ヒストリエ(漫画)

登録日:2018/11/27 Tue 20:06:10
更新日:2022/06/04 Sat 08:07:55
所要時間:約24分で読めます




『ヒストリエ』とは過去に『寄生獣』や『ヘウレーカ』を手掛けた漫画家、岩明均氏による漫画作品の事。2003年から『月刊アフタヌーン』にて連載中。
「ヒストリエ」の言葉の通り古代ギリシアが舞台の歴史モノであり、マケドニアのアレクサンドロス大王に仕え、彼の死後ディアドコイ*1の一人となる「カルディアのエウメネス」の生涯を描いている。

三国志」様に日本人に馴染みがあるわけではない題材ということで、はじめはやや取っ付きにくい印象を持たれるかもしれない。
しかしこの作品は極力主人公のエウメネスの視点に絞って物語が進行する。
よって歴史モノにありがちな

「人物相関がごちゃごちゃしすぎてよくわかんない」
「視点があっちこっちに跳びすぎてよくわかんない」

といった煩わしさがほとんどない。ギリシア特有のクッソ覚えづらい固有名詞は沢山あるけど。
またエウメネス自身が体験した当時の民族・風俗の違いや価値観の多様性、それらが織り成す人間模様等を、彼の心情と言葉で一度噛み砕いた上で読者に追体験させることで、非常にスムーズに内容が伝わるようになっている。
更に作者は、史実ではほとんど謎に包まれているエウメネスの半生を、トロイの木馬で知られる英雄「オデュッセウス」の冒険奇譚に匹敵するほど波乱万丈に満ちたモノに仕立てており、常に刺激的な展開を提供している。

「馴染みやすくて、のめり込める。」

これが本作の大きな特徴。

「馴染みやすさ」は台詞回しにもよく現れていて、登場人物の言葉遣いは非常に現代的。
「高貴な人間が使いそうな古めかしくて格式ある言葉」や
「当時の文化に造詣がないと理解が難しい表現」もほとんどない。
理想化(ハンサム)追加料金(オプション)遊び方(ルール)予定(スケジュール)とルビが振られたり、
ソレなりに身分のある人々が「~っす。」「~じゃね~の?」と話す様は時に俗っぽくすらあるが、これも極力煩わしさから遠ざける為の配慮ということなのだろう。
いかにも当時の人っぽい物言いをする人間も勿論いるが、そういう奴に限って悲惨な目にあったりするのは何かの皮肉か。


…ただ、この台詞回し、「古代人による」「現代的な表現」というギャップがそうさせるのか、時に変な科学反応を起こして物凄いインパクトを産み出す事がある。例えば


「よくもだましたアアアア!!だましてくれたなアアアアア!!」


「文化がちが~~~う。」


といった台詞は既読者ならばそのシーンと共に強烈に記憶に残っていることだろう。
モノによってはたった2コマの沈黙とたった一言の台詞だけで、作品自体を凌駕する知名度を手に入れてしまった例もある。
寧ろこれら経由で本作を知った方も多いのでは?


「歴史モノではあるけれど、どこか歴史モノっぽくない。でもそこが面白くて、歴史モノとしての面白さもちゃんとある。」


言葉にすると少々意味不明気味だが、そんな普通の歴史モノとはちょっと違った不思議な魅力を持っている希有な作品である。


主な登場人物


  • エウメネス
主人公。ギリシア育ちのスキタイ人。
幼い頃から書物が大好きで、そのお陰か非常に博識、頭の回転も速く口も達者で度胸もある、と頭脳面では抜群の優秀さを見せていた。
反面身体面はイマイチ…というわけでもなく、足の速さは誰にも負けなかったし、拳闘では初めてにも拘らず上級生二人をボッコボコにしている。*2

青年になってからは剣術・馬術も心得るようになり、卓越した弁舌・戦術眼・戦略眼は周囲を常に驚かせ、さらに自ら「盤上遊戯」*3や「左利きだけの部隊」を考案するなど発想力も抜群…と、これ以上はもういいだろう。要するに完璧超人である。

しかしその万能っぷりとは裏腹にその人生は決して順風満帆とは言えないものであり、二十歳を数えるか数えないかまでに

スキタイの遊牧民→ギリシア都市の自由市民→奴隷→反乱奴隷の船長→異民族の村の講師→放浪者→マケドニアの書記官

と激動の半生を送っている。
また、女性との巡り合わせは最悪で、彼は過去三度、想い人との悲恋を経験している。
その半生で様々な価値観に触れたからか、はたまた経験した悲恋が全て外圧的な要因による物だったからか、彼は民族的な拘りや社会的な立場に執着する事よりも、自身が「自由」である事を常に望む様になっていった。
しかしそんな彼の意思などいざ知らず、マケドニアでの「エウメネス」の存在は皮肉にもその優秀さ故にどんどん大きくなっていく。
そして遂に国軍副司令官である「王の左腕」の候補者となるのだが…






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最終更新:2022年06月04日 08:07

*1 ギリシア語で「後継者(達)」を意味する言葉。この場合はアレクサンドロスの死後、彼の座を巡って争う者達の事を指す。

*2 賢さと足の速さは恐らく自身が憧れ、例えられたオデュッセウスの「策略巧みなオデュッセウス」「足の速いオデュッセウス」の異名をキャラに反映していると思われる。

*3 分かりやすさの為、作中での呼称は「将棋」で統一されている

*4 彼は兄のメントル共々ペルシアの高官に雇われていたがその高官と一緒に反乱を起こし失敗。兄はエジプトへ、弟はマケドニアに逃れる。エジプトで雇われたメントルはペルシアと再度相まみえるが再び敗北。これで命運尽きたと思いきや、なんとペルシアは彼に恩赦を与えて今度は彼を匿ったエジプトと対決させる。そしてエジプト撃破の折にメムノンにも恩赦が与えられ、彼はペルシアに舞い戻ってきたのであった。

*5 豊穣と酒の神であり、蛇が聖獣の一つであるデュオニソス神の信仰の表れであると考えられる。史実の彼女について「実際大蛇と寝ていた可能性がある」と記している書物もあるらしい。