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更新日:2024/04/19 Fri 09:19:01
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とは、刀剣類の様式の1つであり、刀身の片側のみに斬撃用の刃先を備えた、いわゆる片刃の刀剣を指す*1

また、日本刀の通称でもあるが、特に漫画やアニメ、ゲーム、ライトノベル等のサブカルチャー上においては、「刀」といえばほぼ日本刀のことであり、特に打刀*2のみを表すといってもよい状態である。

日本刀っぽくない片刃の刀剣類は、サブカルチャーやネット上では「片刃剣・片刃の剣・片刃刀」と表現される。


目次

1)武器としての刀

定義はガバガバ

中国における柳葉刀、西洋の騎兵刀(サーベル)など、刀という文字を当てる刀剣はあるが、
(ネットやサブカルチャー上では)ただ単に「カタナ」と発音した場合は「日本刀」を指すと思ってほぼ問題ない。

しばしば、片刃の刀剣類を「刀」に、諸刃のタイプを「」に分類する事があるが、
これは中国大陸における「刀」と「剣」の分類・定義を基準としたものである。
このような分類法は、主に真面目な感じの解説書や辞書的な書籍で使用されることが多く、逆に漫画やゲームではあまり使用されない。

だが片刃でも切っ先のみが諸刃だったり、諸刃でも湾曲しているもの等、上記の定義にあわない場合も多く、
ここらの分類はやや曖昧である。

刃の形状としては湾曲している「湾刀/曲刀」と、真っ直ぐな「直刀」とがある。
諸刃である「剣」と比べて刃を片側のみにしか設けないため、強度と切れ味が両立しやすく、量産性も高かった*3
例として中世ヨーロッパの貧乏兵士たちはファルシオンやスクラマサクスと呼ばれるのような直刀を好んで使ったし、古代から中世にかけてなど世界有数の大国が出現しやすかったアジア地域ではかなり早期の段階で刀が主流になっている。

湾刀の反り

刀身が反り返っている湾刀は刀の形式の代表格である。この反りは切断力強化のため*4であり、ある程度の技術があってその真価を発揮するものが多いといわれる。
とは言え鋼(鉄)の塊には変わりないので、思い切り振って人体に当たった場合、十中八九重体あるいは死ぬことになる。
ぶっちゃけ刀で有効打を与えられない程に腕力がない場合は、むしろ他の剣(細剣を除く)を使っても満足な戦果は得難いだろう。
ただし大振りだと実戦的ではなく、武器などで防がれた場合や態勢が崩れても満足に振れるかどうかなどを考えると、やはり刀でも他の多くの剣と同様に腕力が必要となる。

更に実戦では鎧や甲冑(材質の違いなど質や性質は千差万別)やらを纏っている者も一定数いるため、そう簡単にはいかない。

頑丈さと切れ味の関係性

尤も刀においては真価と言える切れ味を発揮できるかも大切だったが、それ以上に強度や操作性の方がはるかに重要な要素だった。
というのも、刀剣類に限らず、白兵戦で使用する武器の殺傷力を担保しているのは耐久性と操作性であり、簡単に壊れてしまうようなものは相手にダメージを与えにくくなってしまうし、継戦能力が悪くなる。また操作性が悪ければ殺傷力を発揮できないからだ。

誤った知識・偏見の一つに、「刀(特に日本刀)は切れ味重視で耐久性はあまり重要視してなかった」というものがある。
戦乱期に作られていたモノは耐久性を重視し、肉厚に作られており、「蛤刃」と呼ばれる鉈や斧に近い形式の刃先を備えていたり、
焼入れ焼戻しなどの強度に直結する熱処理にも工夫を入れていた。

というのも人体というのは意外と丈夫であるのと同時に、日本の刀であれ、海外の刀であれ、包丁やメスよりもに近い乱暴な斬り方をしたからでもあるし、
かつ戦闘では人間の限界で刃筋*5を立て続けることが困難であるがゆえに、刀身に強い負荷がかかりやすかったためでもある。

刀にとって刀身の頑丈さと切れ味は、車の両輪の関係にあると言っても過言ではないのだ。

このような誤解が広まった原因の一つとして、戦乱が落ち着いた江戸時代中期以降、名刀の基準として"美しさ"や"巻藁に対する切れ味"が重要視される傾向が強まったというのもある。(要は日本刀に対する偏見に、刀全体が引きずられている)

また『鉈の重さに剃刀の切れ味』という謳い文句や幕末及び日中戦争時の日本刀の使用感に関する記録が、情報の切り取りで一人歩きをし、大元とは異なる逸話が拡散されていったことで先述のイメージが形成されていったことも要因の一つであるし、何かと比較対照になる諸外国の刀剣類は具体的な大きさ・重さ・使い方が分かっても、肝心の実戦での使用感や耐久性が全くといって良いほど情報が少なく、出所不明の知識で双方いずれかを過大/過小視される不公平さもこの事に拍車をかけている。

とはいえ、打ち合い、斬り結びつつ鍔迫り合いや敵の刃を受け流したりしているとすぐに刃はガタガタになるはずである。甲冑の上から斬り付けるのも同様*6
「それならしなけりゃいいじゃん」とか思うかもしれないが、そういう行動を取れないと死ぬような事態はぶっちゃけ多いだろう。達人ならば回数を少なく出来ると思われるが、達人そのものが半分イレギュラーであり、あまり考慮すべきではない。

それと流石にスパスパと何人(あるいは十何人)も連続で斬れるものではなく、そもそも相手は棒立ちして殺されるのを待っているわけではなく、自分と同じように武装し死に物狂いで襲いかかってくる上、実力が格下或いは互角という保証はどこにもないという視点が抜けがちである*7。なので戦場では途中から鈍器として振るわれたりしたともされているが定かではない。
また、上手く肉だけを斬れればそうそう刃毀れはしないが、実際のところは骨を断たない(叩かない)なんて余裕をかますなんて無理。

刀の柄

柄(え、つか)というのは刀身と比べて目立たない要素であるが、扱いやすさにつながる部分である。
刀によって柄の構造は異なるが、日本刀の場合は日本刀太刀を参照すると良いだろう。

日本以外では、刀身とは逆方向に伸びた中子(茎)に木片などのパーツを取り付けて柄としたものが多く、日本刀やと比べれば簡素なことも多い。ヨーロッパの刀はファルシオンのように柄の端にポメルと呼ばれる滑り止めを兼ねた重りを取り付けて振り回しやすくしたり、サーベルのように持つ手を保護する覆い型の鍔が設けられたりするが、単に包丁のように木片で中子を挟むだけの場合もある。中東などで使用されたシミターは木片で中子を挟むだけのものが多い。

重心

重心は物体にかかる重力の中心点である。例えば鉄の単管の場合はその中央に存在し、指先などの細い点で支えたときシーソーのように釣り合う箇所でもある。
刀剣に限らないが、振り回しやすさや威力に直結する大切な要素でもある。簡単にいえば、重心が柄に近ければ近いほど、手に感じる重量が軽くなり、反対に離れれば離れるほど重く感じられ、振るうのが大変になってしまい、同じ重さでも扱いやすさが変わる。
ただ、柄に近ければよいわけではなく、柄に近すぎると切り付けた時の威力が落ちたり、刀身がブレやすくなったりするという欠点もあり、用途に応じたバランスが重要だった。

刀によって重心の位置には異なり、例えばファルシオンやバックソードの重心は鍔から、だいたい10cm離れた所が重心になるように設計されていることが多い。これはサーベル以外の西洋剣も同様である。
その他の例として中東アラブ地域で使われるシミターは鍔から、だいたい20cm前後ほど離れていることが多く、ヨーロッパのファルシオンなどと比べて威力重視の構造になっている。

刀の用途


ネット上でたまによくある槍や薙刀などの長柄武器を相手にする場合、乱戦や室内戦でもない限り、長柄武器以外の近接武器が長柄武器に勝つのはかなり厳しい。これは日本に限らず古今東西の常識である。(弓矢やマスケット銃といった飛び道具の場合もだいたい同じ。)

…というお話は知られていないようで、意外とよく知られている。

なら我々が思い浮かべる長さの刀はどう使われていたかと言うと、常に身に着けていられるので、乱戦や室内戦あるいは追撃戦、武器そのものの破損等の理由から長柄武器が使えなくなった場合を想定した予備の武器として扱われていたというのが、代表的に挙げられる。

しかし、刀の用途は甲冑を着込んだ戦場だけではない。中世から近世にかけて刀は日常の護身用、そして喧嘩と強盗の凶器であったという点は、どうしても見落とされがちである。護身用と聞くと戦争用の武器よりもショボく見える人も多いかもしれないが、合戦が多かった時代というのは治安もすさまじく悪く、強盗や刃物を使った喧嘩は当たり前であり、平時であっても安心できなかった。

「武器は戦争でのみ使う」/「日常生活で殺し合いは滅多に起こらない」という考えは平和に慣れた現代日本人的な考え方であり、過去について調べたり考察したりする際にどうしても現代の基準で物事を判断しがちである。

現代とは価値観や環境が異なる、過酷な時代ゆえに、自分の命よりプライドを重視する人が多く、気にくわないことがあれば暴力を振ったとされる*8。なので少しでも金がある者は身分に関係なく、護身用や喧嘩用の意味合いを込めて、短刀や刀剣類を携帯するのは中世では珍しいことではなかった(むしろ使い方としてはこれがメインといえるかもしれない)。

完全に余談になるが、これが戦国時代の後半頃になると、平民の間で短刀や刀剣を携帯する事が成人の証またはステータスシンボルとなり、更に戦国時代末期に行われた身分統制の政策によって、初めて「刀が武士のシンボル」という認識が生まれはじめるようになっていくがそれは日本刀の項に譲ろう。


外国において刀はマチェットのような日常生活の道具と兼用されているケースが多く、用途のバリエーションが多い。海賊の下級構成員でもある水夫達がカットラスという湾刀を愛用していたり、モンゴルの影響から馬上の武器としてサーベルが流行ったり、として農業で使われたり、平時の護身だったり、工兵が作業用として所持したりと、
同じ刀の括りで見ても、「平時の護身用か強盗・喧嘩の道具でもある」という共通項はあるものの文化や世情に応じて色々な形態になったり使われ方をしている。


いろんな刀


主な刀へのカテゴリは以下のとおり。

日本刀

手首のスナップを利かせて相手をたたっ斬る接近戦全世界最強(らしい)の日本の武器。実際斬る以外にも突く、叩くなど、攻撃パターンは多種多様。
刀カテゴリの中ではかなり珍しい両手武器であり、運用においては数多くの構えが存在する。片手でも居合い二刀流などの構えが存在する。
日本では平安時代前期辺りまでは剣は実用武器であったのだが蕨手刀をベースにした「太刀」が主流になり「剣」は祭礼儀式用品の「祭器」になったので
最終的には欧州などの様に「剣」と「刀」の語としての扱いは曖昧になっている。
本来日本の刀剣操術は「刀術」が成り立ちや語としては正しいけど一般的には「剣術」だし、木刀を「木剣」と一部流派で称したりetc。
また、日本刀は西洋刀剣の様に両刃ではないので、峰で相手の剣戟を弾いたり、弧を描くその刃で受け流したりできた。
登場以後、太刀や打刀の様な戦場の武器としてだけでなく、忍刀のような仕込み武器から脇差のような護身用まで、多くの人間に親しまれてきた。
名刀として名高いものを業物と呼び、それらには製作者の銘が付けられていることが多い。
正宗、村雨、村正、備前長船、虎鉄など、FFシリーズなどで聞いたことがある物のほか、雪走、子烏丸など、色々な銘がある。
自分の好きな武将の刀を調べてみるのもまた一興だろう。

○太刀

「たち」と読む。
五月人形やお内裏様が腰に付けているアレ。
諸説あるが一般的には東北に住んでいた蝦夷という民族が使っていたとされる「蕨手刀」をもとにして作られたとされ、騎馬戦を考慮してそれまでの刀身が真っ直ぐな直刀から、刀身に反りをもうけた湾刀代わったと解説されることが多い。*9戦国時代までは、「剣」や「利刃」などとならんで当時の日本における、「刀剣類」を表す単語のひとつだった。
打刀と混同されやすい。打刀との最大の違いは携帯方式とそれによる外装の違いである。太刀は刃を下にして腰帯から紐で鞘ごと吊るすため紐を通すワッカが二つついているのに対し、打刀は腰帯に(刃を上に向けて)直接差すため、ワッカが無くその代わり、鞘から刀身を抜くときに鞘ごと抜けないようにフックが付いていることが多かった。

○打刀

「うちがたな」と読む。
ステレオタイプのサムライソード。暴れん坊将軍とかが腰に身に付けているアレの長い方
鐔付きの短刀を長寸化させたもの。一般的には西暦1337~1392年に起きた南北朝の乱の頃に生まれたと解説されることが多いが、ジャンルとしては西暦1100年代から存在する。
打刀は通称「刀」と呼ばれることが多いが、これは大元となった短刀のことを戦国時代までは、「刀(かたな)」と呼称していた頃の名残である。
太刀とは混同されやすく、その違いについて刀身の反り具合や刃渡り、使用法などがあげられることも多いが、それはあくまで傾向であって、太刀との最大の違いは、携帯方式とそれに伴う、外装の違いである。

○脇差

「わきざし」と読む。打刀の短いバージョンと思えばいい。
歴史的な打刀との関係性は長いか大きいかの違いであり、もともと「打刀」という同じジャンルの刃物だった。
現代で言うところのナイフに相当する刃物だが、刀身の長さは一般的な牛刀や剣鉈の1.5倍~2倍以上程度であり、
ナイフとしてはかなり大型で、英語圏ではショートソードに分類される。

○中国刀

中国は古来より様々な民族を取り入れてきた歴史があり、また日本よりも遥かに広大であるため様々なタイプの刀が存在していた。日本刀とは異なり、片手で用いるものが主流だが、一応両手で使用する大型の刀や双刀タイプもなくはなかった。
近世までの歴代の中華王朝は、文明の最先端地のひとつであり、国の規模や力は日本やヨーロッパとは比べ物にならないほどに大きく、抱えている正規兵の規模も巨大だった。
その需要を賄うため、製造方法も量産のしやすさ、そして頑丈さと軽さの両立を考慮して、硬鋼の本体に左右から軟鋼で挟むという方法が主流である。
中国刀は鋳造で作られるという偏見が強いが、これは中国には鍛造という単語がなく、青銅を鋳造して刀剣類を製造していた時代が長く、鉄を使いはじめてからも青銅をしばらく使っていたことの名残から、武器の作成に関しては鍛造が主流になっても、鋳の字を当てた。
鍛造と書くとどうにも大量生産に向かないというイメージが付きまとう。確かに、鋳造は大型製品の製造や大量生産に向くが、産業革命が起きるまでは鉄製品の鋳造は高い技術が必要であり、基本的に鍛造と体積面で比較して強度が出せなかった。刺突専門の武器ならともかく、斬擊や打撃に使う武器やそれを受ける防具とは相性が悪すぎたのである。
(中国の各王朝には武器の製造や管理を行う部門があり、鋳造に対する量産性の悪さを補うため多数の職人を抱えており、手工業の延長ながらも大量生産の体制がある程度整っていた。)
中国刀と言えば、幅広の湾刀をイメージしがちであるが、実際は軍用としては細身の直刀や湾刀が主流であり、幅広の湾刀は南方の異民族や民間人の刀という立ち位置である場合が多かった。


○環首刀

柄の端っこに金属製の輪っかがついた中国の刀。騎兵同士の戦闘や戦争の規模が巨大化したことで漢王朝の頃に生まれ、それまで主流だった「剣」を軍事方面からほぼ閉め出し、唐王朝までの数百年間にわたり軍用刀剣の基本型となる。
柄の形式によっては横刀と呼ばれ、日本刀やモンゴル刀、シミターなど東洋の刀のベースになった。
鍛造製であり、量産性や整備性をあげるため、和包丁や斧に見られる軟鉄の本体に硬い鋼鉄の刃先部分を割り込ませて作られる。
量産品に近いが粗製乱造というわけでもなく、近世以前の軍用刀剣としては高品質だった。

○呉鉤

呉は南方地域のことで、鉤は湾刀を表しており、青銅器時代から存在する南方で使われた曲刀。他国でいえば、西洋におけるファルシオンやカトラスに相当する武器で、中国の南方は植物が生い茂り、大型船の航行が可能な河川も多買ったため、船上戦が盛んであったため、武器として使用するだけでなく、縄を切ったり植物を払ったりすることに用いられた。
これも後述の柳葉刀や牛尾刀と混同されやすい。

○柳葉刀

なぜか後述の牛尾刀と混同されやすい中国の刀*10。細身の湾刀で日本刀やシミターの影響を強く受けている。
昔からあるように見えて実は歴史の新しい刀。刀身の形状によって雁毛刀や雁翔刀などの名称で呼ばれる。

○牛尾刀

日本では青竜刀と呼ばれている中国の刀。刀身に端に行くほど刃の幅が広くなっていく特徴的な形状を持つ。
石像の守護する町で乳ぱんつを盗まれる黒髪のお姉さんが振るっている刀である。
なんだか昔からあるように見えて実は歴史の新しい刀。戦争で使われる刀ではなく、役人が抵抗する犯人に対して使ったらしい。

○手刀

ややこしいがチョップのことではなく、これも中国の刀の名前。
簡単に言えば牛尾刀を幅広肉厚にした刀で、さらにいえばこちらの方が時代が古い。
この刀が作られたのは宋王朝の頃に流行したもので、この頃は末端の兵士であっても重装甲の甲冑を身に付けていたので、そのような相手を甲冑ごと叩きのめすために作られた。

○斬馬刀

中華王朝が北方の騎馬民族に対抗するために作られた武器群。中国における名刀・名剣の称号の一つでもある。
一般的には日本でいう、大身槍や大薙刀的な形状の武器として解説される場合が多いが、明や唐の時代には刀剣型も存在した。
アニメやマンガの影響で大太刀と混同されやすい。歩兵が使用する武器であり、大太刀とは異なり騎兵が使うことはない。

○抗日大刀

先述の手刀を大型化し両手持ちにしたような形状の刀。古くは朴刀や太平刀と呼ばれたりもする。
もともとは宋代に作られたポールウェポンのひとつだったが、民間人の所持が禁止されていた朴刀の柄を短く切り詰めることで、民間人でも持てるように改造したものが起源とされる。
時代が下るにつれ、最初から刀剣類として作られたものが主流になっていき、「民衆が反乱で使う刀」的な立ち位置に収まるようになる。
日中戦争の記録などで青竜刀と呼ばれてる刀はだいたいコレ。

○西洋刀

概ねファルシオンのような日常生活で使うナイフや鎌、手斧から派生したものと、シャムシールやサーベルのように、アジア系民族の影響で誕生したタイプの2系統に分かれる。
西洋、とりわけヨーロッパでは諸刃である「剣」が主流のように思われやすいが、これは諸刃であることを生かした剣術が貴族階級の専業戦士たる、騎士達のあいだに浸透していたためなのと、書物に記録を取れるのが貴族階級に限られたため、彼らの目線でしか記録が残りにくかったのが原因である。
また数の上では主力であった、平民から徴募された兵士や傭兵は刀を使っていたが、当時は彼らの使っていた「刀」は貴族から見れば刀剣類ではなくナイフと同じ扱いであり、貴族が狩猟以外でこれを使用するのはダサいと考えられてもいたため、「刀」を使う騎士はあまりいなかった。
ただし、古くからアジア系民族の影響を受けていたヨーロッパの東部では早期から湾刀が使用されている。

○シャムシール(シミター)

ペルシアの湾刀。西洋ではシミターとも。
もともとはヨーロッパ風の「剣」が主流だったが、北アジアに住んでいた民族との交流から9世紀にトルコで生まれ、13世紀までにはアラブを代表する刀剣になった。名前は『獅子の尾』を意味する。

○キリジ

上記シャムシールに酷似したオスマン・トルコの刀。シパーヒーと呼ばれる騎兵部隊が使用。キリジとはトルコ語で刀剣の意味。

○ヤタガン

同じくオスマン・トルコの刀。こちらはイェニチェリと呼ばれる精鋭歩兵部隊の武器として使用された。鍔がないのが特徴。
後にこれをベースとしたものをフランス軍が銃剣として採用したりした。

○タルワール

こちらもシャムシールによく似た、ムガール帝国の時代に登場したインドの刀。様々な階級で使われた。
広刃の物は処刑用として使われたこともある。

○ファルシオン

中世ヨーロッパで広く使われた直刀。
その形状はいくつか種類があり、ボウイナイフやマチェーテをそのままデカくしたような形が主流である。
現代では刀剣に分類されているが、武器として使われていた時代では「大きな鉈(またはナイフ)」「刀剣じゃないけど刀剣のような武器」という扱いを受けることが多かった。
戦場では民衆から徴募された弓兵のサブウェポンや日常生活時の護身用として扱われだけでなく、ナイフや鉈としても活用された。
ドイツ式のメッサーという亜種も存在し、また後述のカトラスやハンガーの前身になったともいわれる。

○シャスク

シャシュカとも呼ばれるコーカサス地方の刀で、馬上の武器としてコサックが愛用していた。
現代でも儀礼用として現役である。

○ショーテル

刃が鎌型になっているアビシニア(現エチオピア)発祥の刀。
を使って攻撃を防ぐ相手の急所を突くために湾曲しているのが特徴。
基本は「内側」で攻撃するが両刃なので「外側」で戦うことも出来る。
刀剣類全体で見てもかなり特徴的な形状の為、創作においてはちょくちょくお呼びがかかる。

○サーベル(セイバー)

シャムシールなどの影響を受けて16世紀以降に登場し18世紀頃に普及した、主に竜騎兵などの騎兵が使う刀で持ち手を保護するためのハンドガード(護拳)がついているのが特徴。
セイバーは英語表記・呼称。フランスではフェンシングで知られているサーブルと表記・呼称する。曲刀の物だけではなく直刀の物も数多くある。銃や大砲が戦場で幅を効かせる時代の刀剣だったが、サーベルを装備した騎兵の切り込みは、銃の性能がアレだったこともあり、意外と有効だった。
時代が下るにつれて武器から日本刀同様に身分を証明するステータスシンボルになっていき、豪華な装飾を施した物も作られた。

○カットラス(舶刀)

こちらは船乗りが使う刀。日本では「カトラス」とも。
元は鉈と同じ作業用の刃物だった。突き刺し易くするよう先を尖らせた物も作られた。
タチウオの英語表記は「Cutluss Fish(カトラスフィッシュ)」とカトラスに擬えたネーミングになっている。ファルシオンと同一視されることもある。

○ハルパー

ハルペーとも呼ばれる、刃がCの形になっている古代ギリシアの刀。元が鎌であるため、刀身はかなり湾曲している。
ペルセウスがメデューサの首を切り落とした武器としても知られる。

○ニムシャ

北アフリカの刀。短い刃が特徴。

○コラ

グルカ族が使用するネパールの刀。刃先が幅広くなっているのが特徴。

○カラベラ

アラブ、インド、北アフリカなどで使われていた刀。
ヨーロッパにもナポレオン・ボナパルトの時代にフランス陸軍の軍刀として導入された。


○刀っぽいやつ

武器じゃないけど「刀」がつくもの。刀と呼ばれたりするもの。

薪を割ったり、背の高い植物を払ったりすることに使う厚手の刃物。
種類によっては山刀と呼ばれるものもあり、中国では単に刀といった場合、鉈を表すこともある。
詳しくは該当項目を参照。

○タングステン刀

某テレビ番組で作成された日本刀めいた刃物。


◆刀がモチーフのキャラクター


インテリジェンスソードも参照。
日本刀がモチーフのものは日本刀(漫画・ゲーム)を参照。

†ひとくいサーベル/ドラゴンクエスト
体は刀で出来ている……否、体が刀である。ギロンに似てる。

†ツルギバチ怪人/仮面ライダーBLACK
右腕が刀になっているハチの怪人。

†サーベルドグラー/光戦隊マスクマン
頭の上にサーベルがついている地帝獣で、飛ばしたり手に持って攻撃する。

ヒャクヤッパ/侍戦隊シンケンジャー
上半身が刀の集合体のようになっているアヤカシ。自身も二刀流で戦う。

†サーベルシャドー/烈車戦隊トッキュウジャー
サーベルがモチーフのシャドー怪人で、主に直刀のサーベル2本を武器として使用。

†カットラス/Devil May Cry4
カットラスと肉食魚を合成した姿の下級悪魔。





2)オートバイ


スズキ社が開発、販売していた大、中型バイクの名称。

1980年、スズキ社はケルンモーターショウにて元BMWの車両デザイナーであったハンス・ムート氏が手がけた斬新なデザインのオートバイを発表。
GSX1100S KATANAである。

そのあまりの奇抜なデザインに評価は真っ二つに分かれ、このままの姿で市販されることはまず無いだろうとまで言われた。

しかし翌1981年、そんな声を覆し、輸出のみではあったが刀はほぼそのままのデザインで市販が開始された。

当時世界最強の111ps、トルク9.6kgmを誇る空冷エンジン、なによりその前衛的デザインですぐに大ヒットとなった。

国内では、当時750cc以上のバイクを販売してはならないことになっていたため、排気量を750ccに落としたGSX750S 刀が発売されたが、
法律の関係でスクリーンは外され、ハンドルもセパレートからアップハンドルに変更されていた。
この変更は大変不評で、「耕運機ハンドル」と揶揄された。
このため、自前でスクリーンを取りつけ、ハンドルを交換する改造が流行したが、これが警察の格好の点数稼ぎになり、
刀を見れば呼び止めて車検証を確認し、1100ではなく750であった場合、容赦なく切符が切られる「刀狩り」が行われた。
(逆輸入で国内販売された1100はそのままのスタイルであったが、これは見逃されるというガバガバ運用だった)
ただ、前傾姿勢を取るのがつらい高齢者ライダーには、このハンドルがちょうどよいらしく、ライダーの平均年齢が上がっている近年には需要が多かったりする。世の中何が求められるかわからないものである。

また、中型免許で乗れる250、400ccの刀も発売され、刀は身近な存在となっていった。
94年からは1100刀も国内販売が始まったが、2000年の「ファイナルエディション」をもって、全ての刀シリーズは生産を終了した。
当然ながらこのファイナルエディションは最も完成度が高く、程度が良い個体が多いため、中古車市場では新車時以上の値が付くことも多い。

1100刀は有名なだけにフィクションでの登場率も高く、
西尾維新著作のライトノベル『戯言シリーズ』の登場人物、匂宮理澄
家庭教師ヒットマンREBORN!』の雲雀恭弥
東本昌平の漫画『キリン』第一部の主人公、
等々、多くのキャラの愛車として登場している。

大型の2モデルは馬力は高いがフレームが弱く、高速域でのハンドルのブレ、エンジンからの振動が尻にクる、
ブレーキが利かないなど古いバイクならではの欠点も多い。

中型モデルはそれぞれ脇差、小刀と呼ばれ馬鹿にされることが多いが、
実際はフレーム、ブレーキもしっかりしていて、なおかつ中古で安く出回っているので初バイクとしてもお勧めである。
最近だとおりもとみまなの漫画『ばくおん!!』のメインキャラである鈴乃木凜の愛車として知名度を上げた。

スズキのオートバイとしてはに並び高知名度を誇る伝説的バイクとなっている。

某ホビー雑誌でB3グフが乗ったKATANAが掲載された事がある。

同じスズキのバイクで50ccのGAGのカウルを変えてKATANAもどきにした「ギャガタナ」がある。
プラモデル
タミヤから1/6と1/12スケールで発売されている。

2019年よりモダナイズされた「新型」KATANAが発売されている。
GSX-S1000Fに搭載されたT719型エンジンを搭載したネオクラシカルなストリートファイタースタイルとなっている。
フロント周りは旧KATANAをさらに尖らせた感じで好評だが、リアシート付近の短さは賛否が分かれる所。
あとハンドルも高めでリターンライダーの腰に優しい仕様となっている。耕運機まで復刻せんでも。



3)ゲーム機


セガのゲーム機・ドリームキャストの開発コードネーム。
正式名称KATANA。
正確には「刀」ではなく「勝たな(あかん)」の方である……というのはかつて本家wikiにも載っていた誤情報。
同時に開発中だったもうひとつの試作機「ブラックベルト(黒帯)」を斬って勝つという意味を込めて「カタナ(刀)」と名付けられていた。




追記・修正は刃をしっかり研いでからお願いします。

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最終更新:2024年04月19日 09:19

*1 先端部が両刃になった刀も存在するが、斬撃のためではなく刺突性能を補助するための構造である。

*2 次いで太刀・大太刀

*3 剣よりも製造が難しかったのではないかという説もあるが、英語圏では当時に近い技術で刀剣類を作成してみたところ、左右対称に作らなければならない剣の方が作成が難しかったという

*4 諸説あり、馬上で使用する際の利便性を追求したという説や近年では引き斬るためという説もある。

*5 刃先と切りたい方向を一致させる行為のこと。これをやらないと、鉈や斧でも刃が欠けたり、本来の切れ味が発揮されなかったりする

*6 これに関しては頑丈そうなイメージを持つヨーロッパの刀剣でも同じ

*7 更に言えば近接戦闘は弓矢による射撃戦よりも死亡率が高い

*8 戦国時代に来日した外国人からは「日本人は獣を殺すのを忌避する癖に、人間は簡単に殺してしまう」と評されている。その外国人も人のことを言えたものかも怪しいのだが…

*9 しかし、太刀より前に主流だった「黒作大刀」の段階で外装に工夫を凝らすことで、擬似的に刀身に反りを持たせたものがすでに存在しており、蕨手刀自体も現存品のほとんどが直刀と形状が変わらないため、蕨手刀から発展したという説も危ぶまれつつある。

*10 中国でも混同されている。