多頭

登録日:2018/07/10 Tue 19:13:57
更新日:2024/04/22 Mon 21:21:55
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多頭とは、神話で頻繁に見られる特徴の一つ。

目次

概要

本来なら一つしかない頭を二つ持って生まれる奇形は古今東西多く存在する。
それらの特徴から連想されて、「多くの首や頭を持つ超越的存在」は数多くの神話に採用される特徴となっている。
善なる存在とされることもあれば、邪悪な存在とされることもある。ただ、近年はどちらかというと悪寄りの特徴とみなされがち。
なお、双頭の奇形は生物的にはかなり弱い存在なのだが、神話では「生命を象徴する首を多く持つ」ということで、非常に強大な存在として描かれることが多い。

現実における多頭動物


ハッキリ言っておくと、現実において多頭の動物「種」は存在しない。
ただ、奇形による双頭生物や放射能汚染による遺伝子異常などで、ごくごくまれに双頭の生き物が生まれることはある。
先述の通り、生物としては強力どころかむしろ虚弱体質なためそのまま死んでしまうケースも少なくない。
なお、極めて珍しいケースだが結合双生児の中に「二頭体」というものがあり、このケースがいわゆる「多頭」に近い。
現在確認できているのはアメリカで一例、ブラジルで一例である。


創作における有名な多頭

八岐大蛇

日本で一番有名な多頭の怪物。
八本の首を持ち、八つの山と谷を越えるほどの巨体を持つとされる。
最後は神舎に祀られた酒に酔いつぶれている隙にそれぞれの首を掻っ切られた。
ヒドラもそうだが、蛇というのは生命力の象徴でもあるのと、現実にも稀に多頭蛇が出現するので、多頭との相性がいい部分がある。

ヒドラ

西洋の八岐大蛇。頭の数は文献によってまちまちなものの、
その血液は猛毒で、さらに一本の首は不死、そえ以外の首は無限に再生するというすさまじい能力の持ち主。
ただし、再生する首は患部を焼く火には弱く、不死の首は岩の下敷きにすることでヘラクレスに退治されその血は毒矢に利用される事になった。
ちなみに同じくヘラクレスに退治された仲間に百の首を持つ竜「ラードン」がいる。ヒドラの兄だが、ヒドラの方が有名すぎてこっちはあまり出番がない。

ケルベロス/オルトロス

ケルベロスは三つ、オルトロスは二つの首を持つ魔犬。
共にギリシャ神話に登場する。

イルルヤンカシュ

ヒッタイトの神話に登場する水神であり竜神。多数の首を持つ蛇として描かれる。
「酔わせたところを討ち取られる」など八岐大蛇伝説と妙に共通点がある。八岐大蛇も大洪水のメタファーとされることが多いし。

双頭の鷲

多くのヨーロッパ系文化圏で用いられるシンボルの一つ。
アルバニアの国旗に使われていることで有名。他にも、ロシアやモンテネグロの国章も双頭の鷲である。
ただし、具体的にどのような神話の元に生まれたのかはよくわかっていない。最古の使用例は紀元前13世紀のヒッタイトであり、それ以降もローマ帝国などで広く用いられていたようである。

黙示録の獣

ヨハネの黙示録に登場する謎の獣。「からやってきて10の角と7つの頭と7つの冠を持つ」という想像しがたい姿をしている。
獣の数字「666」が非常に有名で、この数字を刻まれていないものは買い物ができないようになった、とされている。
なお、現在に至るまで多くの考察がされている存在であるが、当時の隠語からすると、恐らくは「七つの丘と七人の皇帝を抱く街」、すなわち当時キリスト教を迫害していたローマのことを指しているとされている。

十一面観音

十一の顔を持つ観音の一人。実は背後にある顔は大爆笑している。
有名な観音の一人なのだが、実はなぜ十一の顔を持つのか、などハッキリしていない部分が多い。
少なくともヒンドゥーの影響はあったのではないか、とされているが。

オシツオサレツ

イギリスの児童文学「ドリトル先生」シリーズに登場するヤギのような変な動物。
双頭系の動物では珍しく、身体の前後に一つずつ頭があるという変わったスタイルをしている。
性格は極めて温厚。ドリトル先生一家の金蔓大事な仲間である。
ちなみに原語では「Pushmi-pullyu」。このハイセンスな和名には脱帽するしかない。

両面宿儺

日本書紀に登場する怪人。
二つの顔を持ち、四本の腕と四本の足を持つという異形の怪物で、飛騨地方に住み人々を苦しめたとされる。
大和朝廷は両面宿儺を退治するために軍隊を派遣し討伐した。
ところが飛騨地方の伝説によれば、両面宿儺は美しい鎧を身にまとい、人々を苦しめる悪竜と戦いこれを討ち取った英雄とされている。
おそらく当時飛騨地方の人々と大和朝廷の間で何らかの争いがあり、この時飛騨地方の人々の側について戦った指導者が両面宿儺のモデルになったと思われる。
だから政府の書いた歴史書である『日本書紀』では悪く書かれることになった訳だ。
では伝説に描かれた姿の方が本当かというとそれも怪しい。戦争に負けた腹いせに必要以上に美化した可能性もある。
実際には両方の記述の中間ぐらいが真実の姿に近いのかもしれない。

キングギドラ

怪獣界を代表する一つ、金色の三つ首のドラゴン。
ソ連映画『豪勇イリヤ 巨竜と魔王征服』に登場した三つ首竜「ズメイ・ゴルイニチ」がモデルとも
八岐大蛇をモデルにしているような部分もある。
類似怪獣としてデスギドラカイザーギドラがいる。

ドードー・ドードリオマタドガスダグトリオレアコイルナッシー・ジヘッド・サザンドラ他多数

ポケモン界の多頭ポケモンたち。それにしてもどうして初代組がやたらと多いんだ。頭が3つあるグループは多くが「トライアタック」を習得可能。
ただし、レアコイルは「コイルが3体連結しているだけ」でダグトリオは「地中でどうなっているかは誰も知らない」ため、厳密には多頭というにはちょっと違うかもしれない。
ちなみにサザンドラは三つ首(正確には両手にも口がある)だが、背中の翼のデザインも頭のように見え、シルエットは八本首に見えるという小ネタがある。
他にも小さい方の頭の養分を吸って成長するチェリンボ尻尾に小さなを持つ頭がついたキリンリキなどの変わり種もいる。

金目・銀目

ライトノベル『デュアン・サーク』シリーズに登場した「双頭の魔術師」。
大柄な一つの身体に炎系魔法使いの金目(グリ・モーグ)と氷系魔法使いの銀目(グラ・モーグ)、2人分の頭が生えており、現実で言う結合双生児にあたる。
ちなみに彼らの家系には過去にも双頭で強い魔力を持つ人間が存在していたそうな。

青眼の究極竜

遊戯王に登場する三つ首のドラゴン。モデルはキングギドラだろうか。
原作では3回行動という強力な特性を持っていたが、OCG版ではその特性は真・青眼の究極竜まで待つことになった。
このカード以外にも遊戯王では融合素材の数と同じだけの首を持つモンスターが多い。

オストガロア

モンスターハンタークロスに登場する双頭の古龍
「ファンタジーではあっても、生物の常識は超えない」というのが基本であるモンハンシリーズでは珍しく、「双頭」という通常なら考え難い特性を持ったモンスターだが……?

ちなみにオストガロアそのものとは無関係だが、ハンター大全などに載っている開発段階のイラストでは、ミイラのような双頭のドラゴンの設定イラストを確認できる。

魔神三つ首

電人ザボーガー」に登場した恐竜軍団の支配者。
三つの首を持つ巨大な竜。

Gulool Ja Ja

ファイナルファンタジー11に登場する獣人国家の1つ、マムージャ蕃国の僭主。
マムージャは生物学的にも別種の多様なリザードマン(カエルと半魚人含む)の多民族国家なのだが、
ジャジャは戦士タイプの種族と魔法使いタイプの種族の頭がそれぞれ生えており、しかもそれぞれに独立した意思を持っている。

○○ヘッド・ジョーズシリーズ

アサイラム配給のサメ映画シリーズ。頭がたくさんあるサメが主役。
シリーズを追うごとにダブルヘッド→トリプルヘッド→ファイブヘッド→シックスヘッドと頭の本数が増えていく。*1

サーチマン

ロックマン8の8大ボスの1人。
警備用ロボットの頭を2つにすることで索敵範囲の拡大を図ったが、上下関係ができてしまったようで戦闘時以外は仲が悪くお互いを監視し合っている。
ロックマンエグゼ版は普通のイケメンである。

三頭の騎士

アーサー王伝説に登場する騎士。3つの頭と3つの人格を持っており、口喧嘩は絶えないが最終的にティータイムの前に目の前の奴を殺すことで意見が一致するという、仲が良いんだか悪いんだかよくわからない連中。
三頭の騎士に遭遇した、円卓の騎士の中でも特に勇敢なロビン卿は口喧嘩している最中に勇敢に尻尾を巻いて逃げて行った。
余談だが三頭の騎士もロビン卿も映画「モンティ・パイソン ホーリーグレイル」にしか出てこない。

余談

日本語ではこうした怪物を「3つ首」などと呼んだりするが、もちろん「首だけが複数あって頭や顔が1つしかない」という微妙なデザインの妖怪が日本に居たわけではない。
これはもともと「首」という言葉に「首から上の頭部全体」という意味があったためである。
現代では滅多に頭を首ということはなくなったが、「首を突っ込む」という慣用句などにその名残がある。
首だけを突っ込み、頭を突っ込まないのは至難の業であろう。




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最終更新:2024年04月22日 21:21

*1 クァッドヘッドが飛ばされているが、「ファイブヘッド・ジョーズ」ではまず4つ首のサメが登場しその尾びれが頭に変化することでファイブヘッドジョーズが完成する。