ラブロマ(漫画)

登録日:2018/10/31 Wed 20:17:06
更新日:2024/04/05 Fri 18:35:21
所要時間:約18分で読めます





「普通って刺激的ね」


「ラブロマ」とは後に「友達100人できるかな」や「タケヲちゃん物怪録」を手掛ける漫画界きっての超豪速球投手、とよ田みのる氏による恋愛漫画の事。
氏の投稿した読み切り漫画が2002年の「月刊アフタヌーン春の四季大賞」を受賞。翌年には続編が掲載されその後改めて連載が決定した、という経歴をもつ。

…という紹介をしてしまうと「さぞ御大層な作品なのだろう」と思われてしまうので、まずはハッキリさせておこう。
この作品、恋愛漫画の癖にこれっぽっちも飾り気がないのである。

まずタイトルからして「ラブロマ」
ド直球である。もっとキャッチーで気の利いたタイトルつけてもいいだろ!と突っ込みたくもなる。

主人公二人組は極々フツーの高校生。
「家柄が世界有数のなんちゃら」とか
「通っている学校が特別な生徒の為のどーとら」とか
「実は人間離れした能力がうんたら」とか
そんな豪奢な設定なんてありません。
漫画ならではの起伏溢れる非日常など存在しない、あくまでフツーの高校生活が舞台である。

ついでにこの二人、連載開始の時点で既に付き合い始めている。
なので「くっつくまでのすったもんだ」もなければ「二人の恋路に立ちはだかる邪魔者」もいない。
嫉妬や憎悪、悲恋といった言葉とは無縁まま、二人の関係は(表面上は)いつまでも変わらない。

さらに恋愛モノではあるが、作者の作画自体がちょっとヘタなんというか…あんまり恋愛漫画向けではないのだ。
失礼だが、絵面だけみて敬遠してしまった読者も多少はいるかもしれない。

良くいえば「素朴で真っ直ぐ」、悪くいえば「捻りがなく、きらびやかさに欠ける」これがこの作品に対する大方の「第一」印象であろう。
ただ、返す返すようですまないが「あ、じゃあ駄作なのね」と思うのはちょっとだけ待って欲しい。
何の魅力もなく、面白くもない作品が大賞なんてとれるわけがない。
実はこの作品、その「真っ直ぐさ」がとってもとっても曲者(矛盾)で、とってもとっても魅力的なのだ。

真似したくなるようなお洒落な言葉はないけれど、
いつまでも心に残しておきたい素敵な言葉なら一杯ある。

周りの人すら惚れ惚れするようなカッコ良さはないけれど、
見ているこっちが赤面してしまうような甘酸っぱさならそこら中にある。

愛憎相半ばなギラギラした色恋ではないからこそ、
二人の世界はいつだってキラキラしている。

そんなどこまでも透明で清々しい作風に一度触れてしまったら最後、いくら「絵がヘタ」「地味」などと拒絶しても全くの無駄。
ソレは我々の精一杯の抵抗なんぞ紙屑の如く吹き飛ばし、そのままハートのど真ん中をぶち抜いていく。

ある野球選手の台詞に

「本当に偉大なピッチャーてのはな、わかっていても打てないウイニングショットをもってんだよ!」

というモノがあるが、この作品もその台詞の如くどれだけフツーでありきたりだろうが、此方に抗う術を与えないだけの力強さを持っている。だからこその「超豪速球」なのだ。
「上辺だけ見てナメて掛かるとたちまち打ちのめされて、引き込まれる。」そんなある意味暴力的な、パワー漲る漫画である。



主な登場人物


  • 星野 一
主人公ペアの片割れ。彼が根岸に告白するところから物語は始まる。
誰にでも折り目正しく、決して嘘や隠し事をしない誠実な男子。
……なのだが、彼には日本人の美徳であり恥部でもある「物事をオブラートに包む」「空気を読む」という概念が全くない。
彼女に嘘はいけないからと、「男友達とAV借りに行くので今日は一緒に帰れません。」とか言っちゃう位である。
また、かなり理屈っぽくて自分の心に妥協も出来ない。普通の人なら適当に折り合いをつけるような事にも躓いてしまう。(例えば成績の為に勉強することが納得いかず、落第ギリギリであったなど。)
簡単に言うと「生真面目で融通が利かないめんどくさい奴」

但し、その分彼の吐き出す言葉はいつだって小細工無しの純度100%、更に一度やると決めたらとことんやる凄みも持っている。
彼の心にひとたび火が付けば、

テストの成績は瞬く間にトップクラスとなり
出演した演劇では感動的なアドリブをかまし
公衆の面前であっても臆せず彼女の為に愛を謳う。
ついでに根岸との料理対決では本気を出すあまり彼女のプライドを粉々にした。

そんな彼は本作でも屈指の名言製造機であり、その空気の読めなさも相まって学校の名物男として皆から愛されている。

「ウサギだっていいんです。ダサクたっていいんです。あなたを愛しています。」



  • 根岸 由美子
主人公ペアのもう片割れ。通称ネギ。
小さい頃に戦隊モノのヒーロー(レッド系)に憧れていたせいか、女の子ながら男勝りで直情径行、なんでも拳で解決したがる傾向がある。

彼氏が(駆け引きのつもりで)素っ気なくすれば拳で教育し
自分の苦手な幽霊(と勘違いした警備員)に遭遇すれば拳で殴り倒し
彼氏がチンピラに絡まれたら拳で救い出す。

周りの皆からも「非常に漢らしい」とお墨付きのガキ大将高校生である。
反面、何事にも真正面から取り組み一生懸命。常に正しくあろうとする芯の強さも持っている。
人が困っていれば、たとえそれがおせっかいであろうとも、たとえ相手が恋敵であろうとも積極的に、誠実に関わろうとする。
そんな彼女に周りが寄せる信頼は厚く、一と共に学校の名物女として以下略。
この二人が織りなす、時にデコボコで不器用で危なっかしい、でも微笑ましくて、力強くて、常に健やかな恋愛模様が本作のキモになっている。
お察しの通り料理の腕は絶望的。

「私もね、世界が輝いてみえるよ!!」



  • 目黒 陽子
ネギの小学生以来の親友。
感情が表に出ないタイプであり口調もやや皮肉めいた所がある為、非常に淡白な印象を持たれがち。
だが、そこは彼女も女の子。他人の(というかネギの)色恋沙汰には常に興味津々。
当人そっちのけで勝手に色々な企画を催したり、事あるごとに一に入れ知恵をするなど、いつも余計なお世話を焼きながら、ホシネギの恋愛を誰よりも近い距離で見守っている。
後述するモブの皆さんを召喚するのも大体彼女の役目。

では自分の色恋はどうなのかというと、例えば塚原とのデートがたとえ

「サルだな」「サルね」
「変なトリだな」「変なトリね」
「不味いメシだな」「不味いメシね」

というやり取りだけであっても「とっても楽しかったわ」と言ってのける。お前は斎藤緑雨か。

因みにネギとの付き合いは、彼女の淡白っぽさが気に障り絡んできた男子をヒーローに扮したネギが成敗したのが切っ掛け。
しかし彼女もネギの振る舞いを鼻で笑った為、ついでに成敗されたのだった…。

「今日も平和ね…」



  • 塚原 敏夫
一の小学生以来の友人で、早い話が星野側の陽子ポジション。
一見淡白な所も陽子にそっくり。似た者同士だからか、はたまたホシネギに触発されてか、二人は付き合い始める事になる。
ただ、彼女と違って彼は余りにも寡黙に過ぎる為、陽子はたまに不満を募らせる様だ。通訳さん曰く「言葉と気持ちのギャップが嫌だ」なのだとか。

一との出逢いは「塚原が登った木から降りられなくなった所に、偶然通りかかり助けてもらった」というもの。
それに恩義を感じているのか、「借りを返す」としてクラスメイトにからかわれた一の肩を持ったり、ネギと仲直りする為に一緒に放送室をジャックして先生に怒られたりと、彼は昔から現在に至るまで一の良き友人であり続けている。
…実は木を蹴飛ばして塚原を叩き落しただけだとか、当の一は塚原を覚えていなかったとか、遊びに行く度に星野ママにケーキを無理やり食わされて激太りしたとかはこの際伏せておこう…。

「平和だな…」



  • 杉本 涼子
ホシネギが付き合っていることを知りつつも、星野への想いを抑えきれない恋する乙女。
言ってしまえばネギの恋敵なのだが、星野が一度きっぱりと断っている上に、その後も二人は誠実に彼女に接している為、ドロドロした関係にはなっていない。
と、いうか一緒にご飯を食べたり、旅行に行ったりしている位には仲が良い。
しかしそれがかえって「悪いのは想いを断ち切れない自分自身」という自己嫌悪に陥らせている。
ヒロインよりヒロインしているなとか言ってはいけない。
彼女の恋模様がどのような結末を迎えるか、というのも本作の見所の一つ。

「でも好きなの!!どうにもなんなくても、星野くんのことが好きです!!」



  • 牧村 ケースケ
涼子の幼馴染
涼子に対して好意を持っているが、彼女は昔からその気はないと袖にしている。
「主人公に横恋慕している幼馴染に振り向いてもらえない男」なんて、フツーなら悪役待ったなしである。
が、彼はそれでも涼子の気持ちを汲み、周りとの関係を崩すことなくいつも彼女の為に尽力している。
一はそんな彼の事を「自分は自分の為だからこそ根岸さんに色んな事が出来るが、彼は杉本さんの事だけを考えている。すごく羨ましい。」と語っている。
一見飄々としていてノリが軽そうな男だが、恐らく本作で一番大人な気遣いが出来る好人物。

「涼ちんを守れるくらい強くなる。好きじゃなくってもいいよ。涼ちんの隣にいさせてくれよ。」



  • ヨシツネ
一の友人その2。
見た目も性格も(表面上は)プレイボーイな奴で、ネギとの付き合いに悩む星野に対し、
「女なんてヤっちゃえばおとなしくなるもんだぜ」
「冷たくするのも駆け引きだぞ」
なんてそれっぽい事をのたまうが、当の本人に浮いた話はこれっぽっちもない。ざまぁ。
また女を弄びそうな見た目に反して実はマゾっ気たっぷりであり、冴木から辛辣な罵倒を受けて胸がときめいていた。
間もなく彼女に惚れて猛烈なアタックを仕掛けるのだが、それがどうなったかは最後のお楽しみ。畜生。



  • ハシバ
一の友人その3
常に一達とつるんでいるが、大抵のほほんとしているだけで台詞もほとんどない。
そんな感じではいつもは目立たないが、マラソン大会で全校3位だったり、ビリヤードが滅茶苦茶上手だったり、校内新聞で四コマを連載していたりと、実はかなり多才な奴。
…ただ、借りるAVがSMモノだったり、その四コマがシリアルキラーを描いたモノだったりするので、もしかしたら結構な心の闇を抱えている人物なのかもしれない…。



  • 和田さん
ネギの友人その2。
いつもニコニコ微笑みを絶やさない可愛らしい女性。
非常にモテそうであるが、それっぽい話は皆無で本人も「恋人を作るつもりはない」と言っている。
というのも彼女は大のオカルトマニアで、「そういう契約をしている」のだとか。恋愛漫画なのに!?



  • 冴木 醒
(後の)ネギの友人その3。
校内では眼鏡に三つ編みと所謂アナクロな委員長っぽい見た目だが、実はかなりの美人。
おまけに文武両道でスタイルも良い、と隙がない女性。その分性格がかなりキツ目なのを除けば…だが。
一に対して「もっと人としての温かさを持ちなさい!」と叱咤した際は、周りの皆が「それはお前だろ…」と(心の中で)ツッコんでいた。
その遠慮のない物言いはネギと相性が良い様で、ネギは初めは一と親しそうに話す彼女を煙たがっていたが、最終的には寧ろ一を蚊帳の外に追い出すくらい意気投合する。


  • 屋敷 トモヒロ
一がバイトしていた喫茶店のオーナーの息子。
性格は軽くて、適当で、無気力。なので生真面目の一とは何かと反りが合わない。
しかし女好きという点でヨシツネとは馬が合うらしく、その関係で先輩である彼らと顔を合わせる事も多い。
ヨシツネと違う所は「本当にモテる事」。
バレンタインの時期には紙袋一杯のチョコレートを「食いきれないから」とヨシツネ達の所へ持ってきていた。畜生。



  • 星野 零
一の姉。
目つき顔つきはもちろんの事、誰にでも敬語で話すところも、硬そうな性格も一とそっくり。
彼との違いがあるとすればその性別と、「彼女はまだ恋を知らない」という所くらいである。
ネギと出会ってからの一は変わったと認めつつも、恋は自分には到底理解できない感情だといっていた。
…のだが、ネギの弟(幼児)に出会ってからは、

彼(幼児)がいない時の胸の痛み
彼(幼児)がいる時の胸の高鳴り
彼(幼児)と手を繋いだ時の幸せ

を確かに感じるようになっていった。
いけない!お姉さん!ソレはイケナイ道だぞ!



  • 星野 マキナ
星野家の母。
基本的に皆折り目正しい星野家の中で唯一、自由奔放な性格をしている。
幼少期の塚原に「可愛いから」といって毎回無理やりケーキを食わせたり
自分から「一ちゃんの彼女に会いたい!」と言ったクセにネギと会う約束をすっぽかしたり
「水族館に行こう」と言った次の瞬間には「やっぱり遊園地に行こう」といったり
と、そのフリーダムっぷりはとどまる所を知らない。
一の空気を読まない性格はどうやらこの人の遺伝子の賜物のようだ。



  • モブ方々
個別の名前も台詞もないエキストラの皆さん。
ある時は陽子の号令によって、ある時はどこからともなく大量に湧いてきて、
コマを覆いつくさんばかりの勢いで全力でホシネギを応援する。
現実世界でなら、ともすればイジメられてもおかしくないであろうヘンテコな二人が常に幸せでいられるのは、彼らの様に祝福してくれる人々が常にいるからかもしれない。
そういう意味では、本作において象徴的でなくてはならない存在である。

  • S.C.D
S(サブ)C(キャラクター)D(同盟)とは、「物語の舞台を整える為だけに生まれ、使い捨てられていった悲しきキャラクター達」の慟哭が産んだ団結の事である。
クーデターによるラブロマジャックを企み、虎視眈々と再登場の機会をうかがっている。
…と言ってはいるが、幸いなことに本当に一回こっきりで使い捨てられた例はほとんどないので、大体の奴らは再出演に満足して終わる。極一部を除いて…だが。


秀逸な文章が書けると最初は思っていました。
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でも項目は項目なんです。
文才なくったていいんです。
ダサクたっていいんです。
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最終更新:2024年04月05日 18:35