弱小の一つに過ぎなかったマケドニアをギリシアでも有数の大国に成長させた傑物。
その躍進の原動力は彼が創り出した陸軍にある。
編成・陣形・戦術は勿論の事、一兵卒の装備品に至るまで、マケドニア軍のあらゆる所には彼の創意工夫が盛り込まれており、その強さは世界最強とまで謳われていた。
また、彼は軍の構成において「個人の能力を潰してでも、全体が一つになることを旨とする」という理念を持っており、「英雄のいらない戦いこそがマケドニアの理想」と将軍達に語っている。
軍の強さばかりに目がいきがちだが、敗戦濃厚の際は流言を巧みに使って和睦を進めたり、海運の要所であるカルディアを懐柔してアテネの力を削ごうとするなど、決して力押しだけが能ではない、硬軟両面を併せ持った人物である。
学者のアリストテレスを招聘して、先述した「ミエザ」を開設するなど人材の育成・発掘にも貪欲で、カルディア遠征では現地で色々と大立ち回りをかましたエウメネスに目を付け彼を配下に引き込もうとした。
エウメネスは、最初は「商人」であったフィリッポスが「王」に変貌した時の事を「その男が瞬時にして巨大な生き物に変化したように思えた。そう…敢えて例えるなら、オデュッセウスの物語にも登場する一つ目巨人、キュクロプス。」と語っている。
マケドニアの王子。母はオリュンピアス。
中性的で端正な顔立ちにオッドアイ、顔に大きく刻まれた蛇型の痣が特徴。
恵まれた身体能力、聡明さ、第六感の持ち主で、特に第六感は「ほんの少し先の未来を見透す」とまで言われている。
戦場においてもその類稀な能力故に戦術よりも直感と閃きで戦おうとする、所謂天才肌な人物である。
アテネとの雌雄を決するカイロネイアの戦いでは、
「個人的な理由で一番槍を買ってでた挙げ句に独断専行、自分の部隊すら置き去りにして単騎で敵陣の裏に回り、呆気にとられている敵兵の首を列に沿って次々と跳ね飛ばしていった。」
Mount&Bladeじゃねーんだぞ!!
しかしそのスタイルは「英雄がいらない戦い」を理想とするマケドニアの対極に位置するモノであり、フィリッポスも彼の才能は認めつつも
「あれが王子ではなく一介の将であったなら…」
「(絶対に死なないだろうが)いっそ戦場で死んでくれたなら…」
と、心中穏やかではないようだ。
アレクサンドロスの唯一無二の親友で彼の片腕。
ダレイオス3世の母が二人の見分けがつかずヘファイスティオンの前に跪いてしまった際に、アレクサンドロスが放った
「お気になさるな。この男もまたアレクサンドロスなのだから」
という言葉からも、二人の親密具合が見てとれる。
……というのは史実の話で、本作においては「アレクサンドロスに棲まうもう一つの人格」の事である。
幼少時から感情的で取り乱すことが多かったアレクサンドロスをみて、母のオリュンピアスが意図的に彼を創り出した。
曰く「二人でならフィリッポスを踏み越える」との事。デスノートかな?
まだ出番が少ないが、少なくとも
「ヘファイスティオンはアレクサンドロスの記憶も共有している事」
「対してアレクサンドロスはヘファイスティオンの記憶を共有出来ない事」
「ヘファイスティオンはアレクサンドロスよりも粗暴な性格である事」やっぱりニアとメロじゃ…
がわかっている。
蛇が大の苦手で、彼は覚醒時には顔にある蛇型の痣を白粉で隠す癖がある。
その為、周囲の者達にも判別は容易く彼の存在も周知の事実ではあるが、これは所謂「公然の秘密」となっており、フィリッポスの意思によって彼に関する一切の記録は残してはならないとされている。
フィリッポスの第四王妃でアレクサンドロスの母。一刀、しかも片手で大の男の首を跳ねる剛剣の持ち主。
王妃という立場にも拘らず、性生活が乱れに乱れており、その辺の貴族はおろか寝所を守る衛兵すらも自分のベッドに誘い、不義密通を繰り返している。
真っ裸で大蛇を抱き、息子の名前をブツブツ呟くシーンもあったりと、端から見れば完全にアブナイオバサンだが、先の「フィリッポスを踏み越える」の発言にも見られる様に、言葉の端々にはなんだか野心めいたものを感じさせる。
実は彼女の密通のお相手の中には「イッソスの戦いを描いた"現実の"モザイク画にあるアレクサンドロスそっくりの男」がいた。明言こそされていないが、それはつまり…
因みにその男はアレクサンドロスにオリュンピアスとの情事を見られた為、彼女の
刺突→ジャンプ切り→刺突→首跳ね→(蛇が)首を丸のみ
マケドニアの国軍副司令官で現在の「王の左腕」。
「右腕」ではなく「左腕」なのは、ギリシア式の軍の布陣において最高司令官、即ち王は右翼に展開する傾向があり、直接指揮を取る事が難しい左翼側が自ずと副司令官の担当になる、という所から来ている。
既に老人の域に達している高齢者だが、その佇まいは常に威厳に溢れており、フィリッポスよりも一回り大きい事もあって、エウメネスも最初は彼がマケドニア王なのでは?と思っていた。
ついでに非常に寡黙な人物でもあり、長い間彼の会話らしい会話は
フィリッポス「頭じゃま。」
パルメニオン「お…これは失礼。」
だけであった。
しかしカイロネイアの戦いでようやく台詞らしい台詞を吐く事が出来た。やったね!
政治・外交全般を取り仕切っているマケドニアの宰相。パルメニオンと併せて「王家の両輪」と呼ばれるだけあって、その手腕は確かなモノ。
アテネとの戦争の際には、「アテネの力を削ぐ」為に、また「今後のアテネに必要な男を失わない」為に、優秀な敵将であるフォーキオンが戦場に出て来ないよう工作を施した。
その工作員として選ばれたエウメネスは、まだ敵の立場であるフォーキオンを既に「此方の駒」として捉えているアンティパトロスの考えの大きさに感心していた。
ただ…本人の真意はともかく、事実だけ並べればエウメネスにとってこれ程ありがたくない人物もいない。
アテネ工作の際は、「ダメ押し」としてエウメネスをアテネ市民への生け贄にしようとし、エウメネスが「王の左腕」の候補に挙がった際は、後述するエウリュディケとの仲を「懸念材料」だとフィリッポスに提言している。
マケドニアの将軍の一人。まだマケドニアに来て間もない頃のエウメネスを預かる。
パルメニオンの娘を嫁に貰っており、国内では相当な名門の筈だが、本人はどう贔屓目にみても只の飲んだくれ親父にしかみえない。
フィリッポス曰く「典型的なマケドニア人を知って貰う為に預けた」そうだが、エウメネス曰く「これが"典型"ならマケドニア人はろくでもねえぞ」とのこと。
ただ、なんだかんだいっても両者の仲は良好で、更に姪であるエウリュディケもエウメネスとの距離を徐々に縮めていった。
国内で活躍目覚ましいエウメネスを見て、いずれはエウリュディケを娶せ、家督を継いで貰おうとも考えていたのだが…
アッタロスの姪でエウメネスの想い人其の三。
中々の美人さんだが、叔父同様お世辞にも上品とは言えない人物。大口を開けて笑う所なんかソックリ。
ただ、頭の回転は非常に早く、エウメネスに盤上遊戯の遊び方を教わったら、制作者自身も敵わないレベルの実力を身につけてしまった。
エウメネスと相思相愛であったが、アンティパトロスが「王の左腕候補がマケドニア名門と縁を持つ事は、権力のバランスにおいて問題がある」とフィリッポスに提言。フィリッポスは急ぎ彼女との婚約を進めてしまう。
マケドニアで最上位の地位に着くことも、エウリュディケを諦める事も自分の望みではないエウメネスは酷く憤慨。マケドニアを見限ることを本気で考える様になる。
アテネの弁論家・政治家。
清貧を旨とし、温和で平和主義な「人格者」としても名高い人物であり、民衆からの信頼は非常に厚い。
若い頃に傭兵部隊の副官を務めていたこともあり、実践経験も豊富。自ら立候補した事こそないものの、毎年のように将軍職に推薦されている。
ビザンティオンでの海戦ではその辣腕を存分に振るい、マケドニア海軍を圧倒した。
しかし、本人はできる事ならマケドニアとの全面戦争は避けたいと考えており、皮肉にも自分がもたらした勝利がアテネの主戦論派を勢いづかせてしまった事に心を痛めていた。
間もなくアテネの世論は「マケドニアとの決戦」一色に染まり、非戦論派である彼はとうとう将軍職から外されてしまう。
マケドニア首都ペラの宮廷護衛兵。
幼い頃から無表情で感情の起伏に乏しい人物で、周りの者からは「心が入っていない男」と言われていた。
かつてフィリッポスが侵略・吸収したオレスティスの出身。
彼自身はその事に何の遺恨も残してないが、彼の兄はフィリッポスさえいなければオレスティスの王になる筈だった人物であり、没落してからは死ぬまで「フィリッポス倒すべし」という妄執に取り憑かれていた。
兄はパウサニアスがアレクサンドロスとそっくりであることに目をつけ、弟を宮仕えという形でペラに潜り込ませる。
しかし、弟に降りかかったある出来事が原因で野望は頓挫し、兄は憤死。
これまで自分というものを主張する事なく、半ば兄の妄執に引き摺られる様に生きてきたパウサニアスは、ここで初めて「自分が生きる意味」について思いを馳せる様になる。
そして、その後の彼には「自分と瓜二つの男を産み出したオリュンピアスとの出逢い」という奇妙な運命が待ち受けていた…。