SCP-009-JP

登録日:2017/02/05 Sun 22:47:01
更新日:2024/04/26 Fri 14:44:54
所要時間:約 9 分で読めます





その時計、本当に狂っているのかな?


SCP-009-JPとは、SCP財団日本支部が管轄するSCiP(SCPオブジェクト)である。
項目名は「閏秒」

特別収容プロトコル

いつも通り特別収容プロトコルから。
まずオブジェクトクラスEuclid。とりあえず収容はされているって状態らしい。とりあえずは。

そして特別収容プロトコル。
特別収容プロトコル: SCP-009-JPは性質上、収容不可能なため、発生後の処理が重要になります。SCP-009-JPの発生が確認された場合、国際地球回転・基準系事業に通知して下さい。国内外の関係機関と協力し、プロトコル"子午線"を実行します。以下に手順を示します。

え、いきなり「収容できませーん」?それじゃEuclidじゃなくてKeterじゃね?
…まあこいつは収容できないけどそれほどお騒がせなもんじゃないし、発生後の対処も(比較的)やりやすいってことからEuclidなんじゃないかな。(棒

SCP-009-JPの発生後、国際原子時(TAI)の修正が必要になります。後述のQ群とS群のいずれがより正確な時刻を示しているのか不明なため、通常通り加重平均による修正を行います。±1.0秒以上の値が出た場合、中央値か最頻値を採用して1.0秒未満に抑えて下さい。それが不可能な場合は、レベル3以上の職員の指示に従って下さい。
国際原子時(TAI)の修正に伴い、協定世界時 (UTC)の修正も必要になる場合があります。これは通常の閏秒に偽装され、協定世界時 (UTC)の月末23時59分に実行されます。セシウム原子時計によって定義される1秒と地球の自転から求められる1秒がわずかに異なるため、閏秒による修正自体はSCP-009-JP発生時以外でもごく普通に行われています。そのため協定世界時 (UTC)の修正については、特別なカバーストーリーを必要としません。

ま、そういうことである。
要するに「単なる閏秒だから!修正だから!別に変じゃないだろ!」で通せちゃうってことである。
誤差が±一秒以内なら平均値を、一秒超えたら中央値か或いは一番多い結果を採用しろとのことで。

なんか単純かつ地味そうだけど、それ故嫌な予感がする?


説明

それではこいつがどんなSCiPなのかの説明。
SCP-009-JPは世界中の時計に不定期に発生する異常。
簡単に言えば「世界中の時計が突然、コンマ何秒かずれてしまう」現象である。恒例の「どうやって収容するんだシリーズその1・現象系」である。

特に重大な影響が現れるのはセシウム原子時計。
セシウム原子時計ってのはセシウム原子が共振・吸収するマイクロ波を基準とした時計。
誤差は一億年に一秒というレベルであり、世界の「時間」の基準としても使われている。
世界中には300個のセシウム原子時計が存在しており、それらの平均値で一秒を決定している。ちなみにこの内数十個が、既に財団の管轄下にあるとの事。流石は財団の組織力である。
…だからこそ、SCP-009-JPによる影響が洒落にならないことになるわけである。「基準点」をおかしくされてしまうってことだし。

SCP-009-JPが発生すると、全ての時計は「Q群」「S群」に分かれる。
Q群は秒針が少し進む方、S群は逆に少し遅れる方。名の由来は恐らく「Quick」「Slow」だろう。
2群はそれぞれ申し合わせたかのように正確に同じだけ狂う。
つまり、「S群の時計はQ群より絶対に○秒遅れる」ことになってしまう。
どの時計がQ群、そしてS群に入るかは毎回異なるらしいが、地理的に近いセシウム原子時計は同じグループになる傾向があるようだ。
ちなみに2014年1月までに発生したSCP-009-JPに於いて、時差は最少で0.00000006秒、最大で0.21秒だったようだ。
この影響は(セシウム)原子時計以外にも発生するが、まあ、その他の機械式時計やクォーツ時計などの「一般的な」時計にとっては精度の関係上、そのままの意味で「誤差の範囲」程度の影響しか及ぼさない。

しかし前述の通り「1秒」の基準となっている時計が狂うのだから混乱の元になる。
このSCP-009-JPはセシウム原子時計よりも遥かに高精度な光格子時計にすら影響を与える。*1
もひとつオマケに太陽や月、星といった天体を基準にした時間にすら影響を与える。『時計』なら問答無用で影響を与える、なにげに広範囲なSCiP。
…これは「実際に影響を受けたのはQ群とS群のどっちかを正確に知る方法が無い」ということを意味する。
地味ながら結構面倒なSCiPである。

朝起きたとき、もし家中の時計の半分が午前7時で、もう半分が午前8時だったとしても、正しい時間はテレビが教えてくれるだろう。で、SCP-009-JPが発生したら、正しい時間は誰が教えてくれるんだ? ──████研究員

日曜の朝に目を覚まして、もしも家中の時計が違う時刻を差していたとしても、
そういうときはテレビを付ければ「正しい時間はどれだ」ということを把握できる。

テレ朝で仮面ライダーをやってりゃあ9時~9時30分の間だし、スーパー戦隊シリーズならば9時30分~10時のどこかだ。
プリキュアをやってれば8時30分~9時の間になるし、
或いはテレ東の方でちいさなプリンセスソフィアをやってたらそりゃあ7時30分~8時だ。
もっと詳しい時間はテレビ画面に出てくる時刻表示が教えてくれる。
テレビをつけるのが面倒ならば、基地局やタイムサーバーの情報で自動的に時間を修正しているケータイやスマホを見るのもいい。

だが時計ならなんでも構わず食っちまう問答無用で影響を与えるSCP-009-JPが発生したら、当然のごとく「テレビの時間も」「携帯・スマホの時計も」狂う。
正しい時刻を求めるすべはなくなる。
地味なくせに面倒な奴だ…。


追記と修正は時計の秒針を合わせながらお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-009-JP - 閏秒
by shinjimao
http://ja.scp-wiki.net/scp-009-jp

この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。







































 
レベル3クリアランス確認-

我々は時間を間接的にしか知覚できないため、それが絶対的なものであると思いがちです。しかし実際には、時間は重力や速度の影響を受けます。最初のSCP-009-JPを確認した後、財団は時間や原子時計に影響を及ぼす要因を調査しました。

我々は時間を直接知覚しているわけではない。
時計やテレビ、スマホの画面などの「時を刻むもの」を使って初めて時を知ることができるのである。
直接知覚しているわけではないため、「時間は絶対的なもの」と思いがちである。

が、実際は時間というものは、速度や重力などの影響を受ける。

ブラックホールに吸い込まれると、吸い込まれているモノと外から見ているモノでは時間の感覚が違って見える」ということを聞いたことがあるだろうか?
詳しい説明は省くが、ブラックホールという物体の超重力の影響で、ブラックホール内部の時間が引き伸ばされてしまうのだ。
なんでこんな前置きをしたかって?
…実は、SCP-009-JPの発生時には重力計にも異常が発生していることが確認されたのだ。

その結果、SCP-009-JPの発生時には重力計も同様に異常を示していることが判明しました。そのため、SCP-009-JPは重力場の異常が引き起こしたものと考えられています。重力異常の原因を探る試みが行われましたが、地球周辺の天体に異常は確認されませんでした。また地球の自転速度や内部構造についても、我々に確認できる範囲では異常は見つかっていません。

何やら不穏な雰囲気になってきたようだ…。

一方、時計がSCP-009-JPの影響を受けたグループと受けなかったグループに二分される理由は、空間の異常によるものと結論づけられました。Q群やS群単体では重力場モデルを作れるにも関わらず、両群による重力場モデルは破綻してしまうことが、最大の理由です。
これらのことから、巨大な質量を持つオブジェクト(SCP-009-JP-1とします)が空間を歪めて瞬間的に出現した結果として、SCP-009-JPが発生していると考えられます。SCP-009-JP-1が長期的に存在した場合、地球に深刻な異常を引き起こす可能性があります。シミュレーションによる最悪の事例では、地球は潮汐分裂によって破壊されました。

地味だと思っていたら実はSCP-009-JPという"現象"そのものは単なる「影響」でしかなかったようだ。
SCP-009-JPの実態は、地球の付近に瞬間的にSCP-009-JP-1、つまり凄まじい質量を持った「何か」が現れ、地球を一瞬「空間ごと引っ張る」ことにより時間の流れそのものが狂っていた…というものだったようだ。
この何かは未だに謎であるが、時間を狂わせる程の凄まじい質量体ゆえ、一瞬ではなく地球付近に出現し続けた場合、
最悪のケースでは潮汐力で空間と言わずに地球そのものが引っ張られる=粉砕されてしまう可能性があるというシミュレーション結果すら出ているのだ。

今は一瞬現れて、コンマ数秒の時差を作り出すだけの存在だが、
その本性は下手すりゃ余裕のKeter認定されてもおかしくない代物。

SCP-009-JP-1の正体は「一瞬だけ現れる」という性質も相まって未だに詳しい事はわかっていないものの、地球そのものをぶっ壊す潜在能力を秘めているとなった以上は研究を要するのは明らかである。
こいつの性質を理解するのは天文学者だけではなく、異なる分野の専門家が必要だと判断された。
現在は3名のある分野の専門家(「編集済」となっており詳細は不明)が研究に参加している。

SCP-009-JP-1は有効な特別収容プロトコルが確立され次第、独立した新しいSCPナンバーとオブジェクトクラスを割り当てられます。それまでの間、SCP-009-JP-1はレベル3機密に指定されます。SCP-009-JPは時計の異常として偽装され、オブジェクトクラスもそれに見合ったものに変更されました。████研究員は実在しません。

最初のは実際はいわゆるカバーストーリーだったのだ。
何しろ「未だ以て正体どころかとっ捕まえる方法すらわかってないのに、下手すりゃ地球そのものを粉砕しかねない超危険物の可能性がある」というブツなので、何も考えずに真実をぶちまけたら大混乱になるのは必至だろう。
ある程度付き合い方が確立されるまで、「なんか時々時計の秒針が狂うんだけどなー(棒」「時計を狂わせる変な現象が起こるから閏秒の名目で修正してね」で誤魔化しているというのが実態なのだ。



財団世界の地球の明日はどっちだ……


ところで明日まであと何秒?



SCP-009-JP-1を目撃した方は追記修正をお願いします。

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SCP-009-JP - 閏秒
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最終更新:2024年04月26日 14:44

*1 極低温に冷却した原子をレーザー光による格子に閉じ込め、その原子が吸収する光の波長を基準とするもの。誤差は「理論上300億年に1秒」と言われる