100系新幹線電車

登録日:2017/08/26 Sat 09:10:33
更新日:2024/04/11 Thu 19:51:43
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100系新幹線電車とは、日本国有鉄道(国鉄)が開発した新幹線電車である。
国鉄分割民営化後もJR東海JR西日本が増備を続けた。


概要

東海道新幹線初のモデルチェンジ車で、0系の本格的な置き換えを目的に開発された。
デビュー当初は「ニュー新幹線」という愛称で呼ばれていた。

後継車種の開発は1970年代から検討されていたが、当時国鉄は経営悪化や労使問題もあり開発が進まず、また0系自体も経年車とそうでない車両が入り混じり互換性が要求されたため、0系をマイナーチェンジした0系で置き換えるという事を繰り返していた。
そんな中博多開業で増備された0系の大量置き換えが押し迫り、これを機に本格的な開発がスタートした。
開発に際して3人のデザイナーを招聘し、車両メーカーがデザインしたものを国鉄の専門委員会が検討して採用する形が採られた。
当初は暖色系の外板塗装や個室・寝台なども検討されるなど自由なアイデアが出された。このうちのいくつかは当時の鉄道雑誌に掲載されたのでそこで見たことある人も多いだろう。

実は試作車であるX0編成は0系最終増備車の37・38次車よりも早く落成している。ちなみに最終増備車であるG46編成は300系の量産第1号であるJ2編成よりも遅く落成したが、廃車はG46編成の方が早かった。*1

1986年鉄道友の会ローレル賞受賞。

仕様

  • 主要諸元
編成 4/6/12/16両(4・6両は全電動車、12両は10M2T、16両は12M4T)
車体 普通鋼製
電気方式 AC25000V 60Hz
制御方式 サイリスタ位相制御
主電動機 MT202型直流直巻電動機 定格出力230kW
制動装置 発電ブレーキ併用電気指令式ブレーキ・渦電流ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ*2
保安装置 ATC-1
駆動方式 WN駆動
起動加速度 1.6km/h/s
最高運転速度 220km/h(X・G・K・P編成)・230km/h(V編成)
平坦線均衡速度 約276km/h・約289km/h
速度種別 S21(K・P編成)・S26(V編成)
減速度 2.6km/h/s(常用)

老朽化した0系の置き換えが主目的であるため、輸送力・車両製造費は0系と同等にされ、地上設備の改良を最小限に抑えつつ、到達時間の短縮を行うことを念頭に置いている。また開発目標として「お客様第一」を掲げ、乗務員用の設備削減などを行った。

大きく0系から変わった点はまず先頭部の形状だろう。0系はいわゆる団子鼻が特徴だったが、100系では鋭角にした前頭部から徐々に断面積を大きくした流線型にし、ヘッドライトも細長い形状に変更された。運転台の窓も開閉可能だったものを固定窓に変更し、車体との段差を減らした。このため0系の団子鼻に対し、100系は「シャークノーズ」と呼ばれる。

もう一つは高速鉄道では世界初となる2階建車両の連結である。0系は全電動車とすることで200km/h運転に必要な出力を確保していたが、100系はモーターの出力を向上したことで付随車の連結が可能となり、話題作りとイメージアップのために新幹線初の2階建車を連結することになった。原則として2階をグリーン席や食堂、1階を調理室・通路と普通車指定席・個室・カフェテリアに充てた。これについては各編成で仕様が異なる。

また窓の大きさも0系初期車と同様に試作車以外座席2列で1枚の大窓を採用した。座席は0系だと普通車の3列側は回転できなかったが、シートピッチを104cmまで拡大して全列を回転可能にし、同時に普通車の居住性も向上させた。

車体塗装は従来と同じ白と青だが、地色はそれまでのクリーム色に近いものから白に近いものとなった。これは汚れが目立つ塗装ゆえ、「車両をきちんと清掃する」との意識を職員に植え付けるのが理由で、以降の東海道新幹線向け各形式や「ウエストひかり」用0系もこの色を採用している。

制御方式は0系の低圧タップ制御からサイリスタ位相制御に移行した。
サイリスタ位相制御は整流に使う「サイリスタ」という半導体素子…乱暴に言えばスイッチ付きのダイオードみたいなものを使う制御方式で、
大雑把に言うと格闘ゲームでいうキャンセル技みたいに整流(=通電)の一部をキャンセルすることにより、
その先の直流回路に必要な電力だけを送り込む方法。
身近なところでは白熱電球の調光なんかに使われている。*3
整流回路=制御回路なので、うまくやれば整流兼制御用のサイリスタ回路を「インバータ」として使うことにより交流回生ブレーキも実現できるが、100系にはそこまでは搭載されていない。

パンタグラフの台数も0系に比べて削減された。電動車の両数をカットした分はもちろんだが高圧引き通し線、乱暴に言えば延長コードのようなもののおかげで16両編成で3台のみにまで減った。

X編成

1985年から87年にかけて登場した車両。2階建て車は8号車と9号車に連結され、8号車は食堂車、9号車は階上がリクライニングシートの並ぶグリーン席・階下がグリーン個室とされた。
試作車のX0→X1編成には窓が小さい、ヘッドライトがつり目気味など大きな特徴を持っており、量産化改造後もつり目気味のヘッドライトや小さな窓などの特徴が残されていた。

量産第1編成から第4編成は老朽化が特に激しかった12両編成の0系こだま編成を置き換えるために12両のG編成として先行投入され、後に中間車4両を組み込んで16両X編成となった。また量産第1号編成はX2編成に改番された。

総走行距離が車齢の割に長く、0系の東海道新幹線撤退からわずか半月後の1999年10月1日に運転されたこだま429号を最後に全車が運用を離脱した。

この編成は落成当初、2階建て車両の側面にニュー新幹線を意味する「NS」ロゴが描かれていた。国鉄分割民営化後はJRマークに変わり使用されなくなったが、冊子版の時刻表で「2階建て車両」を示す記号として現在も現役である。

G編成

1987年から1991年にかけて50編成が登場した編成。東京~新大阪間での重点運用を念頭に置き、X編成をベースにグリーン車の定員を増やすため食堂車をカフェテリア付きグリーン車にするなどの改良が行われている。一部車両はJR東海浜松工場で製造されている。車両番号そのものはX編成からの通番。
当初はJR東海だけが所有していたが、1996年から翌年にかけてG1編成からG7編成がJR西日本に譲渡された。これは東京直通のひかり運用に入っていた0系を置き換えるため。0系と100系では性能が微妙に異なり、ダイヤを組む際の支障となっていたのを解消するという意味合いがあった。なお、このJR西日本に移籍したG編成はコムトラック上ではN編成になっていたが、外観上の表記はG編成のままだった。
JR西日本のG編成のうちG6編成は1999年に編成が解消され、同年11月に4~9・12・13・15号車が、2000年3月に2号車が廃車となった。廃車にならなかった車両のうち、3・10・14号車についてはG2編成に組み込まれた。残った1・11・16号車については引き続き保留車として残り、後述のK・P編成の組成に活用された。

2004年3月までに全廃。JR東海所有編成ではさよなら運転を行った。
なおJR東海所有分で運用を離脱したG9・10・15・19・30・43の6編成は車両基地から浜松工場に入場後、1・2・11~16号車の8両編成に組み換えて博多総合車両所まで自力回送された。
博多到着後、1・16号車と車椅子スペースのある11号車はJR西日本へ譲渡してK・P編成の組成に活用。残りの5両は廃車となり、博多で解体された。*4

V編成

通称「グランドひかり」。1989年から1991年にかけてJR西日本が製造した車両で、部内では「100N系」と呼ばれていた。
X・G編成と異なり、2階建て車両を16両中4両に増やし、将来的な高速化も考えた性能のチューンが行われており、実際に時速270km/hでの走行試験も行われたが振動や騒音が基準値内に収まらず断念された。
最高速度は時速230km/hで、山陽新幹線内に限り、ATCの220km/h信号を車載コンピュータで230km/h信号に読み替えることで実現した。
100系の動力性能で付随車は16両中4両まで連結できることから、それまで両側の先頭車と2階建て車2両を付随車に充てていたが、V編成は付随車を全て2階建て車に充てたため両側の先頭車も電動車になっている*5。この関係上、先頭部連結器カバーの下にモーターの冷却風を取り込むためのグリルがある。連結器カバー下のヒゲのように見えるパーツがそれである。
2階建て車両は7号車から10号車に連結され、8号車は食堂車、7・9・10号車は階上がグリーン席・階下が普通車指定席とされた。
食堂車はX編成のものから内装が大きく変更された他、売店の面積を増加させている。普通車指定席は横4列の広い座席やビデオ視聴が可能といった豪華仕様で、常連客が出る程の人気を博した。

2002年11月までに編成削除が行われ消滅。V編成の車両は2階建て車を除いて後述のK・P編成へと改造された。

K・P編成

老朽化著しい山陽新幹線のこだま用0系を置き換えるため、16両編成を4・6両編成に短編成し、延命工事を行った車両。種車はグランドひかり用のV編成が主だが、V編成だけではモーター付きの先頭車と車椅子スペース付の車両が不足するため、G編成の運転台ブロックを切断してV編成の中間車に取り付けて先頭車へ改造し、旧G編成の車椅子スペース付車両の電気機器をV編成の電気機器に交換して組み込むといった大改造を経ている。
K編成は6両、P編成は4両で何れも全車電動車。当初は改造前と同じ3+2配置だったが、後にグリーン車やウエストひかりの廃車発生品である2+2配置へと改造された。
カラーリングは座席を改造した車両から山陽こだま色に塗り替えられたが、引退を前に原色へ塗り替えられた。

P編成は2011年3月をもって運用を離脱、K編成は2012年3月に運用を終了した。P編成の中でも一足早く運用を終了したP2編成は新下関駅に隣接する乗務員訓練センターの実習車として使われていたが、2013年3月末をもって実習車としての運用も終了した。

形式

  • 123
博多向きの制御付随車でX・G編成の1号車。連結面側にトイレ・洗面所を備える。

  • 124
東京向きの制御付随車でX・G編成の16号車。

  • 121
博多向きの制御電動車でV・K・P編成の1号車。連結面側にトイレ・洗面所を備える。126形とユニットを組む。

  • 122
東京向きの制御電動車でV編成の16号車、K編成の6号車、P編成の4号車。125形とユニットを組む。
3001~3007は落成当初はパンタグラフを装備していたが、1990年に撤去。

  • 125
中間電動車で、便所・洗面所を備える普通席車両。
X・G編成では3・5・7・13・15号車に、V編成では3・5・11・13・15号車に、K編成では5号車に連結され、121形もしくは126形とユニットを組む。

  • 126
中間電動車で、デッキ以外は全室客席の普通席車両。
X・G・V編成では2・4・6・12・14号車に、K・P編成では2号車に連結される。パンタグラフを装備し、121形もしくは125形とユニットを組む。

  • 116
中間電動車で、X・G編成の10号車に連結されるグリーン車。

  • 148
中間付随車で、2階にグリーン席、1階にカフェテリアを備える2階建て車。G編成の8号車に連結される。

  • 149
中間付随車で、2階にグリーン席、1階にグリーン個室を備える2階建て車。X・G編成の9号車に連結される。

  • 168
中間付随車で、2階に食堂、1階に厨房と売店を備える2階建て車。X・V編成の8号車に連結される。

  • 178
中間付随車で、2階にグリーン席、1階に普通席を備える2階建て車。V編成の10号車に連結される。
1階の普通席は2+2のグリーン席同等の座席となっている。

  • 179
中間付随車で、2階にグリーン席、1階に普通席を備える2階建て車。V編成の7・9号車に連結される。


特別な100系

東海道・山陽新幹線を利用して皇族やVIPが移動する場合、グリーン個室が車内にある100系が警備のやり易さから後継の300系や500系、700系が主力となってからもしばらくは充てられる事が多かった。

300系の開発に際し、ボルスタレス台車の試験車にも選ばれた。0系で行ったボルスタレス台車の試験で得られたデータを元にフィードバックを行った物を一部の車両に装着し、営業列車に使いながらデータ収集を行っていた。

去就

サービス水準の向上に果たした役割は非常に大きく、バブル経済とあいまって新幹線利用者の増加にも貢献したが、後継車の登場によって最高速度が向上していくと最高速度が0系と大差ない100系は徐々に肩身が狭くなり、順次後継車への置き換えが行われた。以下は引退に際して特別列車としての運転が行われたものの記録である。

V編成グランドひかりの最終運転は2002年11月23日に実施。当日は山陽新幹線をひかり568号とひかり563号で1往復し、事前予約が必要なものの食堂車の復活営業を実施したり、ひかり568号では最速ダイヤを設定したりと全盛期を再現する取り組みがなされた。使用されたのはV2編成だが、2階建て車は状態の良かった最終編成のV9編成のものと差し替えられていた。

X編成では特にさよなら運転は行わなかったものの、JR東海はG編成の引退時にはさよなら運転を実施。定期運用は2003年8月末に終了していたものの、さよなら運転に際して最後まで運用可能だった6編成からG46, G47, G49, G50の4編成を選抜。
さよなら運転は9月13・15・16の3日間実施され、G46編成とG50編成が13日と15日のさよなら運転を担当。最終日はひかり309号として東京から新大阪までの片道運行とし、ラストランを担当したG49編成は先頭部と側面にステッカーを貼って装飾し、予備車のG47編成は先頭部のみ装飾を実施してG49編成に何かあった場合に備えて東京の車両基地で待機していた。

最後まで残った100系のK編成も引退に際してさよなら運転を実施。2012年3月16日に岡山から博多まで「ひかり445号」として運行された。さよなら運転では車内チャイムがかつてのひかりチャイムに戻された上、始発の岡山駅では同日にラストランを迎えた300系のさよなら列車「のぞみ609号」と並ぶ演出が組み込まれた。ラストランに使われたのはK55編成で、万が一の場合に備えて岡山の車両基地にK54編成が待機していた。

余談

2階建て車両の1階部分は当初バーカウンターやサロン、遊戯室といった設備も検討されていたが、最終的にはアイデア切れとなり1~4名の個室になったという経緯がある。
これは、とある作家が週刊誌のコラムで100系の個室の使い勝手の悪さを酷評したところ、後日作家の事務所にJR東海の社員がやってきて、上のような話をうっかり口に出してしまったとのこと。


保存車

  • 123-1・168-9001
X編成の量産トップナンバーと量産先行車の食堂車が名古屋市のリニア・鉄道館で保存。収蔵前はJR東海浜松工場で保管されていた。

  • 122-5003
ひかり445号の予備として岡山に待機していた編成の先頭車。京都市の京都鉄道博物館で保存。

  • 122-5009
廃車後の2011年11月に製造元の近畿車輛へと里帰りし、非公開で保存されていた。2022年2月に工場敷地内ながら片町線の列車内から見える場所に移設され、外観のみだが見ることができる。

  • 168-3009・179-3009
グランドひかりの2階建て車が福岡県のJR西日本博多総合車両所で保存されていたのだが、2024年に解体されてしまった。なんでも、京都鉄道博物館で保存したかったが、道路の高さ制限に引っかかってしまい、搬出できなかったとのこと。


追記・修正は2階の食堂車で富士山を眺めながらお願いします。
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最終更新:2024年04月11日 19:51

*1 J2編成は1992年2月5日、100系G46編成は同月28日落成。

*2 何れも粘着パターン制御を搭載

*3 但し家電での位相制御の場合、スイッチング素子には主に「トライアック」というサイリスタの亜種が使われている

*4 8両で回送されたのは動力性能上G編成由来の車両だけで6両を組むとダイヤに乗れないため。

*5 将来の新型車登場を見据え、短編成化を容易にするという目的もあった