下水道

登録日:2018/05/18 Fri 06:18:08
更新日:2022/01/04 Tue 17:21:15
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下水道とは、排水を処理するための道である。

概要

人類と下水の付き合いは、古代ローマにまでさかのぼる。
だが、上下水道が完備されたのは、ローマのような一部の超巨大都市のみであり、それ以外の多くの国ではなかなか下水は発達してこなかった。

下水が整備されていない時代というのは大変悲惨な状態であった。
有名なのが中世ヨーロッパであり、まともな下水設備など存在していなかったので、市民は おまるに溜まった糞尿を窓から道路に投げ捨てる のが日常であった。
ハイヒールもそんな道路で極力汚れずに歩くために開発されたものであったりする。

ちなみに日本では都市部である江戸でもキチンとした糞尿処理業者がおり、一か所に集めた糞尿を肥料として農村に回すことで循環させていたため、当時としては例外的なほどに清潔な街並みを保っていた。
まあ同時に糞尿由来の肥料を介して病原菌や寄生虫に汚染された農作物が出回る訳だが。
その一方でそのようなシステムが完成されていたこともあってか、西洋式の下水の整備は先進国の中ではかなり遅れている方になっている。

流石にペストを始め、伝染病の猛威に何度も晒されるうちに「汚れた街並みが伝染病の発生の原因になっている」ということが広まったことで、徐々に下水整備が始まるようになってきた。
下水とは、人類の公衆衛生の歴史とも言える存在なのである。

下水の主な機能

  • 上水との用途の区別
地味だがこれが最も重要。例えば川から直接生活用水を取り、川にまた生活排水を流すような生活スタイルだと上流の住民はいいが、下流の住民は綺麗な水が使えなくなる。
また、中世ヨーロッパのように所かまわず糞尿を捨てていては、井戸水にも汚れた水が混ざりやはり伝染病の原因になる。
「上水と下水をキチンと分け、飲むための水と捨てる水が混ざらないようにする」という機能は極めて重要である。

  • 内水排除
都市部に溜まった水を速やかに外部に流出させることで水害を防止する。
大雨などの際に重要になる機能。

  • 環境保全・リサイクル
近年注目されるようになった機能。
汚れた水を好き勝手に放流されるよりは、一か所に集めてしまった方が処理するにもリサイクルするにも都合がいい。

下水道の区別

主に2種類に分類される
  • 合流式下水道
雨水と汚水をまとめて一本の大きな下水道に流してしまうシステム。
まず、メリットは安く済むこと。初期投資が少なくて済むため、昭和30年代には、とにかく下水が整備されていない地域にこのタイプの下水道を普及させることが強く推奨されていた。
デメリットは、管を大きく作らなければならないため、雨が少ない時生活排水の流れる勢いが弱くなり、ゴミが貯まりやすい事(ホースが細く握ると勢いよく流れるように、パイプも細い方が勢いよく流れゴミが貯まりにくい)。
逆に大雨の際は下水処理施設の処理能を越える量の水が流れ込んでしまうため、仕方なく汚水をそのまま川に流さざるを得ないこと(一応大雨で薄まっているから大丈夫……らしい)。
分流式に比べメリットが少ないため、近年は数を減らしている。

  • 分流式下水道
雨水と汚水を流すパイプを別々に整備するシステム。
メリットとデメリットは合流式の逆。つまり、初期投資にお金がかかる代わりに、パイプを細く作れるためゴミが貯まりにくく、大雨の際も汚水を川に流さずに済む。
一部の教科書では、「工事の際に雨水用と汚水用のパイプを取り違える可能性がある」という信じがたいデメリットが挙げられているが、実際に起きた事故である。

下水道の種類

公共下水道

  • 単独公共下水道
市区町村単位で整備、汚水処理及び管理運営行う公共下水道。
  • 流域関連公共下水道
特定の河川、湖沼、港湾周辺において、複数の市区町村の汚水を処理する公共下水道。整備は市区町村単独で行うが、下水処理場は都道府県で管理する。一ヶ所の下水処理場で複数の市区町村の汚水を処理するため、初期投資では単独公共下水道より有利である。市町村合併により、単独公共下水道に移管された地域もある。
  • 特定環境保全公共下水道
人口が比較的多い農漁村部や観光地、湖沼及び国立公園周辺地域の汚水を処理する公共下水道。市区町村単独で管理運営するものと複数の市区町村にまたがる流域関連事業がある。マンホールに「特環」や「特別環境保全下水道」などの刻印があるパターンが多い。
  • 特定公共下水道
主に工業地帯の工場や住居の汚水を処理する公共下水道。工業汚水の割合が3分の2を締める場合に認可される。

下水道類似施設

汚水処理は下水道と同じだか、法律上は浄化槽として扱われる。近年では、コスト削減の一環として一方の処理場を廃止して隣のエリアに統合したり、公共下水道エリアに近い場合は公共下水道側に統合される。希なケースとして、複数のエリアの汚水を処理する新しい処理場を建設して公共下水道に格上げするパターンもある。
  • 農業集落排水施設
人口の少ない農村部で汚水を処理する下水道。
  • 漁業集落排水施設
人口の少ない漁村部で汚水を処理する下水道。
  • 林業集落排水施設
人口の少ない林業地域で汚水を処理する下水道。
以上は農林水産省の指導により整備され、市区町村が管理する。
  • コミュニティープラント
市街地から離れた団地や分譲住宅密集地の汚水を処理する下水道。市区町村が整備と管理を行う。


フィクションでの下水道

現代都市における数少ない「秘境」と言える存在であり、多くの作品で扱われてきたロケーションである。
普段なら全く人の出入りがない上に、内部構造はプロ以外には全く知られてない複雑な迷路と化している。
とにかく「誰かに見つかりたくない」という事情を抱えた様々な誰かさんにとっては、大変ありがたい場所である。
夏涼しく、冬暖かいため、意外と過ごしやすいのも魅力。
また、下水道によってはやたらとカッコイイBGMが流れていたりする。

……さて、ここまで真面目に記事を読んでくれた皆さまに、一つクイズを出そう。

  • Q.あなたは下水道に潜伏しようとしています。その際どのような下水道を選べばよいですか?









  • A.分流式下水道の雨水管

理由は簡単。「合流式はゴミも雨水もまとめて流れ込む」「分流式下水道の汚水管は言わずもがな」。
よって、潜伏するならば最も臭いの少ない雨水管を選ぶのがベスト。長期間潜むつもりなら、なおのこと生活環境が体調に響くのでよく考えよう。
ただし、お住まいの地域によってはそもそも合流式しか選択肢がない可能性もある。
逆にあなたが追う立場になっているなら、雨水管の方が潜んでいる可能性は高いことを覚えておくと得するかもしれない。
ただし分流式雨水管、普通の地域では250mmとか300mmのパイプしか入って無いので、そもそも潜伏出来ない所が多い
1000mmや2000mmクラスになると人口密集値や商業地の大通りのど真ん中なので、深夜でも交通量がさほど落ちない=潜伏のためにマンホールを開けられない所が多数。
やっぱり下水道に潜伏という行為自体がフィクションなのかもしれない。

下水道に潜んでいる愉快な仲間たち

リアル


  • ホームがレスなおじさん

都市伝説

  • 国際スパイ組織

フィクション



  • バンパニーズ



  • おおナメクジ

  • ゲッソー
    • ビリビリゲッソー
    • ジャンボゲッソー





  • 栗井栄太



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最終更新:2022年01月04日 17:21