岸浪ハクノ

登録日:2018/10/11 Thu 18:36:06
更新日:2023/12/27 Wed 23:24:40
所要時間:約 8 分で読めます





無論、戦えるとも。自分が何者か分からなくても、オレは――

――この、憎しみだけで


岸浪(きしなみ)ハクノとは、『Fate/stay night』に端を発する『Fate』シリーズの作品のひとつ、『Fate/EXTRA』を”原案”としたアニメ『Fate/EXTRA Last Encore』の主人公。
CV.阿部敦


◆概要

セイヴァー宝具天輪聖王(チャクラ・ヴァルティン)』によって電脳の地獄と化したSE.RA.PHが、最下層である辺獄で再現し続けていた「聖杯戦争の再現データ」にて、「友人」だった間桐シンジに殺害された少年。
それでも歩みを止めずに命辛々辿り着いた先で真紅の剣を掴んで襲ってきたドールに立ち向かい、そこでセイバーと契約。有り得ざる「129人目の参加者」として、ルールが崩壊しほぼすべてのマスターがサーヴァントを放棄した聖杯戦争を勝ち抜いていく。

己に関する名前以外の情報を忘却しており感情も希薄だが、原典『EXTRA』の主人公(岸波白野)とは違って何故か勝者や聖杯戦争のシステムそのものへの憎悪が存在し、上層に上がる動機も「殺すため」。
記憶がないため原典の岸波白野が抱えていた「自分は何者なのか」という疑問に加えて「何故月の全てが憎いのか」に答えが出せず、苦悩することになる。

容姿は『EXTRA』の男性主人公と同一で、この世界の場合は女性であったセイバーの前のマスター・岸波白野とは、彼女曰く「生まれ変わりかと思うほど似ている」とか(まぁ男性主人公と女性主人公は並行世界の同位体なので似ていて当然なのだが)。
但し令呪は白野のそれとは形状が違い、白野の令呪が二つ逆向きに重なったような形をしている。

最下層から第1階層『新設海洋都市ケープ』に上がってばかりの頃はセイバー共々「聖杯戦争が終わっていること」「マスター権を放棄すれば理想郷でずっと遊んで暮らせること」などを聞かされ戸惑うばかりだったが、遠坂リンと合流して以降は彼女らと共闘、間桐シンジ、ダン・ブラックモアら各層のフロアマスターを順調に下して勝ち上がっていった。
しかし第2階層『悔恨の森』でラニ=Ⅷから「最後に行われた聖杯戦争は1000年前のもので、地上文明はとうに滅んでいる」ことを知り、続く第3階層『忘却の庭』では残留していた「名もなき誰か」の記憶の残滓を見つけ、そこでありすと彼のやり取りを垣間見る。
それからは出所が分からない憎悪ではなく「希望を持って空に上がりたい」という前向きなハクノ個人の願いを持つようになった。

が、やはり大元の動機が「憎しみ」というハクノ曰く「不純」なものであること、自己が曖昧なまま他のマスターを殺して先に進むことへの苦悩は消えることが無かったが、辺獄で出会ったセイバーに励まされ、迷いながらも先に進み続けた。


◆魔術師として

月の魔術師なので、当然魔術師(メイガス)ではなく魔術師(ウィザード)。白野は礼装を装備しなければコードキャストを扱えなかったが、ハクノは自在に扱うことができる模様。
更にルール崩壊後に発現するようになった謎の強化現象『死相(デッドフェイス)』も使用可能で、これを発現させることによって高い身体能力や格闘技能、ダンにも比肩し得る狙撃精度等を発揮させられる。が、一度に発揮できる技能は一種のみ。
またラニ曰く死相はハクノの人格を覆いつくしかねない諸刃の剣であり、濫用することは明確な破滅へのカウントダウンを表すほか、リンは「デッドフェイスは一度死んで恨みで再起動した死人」と語っており謎が多い。

死相発現時は身体全体が黒く染まって目が見開かれ赤く輝き、全身には稲妻のような電光が駆け巡る。武器などを扱う技能を使用した場合はその武器にも電光が奔る。


◆正体

彼は1000年前にセイバーのマスターであったものの、トワイス・H・ピースマンとセイヴァーの前に敗北し命を落とした岸波白野の生まれ変わり。
第5階層で彷徨っていたユリウス・ベルキスク・ハーウェイのデッドフェイスには「生き汚い」「(デッドフェイスと化した様を見て)失望で死にそうだ」などと散々に罵られた。*1



追記・編集は前へ進み続けることを諦めない人にお願いします。

































※以下は『Last Encore』最大のネタバレを含みます。閲覧にはご注意下さい。






































SE.RA.PHの終わりを感じ取り、ただ一度の変化が起きた

恨みを晴らせ。熾天に座した勝者に、この憎しみを叩きつけろと

自分を”岸波白野の生まれ変わり”だとでも希望していたのかね?

多くの敗者。多くの死者。蓄えられた膨大な敗戦記録。それらを背負い、”誰でもない誰か”として目覚めたもの。それがキミだ

キミは岸波白野ではない。その要素を持った、死の総体にすぎない。生者への憎しみだけで構成された、醜悪な殺人鬼だよ


◆真の正体

ユリウスに敗北し、気を失って内面世界に落ちた先、そこにいた「賢人」としてのトワイスの残滓が、ハクノの本当の正体を明かす。
そう、「岸浪ハクノ」とは明確な「何者か」ではなく、かつて聖杯戦争で敗北したマスターたちの想念の寄せ集めに過ぎなかったのだ。

記憶が無いのは当然で、かつての岸波白野同様「個人としての過去」そのものが無かったから。逆に憎しみや怒りといった感情が初めからあったのは、結局はそういう負の感情を集めて出来た存在だったから。
そもそもデッドフェイスとは、死に囚われて何も生み出さない悪性情報の一種。SE.RA.PHでは肉体の死と精神の死は別物であるため、肉体が死に切らなければ精神活動も呪いとして蓄積される。
それは本来であればムーンセルが分解して浄化されるはずだったのだが、熾天の檻が閉ざされたことでその機能の一切が停止。放置された呪いはやがて死んだ肉体を強制的に動かし、やがては電光の仮面に覆われた悪性情報に変質してしまう。

ハクノはその中でもレアケースで、彼の場合は「岸波白野」は勿論、
「間桐シンジの友人だったマスター」でもなければ、
「ダン・ブラックモアに勝利したマスター」でもなく、
「ありすの遊び相手になってあげたマスター」ですらない。
そういった特定の誰かではなく、それらの敗者全員が持っていた負の感情を集めてヒトガタにしただけの、サイバーゴースト以下の単なる悪性情報。死相を発現させると様々な技能が発揮できたのも、彼が死者の総体だったから。
ユリウスに怒りを向けられたのも、ハクノが白野であるからではなく、単にユリウスの妄念の塊である彼のデッドフェイスには目に映るリン以外のマスター全てが”岸波白野”に見えていただけ。

また彼に限らずデッドフェイスは異常な悪性情報であるため、今はムーンセルの機能が一部停止しているから存在出来るものの、ムーンセルを正常に戻せば直ちにバグとして処理される。
つまり、彼が熾天の檻を目指すということは、彼自身の生命を終わらせることに他ならない。


◆真の概要

事実を突きつけられたハクノは「未来のない、憎しみしかない負け犬たちの寄せ集めが前に進んでいいのか」という疑問のもと、自己否定の連鎖に陥ってしまう。
しかしそこで、フラッシュバックしたこれまでのセイバーの前向きな言葉に対して苛立ち「憎しみを知らないセイバーにそんな事を言われても」と言い放ったことに腹を立てたお節介な誰かさんによって、今は廃棄されたかつて視聴覚室だった場所に導かれ、セイバーの真名とその過去を、そして彼女のマスターとして欠けているものを知らされる。

目が覚めてすぐに「マスターの資格がない」とセイバーとの契約を切ろうとするも、彼女から「他の誰でもない”誰か”になるため、そなたは目覚めたのではなかったか」と、ハクノ自身も自覚していなかった願いを言い当てられる。
そして「岸波白野とは別の、”岸浪ハクノ”という新しい誰か」として改めて彼女の「奏者(マスター)」となり、ユリウスとバーサーカーに打ち勝った。

次の第6階層『無限の――(アンリミテッド/レイズ・デッド)』では、二人の能力が拮抗し過ぎていたためにムーンセルでも勝敗の判定が下せず、同時にフロアマスターとして登録され、更にはムーンセルの誤認によってフロアの核として登録されてしまったが為にデミ・サーヴァント化させた分身を競わせ続けていた(当然決着はつかない)リンとラニを、彼女らに提示された「どちらか片方を殺す」または「どちらかに殺される」という選択肢を放棄し、「先に片方を救命し勝者と認識させ、次いでもう片方を救い出す」という方法で助けようとするも、デッドフェイスの基になったマスターの中にはラニの心臓である高密度霊子集合体を修復できる技能を持つ者がいなかったため、救うことが出来なかった。

それでもどうにか救い出せたリンだけは新天地に送り出すため、第7階層『太陽の頂き』で待ち構えていたレオナルド・ビスタリオ・ハーウェイガウェインを一度は辺獄まで叩き落されつつも、アリスの宝具である『永久機関・少女帝国(クイーンズ・グラスゲーム)』の力の断片が残った栞の能力で戻り、渾身の力で下す。

更にはリンやレオ、ガウェインを加えた5人で熾天の檻を閉ざし、ムーンセルを「滅亡の未来」のみを観測する運営方針に傾けた消滅したトワイスの、そのデッドフェイスとも対峙するが、既に「願望」を得て「岸浪ハクノという名の生者」になっていたハクノに死者であるトワイスは触れられず、ハクノはムーンセル中枢に到達。
ムーンセルの機能を戻し、新しく創りなおした『新天地(エクステラ)』へとただ一人残ったリンを送り出すと、正常化されたムーンセルによって消去された。

けれど、その面持ちには暗いものなど一つもなく――



追記・編集は、
たとえ自分が敗者の想念の寄せ集めで、
願ったような「何者か」ではなかったとしても、
それでも「誰か」になることを、
前に進むことを諦めない人にお願いします。

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最終更新:2023年12月27日 23:24

*1 尤も、とうに妄念の塊と化した死人であるユリウスに「死にそう」も何も無いのだが。