リック・フレアー

登録日:2012/05/25 (金) 23:50:05
更新日:2024/03/15 Fri 13:57:01
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「Woooooooo!」


◆リック・フレアー

「リック・フレアー(Rich Frair)」は米国の元プロレスラー。
08年に引退したが、米マット界の重鎮として引退後も古巣WWEやTNAに登場している。
81年に業界最高峰のNWA世界王者を奪取。
各地方毎にプロモーターがプロレス興業を行い収益を得ていた古い時代と、
80年代以降の課金制のTV放送で収益を得る新しい時代を繋ぐチャンピオンとして80年代には全日本プロレスに、90年代には新日本プロレスに来日していた。
ニックネームは往年のNWA世界王者バディ・ロジャースから引き継いだ“野生児(ネイチャーボーイ)”で、縮めて「ネイチ」と呼ばれていたのをWWEファンなら覚えている筈。
他、本国では“業界一汚い男”のニックネームも使われるが、
日本では全日本プロレスに参戦していた時期に付けられた“狂乱の貴公子(ヅラの元ネタ)”の通り名の方が馴染み深いであろう。
2008年、引退前日に個人としてまた現役選手としては初となるWWE殿堂入りを果たす。
2012年にはNWA時代に一世を風靡した伝説のユニットであるフォー・ホースメンとして史上初となる2度目の殿堂入りを果たす。*1

【プロフィール】


リングネーム:リック・フレアー
本名:リチャード・モーガン・フレイアー
通称:野生児、業界一汚い男、狂乱の貴公子
身長:185cm
体重:110kg
誕生日:1949年2月25日
出身地:アメリカ合衆国テネシー州メンフィス
スポーツ歴:レスリング、アメリカンフットボール
代表的入場曲:ツァラトゥストラはかく語りき、ギャラクシーエクスプレス(NWA世界王者のテーマ)


【人物】


プロレス史上最高の名人とも讃えられる、近代プロレス最高のテクニシャンの一人。
72年にAWAの帝王バーン・ガニアの指導を受けてデビュー。
08年に選手としては引退。

「ホウキと試合が出来る(※つまり、相手が棒きれでも試合出来る)」と評される究極的なレスラーの境地を地で行く人物であり、攻めても受けても試合を成立させてしまう。
天才と呼ばれる武藤敬司をして「自分のスタイルの源流」と語る名人であり、
何と50代に入ってから移籍したWWEでも若い選手を相手に元気に試合をしていたのを覚えているファンも多いと思われる。

古い世代のファンからはTV進出に伴うプロレスの更なるショーマンシップ化に手を貸した裏切り者として厳しい目を向けられていた時期もあったが、
先日WWE殿堂入りを果たした4ホースメンを始め(※個人としても08年に現役のまま殿堂入り)、
自らTV用のギミックを考案しつつも伝統的なレスリングスタイルを守って来たのがフレアーであり、
その高い技術は現役生活最後を過ごしたWWEに於いて、トリプルHランディ・オートンらに引き継がれたと言われている。

「負けそうで負けない」「9割攻められて最後に狡い手で勝つ」……といった悪役世界王者の伝統を引き継いだファイトスタイルを変わらずに続けている為、
レスリングのスタイルが立体的でスピーディーで大技を連発するスタイルに変わっていった80年代~90年代の日本マット界では、
フレアーの強さや巧さは一部の玄人にしか理解されなかったが、
00年代以降はWWEを初めとしたアメリカンプロレスが日本でも流行した事で漸くフレアーの強さや巧さが20年越しに日本にも伝わった。

フレアー自身はファンの反応はともかく、日本マット界に愛着を抱き続けており、日本マット界史上最強を謳われたジャンボ鶴田と引き分けた事を自慢気に語っている他、
アントニオ猪木が多大なリスクを背負って敢行した今とは比べ物にならない位に情報が閉ざされていた94年当時の北朝鮮での新日本プロレス興業のメインにて、
アメリカ人にもかかわらず猪木とのメインイベントでの一騎打ちに臨んでいる。

WWE人気の最中に日本公演の一員として来日した際には、リング上から日本でのライバルとして、
ジャンボ鶴田、天龍源一郎、ブルーザー・ブロディ、スタン・ハンセン、テリー・ファンク、ハーリー・レイス、アントニオ猪木、長州力、蝶野正洋、藤波辰爾、ジャイアント馬場、
ザ・グレート・ムタ(武藤敬司)ら12選手の名前を挙げ、来場していた武藤とは直接握手を交わしている。

武藤とは来日した際に食事を共にしている他(同席した小島聡はWWEトップのトリプルH夫妻まで一緒に付いて来て驚いたらしい)、
新日本プロレスがライバルのTNAと提携を結んでいる時代にもかかわらずに来場した蝶野に軽く関節を決めるなどじゃれついて来た上に取材陣まで纏めて顔パスで通してしまう等、
面倒見の良さを見せている。

前述の様に選手としては08年の「レッスルマニア24」にて負けたら引退のギミックによる引退ロードの締めくくりとして、
ショーン・マイケルズとの達人対決で最高の試合を組み立てた上で引退……しているのだが、
本人としては日本でも引退試合をしたいとの希望があるらしく、武藤か蝶野と戦いたいとの願望を漏らしてもいたが権利の問題からか未だに実現出来ていない。
というか普通にTNAで復帰して試合をしていたが現在ではなかった事にされている。

※フレアーがクールでハンサムで情けない位に小狡い伝統的な悪役王者スタイルのチャンピオンなのに対し、
同時代のハルク・ホーガンはデカくて強い大男のベビーフェイスと云うニューヨークスタイルのチャンピオンと呼ばれる。
(蝶野正洋は最終的にレスラーは全員がこの2パターンに分類出来ると語っている)

息子や娘もプロレスラーとしてデビューしている。
中でも「シャーロット」のリングネームで活動しているアシュリー・フレアーは抜群のスタイルに加え恵まれた身体能力と親譲りのテクニックを持つ。
ただし顔が親父そっくり。
トップディーヴァの一人として、サシャ・バンクスなどと共に女子初のメインイベントやヘル・イン・ア・セルをこなすほどの活躍を見せている。
フレアー自身も、ヒールターンしかつての自分のような卑劣なファイトをするようになったシャーロットのセコンドとして顔を出すようになる。
特に16年5月に開催されたPPVにてシャーロットとナタリヤが対戦した際は、事前にレフェリーを買収、試合の終盤でシャーロットが本来ナタリヤの技であるはずのシャープシューターをナタリヤに放ったのを見計らって、ナタリヤがタップしていないにもかかわらずゴングを鳴らさせる、というナタリヤのセコンドについていたブレット・ハートにとって悪夢のモントリオール事件の再現までやっている。*2
その後はギミック上シャーロットと絶縁、シャーロットのフェイスターンや自身の病気の悪化により、ストーリーからフェードアウトした。
後に和解したようで、20年にシャーロットがアスカとタッグを組んだ際にはセコンドとして出演している。
かと思いきや、21年に突如シャーロットのライバルであるレイシー・エヴァンスと結託してシャーロットを妨害、怒ったシャーロットと親子喧嘩を展開している。
2021年8月3日、WWEに契約解除を申し出て契約を解除。上記のレイシー・エヴァンスとのストーリーを演じる不満があることを予てより公言していたこともあり、自身のキャリアやブランドのことも考えて契約を終わらせることにしたとのこと。普段なら「今後のキャリアの幸せを…」的な文言を付けるWWEがそれを付けなかったため、一部のファンが「闇が深い案件なのでは?」とざわついた。

【得意技】


◆逆水平チョップ
この技を米マットに根付かせた立役者。
若手時代のライバルであるリッキー・スティムボートやジミー・スヌーカとの戦いから使用する様になった。
炸裂音が凄い。
米マットでは現在でもフレアーへのリスペクトから逆水平チョップが出る度に「Wooooo!」の掛け声が入る。

◆ブレーンバスター
ハーリー・レイスの型を踏襲した滞空時間の長いバーティカル式。
若い頃には垂直に落とす場合もあったらしい。

◆バックドロップ
滞空時間の長い抱え式で、見事なバランスで抱え上げた後で踊るようにマットに倒れ込む。

◆Oh…ノ~
相手の攻撃でダメージを負ったとアピールし、隙を誘う。

◆金的
◆目潰し
↑のアクションで相手が不用意に近づいて来た場合に繰り出し逆転する。
ここから丸め込んで勝ちを奪う場合もある。

◆ニードロップ
※レイスニーとも。
ゆったりした動きながら的確に相手の額や関節に膝を落とす。
ハーリー・レイスの得意技をパクった物でリングの対角線を鮮やかに舞う様に落とすムーヴも定番だった。
現在では更にトリプルHが引き継いで使っている。

◆フレアーウォーク
主に相手を挑発するのに使用される独特のステップ。
実はこれもバディ・ロジャースからのパクりだったり。
「Wooooooo!」

◆顔面受け身
相手の攻撃でダメージを受け、顔面から地面に突っ込む。
リングは勿論、コンクリートでもやる。
どう考えても怪我しそうなのにワザと倒れこんでいるので本人は無傷……スゲェ!

◆コーナーポストから投げられる
相手がダウンしたらコーナーに上がる→相手が起き上がる→デッドリードライブで投げられる……のコンボの事。
TV中継無しだとディック・マードックよろしく半ケツで飛ぶ。
フレアーの受け身は完璧に近いのでダメージはなし。
※75年に搭乗していたセスナ機が墜落すると云う事故に巻き込まれており、その時の後遺症から真っ直ぐに受け身が取れなくなったとも言われているが素人目には全く分からない。

◆ニークラッシャー
相手の脇の下に頭を差し入れ、相手の片膝を担いで持ち上げてから、落下と共に自分の膝に相手の膝をぶつける古典的な足殺し技。
ニードロップや踏みつけ、コーナーポストや鉄柵を利用した足殺し技のレパートリーの一つで、ここから足四の字固めに繋ぐのが必殺パターン。

◆足四の字固め
昔のプロレスごっこの定番技だが、実はプロレス最強の拷問技として名高い。
バディ・ロジャースやジャック・ブリスコら歴代世界王者が必殺技として来た技であり、
武藤敬司のエグいまでの足殺しからの四の字固めと云うパターンもフレアーにインスパイアされて使用する様になった技との事。

◆丸め込み
現在ではクイックとも呼ばれる、スモールパッケージホールドや逆さ押さえ込みやスクールボーイの総称。
実は一番フィニッシュになる確率が高い。


【余談】


  • トレードマークの金髪は流血戦を得意としていた若手時代に、真っ赤な血が生える様にと自ら染めたのが始まり。……正に狂乱の貴公子!

  • 所謂「スター人格」であり、キャラ同様に金遣いの荒さもとにかく桁外れレベル。
    NWA王者時代に全日本プロレスに来日した際、試合後、
    同僚の外人レスラー、全日の若手レスラー、ジョー樋口などのレフェリー、リングアナ、居残っていた営業や裏方までを引き連れて、
    赤坂の高級クラブに飲みに出かけ、全てフレアーの奢りということで全員遠慮なく飲み食いしまくった結果、
    請求額はなんと300万円(現在で言うと3000万円)以上に登ったとされる。
    勿論ギャラからはさっぴかれ、ジャイアント馬場からも「流石にやりすぎだ」と窘められたとか。

  • これには浪費癖に加えて「自分はトップ、世界王者なのだから自分より稼ぎの少ないレスラーや裏方達に酒や食事くらい奢るくらいは当然
    というプロフェッショナルな哲学に基づく物であった。
    (武藤やカブキも語っているが、当時のアメリカのプロレス興業のギャラは興行収入のパーセンテージ支払いであった為、
    フレアーのような観客動員が見込めるトップの選手はギャラが天文学的になる一方、前座の選手は動員数が低いと最低保証しかもらえない事が当然であった)
    豪勢な金遣いで知られる天龍源一郎も、「彼のファイトスタイルは正直好きではなかったが、フレアーの振る舞い・態度には学ぶことが多かった」と公言している。
    • 「誰であっても同業者のレスラーに対して常に敬意を払ってたし、自分がトップだから、稼げないレスラーには必ずご馳走するっていうのが徹底してる人だった」
    • 「トップになれは、普通なら誰かの車に乗っていくのが普通なんだけど、必ず自分が運転して食事やビールを振るまうっていう。
      俺にとっちや聖人の様なリスペクトする人だったよ。
      俺みたいなガキでも、自分の車に乗せて4時間も5時間も代わらずに自分でずっと運転して『腹減ってないか?』ってシュリンプ・カクテルとビールを買って。
      もしも俺の中に違う人格があるとしたら、それはフレアーから得た事だと思うね」
    • 「フレアーには『プロとは…』というのを身をもって教えられた。それから『トップは優しくあれ』というのをね。
      誰に対しても気配り、目配りだよ。フレアーがどんなレスラーに対しても呼び捨てにしたのを聞いたことない。あれが彼の偉いところよ」
      と大絶賛している。


追記・修正……Wooooooooooooooooo!

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最終更新:2024年03月15日 13:57

*1 この時フレアーはライバル団体TNAに所属していたが、WWEとTNAの取引により円満に参加をする事が出来た。見返りにTNAには当時WWEに所属していたクリスチャンが特例で出場した

*2 当然憤慨したブレットは試合終了直後にフレアーを攻撃、ナタリヤと共にフレアーを救出しようとしたシャーロット共々シャープシューターでお仕置きしている