SCP-3301

登録日: 2017/07/14 fri 14:04:50
更新日:2024/02/26 Mon 16:31:16
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日本にもコイツの類似品があるって聞いたんだが?


SCP-3301とは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」において登録されたオブジェクトの一つである。
項目名は「ザ・ファウンデーション(THE FOUNDATION)」。
オブジェクトクラスは「Safe」。


概要

コイツの収容プロトコルは非常に簡単で、
  • サイト-19の小型物品保管ロッカーに入れます
  • 実験する時は主任研究員のベンジャミン博士に許可を取ります
  • 実験場にはサイト-19の、改修された西ウイング収納庫を使います

というものだが、問題は次。
SCP-3301を担当する職員は同ゲームのルールと手順に精通している必要があります。詳細な説明は補遺3301.2を参照してください。
SCP-3301はクラス9-情報セキュリティ災害に指定されています。SCP-3301による副次影響は財団の情報セキュリティ部門によって研究されています。
補遺3301.4で詳述する特別念書の内容を受け、SCP-3301による実験は全ての職員に対して許可されました。財団従業員福祉プログラムの承認された課外活動として利用できます。

つまり、「最高レベルのセキュリティ違反の危険があるので、自由に使え」という、初見だと意味の分からないプロトコルが組まれている。
しかし、これこそがこのオブジェクトのもっとも安全で確実な収容方法なのだ。



そんなSCP-3301が何かというと、掛けがねと銀の鍵のついた銀の装飾箱である。
蓋の部分にはこんな刻印がある。文章のみを抜粋すると、

ザ・ファウンデーション
作: CRYOGEN STUDIOS
(ワンダーテインメント博士傘下)

そう、この箱はあのワンタメさんの作品なのである。正確には、ワンタメさんが傘下の企業に企画を持ち込んで作ったものらしい。
で、具体的に何なのかというと、「ザ・ファウンデーション」というタイトルのリソース管理型ボードゲームである。
……日本支部のSCP-TCG-JP-Jを思い出した画面の前の諸兄に告ぐ。だいたいあってると。

オブジェクトとしての異常性はこのボードゲームにあり、特性は以下の通り。

  • 装飾箱を開けることで大きさ・形・デザインが異なるいくつかのゲームボードの中から1枚がランダムに出て来る。
  • それぞれのゲームボードには、それぞれに大きさ・形・デザインが異なる8つの駒が付属している。
  • それぞれのゲームボードは、形状に関係なく、ボードの中央に小さな銀箱を置くためのスロットがある。
  • この箱は、外箱である銀の装飾箱のより小さなバージョンであり、蓋に「DRAW ONE」と刻印されている。
  • ゲーム中でない場合、あるいはターン外のプレイヤーがこの箱を開けた場合、箱の内部は空。
  • ターンプレイヤーが箱を開けた場合、1から3枚の無作為に選ばれたカードを排出する。これらのカードはゲーム中でそれぞれ異なる機能を持つ。

つまり、開けるとフィールドやシチュエーションを規定するボードがランダムに選ばれ、8つの駒と銀箱からドローされるカードを使って、勝利を目指すゲームなのである。

発見経緯と収容プロトコルの関係

先に言っておくが、このオブジェクトにはセキュリティ違反の可能性を除き、危険はない。
それでもSCPオブジェクトには違いないのだから、積極的に使えというのはまずくないか、という見方もある。

そんなこのゲーム、実はサイト-19のある博士のデスクの上で、こんな手紙と共に見つかった。

親愛なるSCP財団へ

自我のある生物は、それが正常であれ異常であれ、人生の中で目的を見出そうとするものだ。病めるものを癒すことに命をかけるものもいる。壊れた神を復活させようとするものもいるし、宇宙ヒトデの腕の中で星々の間を航海するものもいる。不自然なものを世界から排除しようとするものもいるし、図書館の中で育てようとするものも、ミームに首ったけなものだっている†。

あなたたちは異常なものから世界を守り、不思議でユニークなものを分類して、人類が光の中で暮らせるようにしている。我々は人々を笑わせ、皆に幸せになれる理由を、短い時間でもいいから与えようとしている。立場の違いはあるけれども、我々はあなたたちの熱意を尊敬してやまない。間違いなく、あなたたちは我々を何度も救ってきた。だから、我々はあなたたちに恩返しがしたい。あなたたちに笑ってほしいんだ!

この箱の中には我々の最高のおもちゃが詰まっている。ジョークも面倒も、策謀もない。我々の持てるものを全て結集し、かき集めた情報や魔法のかけらが全部このゲームには入っているんだ。我々がこのゲームを作ったのは、ゲームを通してあなたたちに素晴らしい体験をしてほしいからだ。楽しんでくれることを心から願っているよ!
あなたの最高の隣人、ワンダーテインメント博士

追記: あなたたちのために用意したこの作品をあなたたちが楽しんでくれるよう、1ヶ月に一遍はこのゲームで遊んでくれ!そうしなかった場合?ほら、ワンダーテインメント博士™はこれを遊ぶことがどうしてもやりたくなるようにする手段を持っているよ。

さらに追記: 遊んでくれないとインターネット上に財団のデータベースをばらまいちゃうぞ。

† わかっているよ、小僧たち。お前たちも楽しんでいるといいな。


要はコレ、ワンタメさんが財団職員に宛てたお中元みたいなものらしい。
遊んでくれないとセキュリティを侵害する、と脅し文句も追加されていたが、後になってこれが事実だったことが発覚。
最後の実験=ゲームプレイから1カ月後、なんとSCP-1994「腐敗」の情報がインターネットにアップされていることが発覚。さらに翌朝には、ニューヨークタイムズの編集部コメントにSCP-2300「元素ゴーレム」の情報が投稿されていた。

財団は間一髪でこれらの削除に成功し情報漏えいを阻止したが、これによりワンタメさんの恐るべき情報網が明らかになった。
ワンタメさんのあの文句は真実だった、と考えた財団は、SCP-3301を用いた実験=ボードゲームを遊ぶことを全ての職員に許可、積極的に使用するようプロトコルを策定した。そうしないとオブジェクトの情報が漏洩するからである。
要するに、初期の記事に見られた「言うことを聞かないと面倒なことになる」タイプなのだが、中身は安全の保障されたボードゲーム。なら、まだマシな方ではある。


ルール

財団のSCP-3301に対する対応は以上。ここからは、ゲームのルールを説明していくことにする。
そしてここには、ワンタメさんの持つ情報網の恐ろしさがはっきりと表れていることを明記しておく。

まず、前書きにはこうある。

業務に疲れた研究員の皆、ザ・ファウンデーションのゲームにようこそ! 固い意志と強い心をもつ人のためだけのボードゲームだ。
だが気をつけろ!危険はあらゆるところに潜んでいるし、穢れたものは夜の闇の中を這い回っている。
君には文明と闇の間に立ちふさがるために必要なものを持っているか?
それとも、君もこの永遠の混沌に飲まれてしまうのか? 時間だけが教えてくれる。
ミスター・コレクターか、あるいはミスター・しゅうようを目指せ!選択肢は君のものだ!

ゲームの準備

まずこのゲームは、二人一組のチームが、2組から8組集まってプレイされる。
メイン・プレイヤーは、盤上での分身としてサブ・プレイヤーを一人選択する。これは、ゲームボードに、二人のうちどちらがどの駒を置いたかで決定される。
メイン・プレイヤーの駒は主に要注意団体、もしくは要注意人物を模したもので、サブ・プレイヤーの方は同じ色のトークンである。

展開されるボードは遊ぶバージョンによって変わり、ランダムに決定される。
ゲームの流れ自体はどれも同じだが、初期配置その他が違う。ちなみにボードの種類は、現在までに23種類が判明している。以下はその一部である。


で、これらのボードに応じて異なる敵性実体、要はエネミーが出現する。
ボードを広げて銀箱をスロットにセットすると、周囲直径約300メートルの空間が歪む。
観察者は、効果領域外の観察者の視点が、影響を受けた領域よりもはるかに広い空間の鳥瞰図となったかのように、空間がズームアウトするように見えるという。
この観測された空間は、現在のゲームボードを模倣しながらもより大きなスケールで行われ、これがフィールドとなる。

この空間内では、ゲーム開始の音楽と共に出入りが封鎖され、メイン・プレイヤーはボード上空のクリスタルプレートに座り、サブ・プレイヤーは盤面に配置される。
ゲームの中ではサブ・プレイヤーが死亡することもあるが、そうなった場合サブ・プレイヤーは無傷でフィールド外に転送されて退場となる。

ゲームの進め方

参加しているメインプレイヤーは、おのおの7枚の初期手札を持ってスタートする。
それぞれのターンの開始時に1枚ドローし、ターン終了時に10枚を超えていたら1枚捨てなければならない。
カードの種類はこんな感じ。

  • 緑のカード
いわゆる魔法・罠カード。
盤面の環境に影響を与える。他のプレイヤーに対する障害物、環境の変更や敵性実体の設置、罠を仕掛けるなど。

  • 青いカード
いわゆるモンスターカード。
サブ・プレイヤーに「装備」されることで、時間切れもしくはどちらかの死亡まで追従する。
プレイヤーを補助する、他のプレイヤーを妨害するなどのお助けユニットとして働く。

  • 赤いカード
いわゆる装備カード。
武器や備品、能力のカードである。サブ・プレイヤーの武器や道具になったり、能力を付与したりする。
装備しているプレイヤーが死亡するか、他の効果で破棄されるまで持続する。なお、「改良」というカードに通すとその赤いカードはなくなり、別のカードになる。
なお、これらのカードには能力や武器のステータス、弱点などが書かれており、備品カードについては罠にかかったり現実錨が発動し、効果を発揮すると破棄される。

  • 橙色のカード
いわゆるエネミー。未収容の敵性実体を表すカード。
財団の収容下または管理下、あるいは確認したアノマリーがモデルになっている。
盤面上にランダムに配置され、プレイヤーの感知範囲に入るまで発見されない。感知範囲に入ると、その場に橙のカードを出して「出現」する。これを破壊したり、確保したりする。

  • 黄色のカード
ゲームの報酬分配に影響するカード。ゲーム開始時、不透明な数字が上空に浮かび、これは難易度によって増減する。ノーマルなら10000$である。
黄色のカードは、ゲーム進行に応じてこの報酬をプレイヤー間でやり取りするために使う。
死亡した=ゲームから脱落したプレイヤーの報酬は没収され、再配布を待つ。で、最終的に勝利したプレイヤーは、ワンタメさんのロゴが刻まれた金塊、という形で銀箱から出てきた報酬を受け取る。

  • 白いカード
いわゆるアクションマジック、またはイベントカード。ターン初めのドローの時にランダムで出て来ることがある。
手札に引いた瞬間効果を発揮し、プレイヤーまたは盤面全てにプラスの影響を与える。

  • 黒いカード
いわゆるアクショントラップ、またはハプニングカード。白いカードと同様だが確率は低い。
こちらはマイナスの影響を与える。

  • 紫のカード
ワンダーテインメントカード。超低確率でドローされるいわばレアカードで、ワンタメさんの作品を誇張した形で配置する。おもにリトル・ミスターズ。マリアナ海溝のフィールドではミスター・おさかなが人食い鮫になって現れた。


で、難易度の話が出てきたが、これは何と財団のオブジェクトクラスをもとにしている。
低い方から並べると、

  • Neutralized
ベリーイージー。実体によるダメージはなく、プレイヤーは縫いぐるみに置き換えられる。
BGMは子守唄。勝利条件自体がなく、全員が眠った時点で自動終了。

  • Thaumiel
イージー。実体から受けるダメージが減り、死亡する代わりに気絶する。
また、いくつかの勝利条件は排除されている。

  • Safe
ノーマル。これが初期設定。

  • Euclid
ハード。
実体から受けるダメージが増加し、能力もパワーアップ。さらに、他のプレイヤーが何をしているのかわからなくなる。

  • Kerer
ベリーハード。
Euclidに加え、実体のスピードが上がる。

  • Maksur
エクストラハード。
Keterに加え、ダメージを食らった状態でスタート。

  • Apollyon
アルティメット。
4ターン目の終了時に、ランダムに選ばれた超越存在のカードが出現。プレイヤーは盲目状態で開始することが出来る。

このようになっている。
で、このゲームはどんな形式かというと、チーム戦タイプの対戦ゲームである。
各チームはそれぞれの「収容施設」を拠点としてスタートする。この中にはカードスロットとして武器カード用に2つ、備品カード用に3つ、能力カード用に2つ、同行者カード用に1つのスロットが用意されている。
ターンの初めにここにあるカードを手札と交換し、サブ・プレイヤーに装備する。
要するにメイン・プレイヤーは指揮官としてカードを扱い、サブ・プレイヤーは実際に行動する役である。

このスロットにカードをプレイすることで効果が発揮される。
カードの中にはスロットを増やすものもあり、例えば「でっかいポテト袋」は、武器と備品のスロットをそれぞれ2つ増加させることが出来る。

それぞれのターンの初めに、ターンプレイヤーはカードを1枚選択し、必要に応じて着脱する。装備したものは、他のプレイヤーやカードの干渉がなければ破棄されない。
その後、メインプレイヤーは2D6(6面ダイス2コをロールする)をして、その数字によってサブ・プレイヤーの行動半径を決定する。この時サブ・プレイヤーが銃など射程のある武器を装備していれば、移動後にその射程内へ攻撃などが可能。


勝利条件

ゲームの勝利条件はそれぞれ、ワンタメさんの代表作であるリトル・ミスターズに準えて分類されている。

  • ミスター・はっけん
ボードそれぞれに一つずつある、Wマークの発見物(ミームまたは反ミームで防御されている)を発見、施設へ持ち帰ることで達成、そのゲームに勝利する。

  • ミスター・しゅうしゅう
紫のカードが出た場合のみ。ワンタメさんの製品を持ち帰ることで達成、そのゲームに勝利する。

  • ミスター・みなごろし
他のプレイヤーを一人で全滅させた場合に達成、そのゲームに勝利する。ただし、他のプレイヤーがこれを狙っているプレイヤー以外の方法で死亡した場合は条件未達成となる。
なお、この条件達成をアナウンスする音声はミスター・レッドのもの。

  • ミスター・しゅうまつ
「超越存在」とされるカードを3体召喚すると達成、そのゲームに勝利する。
なお、他にある「上位存在」、つまり「神様」「とっても怒った星」「穴の中の少年」「ゲートガーディアン」ではダメで、超越存在とされる「鹿神様」「ヒトデ」「ウツボ」「メアリー・ナカヤマ」などが条件。
要はK-クラスシナリオを起こして勝て、という条件である。

  • ミスター・れんごう
GOCを元ネタとした条件。全てのアノマリーが破壊され、かつ一人のプレイヤーがその過半数を破壊していた場合、そのプレイヤーが条件を達成しゲームに勝利する。

  • ミスター・しゅうよう
橙のカードのうち半数以上を収容して施設に運ぶと達成、そのゲームに勝利する。

  • ミスター・ざいだん
ゲーム中にセットされた全てのアノマリーと全てのプレイヤーを収容することで達成、そのゲームに勝利する。
いわゆる熟練度獲得条件で、達成すると50000ドルのボーナス。なお、難易度Euclid以上が条件。

  • ミスター・いきのこり
他のプレイヤーが全滅し、この時点で他の条件を満たしていなかった場合、残ったプレイヤーが達成、そのゲームに勝利する。

なお、これら以外には暴言のみによる干渉で結果的にプレイヤーを死亡させた場合に達成される「ミスター・なげき」など、隠し勝利条件がいくつか存在している模様。


カードのステータス。

カードには、プレイヤーの能力値に合わせた能力補正が書かれている。

  • ATK
攻撃力。アノマリーはHPを0にすることで収容できるため、重要度が高い。プレイヤーの初期値は6。

  • DEF
防御力。プレイヤーの初期値は6。

  • HP
説明不要。プレイヤーの初期値は10。

  • SPD
スピード。先制攻撃に影響する。プレイヤーの初期値は8。

  • ACC
命中率。攻撃の正確さを表す。プレイヤーの初期値は6。

能力値は他にも存在するが、これは「図書館員」など、限定的全知を持つ存在に測定してもらう以外に確認不能。
なおイラストはなく、全て文章のみである。


カード実例

ここからはカードの実例を紹介する。
財団職員の頭を悩ませているのがコレで、財団の収容している・確認しているオブジェクトや、財団職員をモデルとしたカードなのである。
先に言っておくが、尋常ではない。










ご覧のとおりである。


プレイ記録

報告書にあるのは一つだけだが、これの概要を箇条書きにするとこんな感じ。


さて、ここまで見てくればいい加減わかるだろうが、このオブジェクト、機密違反の塊である。
最高機密のオブジェクトクラス、致死性ミームに守られたSCP-001提言の嵐、別世界、etc……。

ワンタメさんはあくまでも要注意団体であり、警戒すべき対象に過ぎない、ということをここに明記しておく。



しかし、一番問題なのは、このゲームがクリアランス関係なく、全ての職員によってプレイできるということ。
001提言はともかく、難易度についてはS/E/K分類の三つがある時点で「これもオブジェクトクラスじゃないの?」と思った職員は絶対にいたはずである。
もはや恒例だがここで言おう。




財団の明日はどっちだ。



考察

ここで少し注目すべきは、黒いカードの一つ「併合」。
これは明らかに、SCP-1730「サイト-13で何が起こったか?」のことだが、ここからするとどうやら、向こう側ではGOCが財団を取り込む形で併合したらしく、収容はもはや行われていないようだ。
あの「エリヤ」も、恐らくはその犠牲者だったのだろう。




余談

元記事の筆者であるdjkaktus氏によれば、氏はこの長大な記事を携帯電話で執筆・投稿したらしい
そして曰く、
この方法は親指が痛くなるのでお勧めしません。



追記・修正をお願いします。


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最終更新:2024年02月26日 16:31