クロノクル・アシャー

登録日:2012/01/10 (火) 21:34:41
更新日:2024/04/11 Thu 21:01:13
所要時間:約 8 分で読めます





お前のような少年に何がわかる!

女王の弟にされてしまって、カガチなどとも戦わねばならなくなったこの私の苦しみが!


機動戦士Vガンダムの登場人物。
CV:檀臣幸

搭乗機体
シャッコー
ゾロ(専用機 / 通常機)
トムリアット
ゾロアット
コンティオ
リグ・コンティオ
Vガンダム(鹵獲)
ビヒモス(漫画版)
ドッゴーラ改(漫画版)



ザンスカール帝国軍の将校で女王マリア・ピァ・アーモニアの実弟*1シャクティ・カリンの叔父にあたる。
地球では砂埃などを嫌い、顔の下半分をマスクで覆っている。

新型MSシャッコーの試験中に偶然ウッソ・エヴィン少年と遭遇、成り行きで機体を奪われる。
以降ウッソとは因縁ができ、物語を通じて対決を繰り返すライバル


【前歴(小説版より)】

両親に捨てられサイド1アルバニアンで姉と二人貧しい生活を強いられていた。
マリアは娼婦に身をやつしながらも、クロノクルを学校に通わせまともに育てようとした。
反面、男に捨てられては泣いているような姉を見て育ったためにクロノクルはかえって反発。
かっぱらいや恐喝、麻薬の売買に手を染めるチンピラになっていた。

やがてマリアは父親も判らない娘アシリア(=シャクティ)を生み、それを機に不思議な力に目覚める。
マリアの占いや治癒能力が評判になり暮らし向きが良くなると、
元々根は悪くないクロノクルは犯罪から足を洗って姉を教祖に据えた新興宗教の手伝いを始めた。

が、そこをサイド2の政治家フォンセ・カガチに目をつけられ、マリアはザンスカールの女王に祭り上げられてしまう。
ちなみにカガチとしては危害を加えるつもりはなかったみたいだが、傀儡にはする気満々だった。

そして女王の弟という立場になってしまったクロノクルはカガチに利用される姉の身を案じ、
また、立場にふさわしい力をつけるべく軍人の道を進むことになる。


【劇中】

女王の弟ということから軍では腫れ物のように扱われ*2、見合った功績を挙げようと焦っていた。

派遣された地球でウッソにテスト中の試作機シャッコーを奪われ、そのシャッコーにより味方に多大な被害がでるという失態を犯すが、単身敵地に潜入してオイ・ニュング伯爵を捕らえるなどによりなんとか挽回する。
一応フォローすると、戦闘中の乗機にいきなり民間人の少年がパラグライダーで取りつき、あまつさえコックピットに乗り込み取っ組み合いを仕掛けてくるという、まず想定出来ない正しくスペシャルなアクシデントに見舞われては、
たとえクロノクル以外のパイロットでも対処は難しかったであろう。

そんなことがあったために当然ウッソと因縁が生まれたが、彼自身の性格自体には特に問題なく、ベスパの非道な作戦にも全面的には賛成してはおらず、
またリガ・ミリティア潜入中だったのに子供をトイレに誘導するなど、戦時における軍人としては善良過ぎるほど。

この間パイロットとしてはそう活躍したわけではないが、前述のリガ・ミリティアの中心人物の一人伯爵の拉致に成功したなどの功績があるので、総合的には戦果を挙げている。

宇宙に戻ってからは本国への帰還中に地上用のトムリアットで連邦部隊を圧倒したり、
カイラスギリー戦でも敗戦の中で奮闘し、奪われたビッグキャノンの狙いを逸らしてザンスカール本土攻撃を阻止。

その功績でモトラッド艦隊司令に任命され「地球クリーン作戦」の指揮を取った。
この頃には製作上の都合からか、とんでも作戦に引っ張られる形で非道な性格に豹変しており、率先して悪事を行っている。
先輩であり部下となったピピニーデンが人質作戦を取った時は激怒するなど、一応以前の装いが全くなくなったというわけではないが……。
善人にもなきれず、かといって悪人にも徹しきれないと捉えられそうな全体像になっていく。
(そもそもこのピピニーデンも途中まではむしろ有能な人物として描かれていたのに、中盤からおかしくなっている)

エンジェル・ハイロゥ攻防戦にはモトラッド艦隊を率いて参加。
タシロ・ヴァゴの不穏な動きに気づいたものの力及ばず、反乱を起こしたタシロにマリアを奪われ死なせてしまう。

代わりに保護したシャクティをキールームに入れてエンジェル・ハイロゥの力を手に入れようとも画策。
その後、カテジナに焚き付けられるままMSで出撃。
ウッソのV2に固執した結果、リーンホースJrの特攻で艦隊を全滅させられている。
(尤もクロノクルは撃沈まではいかずとも敵艦隊に十分なダメージを与えており、既に中~大破状態のオンボロ艦数隻の特攻を国家中枢艦隊が止められず纏めて灰にされるというのもひどい話ではある)

最後はカテジナと共にウッソとの対決に臨む。



全てが分かった、ウッソ・エヴィン!

キールームのシャクティと共に、我らを排除しようという魂胆!

だからっ私にも見える!!


最期は乗機リグ・コンティオから投げ出され、姉マリアに助けを求めながら以下のAAのような感じでエンジェル・ハイロゥに頭から激突して墜死した。
彼の最後のシーンはアイキャッチが入るまでの様子と相まってインパクトを残す事に。


_| ̄|○

     \ へ
         /○ |_      ネエサン
             _|
             ○
                  く
                \/        マリアネエサン
                ○              タスケテヨ

                   ○|_| ̄

                      ○/       ( マリア ノ ゲンカク )
                       \ へ

                          ○
                          | ̄
                           ̄|
                             ○        マリア ネエサン・・・
                            /\
                            >

                            _| ̄|○

                                |_ ・;∵..
                                _|・;∵..・;∵..
_____________________○___  ゴギッ!!!

パパパパーッ★
}

生きている者が死んだ者に助けを乞うてはなりません」と発言したマリアだが、その弟が死者=マリアに助けを求めながら死んでいく様は何の皮肉だろうか…。

インパクトが強すぎるあまりネタとして扱われることが多いが、V2のメガビームシールドやアサルトパーツを損壊せしめたり、
仲間の援護がなければあわや撃墜というところまで追い詰めたりと、決して一方的に嬲られて敗死した訳ではない。
宇宙用MSであり、大気圏突入しながらの戦闘で本格的な重力下飛行能力を持たないことも大きな要因となっている。


【人物】

機動戦士Ζガンダム』のジェリド・メサに次ぐ「ライバルキャラになり損なった男」として知られる。

パイロットとしては優秀なのだが、単純な力量ではファラに、殺害数ではカテジナに食われてすっかり影が薄くなってしまった。
何でも御禿様が女を描く事にしか興味が無くなっていたとか。

艦隊司令を務めた中盤は全くMSに乗らなかったにもかかわらず、数ではジェリドに並ぶほど*3機体を乗り換えているのも減点材料か。

そんなクロノクルのキャラクターを語る上で特筆すべきは「優しさ」であろう。
ファラ、ワタリー、デプレ、ハズ・カイフ、ゴッドワルド、マチス・ワーカーなどザンスカールの軍人が個人としては常識的で優しい一面を見せる事はしばしば描かれたが*4、クロノクルはそれが突出している。
  • 潜入した工場で崩れた天井からシャクティを身を挺して庇う
  • 寝ぼけて廊下でパンツを下ろしたスージィをトイレに連れていく
  • 銃を拾おうとしたカテジナをスカートを踏んで止めたのを謝る
  • 自分で撃ったオイ・ニュング伯爵の怪我を手当てする
  • フランダースに懐かれる
と、序盤だけでも枚挙にいとまがない。

また、女王の弟という身分ながら偉ぶったところはなく、指揮下に入った先輩にも敬語を使い続けていた。
逆にその先輩も「部下の前では呼び捨てにしろ」とたしなめるなど、元々の関係は悪くなかったのだが。

そういった面もあってウッソ役の阪口大助氏やカテジナ役の渡辺久美子氏も「好感が持てるキャラクター」と語っている。
故郷のウーイッグと両親を嫌い、思想や行動上の問題からリガ・ミリティアにも馴染めなかったカテジナがクロノクルに惹かれたのも自然な成り行きだったろう。

反面、地球クリーン作戦ではマリア主義の理想を隠れ蓑に建物や人を押し潰すという虐殺を行いながらピピニーデンの人質作戦には怒りをあらわにするなど、
自分の手を汚す事を嫌う潔癖ぶり、目の前の相手には優しくできても大きな目線で自分の行為を省みられない想像力の欠如を見せた。

マリアはそんな彼を
「クロノクルのような小さな魂しか持てない人間の、その小さな我執がスペースコロニーの時代を呼んだ」
と評し、シャクティも「優しさに包まれた深い悪意」と表現した。

クロノクルというキャラクターが製作現場での「シャアみたいなライバル作って」という身も蓋もない指定から生まれた事はよく知られている。
命名もシャアを引っくり返してアシャーという、富野作品ならではの安易かつ耳に残りやすい命名……ではあるのだが、ライバルキャラとしての評価まで真逆になってしまったのは皮肉な所。
シャアが本編を見ると意外にも情けない所があるのに思い出補正や本人が出て来ない所での評価が過大なんてものではないことになってるのに対し、余りの空気ぶりからアシャーならぬアチャーという呼び名が本放送当時から出来てしまっていた程。(ノ∀`)アチャー
登場当初は口元をマスクで覆っていたのもシャアの仮面の反対というデザイン*5であり、つまりは『Vガン』版の仮面の人枠であった筈なのだが、顔を隠しておく理由はなく(クロノクルが女王の弟であることはザンスカール帝国の大半の人に既知)隠し続ける方法も無理があるからか素顔がデフォになってしまい、その事実も無かったような扱いとなっている。

ライバルという役割を負わされたのとリンクするように、作中のクロノクルは他人から与えられた役割に自分を合わせようと必死な努力家であった。

女王の弟にされ、またカテジナにも彼女の望む理想の男性像を期待され、生来の優しさゆえにそれらを捨てることができないまま破滅したクロノクル。
戦争や政治に関わらず、またカテジナと互いの弱さを補い合う関係になれていればと思わずにはいられない。


漫画版




ねえさんが死に カガチも死んだ!

ザンスカール帝国はもう おしまいだ!!

だがウッソ・エヴィン きさまだけは‥‥

殺す!!


まさかのラスボスで有名。漫画版ではカテジナさんがいないので、その影響も少なからずあると思われる。
最後はドッゴーラ改に搭乗し、ウッソとお互い姉の仇、父の仇という間柄になりながらも完全に気迫勝ちしていた。
最終決戦直前の「姉の死を知って狂ったように大泣き周囲もドン引き」→「突然ピタッと泣き止む」→「血の涙の痕をつけながら修羅の形相で顔を上げる」の流れはラスボスの迫力に満ちていて普通に怖い。

なお、TVアニメの死に様も相当酷いが、こっちはこっちでコクピットにビームサーベルをぶちこまれビームに身を焼かれる様が描写されている。
というより、そうでもしないと死なないぐらいしぶとかった。
なにしろ「電子レンジの中のダイナマイト」にされてもなんとか生きてたし。


スパロボ

大抵の場合は敵で、それなりに強いのだが、やはりカテジナのインパクトが強くてイマイチ影が薄い。
ニュータイプ扱いされていると多少はマシになるが、そうではない場合が多い。
GB版でVガンダムが初参戦した為、クロノクルも初参戦。

  • 新スーパーロボット大戦
2作目にして声付きでは初参戦。
そして以降の声付き参戦の際は檀臣幸氏の再録が行われなかった為、結果的にスパロボでは最初で最後のボイス収録。

αシリーズ最初で最後の出演。
Vガンダムは続編のα外伝にも参戦したのだが、クロノクルは本作で死亡してしまった為、そちらには出演できず。

条件を満たすとエンジェル・ハイロゥ攻略後にカテジナと共に仲間になる。
だが、オールドタイプのせいでやたら豊富なファンネル武装を使用できず、必中や集中を持たないため当てにくい。
Dではステータスをレベルアップ時に狙って補強できるので命中を育てればこの問題は解決できるのだが、Dの仕様(バグ?)のせいで敵味方で強化情報を引き継いでしまう
その為、味方にして命中をガッツリ育てた後で周回プレイを始めるとめっちゃ命中率の高いクロノクルを相手する事になる。

反面カテジナは強化人間で愛や魂を覚え、敵の時とは別キャラ扱いなのでガンガン育てられる。とことんカテジナの後塵を拝する人である。
とは言え、「たとえブルー・スウェアと共闘することになっても、地球圏を守るために戦う」とカテジナに男を見せる場面は原作のヘタレを完全に返上したと言えるはず。

ちなみにゲーム発売当時の公式コミックアンソロジーではスパロボ補正によって「生き残ってしまった」
クロノクルとカテジナのその後に焦点を当てた短編漫画『Caravan』が掲載されており、読者の間では少なからず語り草となっている。
Vガンダム並びにスパロボファンなら必見。

久々にVガンダムがメインシナリオに大きく絡んでくるので、当然ながら序盤から登場。
演じた檀氏が鬼籍入りしてしまっているため、新とαで収録していたライブラリーの他、Gジェネシリーズのライブラリーからも音声流用が行われた。

今回も条件を満たすとカテジナと共に仲間になる。
ただし、持参するのは調達が間に合わなかったリグ・コンティオではなく通常のコンティオとなっている。
コンティオではパワー不足のため、あまり有り難くない…。肩の武装のせいで反転で処理できないから戦闘アニメ作成が間に合わなかった可能性が濃厚。
幸いにも『30』では量産型νガンダムV2ガンダム(2機目)と強力なモビルスーツのシートを空けやすいので回してやろう。何の因果か因縁深いガンダム顔ばっかりであるためクロノクル的には複雑だろうが。

【台詞】


【TV版】

「トイレはそこじゃないぞ」

「パイロット、死ねよ!」

「我が子を思う母の気持ちには敬意を表するが……母親、父親のエゴというものは時には子供を殺す事もあるという事、想像してほしいものだな」

「見下げ果てた先輩だ!胸糞が悪い。あの男をもう先輩などとは思わん!」

「馬鹿な!私はこんなところで止まるわけにはいかないのだ!」

【ボンボン版】

「星さえもくだく我がドッゴーラのバリアーアタック! くらええい!」

「このドッゴーラ改は全身をバリア・コーティングしているのだ どんな攻撃もうけつけん!」

「このドッゴーラ改は‥‥全身がビームそのものなのだ!」

「バリア・エネルギーをすべて開放した‥‥いっしょに死ねええ!」



「見つけたぞ!この項目に付き纏い、尽く追記・修正を阻んでくれた荒らし!沈め!!」

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最終更新:2024年04月11日 21:01

*1 姓が違うが、「ピァ・アーモニア」が教祖としての法名か、小説版でマリアの旧姓が「カリン」という描写があるので、クロノクルもカガチ達が持ち上げた際に改名させられた可能性あり。

*2 序盤では、イエロージャケットのライオール・サバトやワタリーの部下のディ・トランプや、ゲトル・デプレ等に暴言を吐かれたり責められたりしている。

*3 一時的に乗った物や漫画版も含めればジェリドを上回る

*4 勿論、先述のライオールのようなクズも多数いるが…

*5 よくよく考えると初代準拠ならこれはキシリアのマスクで、性別は真逆だが(傀儡状態の)君主の血縁者という点ではキシリア要素も無いわけではない。もっとも性格などに共通性はない。