江戸幕府の黄昏

登録日:2016/10/01 (月曜日) 14:34:00
更新日:2018/10/15 Mon 17:11:09
所要時間:約 13 分で読めます





「日本の夜明けぜよ」と言われた維新の時代
だがそれはつまり、「江戸幕府の黄昏」を意味していた……

概要

「江戸幕府の黄昏」はGamejernal誌56号付属のボードゲーム。*1
名作「トワイライト・ストラグル」のシステムを使用し、幕末における「佐幕派」と「倒幕派」の勢力争いを描く。
実際の事件や朝廷の存在、列強の介入などをたくみに織り込んだ幕末ゲームの傑作のひとつと言える。

システム

プレイヤーは2人。「倒幕派」と「佐幕派」をそれぞれ担当する。
「ペリーの再来航」から「大政奉還」までの15年間を8ターンに分けてプレイする。
基本的なシステムは「トワイライト・ストラグル」をベースにしたカードドリブン式であり、毎ターン配られるカードを使ってゲームを進めていく。

勝利条件

ゲーム中に様々な行動でVPを獲得していき、8ターン目終了時により多くVPを持っていた方が勝利となる。
いわゆる「綱引き」方式であり、VPを獲得するごとにトラック上を自派の方に寄せていくことになる。
片方の勢力が+20以上VPを稼いだ場合、8ターン目を待たずにそこで終了となる。
また、もう一つの例外として《錦の御旗》のイベントが発生した場合、やはりその時点で終了となる。

VPを獲得する方法としては
  • 《〇〇情勢》というカードのイベントによるVPの発生
  • その他のイベントによるVPの発生
  • 調停工作
  • ターン終了時の「攘夷実行」によるVPの発生
  • ゲーム終了時の各地方情勢によるVP(《〇〇情勢》と同じ)
となっている。

スペース/地方/雄藩/藩/町・港

ゲームボード上には36の「スペース」が書かれている。これらは藩や町を表しており、それに対してプレイヤーは影響力を行使していくことになる。
このうち「江戸」だけは常に佐幕側が支配しているスペースとして扱われる。

地方
ゲーム地図は奥羽、中部、中国、南海道、九州の5つの地方に分けられており、これらが得点計算に関わってくる。*2
それぞれの地方には1つの雄藩と4-7の藩が存在する。

雄藩/藩
各地方には一つ、雄藩というその地方の指導的な藩が定められている。
水戸藩、福井藩、長州藩、土佐藩、薩摩藩がそれにあたる。これらは安定度(地図上のスペースの右上の数字)が赤くなっていることで見分けられる。
雄藩を支配していることがその地方で大きく得点を稼ぐための必須条件であるため、ここは特に争いになりやすい。

各藩には「安定度」という数値が定められている。
これはその藩の態度の移ろいやすさや藩体制の安定感を示しており、1-5の数字で示される。
自派の影響力が敵の派閥の影響力をこの安定度以上上回っていれば、自派がその藩を「支配」していることになる。
(例:安定度3の福井藩に佐幕派の影響度が1ある状態で、倒幕派が4の影響度を置いた。この時、4-1=3で安定度以上の差があるため、福井藩は倒幕派支配となる)
安定度が2以下の藩はすぐに意見が入れ替わるため、特に互いの争点となる。(雄藩で安定度1の長州藩などは典型)

町・港
京、長崎、横浜はそれぞれ特別な町・港としてあり、どちらかが支配することはできないが影響力が優勢である側が得点計算時に点を得ることができる。
なお、横浜はゲーム開始時はまだ港として開かれていないため、影響力を置けない。

カード

ゲームの中核をなすもの。
また同時にプレイヤーの妄想の種でもある。

カードには
  • カード名
  • AP
  • 鎖国/開国カード
  • 倒幕/佐幕/共通/強制/Pイベント
  • 除外イベントか否か
  • イベントの効果
  • フレーバーテキスト

が書かれている。

カード名
そのカードの名前。
「亀山社中」「安政の大獄」「桜田門外の変」「吉田東洋暗殺」など幕末ファンならわくわくするワード満載である。

AP
カードを「行動力」として使った場合に使える行動力(AP)が書かれている。

鎖国/開国カード
後述の「条約レベル」に絡む要素。
ゲームの前半では主に鎖国カードを使い、後半から開国カードも使われるようになる。
基本開国カードの方が派手なイベントが多い。

倒幕/佐幕/共通/強制/Pイベント
イベントの種別を表す。
倒幕/佐幕は当然その派閥に有利なイベントなのだが、同時に 敵側のカードを使う場合、必ずイベントも発生させなければいけない というルールに絡んでくる。
共通イベントは常に行動かイベントかの二択。
逆に強制イベントは常に行動+イベントとなる。
Pイベントは特殊なイベントで、地方や町で点が入る決算用のカードである。扱いとしては強制イベントに準じる。

除外イベントか否か
カード名の最後に「*」がついており、またイベントの効果が点線枠で囲まれているカードは「除外イベント」といい、一度発生するとゲームから除外される。
例えば「井伊直弼大老就任」「桜田門外の変」はいずれも除外イベントであり、桜田門外で死んだ井伊直弼がまた大老に就任したりはしないようになっている。
重要なこととして「イベントが『発生した場合』は除外される」のであり、自派のカードを行動力として使ったり、強制イベントだが条件を満たしておらず発動しなかった場合などは除外されない。

イベントの効果
カードをイベントとして使用した場合の効果。
カードをプレイする時点で最初の「条件」を満たしていないと、イベントは発動できない。
(例:《安政の大獄》は井伊直弼がマップ上にいることが条件)
発動した場合は、①から順に処理を行っていく。

条約レベル

日本がどれほど外国と条約を結び、国を開いているかを表す。
3枚ある強制イベントカードによってレベルが上がっていく。
レベルの上昇と共にターン開始時に配られるカードが増える。

鎖国/開国フェイズ
ターン開始時の条約レベルによってそのターンが鎖国フェイズか開国フェイズかが決まる。
鎖国フェイズ・開国フェイズでないと使えないイベントがあるほか、開国フェイズになったターンには開国カードが山札に投入されるため、より展開が派手になっていく。

列強介入レベル

諸外国がどれだけこの幕末の争いに介入しているかを表す。トワイライト・ストラグルで言うところのデフコン。
政変を起こしたり、各種イベントカードの効果で上下する。
列強介入がレベル5(代理戦争)になると佐幕派と倒幕派の争いは列強による代理戦争になってしまったこととなり、その事態を招いた側の敗北となる。

朝廷工作レベル

どれだけ自派が朝廷に影響力を持っているかを表す。
朝廷工作レベルが上がればその時点でVPがもらえるが、朝廷工作レベルが4になるとそれ以上は朝廷工作は不可能。
また、朝廷工作レベルが高い方が次のターンの先行を得られる。

攘夷マーカー

そのターン中に攘夷が実行されたかを示す。
カードのイベントによって攘夷は発生しうる。代表例はそのものずばりな《攘夷実行》。
攘夷実行状態はイベントの条件となるほか、ターン終了時にいずれかのプレイヤーにVPが加算される。

ターン進行

まず、ターン開始時に条約レベルに応じた枚数のカードが両プレイヤーに配られる。
この時山札のカードが足りなくなったならば、除外したカード以外の使ったカードを山札としてカードを必要枚数配る。
先行側から1枚ずつプレイしていき、両方の手札がなくなった時点でターン終了、清算を行い、次のターンに移る。

アクション/イベント

カードをプレイした場合、プレイヤーは「自派閥のイベントカード」もしくは「共通イベントカード」である場合、「アクションを行う」のか「イベントを行う」のかを選ぶ。
もしイベントの発生条件を満たしていない場合は、強制的にアクションを行うことになる。
「敵派閥のイベントカード」もしくは「強制イベントカード」である場合、アクションとイベントの双方が発生する。この際、どちらを先に行うかはカードを出したプレイヤーが選べる。
ただし、「敵派閥のイベントカード」である場合、イベント内での必要な選択は全て相手プレイヤーが行うことになる。(強制イベントの場合はカードを出したプレイヤー)
また、条件を満たしていない場合はこのケースでもやはりイベントは発動せず、アクションだけを行うことになる。

アクションには以下の4種類がある。カードを出すごとにどれか一つを選択して行い、組み合わせて行うことはできない。

影響度の配置
自派閥の影響度をスペースに置く。
基本的に1APにつき1点で、「既に自派閥の影響度があるスペース」か、「自派閥の影響度があるスペースに隣接するスペース」にしか置けない。
支配をしている必要はないことに注意。
また、APがある限り複数のスペースに分けて影響度を置くことも可能。
例外的なルールとして、
  • 長崎、横浜はそれぞれ1ラウンド(自分の手番)に1点しか置けない。
  • 京に影響度を置く場合は、2APにつき1点
  • 敵派閥が支配しているスペースに置く場合は、2APにつき1点

最後の例外ルールに関連して、「影響度が1点置かれるたびに、支配状況は再確認する」ことは注意が必要。
例として長州藩(安定度1)に倒幕側の影響度が1点ある状況の場合、佐幕側はまず2APで影響度を1点置くとこの時点で1:1となり、倒幕側の支配が崩れる。
次に1APで影響度を1点おいて1:2となり逆に佐幕側支配となるため、この状況ならば3APあれば支配まで持っていけることになる。

内紛
いずれかの派閥の影響度を取り除く。
対象とできるのは影響度を配置できるのと同じ条件、すなわち「既に自派閥の影響度があるスペース」か、「自派閥の影響度があるスペースに隣接するスペース」である。
1APにつき1回内紛を起こせる(複数のスペースで起こしても構わない)が、京で内紛を起こす場合は2APが必要。

内紛を起こした場合、双方のプレイヤーが1D6を振り、それに「内紛の起こったスペース」と「内紛の起こったスペースに隣接するスペース」のうち、自派閥が支配しているスペースの数を足す。
これにより、上回った側が下回った側の影響度を差分だけ下げることができる。
(例:倒幕派が支配している薩摩藩(3:0)で佐幕側が内紛を起こす。佐幕側は薩摩藩に隣接する熊本藩を支配しているとする。長崎も薩摩藩に隣接しているが、港は支配できないため、内紛については関係がない。
佐幕側がダイスを振って5。熊本藩支配で+1で結果は6。倒幕側がダイスを振って4。薩摩藩支配で+1で、結果は5。この結果、6-5=1で、数の低い倒幕側の影響度が1下がることになる)

内紛を起こした場合、結果によっては起こしたプレイヤーの側の影響度が下がることもある。

政変
対象の藩について大幅な体制の変更を起こす。この行動は1度でAPを全て消費しなければならない。
また、港や京に対しては政変を起こせない。
政変を実行したプレイヤーはダイスを振り、それにAPを足して、対象の藩の安定度の2倍をひく。
その結果の数値分、対象の藩から敵派閥の影響度を下げる。また、0まで下げても結果値が余った場合、その分自派閥の影響度を上げる。
結果値が0以下であった場合は、何も起きない。
そして、結果如何に関わらず 列強介入レベルが+1される。
このため、中盤以降は封印されることになりがち&安定度の高い藩には全く効かない*3が、それだけに強力なアクションである。

朝廷工作
朝廷に対して自派閥の指示をお願いする。
成功すれば朝廷工作レベルが上がり、現在のレベルに応じたボーナスがもらえる。
また、ターン終了時に朝廷工作レベルが高い方が次のターンの先攻となる。

朝廷工作の注意点として、「1ターンに1度しか行えない」ことと、「朝廷工作のために使ったカードのイベントは発生しない」ことがある。
また、それとの兼ね合いで、「強制イベントカード(とPイベントカード)は朝廷工作に使えない」。
基本的に、敵のやばいイベントのカードが手元にきた場合それを潰すために使うことになる。
ただし、「朝廷工作がレベル4になると、それ以上朝廷工作は行えない」ことにも注意。

朝廷工作はアクションとしてはシンプルで、1D6を振ってカードのAP以下を出せば成功となる。
倒幕側のみ、イベントによって朝廷工作に補正がかかることがある。

ラウンド終了時

使ったカードを捨て札にする。それが除外イベントであり、かつイベントが発生していた場合は捨て札とは分けてゲームから除外する。
また、マップに最初から書かれている勢力ごとの影響度と、そのスペースに置かれている勢力駒(例えば「武市半平太」は土佐藩に置かれうる討幕派の駒であり、1と書かれている)の合計値(これを基礎指示値という)を現在の影響度が下回っている場合、ラウンドの終了時にそこまで回復する。

ターン終了時

攘夷が実行されいる場合は、鎖国/開国フェイズに応じてVPが入る。
また、条約レベルが2以上になったターンの終了時にはマーカーを裏返して開国フェイズとし、山札、捨て札、そして開国カードの束を混ぜて次のターン用の山札とする。

これを繰り返し、8ターン目終了時までにゲームが終わらなかった場合、そこで全ての地域と京、港のVPを計算して最終的な勝者を決める。

幕末諸々

以下にカードの一部を載せる。詳細な効果はさすがにぼかすので、雰囲気を味わってもらいたい。

《井伊直弼大老就任》
「井伊直弼」が彦根藩に登場する。
彦根藩に強力な影響力を行使できるだけでなく、佐幕派の強力なイベント《安政の大獄》の条件ともなっている。
《桜田門外の変》で除去されてしまうのが玉に瑕。

《和親条約》
強制イベント。条約レベルが1あがる。
他の条約レベルが上がるイベントはいずれも条約レベル1以上が条件のため、これが山札の底に沈むと条約レベルが中々上がらないことに。

《攘夷実行》
佐幕派のイベントで、仕掛けられるポイントが限定される代わりに普通にAPとして使った場合より多くのAPを使ってアクションを行える。
除外イベントではないので、何度も倒幕派に使われると割と頭の痛い事態に。

《鯨海酔侯》
土佐藩主、山内容堂の雅号。
共通イベントで、このイベントを起こした側を以降山内容堂は支持する。
土佐藩の藩論がふらつきやすくなっている一因。

《浪士組/新選組》
どちらが使ったかに応じて倒幕派の「浪士組」か佐幕派の「新選組」が京に登場する。
倒幕側には京の影響度への意味しかないが、佐幕側にとっては「新選組」がいれば《人斬り》の悪影響を軽減できるので、割と重要。

《敬天愛人》
西郷隆盛の座右の銘。
維新三傑の一人が有力者を説得するイメージだろうか。
特定スペースの影響度を一気に討幕派に傾けられる極めて強力なイベントながら、ほぼ使用に制約がないというぶっこわれイベント。
開国イベントなためゲーム後半で1度使われるぐらいだろうことがせめてもの救い。

《錦の御旗》
今でもなお「大義名分」の代名詞ともなる言葉。
朝廷工作がレベル4に達しており、かつ列強介入レベルが3以下でイベントを発生させることで強制的にゲームを終了させる。
その際相手にいくらかのVPを与えるため、VPが拮抗している場合は使いづらいのがせめてもの救い。
終盤優勢な相手の朝廷工作が4に達しているならば常に警戒すべきイベント。

追記・修正は大政奉還をしてからお願い致します。

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