下請けいじめ

登録日: 2017/09/26 Tue 23:51:57
更新日:2024/02/25 Sun 22:21:52
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「あなたが、買い叩いているのは、この国の未来だ。」
「その品質に、適正な対価を。」

(中小企業庁×『半沢直樹』下請け構造解消啓発ポスターのキャッチコピーを抜粋)

下請けいじめとは、下請けに対して事業者が自分たちの立場をいいことに取引で不当に不利な条件を迫ることである。
下請けいじめは、下請代金支払遅延等防止法、通称「下請法」で禁止されている。
下請けに限らず、商売上優位な地位にある者がその地位を振りかざして不利な条件を飲ませることは、「優越的地位の濫用」として独占禁止法で禁止されている。
下請法は、優越的地位の濫用禁止の下請けバージョンだと思ってよい。


下請けとは?


アニヲタ諸氏が生きていれば、企業と契約する場合が多いだろう。
例えばアニヲタ諸氏がアニメショップに行き、頬ずりしたいアニメショップ限定フィギュアをレジに持って行ってお金を払って持ち帰る買い物。
これも、「売買」という立派な契約だ*1

そこで下請けはどう絡むだろうか。

アニメショップ限定限定フィギュアの買い物で考えてみよう。この場合、もちろんアニヲタ諸氏と契約したのはアニメショップだ。
だが、そのフィギュアを作ったのは大体アニメショップではない。
多くはフィギュアを制作するアニメショップと企業が請け負って作ったものをアニメショップが買い、それをアニメショップが店頭で売っているのだ。
この場合のアニメショップを「親事業者」、フィギュアを作った企業が「下請け」と扱われる。*2
ちなみに、フィギュアの販売なら実際には間に更にメーカーがいる場合が多いのだが、今回は特定のアニメショップ限定フィギュアとして作ってもらうため、あえてアニメショップと制作会社が直接契約をしたものとお考えいただきたい。
関係者が増えると考えにくくなるしね!

下請け企業は、自分たちで作っても、製品を売って仕入れの代金や社員の給与にするまでには更に販路の開拓や宣伝をしなければならない。
下請け企業は技術こそあるが社員数も資本金もわずかな中小企業であることが通例で、販路開拓や宣伝には凄まじい投資をしなければならない。
そんな投資はリスクが大きすぎるし、銀行だってそんなに金は貸してくれないだろう。
しかもそれで肝心の制作がおざなりになっては元も子もない。
それならば、より大きな販路を持っている企業が親事業者となり、その販路を使って売ってくれるというのは下請けにとって決して悪い取引ではない。

親事業者は親事業者で、下請けが持っている売れる商品を買うことで、商品を売ったり、宣伝したりということに集中できる。
下請けを多数抱え、あちこちから買い集めて商品の層を厚くすることで、お客さんを誘引できる。
お客さんは特定の商品目当てにやってくるとは限らず、「何かいいものないかな?」とふらっとやってきたり、特定の商品を目当てにやってきても「あ、これも出てるなら買おうっと」とついでにお買い上げいただいたりということもあるから、層を厚くすることは重要だ。

その場合、親事業者が自分たちで工場を作って人を雇い、作るという方法も考えられるが、制作にも先行投資が必要だし、仮に始めたとしても下請けの持つ技術には敵わない場合が多い。
それなら、下請けにお願いすることで質の良い製品を確保しつつ販路の開拓などに専念することが出来るので、親事業者としても下請けにお願いするというのも悪い取引ではない。

こうして、本来ならば下請けと親事業者はwin-winの関係を築けるのである。


……ところが、現実には親事業者が下請事業者を取引きで虐げてしまうことがある。



なぜ下請けいじめは許されないの?


下請けと親事業者は本来なら前記したようなwin-winの関係を築くことができ、下請けいじめは自分からwin-winを壊す愚かな行為となる。
ところが、現実にはそうならず、親事業者win-下請けlose の関係になってしまう場合が圧倒的に多いのである。

まず、前記した通り下請けは中小企業で、親事業者は少なくとも下請けよりは大きい企業である場合が多い。
中小企業の下請けにとっては、親事業者との取引を失うことは即座に収入源を失い倒産一直線になる死活問題である。
そうならないよう取引先を多数確保しておくことは理想だが、似たような中小企業も多数いる以上、そんな理想を実現できる下請けには限りがある。一社の取引先も確保できず消えていく中小企業だって珍しくないのだから。
親事業者が倒産した結果、その親事業者からの仕事で成り立っていた下請けが連鎖倒産することも多い。

他方の親事業者はどうだろうか。
確かに重要な商品を作っていた下請けを失うのは痛いが、下請けがいなくても代わりの下請けはたくさんいる場合が多い。
また、親事業者は多方面に事業を展開している場合も多い。最悪代わりの下請けが見つからず事業が立ち行かなくなったとしても、他の事業に力を入れれば親事業者はびくともしない。
アニメショップの例ならば、限定フィギュアを売れないのは確かに痛いが、書籍・CD・DVD・その他関連グッズ類を売ればアニメショップが即倒産するというわけではないだろう。

そして、下請けと親事業者の契約交渉も戦いである。
交渉は弱みのある方が負け、強みのある方が勝つ。勝敗の99%は契約交渉以前に決まっている。
これが古今東西交渉における真理である。

そして、「おたくを切っても他に頼めるところはいくらでもあるんだよ」と言える親事業者の強み。
他方で、「ここを切られたら企業の存続も自分の生活も成り立たない……次の仕入れもできない……」と言う下請けの弱み。
これはあまりにも下請けにとって巨大なハンデで、下請けと親事業者の交渉において下請けに勝ち目はほとんど無いと言ってもよい。

勝ち目があるとすれば、下請けが業界に唯一無二で存在感があり替えが効かず、「おたくを切ったら外に頼めない!!」という場合である。
だが、そんな下請けがそうそうある訳がない。例え1位でなくても、2位に変えたところで消費者にその差はほとんど分からない。

「2位ではダメなんですか?」
「1位でもダメなんです」
「ぶっちぎり1位でなければダメなんです」

と言う世界なのだ。そんな下請け、日本にいくつも無いだろう。

もちろん、資本主義経済であるから、下請けがいじめられるのは交渉力が弱くて負けた者の自己責任、交渉に負けてしまってやっていけないなら企業をたたんで社会保障を頼りなさいという考え方もできなくはない。
だが、そんな下請けが作る製品が日本を支え、労働者の7割近い中小企業における労働者の生活を守っている。
彼らが路頭に迷えば、彼らの生活の面倒は社会保障で国が見なければならず、社会的なコストが大幅に増大してしまうことになる。

また、親事業者が、次から次へと下請けをとっかえひっかえしていじめて潰していけば、いずれはその業界全体の担い手がいなくなる。
親事業者は他の事業で儲けていれば困らないが、残された業界はズタボロで消費者は欲しい商品が手に入らない。ぼったくり販売を始める者が現れても、皆ぼったくり商品を買うしかなくなり、ダンピングと同じ事態が発生することになる。

資本主義経済は、大企業を一人勝ちさせるための仕組みではなくて、企業間の競争を通じて社会の利益を模索する仕組みである。
大企業有利になるのはただの結果でしかない。

そんな訳で、下請けいじめで下請けがつぶされるならば、それは、社会の利益を害してしまう。
なので、下請けをいじめるような取引をしてはならず、下請けいじめとして法律で禁止されているのだ。


下請けいじめとはどういう場合か?


「いじめ」と言う言葉が使われるが、セクハラやパワハラのように暴言を吐いたり暴力をふるったりというようないじめは下請けいじめとしては想定されていない。*3
下請けいじめとして下請法で禁止されている行為は、あくまでも取引で下請け不利にすることを想定してのもの。
また、下請法だけでは完全には分かりにくいため、公正取引委員会がさらに細かい通達を出し、「これは下請法のこれに当たるから、下請法違反として扱うよ」ということを説明している。


本来なら「資本主義経済である以上、下請けも自分で交渉で何とかしなさい」というのが基本である。
そのため、下請けとして保護されるのは資本金の額が少ない中小に限られ、業種もサービス業・製造業・修理業・クリエイターに限られる。
具体的な中身は細かく分けられているので、各人で必要に応じて調べて頂くことにしよう。*4

まず、親事業者が下請けを使う場合には、定められた事項をきっちり書いた書類を作って交付する必要がある。
後になって「契約の中身はこうだった」「いやいやこうだった」の争いになれば結局下請けが泣きを見てしまう。そのため、まずはしっかりと書類を作らせる。
そして、必要な書類は後で公正取引委員会が入ったときにきっちり提出させる。
これも守れず、仮に書類が無いという結果になるなら、「それは書類を作らなかった親事業者が悪い」ということにしているのだ。


書類を作るのは当然に守られるべきこととして、下請けいじめとして扱われる行為の主なものは下記の通り。
公正取引委員会が定めている通達の内容はかなり細かいが、全部書いたら大変なことになるので主なものにする。大体が主なものの応用だし。

1.返品する(もちろん代金も払わない)


親「あー注文してたこのフィギュアか。悪いけどもういらないから引き取って」
下「え?何で引き取るんですか?ちゃんと作ったんですが」
親「いやーあのアニメ終わっちゃってさ。そうしたら人気なくなっちゃったんだわ」
下「あの、代金は……」
親「何で受け取らないのに代金払わなきゃいけないの?」
下「そんな!!代金払ってもらわないとうちの社員たちの給料が……限定フィギュアだから他所に売れないし……」
親「あっそう。ならいいよ、おたくとはもう取引しないから」
下「そんなことされたら……分かりました、返品に応じます……」

こんな風に、傷ものだったり、納期に遅れたりした訳でもないのに、せっかく下請けが作った商品を受け取らないことは違法である。
最初から「売れ残ったら買い戻します」と契約に盛り込むのもダメ。
どうしても返品したいなら、きちんと代金を払うのはもちろんのこと、下請けが保管するための倉庫代までしっかり払う必要がある。
結果的に売れない商品を注文してしまった責任は親事業者にある。傷物を納品した訳でもないのに、それを下請けに押しつけてはならないのだ。

ちなみに、下請けは裁判して代金を取ればいい、では済まされないことに注意。
確かに裁判をすれば下請けが勝つだろうが、一時的に代金がもらえても、取り引きを打ち切られると損失がその何倍にもなってしまうのが下請けいじめの恐ろしい所なのだ。

更に言えば下請けに限った問題ではない(こちらに関しては同業他社に対して多い)。
だが、裁判は弁護士の費用・裁判費用などもそれなりにかかる上に、何よりも結果が出るまで時間もかかる。
結果が出るまではうかつに今までの事業が行えなくなったり、その結果赤字運営になり続けたりもする。
そのため、業務妨害を意図して裁判を起こす(※無論馬鹿正直にそんなことを述べるメリットは皆無なので表向きは異なる理由)or起こしても構わないと仕向ける例は枚挙に暇がなく、時には裁判を起こす費用すら工面できないこともある。


2.通常の仕事の対価と比べてあまりにも安い代金で買い叩く。


親「あー注文してたこのフィギュアか。代金は50万円ね。振り込んでおいたから」
下「え?ほかの業者なら同じ仕事で150万円はもらってますよ。うちの製品は質だって劣ってないはずです!」
親「社会貢献が求められる時代なんだよ!!うちはこのフィギュアをチャリティーで使うんだ。お前たち下請けも社会貢献すること覚えろよ!!0円じゃないだけありがたく思えよ!!」
下「そんな!!この金額は酷すぎる!!」
親「あっそう。ならいいよ、おたくとはもう取引しないから」
下「そんなことされたら……分かりました、その金額でいいです……」

あまりに安い値段での買い叩きもダメ。もちろん、契約書を作って金額で合意していてもダメ。
また、書類を作らず金額をあやふやにしておくこともこの手の下請けいじめの温床となるので、書類作成が義務付けられているのだ。
ちなみに、企業の社会貢献を振りかざして下請けのクリエイターを買い叩こうとした担当者は実在するらしいので検索してみよう。


3.一旦発注するが、製品を作るための労力を払ったのに突然発注内容を変更。もちろん追加料金無し。


親「あー注文したフィギュアなんだけど、水着を黒スク水じゃなくて白スク水にしてよ。最近そっちが大人気みたいでさ」
下「え?もう黒スク水仕様で全部作っちゃいましたよ。今から白スク水にしようとすれば、作り直す費用かかります」
親「こっちは注文者なんだよ?仕様変更位応じてよ。書類にだって具体的にスク水の色まで書いてないでしょ」
下「こっちは黒スク水前提であの代金を設定したんですよ。仕入れにも追加作業にもコストかかります。追加費用を出してくれるなら受けますが、なしでは受けられません」
親「あっそう。ならいいよ、おたくとはもう取引しないから」
下「そんなことされたら……分かりました、タダで仕様変更します……」

注文に当たって、作ってみて出来が今一つだったので仕様変更をすることはある程度仕方ない場合もあるのだが、その場合に仕様変更の損害を下請けに押し付けるのは下請けいじめとされる。


4.「ウチの仕事をやるならウチの指定した商品を買った上でやれ」ということで、商品を買わせる。


親「いやー今うちでタイアップキャンペーンやってて、カップラーメン大量に仕入れたんだけど、どうもしくじって売れ残っちゃったんだよね……買ってくんない?」
下「え?うちはフィギュア制作会社ですよ。カップ麺なんて買っても使い道無いですよ」
親「君の従業員に食べてもらえばいいじゃない」
下「うちの従業員はみんな愛妻弁当もってきてますよ」
親「カップラーメン買わないリア充との取引は打ち切ってやるぅぅぅぅ!!」
下「そんなことされたら……分かりました、買います、買いますから……」

商品を買わせるタイプの下請けいじめもあり、禁止されている。
発注したその製品を作るのに親事業者の持っているものを使わなければならないケース(タイアップキャンペーンのロゴなど)などは買わせてもいいということになっているが、その場合も下請けに損をさせないよう注意しなければならない。
また、商品を買えという形ではなくうちの仕事を手伝え、と言うタイプもあるが、これも下請けいじめとされる。


5.下請けいじめの告発をしたら報復する


親「君の会社、うちを公正取引委員会に通報したね?」
下「ナンノコトデスカー」
親「とぼけるな。君の会社との取引条件が問題にされて公正取引委員会にうちは下請けいじめをする企業だと公表されてしまった。うちに損害を与えるような会社との取引は打ち切ってやる!!」
下「そんなぁ……これじゃ通報しない方がまだマシだった……」

嫌がらせ目的でインチキの通報をした場合ならともかく、本当に違反していることを通報されたことへの報復として取引の打ち切りなどが許されてしまったら、下請けは皆が怖くて通報できなくなってしまう。
通報への報復は絶対に許されないのだ。
ちなみに通報があったとしても公正取引委員会はバレないように調査をすることになっている。


最後に全体に通じる重要なこととして、これらは下請けが契約に同意していても下請けいじめになると言うことに注意が必要である。
下請けが同意してないなら契約は成立していないし、同意していないのに契約書に判をつかせたり金を払わせたりするのは下請けいじめよりさらに重大な詐欺や恐喝である。
下請けが立場が弱い故に同意せざるを得ない場合が多いから下請けいじめが取り締まられるのであって、同意していたらよし、というのでは下請けいじめを取り締まる意味が無いからだ。


下請けいじめをすると……


下請けいじめをする親事業者には、公正取引委員会から

これ以上下請けをいじめるな。既に下請けに出した要求は引っ込めなさい。飲ませてしまった要求はすぐに代金を払い直すなどして元に戻しなさい

と指導する。

下請けいじめかどうかの判断は後述する通り決して簡単ではない。
親事業者もちょっと勇み足をしてしまったくらいならば、公正取引委員会に「それは間違いですよ」と叱られてその上で態度を改めてもらうのが一番平和である。
下請けも、そういった態度を改めてくれさえすれば、このまま親事業者とのお付き合いを続けたい場合も少なくないはずだ。
公正取引委員会も、よほど酷くなければまずは指導をした上で、その企業が自主的に直すのに期待する。

だが、あまりにも酷かったり、指導にも従わなかったりすれば勧告される。
さらに、2004年以降は下請けいじめで勧告された企業は公正取引委員会から「この企業は下請けいじめをしました!!」公表できるようになった。
公表することで、別の下請けは下請けいじめをするような企業との取引を控え、身を守ることができるのだ。

なお、下請けいじめは処罰もあり得るのだが、罰金しか無い上に額は最大でも50万円。下請けいじめの利益を全部奪い取ることもできない金額でしかなく、公表の方が効果はある。*5

また、下請けいじめは下請けが泣き寝入りしがちになるため、公正取引委員会と中小企業庁が定期的に抜き打ち検査をしたり(検査拒否は罰金)、下請けになる中小企業には「被害に遭っていませんか?」と質問の手紙が来たりすることもある。
公正取引委員会としては、通報があった場合も抜き打ち検査に偽装して通報があったことを誤魔化し、通報した中小を守ることもできるというわけ。


しかし……


この下請法、言っては何だが現実に守っていない企業が少なくない

下請法違反で公正取引委員会から勧告・指導を受けた企業は、2016年度で6302件。
多くの件は公正取引委員会の抜き打ち調査で発覚している。下請けが泣き寝入りして公正取引委員会に届いていないケースも相当多いものと考えられ、6302件も実際には氷山の一角の可能性が高い。*6
しかも、中には一度公正取引委員会に下請けいじめを公表されながら、たった2年で性懲りもなく似たような下請けいじめをやった大企業さえある。

というのも、企業の間で価格交渉をすることは決して悪いことではない。交渉すら許さないのでは社会主義である。
交渉を許さないのでは、下請けがどんな質の悪い物を作っても常に同じ価格が保障されることになり、下請けにはやさしいが代わりに質が落ちてしまったり、下請けの開発意欲を阻害したりすることもあり得る。
下請けがいい親事業者を探すためによい製品を開発し「ウチの方がいいですよ」と親事業者に売り込むのが本来の姿だ。

その意味で、どこからどこまでが下請けいじめでどこからが正当な交渉の結果かについては境目が難しい。

また、この項目を読むまで下請法や、その具体的な中身を知っていた人たちはどれくらいいるだろうか?
下請けいじめと聞いて、セクハラやパワハラが頭に浮かんでいたのではないだろうか?
下請けいじめは、された方もそんなものと思いやすいし、している側も悪いことをしていると思わないことが多い。

下請けいじめが通報され、公正取引委員会の調査が入って「下請けいじめってルール違反なの?」と言ったり、「下請けいじめと言うけど人聞きの悪い。正当に取引してるだけだよ」と全く悪びれもせずに担当者が話してしまったりする例は、後を絶たない。
親事業者の担当者が仕事熱心であれば、何とかして仕入れを安くしたり高く売ったりと成果を上げようと考えるのは当たり前。
そこで下請法を知らなければ、下請けいじめの何が悪いのか解らないことすらしばしばなのだ。

また、大企業では担当者の判断を一々上層部に上げるのも効率的、現実的でないため、いろいろなことが担当者の判断に一任される。
実情を知らない社長が数字を見てよく頑張ったと担当者を誉め、後になって担当者の下請けいじめが発覚して上層部が愕然とする、ということもある。

親事業者の中には、「弊社の担当者が下請けいじめをやらかしてしまいました……」と公正取引委員会に自発的に違反を申告する例もある。

1.自主的に申告する。
2.下請けに出した要求はすぐに取下げ、既に飲ませてしまった要求についてはしっかり金銭を払うなどして償う。もちろん取引打ち切りなんて論外。
3.繰り返さない。
4.担当者を懲戒処分・配置転換したり、他の担当者に対しても研修を行ったりするなど、再発防止策を取る。
5.公正取引委員会の調査にも全面的に協力する。

これらを満たした場合には、公正取引委員会もあえて勧告や公表まではしない。
親事業者としても、社内で担当者を叱ったりするだけでなく、公正取引委員会に出てきてもらうことで、「下請けいじめは社長に叱られるどころではなく、公になり処罰されるようなことなのだ」と周知し、社内を引き締めることにつながるのだ。下請けいじめもそれによってなくなるのであれば、一旦下請けいじめをしてしまった後としては三方丸く収まる。

他方で、不始末をしてしまっても、それを隠したりせず公明正大にやろうという健全な企業でも個々の担当者に対しての指導が行き届かず、下請けいじめをやってしまう場合があるということでもある。

下請けの皆さんや、下請けとの交渉を担当する方々は、くれぐれも下請けいじめにご用心……


「追記・修正するの?時給100円でやってよ」
「そんな?最低賃金以下じゃないですか!!」
「あっそう。じゃあいいよ、項目建てないから。」
「そんなあ……分かりました、追記修正します……」

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最終更新:2024年02月25日 22:21

*1 厳密にいうと「現実売買」と言う契約になるが、「売買」だと思って問題ない。

*2 実際には、下請けにさらに下請けがいる場合も多く、その場合「孫請け」「二次下請け」等と呼ぶ。さらに次がいれば「曾孫受け」「三次下請け」となる。

*3 もちろんそういったいじめなら下請けに対してやっていいわけではない。普通の民法・刑法などに従って損害賠償を払ったり、処罰されたりする。

*4 なお、下請法の対象外でも、下請法以外の法律で同法同様の下請け保護をしている例もある。

*5 法人を懲役刑にすることができないので罰金しかないという面がある。それにしてもこの金額は安い気がするが……。なお、暴力や脅迫で要求をのませた場合には恐喝罪や強要罪などで担当者が懲役刑になることがある。

*6 公正取引委員会と中小企業庁が力を入れたため、これでも発覚した件数はかなり増えている。