SCP-400-JP

登録日:2017/03/28 Tue 15:22:38
更新日:2024/03/22 Fri 23:22:03
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言ってダメだったから、やるんだ。


SCP-400-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクト (SCiP) の一つである。
項目名は『ペンは自動小銃よりも…』。
JPのコードが示す通り、日本支部生まれのオブジェクトである。
オブジェクトクラスは「Euclid」。


概要

コイツが何かと言うと、人型実体+現象のコンボで構成されたオブジェクトである。
具体的に言うと、国家間紛争、または地域紛争の現場に現れる人型実体の集団である。現象そのものはコイツらの出現と消失を指す。

現れたこの連中=軍隊は何をするのかと言うと、争っている二つの勢力に対する第三勢力として介入し、二つの勢力が撤退して戦闘が終わるか、自分たちが敗北するまで戦うのである。
敗北の定義は、出現した実体群の1/3以上が終了した場合を示し、その場合彼らは出現した地域を問わず、[編集済]のある方向へ去っていく。そして、非戦闘地域に入ってから30kmで消失するのである。
ちなみにこの軍隊は歴史がかなり古く、最古の事例はなんと紀元前2600年である。その当時の記録を見てもやはり同一の方向に撤退しているが、これは後にとある王朝が発足する方向であると判明している。
そのため、彼らの起源は撤退方向にある何らかの要素だと考えられている。

では、彼らが勝利した場合はどうなるのか?
この軍隊の目的は、ここからが本番である。と言っても、やることは至って普通。
戦闘地域に留まった彼らは、民間人の生存確認と身元の特定作業に入る。それが終わったら、今度は戦闘による人的被害のフォロー、一般人の救助活動、死者の埋葬、殉職者の弔いを行い、物的損害の修復を行うのだ。
この時、埋葬や修復に使われる手段には異常な部分は一切なく、その時代における民間技術や習俗を正確に反映していること以外は至って普通の作業が進んでいく。当然ながら、要する時間は民間のそれと変わらない。

注目すべきは修復作業で、空いていた土地に幼稚園、学校、医療養護施設、図書館などの教育・福祉のための建物を建設するのである。これら施設や、蔵書・備品には異常な特性はやはり認められず、普通の物品であると結論されている。
そして、これら「復興作業」が終わると、彼らは敗北時と同じ方角に去っていく。
特別収容プロトコルにおいては、これら建造物は軍隊の撤収後に全て破壊することになっていたが、異常性が一切認められないことと、破壊によるリスクが放置した場合のリスクを上回ることから、現在は中止されている。

普通に考えて、戦地の民間人にとってはこういう施設はあって損はないし、むしろ破壊作業によって財団の方が無用なリスクを背負いかねないのだから、当然と言えば当然である。
ちなみに確保された個体は総じて平和のために戦っていると主張しており、身元に関する情報は全て捏造であったが、やっていることは確かに平和に貢献していると言えなくもない。


とまあ、ここまでなら問題は特にない。
が、忘れてはならない。この連中はSCPオブジェクトである。
異常な部分が、出現と消失以外に存在するのだ。

1つは、異常な戦闘力。
力学上人間には実現不可能な動きを軽々とやってのける上、パワーもスピードも尋常ではない。

2つ目は、規模。
過去の事例では、最小で4人だったが、観測された中で最大のケースではなんと「最低でも」1000万体以上が出現。
人間以上の力を持った軍人たちが、通常の兵力の100倍近い数で押し寄せてくるのである。強いってレベルじゃねえ。

これも驚異的だが、オブジェクトたる最大の由縁がコレ。
3つ目の異常な特性は、彼らの用いる武装や兵器。

項目名を見た時点でピンと来た諸兄も多いだろうが、
何とこの軍隊、銃や刃物ではなく文房具で武装しているのである。
さながら文房軍。



……トマトが飛んで来ないうちに先に進める。
さすがに紀元前となると普通に武器を持っていただろうが、近現代で確認されたケースでは文房具を持っているのだ。
正確な年数は不明だが、近代で発生したあるケースでは、その六割が市販のボールペンを持っていたらしい。
ちなみにこの事例においては、介入を受けた両勢力において5000人を超える殉職者が出たという。

服装については年代、地域、環境によって異なるが、大体当該年代の陸軍のそれに準拠しており、海軍に相当するメンバーはいない模様。


さて、いくら強い軍隊と言っても単に数が多いだけではない、ちゃんとした役割分担がある。
仮説の段階だが、持っている道具によってある程度その役割を判断することが可能だとされている。
以下はその概略である。


  • 一般歩兵
[]⊂(`・ω)つ∇
背面に持ち手のついた三角定規と、直定規を所持。小学校の算数で使われる、あの巨大なヤツを思い浮かべてくれれば良い。
三角定規は対衝撃性能の高い盾として機能し、直定規は切断力の極めて高い剣として機能する。
「文房軍」における、重装歩兵の役割であると思われる。

  • 近接戦闘員
(`・ω)Ф
黒インクのボールペンを所持。これを敵兵の首に突き刺して攻撃する。
市街地での戦闘で出現することが多いが、近現代の戦闘ではこの個体は減少しつつある。
なお、もっと昔は万年筆を持っていたようだが、ひょっとすると中世では羽ペンだったのだろうか。
「文房軍」における、ゲリラ戦闘員の役割であると思われる。

  • 小銃歩兵
コ⊂(`・ω)つ≦
30本の芯が入ったステイプラーを所持。
このステイプラーは一部が改造されており、芯をライフル弾と同様の速度で発射する。
この個体は「代え芯」を4から6セット所持しており、必要に応じて交換しながら戦う。
「文房軍」における、近代兵士の役割であると思われる。

  • 衛生兵
(`・ω)つЛ
スティック糊を所持。
数は少なく、負傷した仲間の傷をこの糊で治療する。
役割はまんま衛生兵だと思われる、というか他に該当する兵種がない。

  • 工兵
Ъ⊂(`・ω)つ∝
ハサミとセロハンテープを所持。
防衛施設、戦略拠点、パイプラインなどに出現する。このセロテープはいわゆる爆弾であり、ハサミで切って張り付けたあと、特定の周波数を発信することで爆破することが出来る。
応急的に塹壕を作ったり、簡単な地雷原として相手の戦車を破壊したり、と応用性が高い。
また、「兵員輸送車」の破損部分を繋ぎ合わせることで稼働させたりと修復力も強い。
「文房軍」における、戦闘工兵の役割であると思われる。

  • ドライバー
(`・ω)つト□
装甲車両に乗っている。
この車両の背面扉は観音開きになっており、仲間以外が見ている間は開かれない。
扉が開いた場合、中から4~6人の文房軍兵士が出現して戦線に加わる。
車両自体の装備としては、後部にカルシウムの粉=チョークによる発煙弾を発射する榴弾砲、上部に20mmステイプラー砲を搭載している。
また、後部の「引き出し」には兵士の使う消耗品、つまり小銃歩兵の代え芯や衛生兵の糊、工兵のセロテープなどの予備が積んであり、手持ちの物資が尽きた個体はここに戻って補給を行う。
ちなみに、戦闘終了時にはこの車両は放棄されるが、補給物資は全て持ち去られ、代わりに児童書が満載された状態で発見される。
「文房軍」における、兵員輸送車両&前線基地の役割であると思われる。

  • パイロット
(`・ω)つT
飛行船に乗っている。
外郭はアルミニウムで構成され、バルーン内部の気体は燃焼性や毒性を持たず、水素よりも軽い未知の物質である。
この飛行船は種類がいくつかあり、4機から6機が同時に出現する。
大別すると3種類あり、爆発する事務用デスクを投下する爆撃担当、兵士や物資、輸送車両をパラシュート投下する支援担当、対空装備の充実している無線交換や地上の文房軍を指揮する指令担当に分けられる。
これらを撃墜する試みは財団に限らず行われているが、随伴機による30mmステイプラー砲による迎撃が激しく成功していない。
「文房軍」における、飛行艦隊の役割である。



なお、これら装備や車両の持つ異常な特性は物品自体が保持しているものであり、戦闘終了時に放棄されたものは異常性を失っていない。
そのため、一部を除きこれらの物品はAnomalousアイテムとして登録されている。




ところで、財団はこれらSCP-400-JP個体の確保を何度か行っているのだが、その中でこの連中の持つ潜在的な危険性が明らかとなった。
基本的に、この軍隊は民間人には危害を加えない。あくまでも武力介入が目的である。
だが、それがどうしても出来ない場合の最終手段を、彼らは保持していた。

2011年に確保されたある個体へのインタビューの際、「平和への行動」を阻害されたSCP-400-JP個体は「平和のための最終手段を行使する」と叫び、事前に飲み込んでいたらしい兵器によって自爆。地下サイト一つをまるまる吹っ飛ばしてしまったのである。
この「兵器」だが、サイトの跡地からは高濃度の放射線が検出された。つまり、これは核爆弾なのである。
そして、彼らの特性から、これもまた文房具の一つと同様の形をしていることがわかる。

それは何なのか?
言ってしまえば、これは消しゴムである。
本当にまずいのはこの後に判明した事実で、この原爆消しゴムは工兵のセロテープ同様、文房軍の発信する特定の周波数を受け取ることでのみ起爆する。これはつまり、この周波数を受け取らなければ破壊しても爆発しないが、相手はいつでもこれを起爆できる、ということである。
後にO5の執務室からもこれが発見され、特例Anomalousアイテムとして保管されている。

そしてもっとまずいのは、この原爆消しゴム、通常の消しゴムと同様の機能を備えている上、民間製造の消しゴムとは外見での区別がほぼ不可能、という点である。
今も書いたが、よりによってO5が持っていたということは、財団内部にも相当数が存在していることは疑いようがない。
財団の工作によって現在は製造されていないが、膨大な数の消しゴムが世界中に出回っており、その中にある原爆を見つけるのは困難を極める。2015年現在でも回収作業が続いているが、はかどっていない模様。


文房軍自体は平和のために活動しているのだが、彼らの用いる最終兵器が現在も野放し、というのが一番の問題である。
回収作業が終わるのは何年後になるだろうか……。










――「平和のために」戦う文房軍、だがそのために、「平和のために」用いる最後の手段が 
 核兵器。それは、今現在の我々と、何が違うのだろうか?

彼らの武装は文房具。だが、ペンも、ホチキスも、机も、ハサミもテープもスティック糊も、やろうと思えばそれで簡単に人を殺せるのだ。
そんなものが、今も我々の身の回りに、当たり前に存在している。
なにもそれはおかしなことではない。普通の事なのだ。


本来そのために生まれたものではない文房具を、人を殺すために、敵を倒すために用い、必要とあらば核兵器をもためらいなく使用する「文房軍」。
その全ては「平和のために」。

彼らの口にする「平和」とは、どのようなものなのだろうか。

彼らの手にする文房具によって描かれる「平和」とは、何なのだろうか――


「『ペンは剣よりも強し』と言ったのが誰かは知らないが、おそらくそいつは自動小銃を見たことがなかったのだろう」 ―― ダグラス・マッカーサー





追記・修正は文房具で下書きしてからお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-400-JP - ぺンは自動小銃よりも…
by SenkanY
http://ja.scp-wiki.net/scp-400-jp

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最終更新:2024年03月22日 23:22