ガンヘッド(映画)

登録日:2018/10/21 Sun 14:22:00
更新日:2023/09/22 Fri 03:35:12
所要時間:約 6 分で読めます





パーティやろうか、ガンヘッド


『ガンヘッド』とは、1989/07/22に公開された特撮SFアクション映画である。製作・配給は東宝。また、サンライズが全面協力している。
監督:原田眞人  特撮:川北紘一
主演:高嶋政宏  メカニックデザイン:河森正治


【概要】

全高6.1m(設定)というボトムズクラスの変形ロボットが主役メカとして活躍する実写特撮映画。
サンライズが参加し、メカデザインは河森正治という所からも分かる通り、当時人気だったリアルロボットアニメのエッセンスを
特撮映画に取り入れたものと考えることができる。それに合わせて設定・ストーリーもハードSFの要素が濃い。

評論家の評価は低く、収入は奮わず、当時の興行は失敗に終わった。
しかし、実写特撮で変形ロボットがガキガキ暴れまわるその大胆で野心的な企画と映像、原田眞人監督のセンスが炸裂する熱いセリフ回し、
本多俊之氏の素晴らしい劇伴など、光る要素も数多い。
この映画はリアルタイムで観たロボット大好き小僧どもに強い印象を残したようで、

2011/03/14にはMikuMikuDance用3Dモデルが製作・配布され
同年11月には定価10万円のフィギュア、
2012/10にはコトブキヤからプラモ*1
2013/01には大型副読本が発売、
2020/04/16にはスーパーロボット大戦X-Ωに参戦、しかもパイロットであるブルックリンの音声は高嶋政宏氏直々の再録
2022/06にはBlu-ray発売決定、しかも1992年に地上波放送された際の再アフレコ音源を初収録

と、実に公開から20年以上経っても話題が途切れない。
記録ではなく記憶に残る映画、の例と言えるかもしれない。
このページが製作されたのだって、公開から29年後だし…。


【あらすじ】

西暦2025年。太平洋上に建設された各種ロボットを生産する完全自動工場化人工島「アイランド8JO」の
管理AI「カイロン5」が人類に宣戦布告。人類はロボット兵器「ガンヘッド」を開発し、これの一個大隊「ロボット大隊」を
カイロン5制圧のために送り込んだ。しかし、大隊はカイロン5の防衛システムの前に全滅。その後、なぜかカイロン5は沈黙。8JOは禁足地とされた。
西暦2038年。トレジャーハンターチーム「Bバンガー」が、カイロン5のチップを漁るために8JOに降り立つ。
ほぼ同時に、アメリカ・テキサスに有るエネルギー資源研究所から、一体の作業用バイオドロイドが「あるもの」を持ち出して脱走した。
このバイオドロイドは、かつてカイロン5で生産された個体だった…。
カイロン5の本体がある中央建物「カイロンタワー」に踏み入ったBバンガー達は、カイロンの警備システムとバイオドロイドの襲撃で次々と殺され、
ブルックリンと、バイオドロイドを追って島にやってきたテキサス・レンジャース捜査官のニムはタワー下層のゴミ捨て場「ロボット墓場」に逃げ延びる。
そこには、かつてロボット大隊としてカイロンと戦い、敗れたガンヘッドの残骸が散らばっていた。
その残骸の中に、ブルックリンはまだ再起動できる個体を発見。動力をつなぐ。目覚めたガンヘッド「ユニット507」は、カイロンの恐るべき計画を語る。
ブルックリンはガンヘッドをレストアし、カイロン5に反撃することを決断した…!


【主な登場人物】

◆ブルックリン 演:高嶋政宏
主人公。トレジャーハンターチーム「Bバンガー」のメンバーで、チートレベルのメカニックマン。
かつては軍人でガンヘッドの搭乗経験も有ったが、事故でコクピット恐怖症を発症して不名誉除隊に終わったという。
物語後半は高嶋政宏の頑健な体つきと相まって非常に男くさく、熱いビジュアルになっていく。

◆バンチョー 演:ミッキー・カーチス
Bバンガーのリーダー。50がらみのヒゲオヤジ。古めかしい戦車用ヘッドブラジャーを愛用しており、これはブルに引き継がれる。
「銃で遊ぶな。ツキが落ちるぞ」

◆ニム 演:ブレンダ・バーキ
アメリカの特殊警察「テキサス・レンジャース」のエリート捜査官。バイオドロイドを追いかけて8JOまでやってきた。
成り行きでブルックリンやセブン、イレブンと共闘する。

◆セブン 演:原田遊人
ほぼ無人の8JOにも何人かの研究員が住んでおり、その間に生まれた子どもたちの1人である少年。
人類の敵となったカイロン5が全てを監視する8JOで何年も生き抜いてきただけあって、知識豊富でしたたか。銃器も自然と取り扱う。全身傷だらけの容貌が、その日々の過酷さを物語る。
ちなみに原田遊人は原田眞人監督の息子さん。

◆イレブン 演:水島かおり
セブンとともに8JOで暮らす少女。本編の時点で、島で生きている人間は彼女とセブンのみになった。
島で初めて生まれた子供である。失語症で言葉が出せない。セブンと違い、なぜか無傷。

◆ガンヘッド・ユニット507 演:ランディー・レイス 日本語吹き替え:郷里大輔
ロボットであるが、人物と称して差し支えないだろう。メカとしてのガンヘッドは後述。
2025年の戦闘で任務失敗したガンヘッド大隊の生き残り個体で、復活後はブルの頼もしすぎる相棒となった。
どういうAIをしているのか言葉のセンスがやたら抜きん出ており、魂を震わす熱い言葉を連発する。連発しまくる。
ブラックユーモアもいいセンスをしている。


【メカニック】

◆ガンヘッド
主役メカ。人型ロボット兵器であるが、プロップ製作の関係上二足歩行ではなく四脚走行型である。平べったい胸部とほとんど無いウエスト、砲塔そのものの頭部という、独特のデザイン。
カイロン5の反乱を鎮圧するため、それ以前から各地で開発されていたロボット兵器のプランを集約して突貫作業で設計・開発されたという。
本来は「UHED」といい、中央ユニットであるUHEDに各種装備を取り付けて主力戦闘型・偵察型・火力支援型などのバリエーションが展開される。
大きな特徴が変形機構で、手脚が使える「立ち型(スタンディングモード)」と、
べったり地面を這うような姿で高速走行する「戦車型(タンクモード)」を切り替えることが出来る。もちろん変形シーンも実写でバリバリ動く。

本編で暴れる「ユニット507」は小隊指揮型「サージェントガンヘッド」のコンポーネントで、搭載AIが特別高度なものに換装されている。
507の武装は頭部ターレット20mmチェーンガン*2、対人用マシンガン、6連装ミサイルポッド、75mm低圧カノン、照準用レーザーガン*3
主動力はハイパーリキッド(変性ニトログリセリン)を燃料とするジェネレーターだが、このジェネレーターには変な特性が有り…

撮影のためにたくさんのミニチュアが作られ、さらにはFRPを主材とする実物大ガンヘッドが作られて宣伝に使われた。
質感を出すために発電機の廃油を塗装に使ったというそのボディは真っ黒で重々しく、これが動く様は非常に熱い。

◆エアロボット
甲鉄無敵!
ガンヘッドより一回り大きなサイズのライバルメカ。カイロン5への進入フロアを守る守護神で、ガンヘッド大隊を潰滅させた宿敵。ガンヘッドと違って言葉などは持たない。
その外見は独特で、舟のような本体に巨大なパワーアームが2本。パワーアームの先端には電磁ブレードが固定されており、家屋解体用に
油圧ブレーカーを装備したパワーショベルのアームにも見える。そして本体前部には三連装荷電粒子ビームの砲口が光る。
電磁力で浮き上がり、圧縮空気で推進しているらしい。
ガッシュガッシュと猛り立てる後部冷却ピストン、滑るような移動、暗がりに光るビーム砲口の三つ目、6mあるガンヘッドが見上げるほどの高さから
振り下ろされるパワーアーム。観る者の恐怖感を煽るデザインと演出はあまり目立たないが秀逸だと思う。実際怖い。

◆バイオドロイド
昆虫のような顔のアンドロイド・ロボットの一種で、全身に有機パーツが多用されており柔軟な作業が可能ができるもの。かつてはカイロン5の一番人気商品だった。
本編に登場する個体はカイロン5の手足となってブル達を妨害する。帰還後カイロン5にどんな魔改造を施されたのか、単体で光子魚雷まで撃ってしまう。
なんなんだお前。


【名言集】

「決意した人間の力は確率では測れません。だからコンピューターは人間を超えられない」

「確かに9回裏ツーアウトで、確率から言えば勝ち目はない。でも、そんなものクソくらえ、でしょう!?」

「ひとつお願いが。死ぬときはスタンディングモードで、お願いします」

これ全部、ロボットの発言である。


【余談】

メディアミックス作品でもあり、小説版やコミカライズ版が存在する。


バカゲーと名高いランナバウトにも2でガンヘッドにしか見えない「G・TANK」が登場しており、武装変更が可能だったり、名前をブルックリンやカイロン5にすると武装強化されるなど完全に意識している。


本作で特技監督を務めあげた川北紘一氏は、五年前の「さよならジュピター」とともにその演出を東宝本部に見込まれ、本作の撮影途中ゴジラvsビオランテの撮影を任されることとなった。
すなわち、本作はその後の平成ゴジラシリーズ全盛期の礎となったのである。
また、のちに川北紘一監督は自伝「特撮魂」にて「『さよならジュピター』『ガンヘッド』『ゴジラvsビオランテ』は八〇年代に撮った“三部作”」と記録している。

そしてその縁でか、1993年公開のゴジラvsメカゴジラの特報にて、『ガンヘッド』の映像を多用した特報を投入。
さながら「ゴジラvsガンヘッド」とでもいうかのごとき、猛烈なPVが存在している。
また、同作のメカゴジラの初期案には「メカゴジラが複数パーツに分離・合体する」というものがあったが、その下半身パーツの一つがどことなく戦車モードのガンヘッドに似ている。


本作について、東宝の松岡功社長*4は「これからの特撮の可能性は充分、感じられるし、やろうとしているSFマインドは良く分かった。でも、これは普通の人が見たらわからないよな。もっとわかりやすくしろ」と我々ヲタには実に耳に痛いことを言ってくれたらしい。
これについて川北監督は「まぁ、時代が早すぎたんだろうな、いろいろな意味で」と続けている。

特撮雑誌「宇宙船」の別冊として発売された「怪獣博覧会」では防衛兵器の一員として、ポインターやメーサー車と並んで紹介されている。

主演の高嶋政宏は後に「ゴジラvsメカゴジラ」でも主演となりコクピットに乗り込むが、ガンヘッドの経験が生きていたと語っている。

また、本作がスパロボに参戦したのは、これはサンライズからの提案があったのとスパクロのプロデューサーであるオオチヒロアキ氏とシリーズ全体のプロデューサーである寺田貴信氏が本作直撃世代だったため
寺田Pがガンヘッド参戦について熱く語っても周囲が冷めた反応しかしない中、オオチPのみがノリノリで賛同。高嶋政宏氏のガンヘッドへの思い入れから「行ける」と感じたオオチPが高嶋氏に直接交渉を行ったことで実現したという。
なお、高嶋氏もノリノリでブルックリンのボイスを収録し、寺田P達と本作の裏話で盛り上がったとか。
オオチP以外の冷めた反応に不安を抱いた寺田Pは杉田智和氏にガンヘッドの話題を振ってノリノリで反応してくれた事で「これ行けるかも」と思ったとか。

余談だがSDガンダムシリーズの一つ『ガンドランダーII 魔封の聖剣編』のガンマドラゴンの隠しモチーフはガンヘッド+キングギドラだとか。
ガンヘッドとは関係ないが、ガンマドラゴンがさらにパワーアップしたラスボスのギガドラゴンは L.E.D.ミラージュが隠しモチーフと言う説も……自由過ぎである。



「ひとつお願いが。追記・修正はスタンディングモードで!


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最終更新:2023年09月22日 03:35

*1 翌年には成形色を劇中に近いものにし、特典に川北監督によるPVや解説書がついた限定版が発売された

*2 となっているが、劇中の砲はどう見ても三砲身のガトリングガンである。映画「プレデター」と同様の誤用。

*3 現代の主力戦車の主砲に時折見られる主砲同軸機関銃と、同じ役割をする照準砲。

*4 松岡修造の父親。