グレープ君(フンボルトペンギン)

登録日:2017/07/22 (土曜日) 16:40:00
更新日:2024/04/20 Sat 21:08:31
所要時間:約 4 分で読めます





グレープ君は、埼玉県の東武動物公園で飼育されていた雄のフンボルトペンギンである。



概要


名前の由来は、ペンギンの個体識別用に装着しているリストバンドが紫色のため。
年齢は21才で、人間の年齢に換算すると80歳*1のおじいちゃんである(なおフンボルトペンギンの平均寿命は25才)。
そのため、グレープお爺ちゃん、略してグレ爺とも呼ばれる。

元々は東京都の羽村市動物公園で飼育されていたが、東武動物公園にペンギン舎が出来た頃(2007年)に引っ越してきた。

性格は甘えん坊で、かつて足を怪我した際に飼育員に優しくされたのが忘れられないのか、餌を自力で食べず、口元まで運んであげないと食べない困った子。
また色んな雌にちょっかいを出すプレイボーイでもあったようだ。最後にはミドリと結ばれたが、悲惨な目に遭わされるとは思ってもいなかっただろう。

…え?なんでわざわざよくいるフンボルトペンギン*2の項目が立ったって?
実はこのグレープ君、ある時を境に超有名なフンボルトペンギンになったのだ。











恋するグレープ君


2017年4月、東武動物公園はアニメ『けものフレンズ』とコラボし、
アニメに登場したフレンズ(擬人化された動物)達のパネルが、元となった動物達の飼育スペースに設置されることとなった。
勿論グレープ君のいるペンギン舎にもフンボルトペンギンのフルルのパネルが設置された。

するとこのグレープ君、なんと…

四六時中フルルの側に張り付き離れなかったのだ!

フンボルトペンギンはお気に入りの場所を巣にして離れない習性を持つ。
だがグレープ君はフルルが設置されるまでは別の場所がお気に入りの場所であった。
明らかにフルルが来てからそこにずっと張り付いているのである。

餌の時間になっても離れず、離れたと思ってもまたフルルの所まで戻る。
柵を設置したが、それでもなおグレープ君はフルルを見つめる。
更にはフルルに対して「背筋を伸ばして上を向き翼を広げて鳴く」というフンボルトペンギンの求愛行動のような動き*3を取っている姿まで確認されている。

やまだおにいさんを始めとした飼育員達はこの事について、グレープ君はフルルを飼育員と勘違いしてるのでは?と考えた。
実際グレープ君は加齢で視力が衰えてきている為、可能性の一つとして考えられるだろう。

だが、フルルにここまで執着するのはグレープ君だけである(高齢と言うことを考慮しても微動だにしないパネルを飼育員と勘違いしないのでは?という意見もあった)。

その為、ネットではある説が浮かんだ……

グレープ君、フルルに恋してるんじゃね?

この説はペンギン燎原の火のごとくSNSで広まり、瞬く間に『二次元に恋するペンギン・グレープ君』として有名に。
なんと民放のワイドショーで取り上げられるまでになった。

なおフルル役の声優、築田行子氏もこの事を知り、プライベートでグレープ君に会いに行っている。
更には急遽開催されたグレープ君イベントにゲストとして登場。
彼女もグレープ君の事を気にかけている様子。

なお専門家によると、恋してるかどうかは不明だが「特別な感情を抱いているのは確か」だそうである。



グレープ君の過去


グレープ君には元々ミドリちゃんという奥さんがおり、2007年に夫婦で羽村市動物園から東武動物公園へとやってきた。
フンボルトペンギンは一般的に、一度つがいになったら死ぬまで添い遂げる鳥である。
グ「幸せだなあ。僕は死ぬまで君を離さないぞ。いいだろ?」ミ「うふふ、アナタったら」
2羽の間には子供はいるが、卵の時に東京都の江戸川区自然動物園へと移っている。

だが2010年、グレープ君が体調を崩し、ペンギン舎を離れている間に事件は起こった。
なんと奥さんのミドリちゃんが、若い雄のデンカ君と浮気

グ「そんな…ミドリ…なんで…」
ミ「ごペンなさいアナタ、私もうこの人なしでは生きられないの」
デ「チョリ~ッス! そんな訳なんで、奥さんは貰ってきま~す! ゴチで~っす!」

浮気はペンギンの世界でも禁忌とされ、これを犯した者は群れから疎外されることが多い。
浮気した結果、妻だけでなく、群れからもリンチされるペンギンの動画もあるほどである。
ところがどういう訳か、これ以降浮気された側のグレープ君が群れから離れて過ごす事が増え、
どうやら彼はのけものとなってしまった様なのだ。
なおミドリちゃんとデンカ君はその後も同じペンギン舎で暮らしており、あろうことか2017年3月には子供まで産まれている。やってられねぇ

そんな三次元の女でひどい目に遭った過去を持つグレープ君だからこそ、
フルルに興味を持ってしまったのではないかと、ネット上では彼に南極海より深い同情が寄せられている。
グ「…本当の愛は、ここにあるよ」



愛の試練


そんなこんなで一躍人気者となったグレープ君。
あまりにもフルルから離れないので、飼育員が熱中症対策の為に水場まで運ぶ事もある程。
グレープ君専用の日陰まで設置されている。
更にはフルルに近付く他のペンギンに対して威嚇を行っている様子が確認されている。

ペンギン舎の来場者数が増えるにつけ、東武動物公園はグレープ君キーホルダーやステッカー、
グレープ君をイメージしたアイス「恋するグレープ」「ずっと見つめていたいんだ」等を矢継ぎ早に発売。
それらもたびたび売り切れになるなど大好評を博した。

だが、東武動物公園と「けものフレンズ」のコラボは当初4月22日~6月25日までであり、6月25日を以て全てのパネルは撤去されてしまう予定であった。
当然フルルも一緒に撤去される予定だったのだが、「どうかグレープ君のために残してあげて欲しい」との声が動物園に殺到したらしく、
26日、東武動物公園はフルルのパネルを残す事、同時に7月15日~9月3日まで夏休みコラボ企画第2弾を行う事を発表。
全国の『けもフレ』ファンと埼玉県のペンギン約1匹はホッと胸をなでおろした。

その後も東武動物公園はペンギン舎飼育係のやまだおにいさん画のグレープ君Tシャツ*4を配布するなど、グレープ君を全面的にプッシュ。
また、園内の何処かにはグレープ君のパネルまで設置されている。
場所は自力で探して見ヨウ。ヒントはグレープ君の名前ダヨ。

だが無情にも時は過ぎ、『けもフレ』コラボ第2弾が終了する9月3日が到来、ペンギン舎には今日を見納めと大量のファンが押し寄せ、
ネット上は「今度こそダメかもしれない」「フルルが居なくなったらグレープ君の生きる支えがなくなってしまうのでは」等、今後を心配する声で溢れた。

だがその夜、東武動物公園はニコ生の中で『フルル継続』を発表。
グレープ君が飽きるまではパネルの設置を継続する方針を定めた。

「他のパネル等は全て撤去」「現状では今後『けもフレ』イベントを行う予定はない」状況でありながら、フルルだけはペンギン舎に残す事となった。
全国の『けもフレ』ファンと埼玉県のペンギン約1匹が、その温情溢れる対応に涙を流した。

東武動物公園は公営の上野動物園等と異なり民営なので、入場料等で黒字を出さなければならない。
グレープ君の人気と入場者数を維持するためには、フルルに居なくなってもらうわけにはいかないという事情もある。

余談


報道によれば、2017年4~6月の「けものフレンズ」コラボ期間中、東武動物公園の入場者数は平年比1.2倍に増加したが、
ペンギン舎の入場者数は平年比20倍に跳ね上がったとのこと。

先述したグレープ君とミドリちゃんの子供の「はんぺん」君は、江戸川区自然動物園で「きんとき」君と「左緑黒」ちゃんというつがいに育てられた。
今ではすっかり大きくなったはんぺん君、なんと養父のきんとき君から養母である左緑黒ちゃんを奪ってつがいになってしまう。なんちゅう一族だ…
はんぺんの名の通り、半人前のペンギンで最低な暴挙とグレープの面汚しをしたのである。
養母左緑黒に一途な内向きのマザコンと言えるが、いくら内向きマザコンであっても養母ではない歳が近い繁殖相手のつがい相手のメスを用意されているにもかかわらず養母とつがいを組むという、驚くべき行動としか言いようがない。
フンボルトペンギンに限らず、ペンギン社会は両親ともに病気などで死亡し卵やヒナだけが取り残された際に、同じ群れの他のペアが養子として引き取って育てるという、群れ全体を維持する素晴らしい社会保障システムが構築(簡単に言えば人間社会の養子縁組や里親制度)されており、この仕組みを利用して血統管理で同じ群れにおいて血が濃くなり過ぎないように卵が異動させられ、ちょうどきんときと左緑黒の間には子供がいなかったので、きんときと左緑黒にとって期待の養子であった。
だが、左緑黒は養子のはんぺんを愛し過ぎるあまりに、下記の事態になる。

き「そんな…左緑黒…なんで…」
左「ごペンなさいアナタ、私もう禁断の愛を知ってしまったの…もう戻れないわ…」
は「ママ、あんな昔の男の事なんか忘れよう。ボクを見つめている時のママが一番カワイイよ」

きんとき君の方は左緑黒ちゃんのことを諦めきれてないようで、裏切り者の養子であるはんぺん君と喧嘩することもある模様。

き「恩知らず!親不孝者~!」

その様は、同じ群れのフンボルトペンギンのメスにプレイボーイ(チャラ男)でナンパしまくりだった外向きの実父のグレープとは正反対である…と思われていたが、実は浮気性で「つみれ」ちゃんというペンギンにもちょっかいをかけている。
なんというか、きんとき君哀れ。

このはんぺんによるグレープの面汚しとなった養母左緑黒の略奪愛と養父きんときとの養父子喧嘩を見たい人は、ぜひとも江戸川区自然動物園に行こう。
江戸川区自然動物園は5話アイキャッチのオグロプレーリードッグの動物解説でかわむらおねえさんが登場した。
はんぺん君は卵の段階で異動させられているので、グレープもミドリも面識はないが、ミドリが乗り移ったかのような暴挙と養父きんときをグレープと同じ目に遭わせているところを見ると、グレープ君は浮かばれないだろう。

ちなみに、デンカ君とミドリちゃんの子供は「ビール」君(オス)。
人工飼育されていた期間が長かったためか人懐っこく、人間を見ると自分から寄って来るその姿から、グレープ君と同じように人気者になりつつある。
ただ、不安材料なのは、あのミドリちゃんの子供であり、はんぺん君の異父兄弟でもあるという事。将来何もなければいいのだが……
ビール君の弟のエダマメ君も誕生し、ヒナとして人気だ。エダマメも人工保育で人懐こく、2018年5月5日の日本テレビ系の天才志村どうぶつ園に出演し、DAIGOと共演している。飼育員の山田お兄さんは出演せず、写真だけで出ている。
ビールとミドリとエダマメを見たければ東武動物公園に行こう。
2018年1月25日に、ビール君の父でミドリの浮気相手となったデンカが死去した、合掌。
ミドリはおばあさんだが元気だぞ、ミドリとデンカの子供はビール君以外にもエダマメもいるので、デンカの遺児は東武動物公園ですくすく育ったり、他の動物園等に血統管理や繁殖で出されたりして、日本国内の動物園等の施設で飼育されているフンボルトペンギンの繁栄に大きく貢献している。
東武動物公園は、動物解説の担当回数が最も多い。

グレープ君の古巣である羽村市動物公園も東京近郊において多摩動物公園以外では唯一のサーバルキャットがいる動物園であり、フンボルトペンギンも多数いるので行く価値はあるだろう。






永眠


けもフレブームに引っ張られる形で大人気となったグレープ君だが、前述の通り彼は既にご老体であった。
ずっとフルルに付き添ってきたグレープ君だったが、2017年10月11日に体調を崩し、療養のため個室へと移されることとなる。
多くのファンが回復を願っていたが、翌12日、フルルのパネルが見守る前で、21年の生涯に幕を下ろした。

彼の訃報は翌13日朝に東武動物公園公式twitterにて報告され、多くのファンが彼の死を悼んだ。
フルル役の築田氏も、自分のアカウントでグレープ君への感謝と追悼の言葉を発信した。
東武動物公園公式の訃報ツイートには日本のみならず海外からも数多くのメッセージが寄せられ、
「グレープ君」はtwitterの国内トレンドで1位になり、更にはNHKのニュースで取り上げられるに至った。
彼を愛したヒトが、いかに多かったかがうかがえる。
そして献花台の傍らには「けものフレンズ」キャラクターデザインを務める吉崎観音先生描き下ろしのイラストが供えられた。
イラストはフルルと並んだグレープ君が共に寄り添うように歩いているものだが、よく見るとグレープ君のトレードマークである紫色のリストバンドがフルルの左腕にも施されており、互いの距離感が近くなったように感じられる。


グレープ君、長い間お疲れさま。そしてありがとう。
天国でゆっくり休んでね。
妻のミドリに振り回されて、晩年の最後でフルルのパネルに恋をしたことで、絶大な人気を誇って東武動物公園に貢献したグレープ君
ペンギンの中でもフンボルトペンギン、それも本来はオシドリ(本物のオシドリは数年でペアを変える生態)以上にオシドリ夫婦として一生添い遂げるペンギンの生態を世に知らしめることには成功し、死後もなおグッズは売られ続けて、東武動物公園への貢献は続いている。

2018年には東武動物公園で再度のけものフレンズコラボが実施され、パネルは新たに吉崎観音先生のグレープ君の追悼で描かれたものが展示されている。
デンカは死去してしまったが、ビール君やエダマメ君をはじめとしたデンカの遺児たちがおもてなしをしているぞ。

東武動物公園のペンギン舎ではフンボルトペンギンの隣にオウサマペンギンがいるが、オウサマペンギンを凌駕するほどの羽数と特殊な人気のおかげで、本来なら羽数はともかく珍しさや人気ではオウサマペンギンに完敗するところを圧勝しているのは、グレープ君の偉業としか言いようがない。
フンボルトペンギンは日本動物園水族館協会の会員の動物園や水族館などで飼育されているペンギンの中で、最も羽数が多くしかも半数近くを占めてしまうため、平凡に生きていては注目されない。
ペンギンのくせに寒さに弱く、温暖な地域で暮らしているので、日本の気候で繁殖しやすいため、夏でもクーラー無しで展示できる暑さに強い利点があるが
コウテイペンギンのように、ほとんどの動物園にはいない珍しさもないし、平凡では人気が出ないところだ。
しかしグレープ君は、ミドリに振られて傷心していたところを、フルルのパネルに恋をしたことで、絶大な人気の時の人となってペンギン界の最高の個体人気を手にしたのである。

東武動物公園のフンボルトペンギンが、上野動物園のジャイアントパンダや井の頭自然文化園の長生きしたゾウの花子や千葉市動物公園の立つレッサーパンダの風太のようなカリスマ人気を得たのである。
東武動物公園のレッサーパンダは千葉市動物公園出身で風太の孫の源太がいるので、レッサーパンダの立ち姿にも期待したい。


追記修正したい方は、ぜひ東武動物公園まで足をお運びください。
そしてグレープ君とフルルのこと、ずっと忘れないでね。

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最終更新:2024年04月20日 21:08

*1 65歳との報道もある

*2 フンボルトペンギンは温暖なチリに生息していて日本でも飼育しやすいため、動物園や水族館で非常によく見るペンギン

*3 若干ゃ違うんじゃない?という説もある

*4 やまだおにいさんの画力はおおむね「お絵かき動物図鑑」のあまり上手くない方の子供に匹敵する