わざわざゾンビを殺す人間なんていない。

登録日:2017/07/22 (土) 18:13:52
更新日:2024/01/28 Sun 12:40:33
所要時間:約 5 分で読めます







概要

『わざわざゾンビを殺す人間なんていない。』とは一迅社から発売されている小説。2021年には二見書房の新設レーベル「二見ホラー×ミステリ文庫」から文庫版が発売された。
著者は『肉食屋敷』『因業探偵:新藤礼都の事件簿』『獣の記憶』『キャッシュ』『アリス殺し』等で有名な小林泰三
イラストはYKBX(一迅社版)・遠田志帆(二見書房版)。

帯文には円城塔氏を始めとする著名人からコメントをもらっている。


あらすじ

全人類がウイルスに侵され、死ねば誰もが活性化遺体になる世界
家畜ゾンビが施設で管理され、野良ゾンビが徘徊する日常のなか、とある細胞活性化研究者が、密室の中で突然ゾンビ化してしまう。
彼はいつ死んだのか? どうやってゾンビになったのか? 生者と死者の境目はどこだったのか?
騒然とする現場にあらわれたのは、謎の探偵・八つ頭瑠璃。
彼女とともに、物語は衝撃の真相が待ち受けるラストへと加速していく。

世界もキャラクターもトリックも真相も予測不可! 極上のゾンビ×ミステリー、開幕。

(公式より引用)


登場人物

  • 八つ頭瑠璃
本作の主人公。新米探偵。
両親はゾンビを研究していた研究者であり、その両親と姉が突如失踪した事から探偵となり捜査している。
両親と姉は研究を狙われたため殺された、と考えており、両親が勤めていた『アルティメットメディカル社』の連中を疑っている。
そこで新技術を発表する場でもあった有狩邸を張り込んでいた。
何故か露出の多い服装をしている。

  • 竹下優斗
瑠璃の助手のようなことをしている男性。
元々は露出度の多い服装をしていた瑠璃をナンパするため近づいて来た。
それ以降はコキ使われている。

  • 三膳孝彦
有狩邸での事件を担当する事になった中年刑事。
鋭いような鈍いようななんともいえない男で、葦土が他殺か自殺かを悩んでいたところを瑠璃に一本取られてしまった。

  • 葦土健介
『アルティメットメディカル社』で活性化遺体が活性化する際の細胞の動きなどを研究していた。
気が弱い人物だったらしいが、新研究を発表する直前突然死んでしまった。
部屋に入るのは何人かに目撃されており、部屋の中で悲鳴を上げたのちゾンビ特有のドタバタしている音が聞こえている。
それでもしやと思った多くの人が部屋に入るとゾンビになった葦土がおり、有狩に腹を撃たれながら有狩邸から出ていき、警察に捕獲された。

  • 有狩一郎
『アルティメットメディカル社』の執行役員。葦土と猪俣は部下。
名前の通り有狩邸の持ち主であり、新研究の成果をマスコミに発表すようとした時にゾンビ事件に遭遇する。
警察より先に葦土が他殺だという証拠を挙げた瑠璃の事を信用し、事件の捜査を依頼する。

  • 山中卓司
研究発表パーティーの男性スタッフ。いささか気が短い。

  • 滝川麗美
研究発表パーティーの女性スタッフ。
けっこう頭が回る様で、瑠璃に的確なツッコミを入れて来る。

  • 猪俣
『アルティメットメディカル社』の細胞活性化技術研究所の施設長。
葦土とは同じ施設で研究している関係だが、厳密には彼の上司ではないらしい。
研究発表パーティーに参加し、葦土が密室で活性化遺体になっていたところを目撃した。

  • 石崎笑里
ゾンビイーターの女性で活動している地域では名の知れた存在。
長い事ゾンビを踊り食いしてきたせいでゾンビの臭いに敏感だが、瑠璃をゾンビと嗅ぎ間違えた。
昔、特異なゾンビを食った事があるらしいが……?

  • 八つ頭沙羅
現在行方不明になっている瑠璃の姉。
瑠璃とは双子として生まれながらも学校に行くのも、遊ぶのも沙羅が優先で、瑠璃は秘匿されてきた。
沙羅もまたその環境を肯定し、瑠璃は自身の影になるべきといったり、妹も好きな男性と妹の目の前で性交に及ぶなど、かなり傲慢な女性。
しかしそれは全て妹のためでもあって――




用語

  • ゾンビウイルス
その名の通り生命をゾンビ化させるウイルス。これは一般に言われている俗称で実際にはプリオンに近い。
動植物に感染する異常な感染力を持つが、活動そのものは弱く免疫によって通常は抑止されている。
しかし抑止されるだけに留まり熱でも活動を止めることは出来ず、免疫が弱くなる……つまり大怪我をするか死ぬとゾンビになってしまう。
現在「地球上にこれに感染していない生命はいない」と政府は発表している。
なおゾンビウイルスに感染した肉は特殊な熟成効果があるため食材としては美味しい。

  • 活性化遺体
ゾンビウイルスでゾンビになった者の正式名称。俗称はゾンビでありこの項目でもゾンビと呼称する。
全ての動植物に感染するウイルスではあったが、発症するのは哺乳類に限られる。
ウイルスによって生命器官は動いているが、死んだ時点での脂肪や筋肉で動くため行動期間は長くて数ヶ月の存在である。
そのため心臓といった器官は動かされてはいるが、活動に必要はなく壊されても動き続ける。
これでは蘇生しているようなものだが、実際は脳がウイルスにやられてしまっているため意識は失っている。
そういう訳で政府は治療が不可能の事からあくまでゾンビを故人と認定している。
故にゾンビを活動不能にしても殺人罪は適用されないが、逆に病院以外で死んで事前に故人認定されなかったものは死者認定できず、殺すことも火葬する事も出来ない。
ゾンビは目の前にあるものを襲う習慣があり、同じゾンビ同士であっても共食いする。
見分ける方法は目が白濁している事と、その行動に知性がない事。簡単に言えば酔っぱらいのようにフラフラしている。
またゾンビウイルスの効果により腐敗は進まない。

  • ペット
人間より寿命が短く、縄張り争いなどで怪我をする事も多いため、ゾンビになりやすかった。
そして子供のような存在をゾンビになったからって駆除できず、ゾンビ化したペットに襲われ怪我をしゾンビ化する飼い主が多発。
週一での健康診断が義務付けられ、病気などで弱っていると確認されると国によって隔離される事になった。


  • 食料問題
哺乳類は全て死ぬとゾンビになる世界になってしまったため、必然的に食卓から肉が消えた。
野菜や魚なんかはあるので食糧不足にはならないが、現在社会は肉が消えて満足出来る舌ではなくなっていたため不満が続出した。
庶民と食品会社と国とですったもんだしたが、ゾンビ化した家畜、それが足りないとなるとゾンビ化したペットの肉の使用を踏み切った。
しかしそれでも足りないとなると人間が目を付けたのは当然――ゾンビ化した人間だった。
倫理感やら道徳やらで揉めたが、「猿肉」という名前で世に出回り、
皆正体に気付きながらも「猿なら仕方ないよね」と自分を偽り肉を食い、最終的に国も世間も人間のゾンビを食すことを認めた。
人間のゾンビを食べる為の法整備が始まり、これに伴い故人認定されなかったゾンビも故人認定され、国の所有物となった。

  • ゾンビイーター
突然死や事故などで病院外で死んだのが野良ゾンビとなって徘徊している。
それを拘束し食品会社に渡すために、もしくはゲーム感覚でゾンビを狩るハンターがいる。
そしてその中でもゾンビイーターはその名の通り、その場でゾンビを食すことを目的とした集団で、
彼らは素手でゾンビに忍び寄り、ボロボロになったゾンビの体を瞬時に見極め、肉をかすめ取り動けなくさせる。
動いているゾンビをそのまま食べる事を『踊り食い』と称している。
なお野良ゾンビを勝手に食うのは本来は違法なのだが、それを追求すると放置している国に返って来るため、黙認されている。

  • パーシャルゾンビ
体の一部分がゾンビになった、いわば知性のあるゾンビ。
通常、体の一部分が壊死してゾンビ化するにしても、範囲が小さい場合は他の免疫が働いてゾンビにならず、
逆に範囲が広く壊死した場合、他の部分にも影響を与え健康を崩し死んでしまうため、通常一部分だけゾンビ化することはあり得ない。
そのため臓器をゾンビ化するという医療に期待されつつも、現在は理論上の存在。




追記・修正はゾンビの踊り食いをしてからお願いします。

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最終更新:2024年01月28日 12:40