SCP-920-EX

登録日:2017/04/12 (水) 23:54:02
更新日:2024/04/26 Fri 20:35:33NEW!
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SCP-920-EXとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は『Evil Workgroup Printer (邪悪なネットワークプリンタ)』。
オブジェクトクラスは「Euclid」からの「Explained」。


ちょっと前提

Explainedクラスは、財団の定義するオブジェクトクラスの中で、「異常性の原因が解明された」「それによって起きる現象やその結果が常識となった」ことにより、相対的に異常なものではなくなったオブジェクトに対して与えられるものである。

概要

コイツが何かと言うと、異常な特性を持ったネットワークプリンターである。
モデルナンバーの表記は「E466at」となっているが、同型機を生産している会社のリストにはこのナンバーは存在しなかった。モノ系オブジェクトによくある出所不明タイプである。
また、内部機構は普通のプリンターと同じであり、異常性はない。

では、どこに異常な特性があるのかと言うと、コイツの動作を制御するアルゴリズムである。
このアルゴリズムは非常に複雑に組まれており、印刷機能のほかにも、コイツと直接的・間接的に関わりを持ったコンピュータ、システム、ネットワーク、デバイスなどの動作に超常的な影響を及ぼすのである。
要は、どんな形であろうとコイツに接続した機器に異常な動作を起こさせる大迷惑プリンターなのだ。

その影響力の発現の度合いはいくつかの段階に分かれており、それぞれ影響の強度が違っている。


  1. 特に何も起こらない
  2. コイツで印刷しようとすると、エラーが出る、インクが詰まる、トナーが漏れるなどの不具合が時々出る
  3. 第2段階に加え、印刷した文書の中にオリジナルとの差異が出るようになる
  4. 以上の影響に加え、同じネットワークに接続しているプリンターも同じ異常を起こす。コンピュータウイルスの形式で異常性を伝達していると思われる
  5. 以上の影響に加え、コイツおよびコイツと同じネットワークに接続しているプリンターが、オリジナルと全く内容の違う文書を印刷するようになる
  6. 以上の影響に加え、以上の影響を発現している機器の周囲にある電子機器類も異常な動作を始め、発信者不明の電話着信、コピー機の紙詰まり、電話音声への雑音の混入、コンピュータ内のファイルの改変などが起きる
  7. 以上の影響に加え、以上の影響を発現しているハードと同じネットワークに接続しているコンピュータがメールやプレゼンテーション、紙のメモなどの作成・発信を勝手に行うようになる。ボイスメールはコイツのある組織内の人間の声や話し方を正確に模倣しており、その内容は組織の活動方針の変更や、構成員への何らかの禁止を通達するものである。また、これらの発信物は組織のテンプレートを踏襲している
  8. 以上の影響に加え、これらの機器が存在する建物の電気系統や空調、水回りの管理システムが誤動作を起こし暴走を始める
  9. 以上の影響に加え、これらのシステムの近辺に一瞬でも存在していたことのある全ての機器が同様の影響を発現し始める。これらの機器の周囲に持ち込まれたことのある携帯電話、その携帯電話を持ち込んだ自動車、その自動車の付近のシステム、と言った連鎖が発生する


とまあ、電子テロでも企んでいるのかと言わんばかりの無茶苦茶っぷりである。
要するに、自身のアルゴリズムを他の機器から機器へ感染させて広がる、いわば「マシンに対するミーム汚染」を発生させる問題児だったのだ。

当然ながら、このアルゴリズムに汚染されたシステムを使用している組織は、その活動内容に大きな影響を受けるハメになる。
コイツによって生成される文書や音声通信は、あたかもその命令を出す権限のある人物や、あるいは部署からのものであるかのように偽装されている。その結果として、特定の活動方針の採用、管理体制の変更、さらに本来ならば組織の目的とは合致しないはずの意思決定などが行われるからである。
何でこのプリンターがこんなことをさせようとするのかはわかっていないが、とにかくコイツ、そこに置いてあるだけであらゆる機器を連鎖的に狂わせてしまう。

そしてもう一つ、経過観察の結果判明した事実がある。
コイツの起こす暴走感染だが、変更された活動内容やそれに基づく偽の命令などは、大まかにコイツのアルゴリズム拡散を助け、それを防ぐ試みを妨害するような内容になっていることである。
さらに、上記の影響の内、8番目と9番目はこのプリンターを処分する、アルゴリズム拡散の妨害をかいくぐる必要が発生した際にのみ起きることがわかった。

つまりこのアルゴリズム、自己保存機能が備わっている。
こんな大迷惑極まりないアルゴリズム、誰が何のために作ったのだろうか。



ちなみにこのプリンターが発見された経緯だが、元々はある倒産した保険会社のオフィスに置かれていた。
コイツの影響を受けてしまった会社のシステムは、適性を持たない人材を昇格させ、適任の人物をクビにするなどの暴走を起こしており、その結果経営破たんしてしまったらしい。

この会社の情報技術責任者だったある男性は、この迷惑プリンターが元凶だと踏んで処分を計画していたが、察知した迷惑プリンターは9番目の影響を発現、男性が車に乗り込んだ瞬間、ガレージや車の電子系統を麻痺させ、結果一酸化炭素中毒で死亡させるという暴挙に出た。
が、この事件によって財団はこのプリンターの存在を察知、SCP-920のナンバーを振って収容と相成ったわけである。



そうして、特別収容プロトコルが制定された。
特性を発揮するには周囲に電子機器があるか、ネットワークに繋がっている必要がある。
ならば、それら全てから遮断してしまえばいい。
というわけで、

  • 収容室をあらゆる電子的通信手段からシールドするよ
  • その中にファラデーケージを入れるよ
  • さらにその中に温度調整機能のついたロッカーを入れて、そこに入れるよ
  • ペーパートレーとトナーのカートリッジは外して、個別にロッカーに入れて、別々の施設で保管するよ
  • 何があってもこのプリンターを電源やネットワークに繋いじゃダメだよ
  • 解析文書にはアシッドフリーペーパーを使って、手書きか、機械式タイプライターで書くよ
  • 参照用にコピーを作る時は、電子コピー以外の方法で書き写すよ
  • 収容・研究の担当者のブリーフィングは、出来る限り直接対面して話し合うよ

というプロトコルが制定され、SCP-920の完封に成功したわけである。













と、なっていればよかったのだが、そうは問屋が卸さなかった。
収容違反が起きてしまったのである。

ある時、コイツを収容していたサイトの管理者、W・ランバーグが財団本部にこんな連絡を行った。


本日をもってSCP-920の収容を解除し、以降SCP-920は財団管理本部の買掛金担当部門で通常のプリンタとして使用するものとする。SCP-920に一切の異常性が見られないことは、WATCHDOGおよびBinahパターン認識システムを用いた独自検査によって証明済みである。在庫管理上、本プリンタにはSCP-920-EXの識別コードを付与するものとする。
本会計四半期のIT関連予算は、問題なく使用可能な資産を無為に保管し続けるべきではないという方針に基づいて作成されている。

SCP-2897による解析結果なら間違いあるまい、と受け取ったO5評議会は、この日付を以てSCP-920の収容を解除、便宜上SCP-920-EXのコードを振って、普通のプリンターとして使うことを許可した。

これに伴い、ポリシーディレクティブK-23396-D6に従って収容プロトコルは破棄されることになった。




……何が起きたかはお分かりだろう。
この迷惑プリンターは自らの異常特性によって収容サイト全体に自らのアルゴリズムを拡散させ、偽の文書を財団本部に転送することで自身をExplained認定させてしまったのである。

つまり、現在のコイツは野放し状態で止めるものが何も存在しない。
おまけに、財団本部の規定する現在のSCP-920はリトル・ミスターズのひとり「ミスター・まいご」に割り振られており、この迷惑プリンターには収容の手間が割かれていない。


本来であれば、収容できていないオブジェクトに与えられるクラスはKeterである。



財団の明日はどっちだ。主に組織的な意味で。



追記・修正はExplained認定を取り消してからお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-920-EX - Evil Workgroup Printer
by spikebrennan
http://www.scp-wiki.net/scp-920-ex
http://ja.scp-wiki.net/scp-920-ex

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最終更新:2024年04月26日 20:35