。ちなみにマージョリーだけでも一応使用可能。

  • カデシュの心室
使用者:『儀装の駆り手』カムシン・ネブハーウ
『儀装の駆り手』の基礎となる自在法。褐色の炎で構成された脈打つ心臓、という形をしている。
ここに後述の「カデシュの血脈」を介して瓦礫を引き寄せることで、戦闘形態である瓦礫の巨人『儀装』を纏って暴れまわる、というのがカムシンの戦闘スタイル。調律の際のイメージ採取にも使用される。
ちなみに、中に入ると一時的に全裸になる(イメージ的なものらしく、出ると元通りになる)。

  • カデシュの血印
使用者:『儀装の駆り手』カムシン・ネブハーウ
同名の自在式を周囲の物体に刻み、統御下に置く。『儀装』を組むために使用される他、一時的に隔離空間を作るのに使用されたこともある。
ここから発せられる炎のラインを象ったエネルギー流「カデシュの血脈」を『カデシュの心室』に接続することで、統御した物体を組み合わせ『儀装』を組み上げる。

  • ラーの礫
使用者:『儀装の駆り手』カムシン・ネブハーウ
『儀装』の状態で使用。宝具『メケスト』を柄とした瓦礫の鞭を振り回し、先端の瓦礫を射出する。命中すると大爆発を起こす。破壊力は大きいが狙いが大雑把なのが難点であり、XVIII巻では誤射でシャナが死にかけた。

  • アテンの拳
使用者:『儀装の駆り手』カムシン・ネブハーウ
『儀装』の状態で使用。要するにロケットパンチである。命中するとやっぱり大爆発を起こす。
使った後は当然片腕がなくなるが、瓦礫があれば修復可能。

  • セトの車輪
使用者:『儀装の駆り手』カムシン・ネブハーウ
「ラーの礫」の応用。『メケスト』に接続した瓦礫を高速回転させ、周囲一帯に射出する。
命中すると例によって大爆発。

  • 隷群
使用者:『魑勢の牽き手』ユーリイ・フヴォイカ
小動物や虫などの生物を支配して使い魔として操り、数多くの使い魔たちを力の奔流と変えて操る。
これらの使い魔を介して会話なども可能だが、ユーリイは未熟ゆえにごく小規模にしか使えなかった。
なお、前任者『虫愛づる姫君』(本名不明)はそれこそ竜巻のような規模でこの自在法を使えたらしい。

  • 清なる棺
使用者:『棺の織手』ティス
小規模な隔離空間を作り出す。ティスは“徒”の体の各部に同時発動・起爆することで一撃必殺に追い込んでいた。
後に“王”として顕現したアシズも使用できたが、ティスがアシズに教えられた彼の自在法をそのまま使用していたのか、アシズがティスのイメージによる自在法をそのまま使い続けているのかは不明。
ちなみにこの隔離空間は「外界との因果が断絶する」という特性がある。
時系列を考えると、リャナンシー辺りがこの自在法を参考に封絶を組み上げたのではないか、という説もある。

  • グリペンの咆&ドラケンの哮
使用者:『極光の射手』カール・ベルワルド→キアラ・トスカナ
神器「ゾリャー」左右の窪みに極光をチャージ、光弾として連射する。右手側が「グリペンの咆」、左手側が「ドラケンの哮」。
突撃しながらこれらを連射するのが『極光の射手』本来の戦闘スタイルである。名称こそ異なるものの内実は全く同じという変わった自在法。
カールとキアラが共に使用していること、キアラは姉妹から教えられて使用していることを踏まえると、イメージではなく姉妹の本質である「夜にゆらめく光」を現した自在法と思われる。*1

  • 騎士団(ナイツ)
使用者:『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメール
アラストールの炎で騎士の軍団を象る。
マティルダにとっての強さのイメージである「己を先頭に切り込む騎士団」をそのまま具現化した自在法で、マティルダの用いる武具や乗騎の馬などもこれで作られている。
原理としてはシャナの『真紅』と同じ。
城塞の壁を破るのに特化した『破城槌』、ゴグマゴーグの巨体をも破壊する『大殲滅密集突撃』(ヴォーパルファランクス)など応用性も高い。
一体一体が並みの討ち手レベルの強さを持つ上に率いるマティルダ自身が強い、というまさに「一騎当千」を地で行く自在法だが、一定レベル以上の破壊には耐性がなく、防御にも向かない。
また、大質量による物理攻撃には対応不能。
通常はその辺りをヴィルヘルミナがフォローしていたが、それでも対応しきれない『虹天剣』を持つメリヒム、頑強極まるイルヤンカはまさに天敵であった。
『炎髪灼眼の討ち手』の自在法の名前は2代揃って単純である。


  • サックコート
使用者:『空裏の裂き手』クロード・テイラー
カイムの力を空色のエネルギーコートに変えてまとい、ワシの脚として具現化させ格闘戦に用いる。
直接戦闘に長けていないとはいえ、サーレを一撃で戦闘不能に陥れるほどの破壊力を持つ。

  • アルカサル
使用者:『荊扉の編み手』セシリア・ロドリーゴ
対象の周りに実体の無い柳色の枝葉を発生させ、絡みつかせた物の形質を強化する。
敵の炎を吸い取ってどんどん密度と強度が増し、接触せずとも壁として機能するため、仮に地中まで檻として囲めば、力で無理やり突破しない限り脱出は不可能。
欠点としては設置に時間がかかること。

  • 捨身剣醒
使用者:『剣花の薙ぎ手』虞軒
神器『昆吾』を核に、討ち手の体を紅梅色の霞に変える。
この霞は天女のような盛装をまとった女性の姿を取り、また炎としての性質を持つため、『昆吾』による攻撃をかわしても霞による高熱攻撃が待ち構えている。
また、討ち手の体そのものであるとはいえ、霞の部分は物理的攻撃が通じず、『昆吾』をどうにかしないと対抗できない。
ただし、自在法による強力な攻撃には弱く、また『昆吾』を捕えられると動けなくなる。

  • 爆弾
使用者:『輝爍の撒き手』レベッカ・リード
着弾すると大爆発を起こす光の球を操る。レベッカの戦闘はほぼこの自在法が核であり、生成する数、速度、規模、熱量や爆発力のコントロール、爆破のタイミングは文字通り自在。
ちなみにレベッカはネーミングセンスがまるでないため、使用法をそのまま自在法の名前にしている。

  • 地雷
使用者:『輝爍の撒き手』レベッカ・リード
『爆弾』の応用。神器『クルワッハ』を模した一つ目型の自在式を地面に設置、周囲を監視すると共に近辺に入ってきた敵を爆破する。

  • プレスキット
使用者:『具象の組み手』ダン・ロジャース
神器『B.S.I.』を振るって目的の場所に自在式を刻み、式の刻まれた物質に対して強力な形質強化を施す。
ただし、自在式の部分だけは対象外であり、ここを破壊されると強化が切れる。

  • 瞑目の夜景
使用者:『昏鴉の御し手』ヒルデガルド
自他の影を操る。鎧として纏わせる、攻撃に使用するなど使い道は多いようで、単に会話のために使うこともある。破壊力も折り紙つきで、並みの“徒”なら一網打尽となる。
本編では防衛戦という都合上小規模だったが、本来は「夜景」の名の通り、見渡す一円の影を同時に操作できる。

  • ジシュカの丘
使用者:『犀渠の護り手』ザムエル・デマンティウス
神器『ターボル』を弾き、その余韻を握った手を地面に叩き付けることで発動。地面を材料に建材を生み出し、それを用いて“存在の力”で形質強化された建造物を作り上げる。
これ自体には破壊力はないが、地形を直接操れるアドバンテージは非常に大きく、単独戦闘では敵を閉じ込め動きを封じる用途に使用される。

  • ジクムントの門
使用者:『犀渠の護り手』ザムエル・デマンティウス
「ジシュカの丘」の応用。建造物に他の討ち手の力を吸収・貯蔵することで、それをザムエル自身の力として行使できる。ザムエルが「集団戦を前提とした変人」と呼ばれる所以がこの自在法である。
攻撃に防御にと用途は多いが、前提条件の都合上その場から動けない。よって、基本的にその場にとどまって戦う必要があり、かつ多数の味方がいる、要は撤退戦や防衛戦で真価を発揮する自在法と言える。

  • 車両要塞
使用者:『犀渠の護り手』ザムエル・デマンティウス
石製の大型馬車のような車両を太い鎖で連結し、その全体を一つとして運用し、馬車を可動する城壁のように幾重にも連ねて拠点防衛に使用する。
車両から矛槍や小型の砲などの様々な武器を無数に突き出すことで迎撃を行う。
車両の一つを切り離して味方を運んだり、意志の疎通を図ったりもできる。その分消耗が嵩むため、本来はこちらも「ジシュカの丘」の建造物に蓄えた味方の力で賄う。

  • トラロカン
使用者:“雨と渡り行く男”『皓露の請い手』センターヒル
一定の超広範囲に、植物への還元能力を持った大雨の大結界を展開する。
中で“徒”が死ぬと、“存在の力”を「この世」の植物として還元する。
また、『蛍燎原』など一定範囲に作用するタイプの自在法は展開不能となり、遠話の自在法は妨害され、強化タイプの自在法は解除される。
センターヒル自身はこの中を短距離転移で移動可能である他、雨粒を攻撃に使用することもできる。
取り込まれたが最後、身一つの力でセンターヒルと戦わねばならないため、かつては踏み入ったが最後の「戦鬼の庭」として恐れられていた。
ちなみに「四神」の他の三人と並んだ場合、感知不能・強化不能の戦場に「夜の問い」が降り注ぎ「パチャクチ」で作られた亡者が暴れまわり、間を縫って「セドナの舞」へ水が補給され続ける、というシャレにならない惨状を引き起こす。

  • 夜の問い
使用者:“全ての星を見た男”『星河の喚び手』イーストエッジ
自身を中心とした一定の超広範囲の光を凝縮し、炎への還元能力を持った流星雨を降り注がせる。
命中・爆砕された“徒”が死ぬと、“存在の力”を「この世」の炎として還元する。
イーストエッジ自身も白兵戦に長けており、相対すると一撃必殺の流星雨を掻い潜りながら彼と対峙せねばならない、という絶望的状況になる。

  • セドナの舞
使用者:“波濤の先に踊る女”『滄波の振り手』ウェストショア
自身を中心とした一定の超広範囲の水を操り、水への還元能力を持った水の獣(鮭やアザラシなどネイティブアメリカンと縁の深い動物が多い)を使役する。
この水に捕えられると、“徒”は“紅世”に帰還する以外は脱出不能となり、そうでない場合“存在の力”を「この世」の水として還元する。
質量で押し流す、獣で食らう、単純に捕まえるなど、シンプルながらバリエーションに富み、変換した水はそのままウェストショアの統御下に置かれるため、戦うほど規模が拡大する。
ただし変換能力には限界があり、強すぎる攻撃は防ぎきれないこともある。また、莫大ではあるものの、制御できる水の量には限界がある。

  • パチャクチ
使用者:“死者の道を指す男”『群魔の召し手』サウスバレイ
自身を中心とした一定の超広範囲に半透明の下僕「亡者」を召喚し、物質に取りつかせてコントロールする。
基本的には土に取りつかせ、土への還元能力を持った黄金の仮面をつけた様々な怪物を召喚・使役する。
この状態の「亡者」は“徒”を食らうことでその“存在の力”を「この世」の土として還元し、肥え太り、ある程度太ると分裂して増える。
また、土を崩して他の形態に変えることもでき、土器を作り出して火柱による攻撃を行ってもいる。
この特性上、相手にすると軍団戦ではほぼ勝ち目がなく、良くて互角。
ただしセドナの舞と同様、サウスバレイの制御できるキャパシティを超えて亡者を増やすことはできない。

  • パラシオスの小路
使用者:『興趣の描き手』ミカロユス・キュイ
内部に侵入したものを捕える結界を張る。
この結界には周囲の景色が描かれており、踏み入るまでは結界があること自体わからない。

  • 巴字奔瀑(はじぼんばく)
使用者:『露刃の巻き手』劉陽
震脚で地面を叩き、膨大な量の水を噴出させてコントロールする。
移動の補助や形態変化させての攻撃など用途は多岐にわたる他、この自在法で生じた水煙は“存在の力”を感知する媒介として働く。

  • アクス
使用者:『氷霧の削ぎ手』ノーマン・パーセル
手刀を核に氷の刃を作り出して打ち下ろす。単純だけに威力も高く、人間程度ならばたやすく切り裂く上、直撃せずとも衝撃波が10m四方に及び、一帯を霜で覆うほどの冷気を伴う。

  • スペイキル
使用者:『氷霧の削ぎ手』ノーマン・パーセル
氷でできた分身を5つ作り出す。それぞれが自在法を個別に使うこともできるが、普通の銃弾でも砕け散るほどに脆い。
本体はこの分身の中にいるのだが、どの順番で倒そうが最後に残った一人がノーマン本体になるという特性がある。
ただしその都合上、広域殲滅の攻撃が弱点となる(倒す順番があるだけで本体が必ずその場にいるため、「わずかな時間差で順番に」薙ぎ払われると逃げられない)。

  • ゲイル
使用者:『氷霧の削ぎ手』ノーマン・パーセル
氷の槍を作り出す自在法。穂先を伸ばすことで間合いをある程度無視できる。
「スペイキル」と併用することが多い。

“徒”の自在法

こちらは本質そのままの現れが大半。
発動プロセスを自在式として表せば改造も可能だが、実行したのはサブラクとバロメッツのみ。

  • 都喰らい
使用者:“棺の織手”アシズ“狩人”フリアグネ(未遂)
本来食らうに適さない「物質」をも高純度の“存在の力”に変換・吸収する超大規模な自在法。
アシズはトーチに「鍵の糸」という自在式を仕込んだものを大量に用意し、これらを同時一斉に消滅させることで生じた巨大な歪みを拡大することで、オストローデという町一つをまとめて食らってのけた。
フリアグネは「鍵の糸」の代わりに宝具『ダンスパーティ』を用いて同様の効果を得ようとしていた。

  • 揺りかごの園(クレイドル・ガーデン)
使用者:“愛染他”ティリエル
ティリエルの本質たる「溺愛の抱擁」の顕現。山吹色の木の葉と霧で満たされた隔離空間を作り出す。封絶の亜種であり、普段はティリエル自身が最小規模で纏っている。
御崎市に現れた際は“燐子”ピニオン、宝具『オルゴール』を絡めることで絶対的有利な状況を作り出しており、「ピニオン」を介して人を食らうことで“存在の力”を供給、『オルゴール』でこの自在法を延々と維持する、という形式をとっていた。
おまけに自在法の射出口となっている「ピニオン」を破壊しても仕込まれたトラップが発動し、自在式そのものも無茶苦茶な装飾と偽装の自在式で覆われているため、普通の感覚では理解することすら不可能。
超感知能力の悠二、腕利きの自在師であるマージョリーがいなければ完全に詰んでいた。

  • レギオン
使用者:“千征令”オルゴン
オルゴンの本質たる「千の軍を率いるモノ」の顕現。自らの存在を紙に書かれた/紙でできた騎士の軍団として顕現させ、羽帽子とマントと手袋だけ、という姿の司令塔が意志総体を宿し指揮を執る。
騎士の一つ一つは並みの討ち手くらいには強く、切り札たる「四枚の手札」、すなわち「ホグラー」「ヘクトル」「ラハイア」「ランスロット」は非常に精強。また、前述したとおりオルゴンの存在の顕現であるため、彼を討滅するには司令塔を含めた軍勢自体を一撃で消し去る必要がある。
なお、ヴィルヘルミナはこれを「『騎士団』の薄っぺらな猿真似」と評し激昂していたが、原理がまるで違うため完全な言いがかりである。
彼女にしてみれば、亡き親友との約束を果たす間際になって現れた、親友の力と似て非なる自在法が単純に気に入らなかったのだろうが。

  • 虹天剣
使用者:“虹の翼”メリヒム
メリヒムの本質たる「空を貫いて飛ぶ虹の龍」の顕現。背中に広がる虹の双翼を、サーベルを砲身として射出する。
距離によって減衰しないレーザーというべき自在法であり、射程距離・破壊力とも当時最強と言われた。
本来は光背の如く円形に広がる翼を収束させて切っ先から放つのだが、シャナと戦った際は消耗ゆえか、双翼を刀身に沿って滑らせ撃ち出す形となっていた。
“燐子”であるガラスの盾「空軍(アエリア)」を使用し、変質・反射させることで広域殲滅も可能、と攻撃型自在法としては一級品。
ちなみに素手でも使用可能。

  • 幕瘴壁(ばくしょうへき)
使用者:“甲鉄竜”イルヤンカ
イルヤンカの本質たる「不変鉄壁の鎧」の顕現。火山の噴煙に似た鈍色の煙を体から噴出させ、攻撃を防ぐ。
煙の形態ではあるが硬度・強度は当時どころか現在に至るまででも最強クラスであり、空中に広げれば壁となり、身にまとえば鎧となる。
また、先端のみを超強化した噴進弾として攻撃に用いることもできる。
イルヤンカは巨体の姿勢制御にも使用していた。

  • ラビリントス
使用者:“大擁炉”モレク
モレクの本質たる「抱いて守り封じる炉」の顕現。自身の骨体を媒介とした迷宮型の結界を構築し、敵をその中に取り込む。
難攻不落に限りなく近く、一部を破壊されてもモレクの力が続く限りいくらでも修復可能であり、手勢を抱え込んでいれば討ち手100人だろうが悠々持ちこたえる。
ちなみにチェルノボーグはモレクの冗談交じりの自賛を真に受け、本当に難攻不落だと思っていた。
外から見るとうずくまる巨牛に見える。
マティルダはこれに対し、全域を一度に爆破するという荒業で突破した。

  • 影浸
使用者:“闇の雫”チェルノボーグ
チェルノボーグの本質たる「暗闇に滴る水」の顕現。体全体もしくはその一部を近距離内の影の中へと転移・同化し、そこに潜む。
あり得ない位置からの不意打ちも可能であり、チェルノボーグの暗殺の業を支えていた。

  • ネサの鉄槌
使用者:“厳凱”ウルリクムミ
ウルリクムミの本質たる「凱歌を上げる大山」の顕現。周辺から鉄を筆頭に硬いものを大量に寄せ集め、“存在の力”による強化を加えて一気に射出する。
鉄の怒涛が降ってくる、という単純ゆえに恐るべき自在法であり、食らうとまず助からない。

  • 五月蠅(さばえ)る風
使用者:“凶界卵”ジャリ
ジャリの本質たる「不吉の境界となる卵」の顕現。無数の蝿を生み出して自在に操り、蝿を介することで常識外れの広範囲の状況を見聞きする。
蝿の数は遠くから見れば雲と見間違うような膨大な量であり、『大戦』では規模を常より縮小したにも関わらず戦域一帯の空を覆い尽くしていた。
蠅の一匹一匹は非力であるため、一定の防御力を持つ相手には全く通用しないが、そうでないなら群がり立って喰らってしまう。[とむらいの鐘]に参ずる以前はこれで人間を食いまくっていたと思われる。

  • 碑堅陣(ひけんじん)
使用者:“焚塵の関”ソカル
ソカルの本質たる「焼き払い塵となす門」の顕現。石の大樹で構成された黒い森林、という様相の防御陣を展開する。
ソカル本人はこの森の中に潜み、さらに樹木を自在に操ることで味方を援護し、遠隔から自身も攻撃し、森林内の状況をリアルタイムで把握し、と非常に有利な条件を保つことができる。
この森林地帯を前進させて押しつぶすこともできるため、攻性防御の性質も持つ。高空まではさすがに対応不能だが、[とむらいの鐘]ではメリヒムやジャリが対空を担っていたため問題はなかった。
敵に対して面制圧を行うタイプの自在法であるため、多対多の状況において最も力を発揮できる。反面、力の作用する範囲が広く分散するため、高速で一点突破を図る強力な討ち手には不利。
ソカル自身の指揮能力もあって「大戦」までは一度たりとも破られることがなかったが、高速高火力の"極光の射手"カールには相性最悪であったため敗北、討滅される。
ちなみにウルリクムミはソカルを「陰険悪辣の嫌な奴」と評しているが、この自在法にもその評価は当てはまる。

  • ゲマインデ
使用者:“戯睡郷”メア
メアの本質たる「夢で遊ばせる者」の顕現。
対象者の記憶から夢の世界を作り出し、そこに対象の精神を飛ばして遊ばせる。
夢の世界の内部はメアの思いのままだが、起きた事象が現実には反映されない、現実で経過する時間は僅かである、解除されると夢の世界の出来事は対象者の記憶には残らない、メアが受けたダメージだけは現実になるなど、効果の割にリスクが大きい。
メアはこれを逃走用の情報集めと、自身が“ミステス”に乗り移った上での『戒禁』破りに使用していた。

  • 風の転輪
使用者:“彩飄”フィレス
フィレスの用いる探査用の自在法。
意志総体をコピーして世界中に放ち、人間やトーチに接触して伝播→トーチから集めた“存在の力”で意志総体を保ちつつ、目的物を発見したら意志総体を核に傀儡を形成→本体を呼び寄せて融合、という手順。
また、傀儡自体を人間に偽装する使い方もある。

  • インベルナ
使用者:“彩飄”フィレス
両肩の装飾の口から吸いこんだ空気を放出し、暴風の渦を作り出して敵を閉じ込める。
気流により視界が遮られる上、フィレスの気配を風自体が宿しているため、気配の探知や“存在の力”の察知はほぼ不可能となる。

  • 倉蓑笠(くらのみのかさ)
使用者:“深隠の柎”ギュウキ
ギュウキの本質たる「深く隠れた土台」の顕現。百鬼夜行逃げの切り札その1。
スクリーン状の自在式を被せることで対象の気配を隠蔽し、その表面に任意の映像を映すことができる。
通常は隠れ潜む、あるいは逃げる距離を稼ぐために使うが、他人に使うことで囮にする、という性格の悪い用法もある。
通常運行時はギュウキの体に対して施されており、これがパラの“燐子”を覆っている。
ただし、なんらかの実体に被せなければ使用できない。

  • ヒーシの種
使用者:“輿隷の御者”パラ
パラの本質たる「全てを従える御者」の顕現。自らの体を媒介とするタイプの自在法で、黒い翳りをバラ撒いて物体に取りつかせ、コントロールする。
普段はこれでバスを“燐子”に変えることで運び屋稼業を行っている。
副産物として取りついた物体の解析も可能。

  • 地駛(じばしり)
使用者:“坤典の隧”ゼミナ
ゼミナの本質たる「深奥へ続く隧道」の顕現。[百鬼夜行]逃げの切り札その2。
地面に大穴を直接開け、目的地まで貫通させる。
「掘る」のではなく「開ける」ため、音が発生しない。自在法には珍しく戦闘の用途が存在しない、完全な逃走用。
一味が逃げる際はゼミナが道を開け、ギュウキが気配と足取りを隠し、パラが物体操作で攪乱、という連携で姿をくらます。

  • 呪眼(エンチャント)
使用者:“征遼の睟”サラカエル
サラカエルの本質たる「遠方を平らげる視線」の顕現。
縦に裂けた目の形状をした自在式を無数に生み出し、コントロールする。爆破や変形による攻撃・防御も可能だが、真価はこの自在式に別の自在法を織り込み、「エンチャント」の読みが示すようにそれを他の対象に付与すること。
これにより生物無生物は問わず、“徒”も討ち手も関係なく様々な自在法を付加できる。性質的には宝具「コルデー」に近い。
さらに、サラカエルが睨みつけた対象に即座に付加されるという効果もあり、即効性も高い。

  • 金切り声(トラッシュ)
使用者:“吠狗首”ドゥーグ
ドゥーグの本質たる「首をもたげ吠える獣」の顕現。自身の燐子“黒妖犬”が自壊するほどの吠え声を一斉にあげさせ、ぶつける。
ドゥーグ自身が弱小の“徒”であるため、意識をかく乱させ聴覚を一時的にマヒさせる程度の効果しかない。

  • (アステル)
使用者:“頂の座”ヘカテー
ヘカテーの本質たる「神の座に輝く星」の顕現。明るすぎる水色の光弾を放つ。一発一発の軌道が複雑であり、また同時に多数放たれることもある。
着弾すると爆発し、余波で周囲を炎上させる。

  • マグネシア
使用者:“嵐蹄”フェコルー
フェコルーの本質たる「嵐の如く挽き潰す蹄」の顕現。現代最強の防御型自在法。臙脂色の粒子からなる大嵐を巻き起こす。
粒子は付着力が高い上に非常に重く、巻き込まれると動きを封じられた上でガリガリと物理的に削り殺される。
単純な防壁としても「幕瘴壁」に匹敵するレベルの強度であり、粒子の立方体を作り出すことで攻撃も可能。
展開速度も速いが、大規模に使うと味方を巻き込むという難点もある。

  • プロビデンス
使用者:“淼渺吏”デカラビア
デカラビアの本質である「遥かに広がる水を統べる者」の顕現。
長大な魚身を覆う鱗を、この自在法の作用たる「あらゆるものを通す力」の媒体とし、自在法の行使や通話、監視を行う。
恐るべきはその射程距離と持続時間で、距離は世界全土、時間は力が続く限り、鱗が壊れない限り永続。
普段はこれを組織の重要な面子に渡し、連絡に使っている。
デカラビア自身がこれを使用した場合、鱗全てが転移の自在法として機能し、無敵の鎧となる。

  • 鐙の寵
使用者:“獰暴の鞍”オロバス
オロバスの本質たる「荒ぶる力を御する鞍」の顕現。
自身に接触している相手を強化するが、同時にその行動をある程度制御することができる。

  • ニムロデの綺羅
使用者:“朧光の衣”レライエ
レライエの本質たる「波打ち広がる光」の顕現。
身にまとっている白い衣を糸状に変化させてほどき、正面で薄絹の形状に再変形させて防壁を形成する。
受け止めるのではなく受け流すタイプの防御用。

  • 羅唆
使用者:“化転の藩障”バルマ
バルマの本質たる「変幻自在の障壁」の顕現。
象の姿を形成する色付きの糸をコントロールする自在法で、これを解いたり編み直したりして姿を変化させる。
本来の用途は分解状態から服に変形し、味方を覆って強化するものだが、劇中では披露されていない。

  • プロツェシオン
使用者:“翠翔”ストラス
ストラスの本質たる「厄除けと吉祥の翼」の顕現。大規模高速輸送のための自在法で、輸送対象を鳥に変化させて、高速で飛ばして運んだ上で元の姿に戻す。
更に輸送対象の存在の力を縮め、余所から行軍に気づかれないというメリットもある。
ストラス自身もあまり使わなかったのか、フレイムヘイズたちも知らなかった。

  • ダイモーン
使用者:“蠱溺の杯”ピルソイン
ピルソインの本質たる「惑わし殺す毒の杯」の顕現。吸い込んだ“徒”や討ち手を酩酊・混乱に陥れる靄を展開する。討ち手に使用した場合は契約している"王"ごと混乱させる性能を持ち、一度食らうと単独での回復は絶望的。
「清めの炎」で防げるとはいえこれだけでも十分恐ろしいのだが、ピルソインは攻撃に長けたリベザルとコンビを組んでいるため、余計に恐れられている。
ただし、効果を及ぼせるのは一度の使用につき“徒”か討ち手のどちらかと言う制限がある。強風の影響下では靄が吹き散らされるため、使用できない。

  • 獅子吼/ファンファーレ
使用者:“哮呼の狻猊”プルソン
プルソンの本質たる「高貴に吼え猛る獅子」の顕現。大きく息を吸い込んで咆哮、衝撃波を放つ。
ただそれだけの単純な自在法だが威力は大きく、カムシンの『儀装』を容易に粉砕、余波だけでも討ち手の全身をひっぱたくレベルの衝撃波を発する。
ラッパ型の“燐子”を用い、一発の威力を落とした代わりに範囲拡大と遠隔操作を可能とした「ファンファーレ」というバリエーションもある。

  • スティグマ/スティグマータ
使用者:“壊刃”サブラク
サブラクが殺し屋と恐れられるゆえんの一つで、彼の本質たる「全てを破壊する刃」の顕現の一部。
「スティグマ」は彼の持つ剣全てに施された自在法であり、つけた傷が塞がらず、時間と共に拡大・深化する。
逃げ回ってもサブラクの本体が浸透した地域を抜けない限り弱り続け、最後には殺されることになる。
御崎市での戦いでヨーハンの自在式を持っていたヴィルヘルミナに破られたため、あらためて塞がらないことに特化した改良版「スティグマータ」を開発。
こちらはサブラクが接近すると傷から自在式が伸び、これを攻撃することで傷を広げることが可能。

  • 貪恣掌(どんししょう)
使用者:“冀求の金掌”マモン
マモンの本質たる「激しく欲し求める掌」の顕現。体の一部、おもに掌に自在式を灯し、目標物を引き寄せる「原始的な欲得の力」。
文字通り「手のひらを返す」ことで拒絶することもでき、マモンはこれを応用して防御を行ったこともある。
「引力と斥力を操る」というシンプルながら強力な効果を持ち、キアラの放った「グリペンの咆」「ドラケンの哮」を制御下に置いて撃ち返す、など応用範囲も広い自在法と言える。

  • 螢燎原(けいりょうげん)
使用者:“煬煽”ハボリム
ハボリムの本質たる「盛んに火気を煽り立てる者」の顕現。自身の炎を戦場一帯に広げ、それを踏んだ味方の体を覆わせることで戦闘能力を大幅に強化する。
本来は広域感知用の自在法であり、この領域内であれば起きている事象をすべて把握し、即座の通信すら可能とする。さらに炎に沈み込み、別の場所に浮上することで移動可能。
作中では実現しなかったがオルゴンの「レギオン」とのシナジー効果が凄まじく、超強化された上に全滅させないと倒せない紙の軍勢というシャレにならない状況が出来上がる。

  • 千里眼
使用者:“笑謔の聘”ロフォカレ
目によらぬ視覚で遠くの様子を捉える。ロフォカレがシャヘルの眷属に任命されたのはこの自在法ゆえだと思われる。
範囲は地域丸ごとであり、視野は個人レベル。

  • 啖牙の種(マールス)
使用者:“踉蹌の梢”バロメッツ
バロメッツの本質たる「当て所なく終末を呼ぶもの」の顕現。
特殊な隠蔽方式と潜伏力を持つ罠型の自在法だが、「無何有鏡」に渡り来てから尽きない“存在の力”を利用して改良されている。
改良後の特性は、指先大の種として各地にばらまき、あらかじめ設定した条件に引っかかった“徒”や討ち手の“存在の力”の一部を、それぞれの炎ごとバロメッツのもとに転移させること。
これを吸収することで力を高めることもできるが、バロメッツは“存在の力”を吸収するのではなく、保存状態のまま自他に根付かせることで力の統御限界を加算する方法を編み出している。

  • 隠羽織(ミュステリア)
使用者:“踉蹌の梢”バロメッツ
バロメッツが使用するもう一つの自在法。株分けした自身の分身を相手に寄生させ、強化を施す。
使用の絶対条件として寄生先の相手の同意を得なければならないが、寄生先はバロメッツの分身となり支配される。
「啖牙の種」で奪った“存在の力”をこれに織り込んで与えることで、安易に力を求める“徒”への需要を生み出していた。

番外編

  • 文法(グランマティカ)
使用者:“廻世の行者”坂井悠二
御崎市での決戦の際に火事場の馬鹿力で発現させた固有の自在法。
悠二は元“ミステス”だが、この自在法は彼の本質である「理屈で物事を通す」在り方の顕現であり、形態としては“徒”の自在法に近い。
「黒い炎を燃やす透明なレンガ型の自在式」を複数組み合わせ、目的の効果を発揮させる。発揮する効果がピンポイントであること、熟練しないと複数の効果を同時には使えないことなど、欠点も多いが、「理屈が通ればなんでもできる」という多岐万能っぷりが長所で、決定的な対策はない。
作中ではこれ一つで「物理的な壁」「短距離の瞬間移動」「自在法の探知」「自在式の解析・改変」とまるで異なる効果を発揮した。

神威召喚

厳密には自在法ではないが一応ここに記載。
“紅世”における世界法則の体現者、「真正の神」の権能を発揮させるための儀式。
神それぞれに対して呼びかけ、降臨を要請する手順をこう呼ぶ。内実は神の意志を降臨を求めた者に向けさせること、ついで了解を得る代償として犠牲を払う、という二つのプロセスを踏む。
ちなみに“王”と討ち手の契約はこのプロセスを応用したもの。
なお、劇中での召喚は「この世」でのプロセスであり、“紅世”においてどうなのかは不明。

  • 天破壌砕
神:“天壌の劫火”アラストール
天罰神を降臨させる儀式。
「紅蓮の帳」を展開して内部の“徒”の動きを止め、そのうち1体の存在の影を浸食・吸収・変換、顕現したアラストールの動力たる「心臓(コル)」に変換する。
天罰神は要するに「罰する神」であるため、欲望の肯定こそが全ての“徒”にとっては「動いて欲しくない神」である。
ゆえに、創造神によって窓口たる眷属が作られることもなかったが、その代わりに非常にシンプルなプロセスで神威召喚が可能。
なお、「この世」においては器たる『炎髪灼眼の討ち手』が儀式を行う。

  • 祭基礼創
神:“祭礼の蛇”
創造神を降臨させる儀式。
創造神が受け取った“徒”たちの願いをまとめ上げ、全てが納得する形を組み上げた上で「黒き御簾」を展開、生贄となる“徒”を浸食、創造の種火とする。
これらの儀式は眷属たる「三柱臣」が執り行い、生贄は願いの化身たる巫女“頂の座”で固定されている。
神威召喚の後は、生贄となった“頂の座”と共に、叶えた願い相応の期間の眠りにつくことになる。

  • 嘯飛吟声
神:“覚の嘯吟”シャヘル
導きの神を降臨させる儀式。シャヘルは他の神と異なり常に目覚めており、眷属に任命した“徒”の耳目を通して世の移り変わりを観察している。
その中に「全く新しい、しかし守らなければ消えていく可能性」を見出した時、シャヘル自身がそれを発見した眷属に「知らしむるべし」との霊告を降ろし、儀式を命じる。
ゆえにこの儀式のみ「神召喚」と表記される。
内容は実に単純で、新たなものを見つけ、知り、儀式を行う眷属自身を生贄とし、その存在を神の声に変換、“存在の力”を操る全ての者に忘れることのできない神託を与える。
シャヘルの眷属は神意召喚を悲願として世界を放浪しており、ゆえに新たな可能性を見つけ、この儀式を行って死ぬことは最上の栄誉とされている。
一方でこの儀式は振り回される側にとって最悪のタイミングで起きるという謎のジンクスがあり、シャヘルが“徒”から忌み嫌われる要因となっている。


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最終更新:2023年11月12日 18:34

*1 二人の真名は“破暁の先駆”と“夕暮の後塵”だが、時間に置き換えると「夜明けの前」と「夕暮れの後」なので両方とも夜である。