LPG自動車

登録日:2017/07/29 Sat 15:20:55
更新日:2021/08/26 Thu 19:07:10
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LPG自動車とは液化石油ガス(LPG)を燃料にして走る自動車である。特にタクシーではよく見られる。



概要

日本において自動車の燃料といったらガソリンと軽油が挙げられる*1。だが知名度が低いだけで、意外と普及しているもうひとつの燃料がある。それがLPG…液化石油ガスである。

LPG車のエンジンとガソリンエンジンに基本構造の差はほとんどない。燃料タンクから燃料を吸い出し、気化させた燃料と吸気した空気を混ぜた混合気を作り、点火プラグが発生させた火花を爆発的に燃焼させることで動く。ただし燃料タンクはガソリン車やディーゼル車と異なり、ボンベである。中に入ってるのは液体だけど。最初からメーカーがLPG専用車として販売していたり、ガソリン車やディーゼル車から改造したりしてLPG車とする。

Co2や煤煙、PMなどの排出量が少なく、クリーンなエネルギーでもある(家庭のガスコンロで使われていることを考えれば当然だが)。



何故タクシーにはLPG車が多いの?

一言で言おう。安いからである。
タクシーというのは走ってナンボ。コンスタントにお客を拾えれば良いのだが、散々走ってお客0人なんてことも有り得る。このため燃料費というのは非常にバカにならない経費である。しかもガソリンや軽油はガソリン税やら軽油取引税やら税金が多く課せられており、1リッターあたりの値段は100円を割ることはまずありえない。一方LPGにかかる税金は消費税と石油ガス税ぐらいである。このため1リッターあたりの値段はLPGは100円を切るか、110円ぐらいととにかく安いのである。

タクシー以外にも、バスやトラック、ゴミ収集車などにも一部採用されており、LPG自動車は割と身近に走っている。中にはタクシーの中古車を購入して自家用車にしている人や自家用車をLPG対応にしている人もいる。



制度や取り扱い上の主な違い

ガスボンベを積んでいる関係上、6年に一度ボンベを点検する必要がある。これは容器再検査と言って、自家用車であれば新車購入から車検を2回受けた後に受ける。費用はおよそ5万円から。またボンベの製造から20年*2を超えると再検査の間隔が短くなるためタンクの製造から19年目を迎えたらボンベを交換することになる。
また気密試験*3をすることも義務付けられている。

自動車用ボンベは専用の強化ボンベを使うことになっており、安全面についてはガソリン車と遜色ないレベルが確保されているとされる。
燃料がガスというと少し不安になるかもしれないが、最近取り上げられることが増えた水素燃料電池車も可燃性のガスを積んでいる*4し、LPG車のほうがより古くからあるので過敏になる必要はないだろう。

車検はガソリン車と同じ間隔で行われるが、ガス車に対応した整備工場に頼む必要がある。わからない場合は車を購入した販売店に聞けば教えてもらえる。

性能面で見ると、LPGはガソリンに比べて爆発力が若干低く、少しだがパワーが落ちる傾向にある*5
そのためLPGのみを使うタイプだと、満タンからの航続距離はガソリン車より短いことが多い。ただし最近の新車に関してはガソリン車と遜色ないレベルになっているようではある。



自家用車でLPG車が欲しい!

まず自宅の近くにLPガス補給スタンドが存在するか確認しよう。全国LPガス協会の「LPガススタンドマップ」というサイトで調べることができる他、LPガス協会が補給スタンドの地図冊子も販売している。
あるいは自宅周辺で営業しているタクシーの運転手さんに聞いてみるのもアリ。この時は個人タクシーではなく、法人タクシーの運転手さんに聞こう。

そして市販のガソリン車をディーラーや改造工場などへ持ち込み、LPガスで動くように改造をしてもらう。このような改造をレトロフィットと言う。改造内容は燃料供給装置を変更して点火時期の調整など。
この改造作業は特定の業者でなければできない。
ちなみにディーゼル車の場合、エンジンのサイクルをガソリン車と同じオットーサイクルへ変更し、タンクや燃料供給系統をLPG用とするだけでなく、点火プラグを追加するなどエンジン本体も改造する必要がある。

レトロフィット改造が終わったらそれでLPG車を使うことができる。燃料が少なくなったら近くのLPガススタンドで補給すれば普通のガソリン車のように使うことができる。補給の単位はリットルなので燃費計算はガソリン・ディーゼル車同様に出来る。
LPGスタンドは給油のみ行っており洗車などはしてくれないが、洗車やタイヤ交換など燃料系に関わらない整備は通常のガソリンスタンドに行けば頼めるので必要ならそちらへ。

ちなみにバイフューエルエンジンというのもある。これはガソリンとLPG両方の燃料を切り替えて動かすエンジンで、LPGスタンドが近くにない地域などではよく見られるものだが、LPGスタンドが近くにある地域でも航続距離を伸ばすとか、もしもの時のためにバイフューエルエンジンを選ぶ例がある。

燃料補給はガスボンベの容量に対して85%までと決められている。例えば容量が50リットルのボンベには42.5リットルまでの燃料しか入れられない。ガソリン車のように本当の意味で燃料タンクいっぱいまで入れることは出来ない。またLPGスタンドにセルフの店舗は無い。これはオートガスをボンベに入れる行為が「高圧ガスの製造」という行為に該当するためである。

中にはバイフューエルのハイブリッド車なんてのもあり、燃料を満タンにすると1000kmを越えて走れるものもあったりする。

天然ガス自動車

LPG車同様、燃料にガスを利用する自動車に天然ガス自動車がある。
こちらは圧縮天然ガスや液化天然ガスを利用して動く自動車で、主にトラックやバスに多い。エンジンの仕組みはLPGエンジンと同じ火花点火式。
電気式ハイブリッド自動車が普及する前は、排ガスに含まれる有害物質が少ない低公害自動車として路線バスや運送会社の市内輸送トラックを中心に多くの台数が導入されたが
  • 値段が高い
  • ボンベの製造から15年が経過したらボンベを交換しないといけない
  • 車庫にガスの充填設備を設置するか、車庫とは別のガスステーションまで燃料を入れに行く必要がある
  • そもそもガスの値段も高い
など問題が多く、天然ガス仕様車が新車で用意されている車種は非常に少ない。


追記・修正はレトロフィット改造を受けてからお願いします。
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最終更新:2021年08月26日 19:07

*1 ハイブリッド車は燃料の利用効率が良いだけでこれらに含まれる。電気自動車や水素燃料電池車はここでは考えないこととする。

*2 「車の製造から」ではない。

*3 配管や接続部なども含めてガス漏れがないか確かめる検査

*4 こちらもガスボンベの交換・検査が義務付けられているのは同じ

*5 逆に一旦火がついたらガソリンのほうが危険ということでもある